同一労働同一賃金は、賃金だけでなく、食堂や社宅、慶弔休暇、食事補助などの福利厚生にも適用されます。2026年10月におこなわれる、施行後初となるガイドラインの改正を控え、対応の見直しを迫られる企業は少なくありません。本記事では、改正の内容・対象範囲・判断基準・判例など、対応のポイントをまとめてわかりやすく紹介します。
同一労働同一賃金とは?福利厚生も対象に
「同一労働同一賃金」とは、正社員と非正規社員との間の不合理な待遇差を禁止する考え方です。まずは、同一労働同一賃金の概要を整理します。
同一労働同一賃金|法的根拠は「パートタイム・有期雇用労働法」
同一労働同一賃金の法的根拠は「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(パートタイム・有期雇用労働法)です。
同法の第8条・第9条により、正社員と非正規社員との間に、不合理な待遇差を設けることが禁じられています。
同一労働同一賃金の適用は段階的に進み、大企業では2020年4月、中小企業では2021年4月から全面施行されました。法律自体に罰則規定はありませんが、都道府県労働局による助言・指導の対象となる可能性があります。
参考:厚生労働省|同一労働同一賃金特集ページ
参考:e-Gov 法令検索|短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律
対象となるのは賃金だけではない
同一労働同一賃金というと、基本給や賞与などの「賃金」がまず思い浮かびますが、対象範囲はそれだけにとどまりません。
厚生労働省が定める「同一労働同一賃金ガイドライン」では、基本給・賞与・各種手当に加え、休暇制度、教育訓練、そして福利厚生も明確に対象として位置づけられています。
実際に、福利厚生は多くの企業で正社員向けの制度として設計されてきた経緯があり、非正規社員との間に見直しが追いついていない待遇差が残っているケースが少なくありません。
関連記事:【社労士監修】契約社員の福利厚生、正社員との待遇差は違法?判断基準と見直し方法を徹底解説【2026年版】
福利厚生のうち対象になるのはどの項目?ガイドラインが定める一覧
同一労働同一賃金ガイドラインでは、福利厚生のうち対象となる項目が具体的に示されています。ここでは、福利厚生と関連が深い食事手当も加え、対象項目それぞれの詳細をわかりやすく解説していきます。
福利厚生施設(食堂・休憩室・更衣室)
同一労働同一賃金ガイドラインでは、食堂や休憩室、更衣室などの「福利厚生施設」について、正社員に利用を認めているものは、同一の事業所で働く有期雇用労働者やパートタイム労働者にも同一の利用を認めなければならないとされています。
利用条件や利用回数に制限を設ける場合も、業務内容や勤務時間の違いなど、合理的な理由が必要です。正社員だけ食堂を利用でき、非正規社員は利用できないといった扱いは、不合理な待遇差の典型例です。
なお、この福利厚生施設の定義は2026年10月の改正でさらに明確化されています。※詳細は後述
転勤者用社宅
転勤者向けの社宅についても、同一労働同一賃金ガイドラインの対象です。
転勤の有無、扶養家族の有無、住宅を賃貸しているかどうかといった支給要件が正社員と同じであれば、非正規社員にも同一の利用を認める必要があります。
逆にいえば、転勤を伴わない働き方をしている非正規社員に対し、転勤者用社宅の利用を認めないこと自体は不合理とはいえません。
重要なのは、雇用形態そのものではなく、実際に転勤があるかどうかという実態に即して判断することです。制度上「正社員のみ」と一律に定めている場合は、この機会に運用実態と照らし合わせて見直すことが求められます。
慶弔休暇・健康診断に伴う勤務免除
慶弔休暇や、健康診断に伴う勤務免除および受診中の賃金保障も、同一労働同一賃金の対象としてガイドラインに明示されている項目です。
慶弔休暇は、結婚や近親者の死亡といった事情に応じて付与される休暇です。勤続期間や労働日数が正社員と同程度であれば、非正規社員にも同一の付与を行うことが求められます。
