新卒初任給の平均額は2023年ごろから急激に上がり始めています。学歴ごとの平均額や、過去5年間の初任給の推移を確認した上で、引き上げによってどのような影響が見られたのかを見ていきましょう。
「これ以上の初任給引き上げは難しい」という企業の採用に役立つ「第3の賃上げ」についても解説します。
新卒初任給の平均額
新卒初任給の平均額を厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」をもとに見ていきましょう。2024年の新規学卒者の平均賃金と、2020~2024年の新規学卒者の平均賃金の推移を紹介します。
院卒・大卒・高卒など学歴別に見る初任給の平均額
「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、新規学卒者の2024年の平均賃金は、学歴別に以下の通りです。学歴を問わず、2023年よりも平均賃金が上がっているのが分かります。
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学歴 |
新規学卒者の平均賃金 |
対2023年増減率 |
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大学院 |
28万7,400円 |
4.1% |
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大学 |
24万8,300円 |
4.6% |
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高専・短大 |
22万3,900円 |
4.3% |
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専門学校 |
22万2,800円 |
3.9% |
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高校 |
19万7,500円 |
5.7% |
参考:厚生労働省|令和6年賃金構造基本統計調査|令和6年賃金構造基本統計調査 結果の概況
初任給平均額の推移
「賃金構造基本統計調査」で2020~2024年の新規学卒者の平均賃金の推移を見ていくと、2023年から平均賃金が大きく上がり始めています。
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年 |
大学院 |
大学 |
高専・短大 |
専門学校 |
高校 |
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2020年 |
25万5,600円 |
22万6,000円 |
20万2,200円 |
20万8,000円 |
17万7,700円 |
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2021年 |
25万3,500円 |
22万5,400円 |
19万9,800円 |
20万6,900円 |
17万9,700円 |
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2022年 |
26万7,900円 |
22万8,500円 |
20万2,300円 |
21万2,600円 |
18万1,200円 |
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2023年 |
27万6,000円 |
23万7,300円 |
21万4,600円 |
21万4,500円 |
18万6,800円 |
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2024年 |
28万7,400円 |
24万8,300円 |
22万3,900円 |
22万2,800円 |
19万7,500円 |
初任給を引き上げた企業は88.8%
マイナビ キャリアリサーチLabの「2026年卒企業新卒採用活動調査」によると、2026年卒の新卒採用では、88.8%の企業が初任給を引き上げています。
上場企業と非上場企業ごとに初任給を増額した割合を見ると、どちらも高い水準です。
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上場/非上場 |
初任給を引き上げた割合 |
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全体 |
88.8% |
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上場 |
95.4% |
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非上場 |
88.3% |
また「3年以上連続で初任給を引き上げた」と回答している企業が、上場・非上場を問わず最多となっています。
「賃金構造基本統計調査」で、新規学卒者の平均賃金が2023年から大きく上がり始めているのと、同様の傾向が見られる結果です。
関連記事:【社労士監修】初任給引き上げの理由は?既存社員との逆転減少による影響を解説
参考:マイナビ キャリアリサーチLab|2026年卒企業新卒採用活動調査