健康診断についても同様で、法定の健康診断を受診する時間を勤務時間として扱い、賃金を保障している場合、非正規社員だけこの扱いを除外することは不合理と判断されるのが一般的です。
関連記事:福利厚生としての健康診断とは?健康経営実現で「選ばれる企業」へ
病気休職・法定外休暇
病気休職や、法定を上回る法定外休暇についても、同一労働同一賃金ガイドラインの対象となります。
法定外の有給休暇や特別休暇について、勤続期間に応じて付与日数を増やす制度を設けている企業も少なくありません。この場合、非正規社員の勤続期間も正社員と同様にカウントする必要があります。契約更新が続いている場合、契約が切り替わるたびに勤続年数がリセットされるような運用は、不合理な差につながる可能性があるため注意が必要です。
病気休職についても、正社員だけに認め非正規社員には一切認めないという運用は見直しが必要です。なお、病気休職の扱いは、後述する2026年10月の改正でも見直されることが決まっています。
関連記事:「同一労働同一賃金」の"おかしい"現状|日本と海外の違いから解説
食事手当・食事補助
食事手当や食事補助は、ガイドライン上は「福利厚生」ではなく「手当」に分類される項目ですが、福利厚生と一体で語られることが多いため、ここであわせて解説します。
労働時間の途中に食事のための休憩時間がある労働者に支給される食事手当は、通常の労働者と同一の支給が求められます。
正社員には支給しているにもかかわらず、非正規社員には支給していないというケースは、合理的な理由がない限り不合理な待遇差と判断される可能性が否定できません。
食事にまつわる福利厚生は、勤務地や雇用形態を問わず提供しやすいため、待遇差を解消する着手点として取り組みやすい項目です。
関連記事:食事補助とは?福利厚生に導入するメリットや種類・支給の流れを解説
「合理的な差」と「不合理な差」の見分け方
同一労働同一賃金では、待遇に差があること自体が禁止されているわけではありません。禁止されているのは、あくまでも「不合理な差」です。不合理か否かの判断基準には「均衡待遇」と「均等待遇」の2種類があり、どちらに該当するかは職務内容や配置変更の範囲といった実態によっておのずと決まります。企業は、まず自社の労働者がどちらに該当するかを正しく判断しなければなりません。ここでは、それぞれの内容と判断基準について詳しく解説します。
均衡待遇とは
均衡待遇とは、パートタイム・有期雇用労働法第8条に定められた考え方です。
これは正社員とのあいだに職務内容や配置変更の範囲に違いがある場合に適用される基準で、待遇差を設けること自体は認められますが、その差が不合理であってはならないとされています。
不合理か否かは、以下の3つの要素を元に判断されます。
- 職務内容|業務の内容と責任の程度(トラブル対応や決裁権限の範囲など)
- 職務内容・配置の変更範囲|転勤や人事異動、昇進などの範囲(実態が伴っているか)
- その他の事情|職務の成果・能力・経験、合理的な労使慣行、労使交渉の経緯など
「正社員は転勤の可能性がある」などを前提に待遇差をつけたにもかかわらず実態を伴わない場合、不合理な差と判断されるおそれがあるため注意が必要です。
均等待遇とは
均等待遇とは、パートタイム・有期雇用労働法第9条に定められた考え方です。
職務内容と配置変更の範囲が正社員と同一と見込まれる場合、パートタイム労働者や有期雇用労働者であることを理由に差別的な取扱いをすることが禁止されています。
均衡待遇のように「その他の事情」を考慮した比較検討を行うのではなく、判断基準の3要素のうち「1. 職務内容」と「2. 配置変更の範囲」の2点が同一であれば、待遇において一切の差を設けることが認められません。
福利厚生の待遇差を検討する際は、まずこの均等待遇の対象に該当するかどうかを確認することから始めるのが一般的です。
福利厚生に不合理な差があるとどうなる?