初任給の引き上げの影響
マイナビ キャリアリサーチLabの「2026年卒企業新卒採用活動調査」では、初任給の引き上げによる影響についても調査しています。
その結果によると、採用にプラスに働くケースがある一方、マイナスの影響があることも分かりました。具体的な影響について見ていきましょう。
参考:マイナビ キャリアリサーチLab|2026年卒企業新卒採用活動調査
効果的なアピールにより採用につながった
企業が新卒採用を行うときには、就職活動に取り組む学生に自社の魅力を伝えなければいけません。
2026年3月卒の学生を対象に学情が行った初任給についての調査を見ると、86.3%が「初任給が高い企業は志望度が上がる」と回答していますし、81.9%が「就職において初任給を重視している」という結果でした。
「2026年卒企業新卒採用活動調査」でも、21.1%が応募者の増加や内定辞退の減少など、初任給の引き上げによる成果を実感しています。
関連記事:中途採用に強い企業の人材募集手法を知りたい!採用手法とプロセス
参考:学情|初任給が高い企業は「志望度が上がる」の回答した 26 卒が 9 割に迫る。「初任給が高いと、賞与や昇給の幅も大きいのではと期待が持てる」の声
待遇で他社と差別化ができた
「2026年卒企業新卒採用活動調査」によると、初任給の引き上げで他社との待遇差を縮めたり、差をつけたりできたのは36.8%です。
自社よりも待遇の良い企業があれば、就活生はそちらに集まりやすくなります。より待遇の良い企業から内定が出た段階で、内定辞退をする就活生もいるかもしれません。
初任給の引き上げは、他社との待遇で差別化する場合に有効なポイントです。
従業員のモチベーションは賃上げのバランス次第
スムーズな新卒採用を目的として初任給を引き上げると、今いる従業員より新卒入社の従業員の給与が高くなる逆転現象が起こる可能性があります。
給与逆転により今いる従業員の給与が相対的に低くなれば、モチベーションを維持するのは難しいでしょう。「2026年卒企業新卒採用活動調査」でも4.5%の企業で、今いる従業員のモチベーションが低下したと回答しています。
一方で24.5%の企業では、今いる従業員のモチベーションが上がっています。初任給を引き上げつつ、今いる従業員のモチベーションを上げていくには、賃上げや待遇のバランスを考慮していかなければいけません。
関連記事:【社労士監修】初任給の引き上げで発生する「給与の逆転現象」とは?人材確保と社内バランスの両立策
人件費の負担が増えた
「2026年卒企業新卒採用活動調査」では、初任給の引き上げにより、人件費の負担が増えて経営を圧迫しているという企業が6.2%ありました。
初任給引き上げとのバランスを取るために、今いる従業員の賃上げも進めれば、さらに人件費は増えていきます。
関連記事:ベースアップと賃上げの違いとは?人件費戦略の基本をわかりやすく解説
初任給を引き上げる理由
マイナビ キャリアリサーチLabの「2026年卒 企業新卒採用予定調査」によると、多くの企業で初任給の引き上げを行っている理由は以下の通りです。
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初任給の引き上げの理由 |
回答した割合 |
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求職者へのアピールのため |
57.1% |
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他企業が引き上げをしているため |
51.2% |
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既存社員のモチベーションアップのため |
46.0% |
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定着率を高める・離職を防ぐため |
45.9% |
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給与制度の見直しで全社員の給与を引き上げたため |
34.6% |
「求職者へのアピールのため」「定着率を高める・離職を防ぐため」などの理由で、初任給を引き上げる企業が多いのは、人材不足によるものです。
マイナビ キャリアリサーチLabの「2025年卒企業新卒内定状況調査」によると、2026年卒の採用は「厳しくなる」と回答した企業の割合が81.6%で、新卒採用は厳しさを増していくことが予想されています。
少子高齢化の進行により生産年齢人口の減少が続いている中、業種を問わず人材不足は進行中です。このような中、よりスムーズな採用を目的として、初任給を引き上げる企業が増えているといえます。
関連記事:【2025年最新】人手不足の日本の現状と中小企業の生き残り戦略
参考:
マイナビ キャリアリサーチLab|2026年卒 企業新卒採用予定調
マイナビ キャリアリサーチLab|2025年卒企業新卒内定状況調査
物価上昇から初任給を引き上げる企業も
物価上昇が続いている中、採用した人材が生活を問題なく維持できるよう、初任給を引き上げる企業も増えています。ものの値段が上がっているにもかかわらず初任給を引き上げなければ、従業員が給与のみで生活できなくなってしまうためです。