同一労働同一賃金には、罰則規定がありません。しかし、不合理な差を放置した場合、企業はさまざまなリスクに直面します。ここでは、想定される具体的なリスクについて詳しく解説します。
行政指導・企業名公表のリスク
「パートタイム・有期雇用労働法」には、罰則規定が設けられていません。しかし、不合理な待遇差が是正されない場合、都道府県労働局による助言・指導・勧告の対象となる可能性があります。
とくに、第9条(均等待遇)や第12条(福利厚生施設の利用)など一部の規定については、勧告に従わない場合、企業名が公表される可能性があります。福利厚生に関するその他の規定も、勧告や指導を受けたこと自体が企業の採用活動やブランドイメージに影響しかねません。
万が一のリスクを避けるためにも、早期の対応が望まれます。
民事訴訟に発展するリスク
不合理な待遇差は、行政指導にとどまらず、非正規社員本人からの損害賠償請求という形で民事訴訟に発展するケースもあります。
実際に、福利厚生における待遇差をめぐり、最高裁判所まで争われた事例も存在します。訴訟に発展した場合、企業は損害賠償責任を負う可能性があることに加え、訴訟対応にかかる時間的・金銭的コストも無視できません。
さらに、訴訟の事実が報道されることで、既存社員のエンゲージメント低下や、企業イメージの毀損といった二次的な影響も懸念されます。
次章では、実際に最高裁まで争われた「日本郵便事件」を取り上げ、判断のポイントを具体的に解説します。
関連記事:【社労士監修】同一労働同一賃金とは?企業が知っておくべき基本と取り組み手順
【判例】福利厚生の待遇差が争われた日本郵便事件
福利厚生における待遇差が実際に争われ、最高裁判所まで進んだ代表的な事例として、広く知られているのが「日本郵便事件」です。以下、どの待遇が不合理と判断されたのか、その具体的な判断の根拠とあわせて詳しく解説します。
参考:労働基準判例検索-全情報
最高裁が不合理と判断した5つの待遇
日本郵便事件は、日本郵便の有期契約労働者が、正社員との待遇差が不合理であるとして、損害賠償などを求めた訴訟です。
令和2年(2020年)10月15日、最高裁判所は、年末年始勤務手当、年始期間の勤務に対する祝日給、扶養手当、私傷病による有給の病気休暇、夏期・冬期休暇について、有期契約労働者に支給・付与しないことは不合理であると判断しました。
なお、慶弔休暇はこの最高裁判決の対象には含まれていません。福利厚生を含む複数の待遇について最高裁が具体的な判断を示した点で重要であり、企業が待遇制度を見直す際の参考とされています。
判断のカギは「制度の趣旨」
最高裁が不合理と判断した根拠の一つは、各手当や休暇制度の趣旨に着目した点です。
たとえば扶養手当は、従業員の生活保障や継続的な雇用の確保を目的とする制度です。そのため、契約を反復更新し、相応に継続的な勤務が見込まれる有期契約労働者にも、制度の趣旨は当てはまると判断されました。
このように、同一労働同一賃金では、雇用形態だけで待遇を一律に区別するのではなく、待遇の目的や職務内容、配置変更の範囲などを踏まえて、待遇差の合理性を検討することが重要です。
【2026年10月】同一労働同一賃金ガイドラインが施行後初めて改正
2026年10月1日、同一労働同一賃金ガイドラインは、制度の施行後初めての改正を迎えます。あわせて、パートタイム・有期雇用労働法施行規則や雇用管理指針も改正されます。ここでは、改正の背景と公布から施行までのスケジュールを整理し、わかりやすく解説します。
改正の背景(施行から5年の見直し規定)
今回の改正は、働き方改革関連法の附則に定められた、「施行後5年を目途とする見直し」を踏まえたものです。
厚生労働省の同一労働同一賃金部会では、2025年2月から、非正規社員の待遇改善の状況や企業における運用実態などを踏まえ、見直しに向けた審議が行われました。
その結果、最高裁判例などを踏まえて、賞与・退職手当・家族手当・病気休暇・夏季冬季休暇などに関するガイドラインの記載を具体化する改正が行われます。
参考:厚生労働省|労働政策審議会 (職業安定分科会・雇用環境・均等分科会同一労働同一賃金部会)
公布・施行のスケジュール
改正の公布日は、令和8年(2026年)4月28日です。厚生労働省告示第202号・第203号および厚生労働省令第87号として公布されました。
施行日は、同年10月1日です。公布から施行までは約5カ月あるため、企業はこの期間を活用し、自社の手当や福利厚生制度、待遇差の説明方法などを点検しておくことが重要です。
これまでガイドラインに具体的な記載がなかった退職手当や家族手当などについて、今回の改正で待遇差を判断する考え方や具体例が新たに示されました。すでに同一労働同一賃金への対応を終えた企業も、改正内容を踏まえて自社の待遇制度を再点検することが望まれます。
改正で福利厚生の取り扱いはどう変わる?
2026年10月の改正では、福利厚生に関わる基準もより具体化されることになりました。ここでは、施行後に企業の実務対応がどのように変わるのか、福利厚生施設の定義や関連手当の基準を中心に解説します。
参考:厚生労働省|同一労働同一賃金ガイドライン等の改正内容について(パートタイム・有期雇用労働法関連)
参考:厚生労働省|パートタイム・有期雇用労働法施行規則/雇用管理指針の主な改正事項
参考:厚生労働省|同一労働同一賃金ガイドライン 新旧対照表(解説付き)
福利厚生施設の利用条件も対象に
福利厚生施設(給食施設、休憩室、更衣室)についての規定自体は、2021年4月の法全面施行時から存在していました。
今回の改正では、施設を利用できるかどうかだけでなく、利用料金や割引率といった「利用条件」についても、不合理な待遇差の禁止に関する法8条の対象となることが明記されました。
そのため、正社員だけ食堂を割引価格で利用でき、非正規社員は定価で利用するという扱いも、職務内容や配置変更の範囲、その他の事情などを踏まえて、不合理な待遇差と判断される可能性があります。
関連記事:【社労士監修】同一労働同一賃金の見直し完全ガイド|2026年10月改正で何が変わる?
家族手当・住宅手当の考え方も明確化
今回の改正では、福利厚生に関連する各種手当についても、判断基準が明確化されました。
家族手当については、契約更新を繰り返すなど、相応に継続的な勤務が見込まれるかどうかが判断要素として示されました。また、住宅手当については、転居を伴う配置変更の有無に応じて支給する制度である場合、実際の配置や転居の実態と制度の内容が一致しているかが問われます。
たとえば、転勤の有無を理由に正社員へ住宅手当を支給しているにもかかわらず、実際には正社員にも転居を伴う配置変更を命じていない場合、非正規社員に支給しないことが不合理と判断される可能性があります。
待遇差の説明や意向の考慮も判断材料に
今回の改正では、事業主が待遇差の内容や理由を十分に説明しなかった場合や、非正規社員の意向を十分に考慮せず一方的に待遇を決定した場合、その事実も待遇差の不合理性を判断する際の事情として考慮され得ることが明確化されました。
そのため、待遇差の内容や理由を説明できるよう、決定の根拠を整理・記録しておくことが重要です。また、労働者との話し合いやアンケートなどを通じて意見を聴く機会を設けるよう努めることも、雇用管理指針で示されています。
施行後は、待遇の内容だけでなく、決定の根拠や説明のプロセスにも配慮した制度運用が求められます。
派遣社員の福利厚生にも同一労働同一賃金は適用される?
派遣社員についても、同一労働同一賃金の考え方は適用されます。ただし、正社員や契約社員とは異なる独自の制度設計になっているため、福利厚生に関する扱いについても独自の枠組みで整理されている点に注意が必要です。
派遣先均等・均衡方式と労使協定方式
派遣社員の待遇決定方式には、「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」の2種類があります。なお、ここでいう「均等・均衡」は、これまで解説してきたパート・有期雇用労働者の考え方と同様ですが、根拠となる法律(労働者派遣法)と比較対象(派遣先企業の正社員)が異なります。
「派遣先均等・均衡方式」は、派遣先に雇用される通常の労働者(正社員・無期雇用フルタイム労働者など)と比較して均等・均衡待遇を確保する方式で、派遣先の福利厚生施設の利用なども対象に含まれます。
一方、「労使協定方式」は、派遣元企業が労働者代表と労使協定を締結し、その協定に基づいて待遇を決定する方式です。食堂・休憩室・更衣室などの福利厚生施設と教育訓練は労使協定の対象外となるため、労使協定方式であっても、派遣先の通常の労働者との均等・均衡を確保する必要があります。社宅や慶弔休暇など、労使協定の対象となる福利厚生は、協定に定めた内容に基づいて決定されますが、派遣元の通常の労働者との間で不合理な待遇差を設けることはできません。
参考:厚生労働省|派遣労働者の ≪同一労働同一賃金≫ の概要(平成30年労働者派遣法改正)
福利厚生における派遣先企業と派遣元の役割分担
2026年10月の改正では、福利厚生施設(食堂・休憩室・更衣室)の利用料金や割引率といった利用条件についても、派遣元事業主が労働者派遣法上の均等・均衡待遇の規定の適用を受けることが新たに明記されました。
これまでは施設を利用できるかどうかが主な論点でしたが、施行後は、派遣先に雇用される通常の労働者だけが割引価格で施設を利用でき、派遣労働者は定価で利用するという扱いも、待遇の性質・目的や職務内容などを踏まえて、不合理と判断される可能性があります。
労使協定方式を採用している場合も、この点は対象外にならないため注意が必要です。
自社の福利厚生を点検する4つのステップ
自社の福利厚生に不合理な差がないかを正しく整理するには、順序とチェック項目をルール化し、遵守を徹底することが効果的です。ここでは、社員タイプの分類から是正・説明準備までの4つのステップを解説します。
- ステップ1|対象区分の確認:非正規社員が均等待遇・均衡待遇のどちらの対象か確認します。正社員と職務内容や配置変更の範囲が同一と見込まれる場合は均等待遇の対象となり、差そのものを設けることができません。
- ステップ2|現状の洗い出し:福利厚生の各項目について、正社員との差の有無と運用基準を洗い出します。食堂の利用可否、慶弔休暇の付与状況、住宅手当や社宅利用の要件などを項目ごとに一覧化しておくと、後続の検討がスムーズです。
- ステップ3|合理性の検証:均等待遇の対象者は差があれば速やかに是正し、均衡待遇の対象者については職務内容・配置変更の範囲・その他の事情という3要素に基づいて合理性を検証します。
- ステップ4|是正方針の決定と社内展開:検証結果を踏まえた是正方針を決定し、社内に展開します。就業規則や労働条件通知書などの文書にも忘れずに反映しましょう。
なお、2026年10月の改正では、待遇の見直しは水準を引き下げる形ではなく、引き上げる形で行うことが原則とされています。
参考:厚生労働省|不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル
説明を求められたときに備える「理由の文書化」
2026年10月の改正では、待遇差にまつわる説明義務も定められています。これにともない、改正前後は、非正規社員から待遇差について説明を求められる機会が増えることが予想されます。ここでは、2026年10月から強化される説明義務の具体的な内容と、実務上どのように備えておくべきかについて解説します。
2026年10月から強化される説明義務
2026年10月の改正では、雇い入れ時に明示すべき労働条件の項目に、「待遇差の内容や理由について説明を求めることができる旨」が追加されます。
これにより、企業は雇用契約の締結時点で、この権利について書面等で明示することが義務づけられます。明示を怠った場合、行政指導の対象となり、それでも改善されなければ、10万円以下の過料が科される可能性があります。
厚生労働省の調査によれば、非正規雇用労働者のうち92.0%が、これまで正社員との待遇差について説明を求めたことがないと回答しており、制度の存在自体が十分に知られていない実態がうかがえます。今回の改正は、この認知不足を補う狙いもあると考えられます。
参考:労働政策研究・研修機構(JILPT)|調査シリーズNo.252「「同一労働同一賃金の対応状況等に関する調査」(労働者Webアンケート調査)結果」
「正社員だから」は通用しない、合理的な説明の考え方
2026年10月の改正により、待遇差の説明を求められた際、「正社員の採用・定着のため」といった主観的な理由だけでは、合理的な説明として認められない可能性が明確化されました。
求められるのは、職務内容や配置変更の範囲といった客観的な事情に基づいた説明です。たとえば住宅手当であれば、「転勤の有無」という支給要件と、実際の転勤実態が一致しているかどうかを軸に説明する必要があります。
説明を求められた際にも慌てず、一貫性のある回答ができるよう、あらかじめ各福利厚生項目の支給要件とその趣旨を文書化しておくことが望まれます。
福利厚生の不合理な差を解消する方法
福利厚生に不合理な差がある場合、その是正は法律上の義務であり、企業が任意で対応を選べるものではありません。ただし、どのような方法で是正するかは企業の裁量に委ねられています。本章では、代表的な2つの是正方法を紹介します。
既存制度を一律に適用する
既存の福利厚生に不合理な差がある場合、その是正方法としてまず挙げられるのが、食堂の利用条件や慶弔休暇、手当といった既存の制度を、非正規社員にも一律で適用することです。
対象範囲を広げる形で一律適用にすることにより、不合理な差は自然と解消されます。制度としてはシンプルですが、同時に就業規則の改定や労働者代表からの意見聴取といった手続きが必要になります。また、対象人数の増加に伴い、人件費の総額が想定より大きく膨らむ可能性もあるため、事前の試算が欠かせません。
既存の制度をベースにできるという導入のしやすさがある一方で、制度設計の自由度は低く、柔軟な運用がしづらいという側面もあります。
なお、一律適用の際は、正社員の待遇を引き下げる形での解消は避ける必要があります。2026年10月の改正でも、非正規社員側の待遇改善による解消が求められる旨が明確化されており、合意のない引き下げは法的トラブルにつながるおそれがあります。
カフェテリアプランへ切り替える
不合理な差を是正する方法として、選択型福利厚生(カフェテリアプラン)への切り替えも有効です。
カフェテリアプランは、すべての従業員に同一のポイントを付与し、従業員が自分に合ったメニューを選べる福利厚生の仕組みで、雇用形態による差が構造的に生じにくくなるメリットがあります。
ただし、制度設計やシステム構築には相応のコストと期間が必要となるため、自社だけで一から構築するのは容易ではありません。導入にあたっては、外部の専門サービスの活用を検討するのが一般的です。
すべての従業員に公平な福利厚生としての「食事補助」
社宅や家族手当などの福利厚生は、転勤の有無や扶養家族の有無など、支給要件に応じた差が制度上組み込まれており、公平な設計には個別の検討が必要です。一方、食事は雇用形態や職務内容にかかわらず誰にでも発生するニーズであり、区別すべき合理的な理由が生じにくい、数少ない福利厚生のひとつです。ここでは、食事補助の種類とメリット、おすすめのサービスについて解説します。
食事補助はどう提供する?4つの種類と特徴
企業が従業員の食事環境を整備するための施策は、大きく次の4つの形態に分類されます。
- 【提供型】社員食堂(自社調理):自社内に専用の厨房を設け、調理員がその場で調理して提供する
- 【設置型】オフィスコンビニ・社内販売:専用冷蔵庫などを置き、惣菜や軽食などを提供する
- 【宅配型】お弁当デリバリー・ケータリング:従業員が注文したお弁当を配達してもらい提供する
- 【代行型】加盟店で使える食事補助(チケット・カード・アプリ決済):指定の支払い方法により、加盟店舗での飲食や買い物を割安で提供する
提供型はできたての温かい食事を提供できるメリットがありますが、調理設備や食事スペースの設置、調理員の雇用など、コストも大きくなりがちです。
また、提供型・設置型・宅配型は、出張や出向、リモートワークの従業員には対応できません。導入にあたっては、自社の予算や特性を踏まえたサービスを提供することが求められます。
関連記事:2026年度版おすすめの食事補助サービス25選!食事補助制度の注意点もチェック
4000社が導入する食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」
エデンレッドジャパンが提供する「チケットレストラン」は、全国25万店舗以上の加盟店での食事を半額で購入できる代行型食事補助の福利厚生サービスです。
加盟店のジャンルは、コンビニ・ファミレス・カフェ・三大牛丼チェーンなど幅広く、使用する人の年代や好みを問いません。勤務時間中にとる食事の購入であれば利用する時間や場所の制限もないため、内勤・外勤・リモートワーク・夜勤者など、すべての従業員が公平に利用できる点も魅力です。
食事補助として日本で約40年、世界6,000万人に利用されてきた実績と安心のサポート体制が高く評価され、すでに 4000社以上が導入する人気サービスとなっています。
関連ページ:食事補助を福利厚生で導入するならチケットレストラン
2026年4月|非課税限度額の上限が3,500円→7,500円に
2026年4月1日、食事の現物支給に関する所得税の非課税限度額が、月額3,500円から7,500円へ引き上げられました。これは1984年以来、42年ぶりの改正です。あわせて、深夜勤務者への夜食代についても、非課税上限が1食300円から650円へ拡大されています。
非課税枠の拡大によって、従業員1人あたり年間最大9万円の食事補助が非課税対象となりました。食事補助の導入を検討する企業にとって強力な追い風となっています。
参考:国税庁|食事の現物支給に係る所得税の非課税限度額の引上げについて
関連記事:【税理士監修】食事補助の非課税上限が7500円へ!給与にしないための非課税の条件を解説
【Q&A】同一労働同一賃金の福利厚生にまつわるよくある質問
同一労働同一賃金と福利厚生に関して、多く寄せられる質問をQ&A形式で紹介します。
Q. 福利厚生に差があること自体は違法ですか?
【A. 違法ではありませんが、不合理な差は禁止されています】
同一労働同一賃金は、正社員と非正規社員の待遇に差があること自体を禁止するものではありません。禁止されているのは「不合理な差」です。職務内容や配置変更の範囲などに応じた合理的な差は認められます。まずは自社の福利厚生に差がある場合、その理由を客観的に説明できるかを確認することが重要です。
Q. パート・アルバイトにも食事補助は必要ですか?
【A. 正社員と職務内容が同一かどうかで判断が必要です】
パート・アルバイトへの食事補助の要否は、雇用形態ではなく、正社員との職務内容や配置変更の範囲、待遇の性質・目的などを踏まえて判断します。均等待遇の対象であれば同一の提供が必要であり、均衡待遇の対象であっても、合理的な理由なく除外することは避けるべきです。
Q. 派遣社員の福利厚生も見直しが必要ですか?
【A. 待遇決定方式によって対応が異なります】
派遣社員の福利厚生は、「派遣先均等・均衡方式」か「労使協定方式」かによって対応が異なります。前者では派遣先の福利厚生施設なども対象になり、後者では派遣元が定めた基準が適用されます。2026年10月の改正では、労使協定方式における水準確保の考え方がより具体化されました。
Q. カフェテリアプランと食事補助、どちらを導入すべきですか?
【A. 自社の規模や導入スピードに応じて検討することをおすすめします】
カフェテリアプランは公平性を高めやすい一方、制度設計に時間とコストがかかります。食事補助は同一条件で提供しやすく、比較的短期間で導入できる点が特徴です。まず着手しやすいのは食事補助ですが、両者を組み合わせる選択肢も含めて検討することをおすすめします。
同一労働同一賃金への対応は、福利厚生の見直しから
同一労働同一賃金の対象となるのは、基本給や賞与などの賃金だけではありません。福利厚生も対象となり、正社員と非正規社員の間に不合理な待遇差を設けないことが求められます。
2026年10月にはガイドラインの改正も予定されており、この機会に自社の制度を点検しておくことが大切です。
福利厚生の見直しは、法令対応にとどまらず、人材の確保・定着にもつながります。なかでも食事補助は、幅広い従業員が利用しやすいうえ、非課税上限額の引き上げを受けて注目度も高まっています。「チケットレストラン」のようなサービスを活用し、雇用形態を問わず利用できる公平な制度づくりを進めてみてはいかがでしょうか。
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エデンレッドジャパンブログ編集部
福利厚生に関する情報を日々、ウォッチしながらお役に立ちそうなトピックで記事を制作しています。各メンバーの持ち寄ったトピックに対する思い入れが強く、編集会議が紛糾することも・・・今日も明日も書き続けます!