関連記事:日本の物価高騰いつまで?なぜ?原因と2024年以降の経済展望
これ以上の初任給引き上げは難しいという企業も
「2026年卒企業新卒採用活動調査」によると、これ以上の初任給の引き上げは難しい段階になっているという企業が15.0%でした。一部には、初任給の引き上げができない企業や、引き上げた結果経営を圧迫している企業もあります。
経営に余力がない中でも、人材確保に向けて初任給の引き上げや賃上げに取り組む企業が多いことは、中小企業庁の「2024年版 中小企業白書」や、エデンレッドジャパンの「賃上げ疲れ実態調査」にも現れている傾向です。
参考:マイナビ キャリアリサーチLab|2026年卒企業新卒採用活動調査
中小企業は防衛的賃上げの割合が高い
防衛的賃上げとは、業績が改善していないにもかかわらず実施する賃上げのことです。中小企業庁の「2024年版 中小企業白書」によると、中小企業の賃上げ実施予定は「業績の改善が見られないが賃上げを実施予定」が最も多い36.9%となっています。
また防衛的賃上げを行う理由は「人材の確保・採用」が最も多く76.7%、「物価上昇への対応」が次いで61.0%です。
関連記事:防衛的賃上げの実態と中小企業の課題|人材確保のための厳しい選択
参考:中小企業庁|2024年版 中小企業白書|第1部 令和5年度(2023年度)の中小企業の動向
賃上げ疲れを感じている企業は77.0%
エデンレッドジャパンの実施した「賃上げ疲れ実態調査2025」によると、77.0%の企業が賃上げによる企業経営への負担を感じています。ただしこのように賃上げ疲れを感じている企業であっても、79.8%が初任給を引き上げたと回答しています。
同調査でも、初任給引き上げの理由は「応募数の確保・辞退防止など」が最も多く79.6%でした。
関連記事:
【2025年最新】賃上げ疲れとは?データで読み解く実態と対策
賃上げ疲れ実態調査2025~7割以上の企業が春闘による“賃上げ圧力”を実感~
「第3の賃上げ」による待遇改善も検討を
経営状況が改善しているわけではないけれど、人材確保や物価上昇への対応を目的として、初任給を引き上げている企業は少なくありません。経営状況が改善しているわけではないため、初任給の引き上げをこれ以上実施するのが難しい企業もあるでしょう。
このような状況で役立つのが、実質的な手取りアップがかなう福利厚生や、暮らしの負担を軽減する福利厚生の導入による賃上げ「第3の賃上げ」です。
関連記事:“福利厚生”で実質手取りアップと高いエンゲージメントの実現を「#第3の賃上げアクション」プロジェクト
福利厚生に安定性を感じる学生は57.3%
マイナビ キャリアリサーチLabの「2026年卒 大学生キャリア意向調査3月<就活生のワークライフバランス意識>」によると、学生の57.3%は「福利厚生が充実している」と企業に安定性を感じると回答しました。
「第3の賃上げ」で福利厚生を充実させることも、初任給の引き上げと同じように自社の魅力を高めることにつながるといえます。
参考:マイナビ キャリアリサーチLab|2026年卒 大学生キャリア意向調査3月<就活生のワークライフバランス意識>
福利厚生はモチベーションやエンゲージメントにもプラス
福利厚生の充実度アップは、従業員のモチベーションやエンゲージメントの向上にも役立ちます。
スターツコーポレートサービスの「自社の福利厚生制度に対する意識調査」によると、福利厚生が魅力的だと働くモチベーションが上がると回答した人は95.2%でした。加えて福利厚生への満足度が高いほど、モチベーションの高い人の割合が高いという結果も出ています。
関連記事:従業員満足度を高める福利厚生!2つの最新アンケート結果と効果的な戦略
参考:スターツコーポレートサービス|自社の福利厚生制度に対する意識調査
「第3の賃上げ」には健康経営にもつながる「チケットレストラン」がおすすめ
「第3の賃上げ」による待遇改善を実施するには、エデンレッドジャパンの提供している食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」がおすすめです。
全国にある25万店舗以上の加盟店で食事を購入できる福利厚生サービスは、従業員がバランスの良い食事をとりやすくなるため、健康経営にもつながります。実際に導入して、人材確保につながった事例もある福利厚生サービスです。
例えば株式会社ほねごりでは、福利厚生の拡充の一環として「チケットレストラン」を導入したり、その他積極的な採用施策を講じた結果、新卒採用者数が倍増しました。
また共進運輸株式会社では、ドライバーの働き方に合う福利厚生として「チケットレストラン」を導入した結果、従業員が「共進運輸で長く勤めたい」と思ってもらえる要素になっているようです。
「チケットレストラン」の詳細については、こちらの「資料請求」からお問い合わせください。
新卒初任給の引き上げが難しいときには福利厚生の活用も
新卒初任給の引き上げを行う企業は88.8%です。ただし中には、業績が改善していないにもかかわらず、人材確保や物価上昇への対応を目的に初任給の引き上げを行っている企業もあります。
加えて今いる従業員との給与逆転が起こらないよう調整を行うことで、経営状況が圧迫されているケースも考えられます。
初任給の引き上げが難しいなら、実質的な手取りアップや生活支援を実現する福利厚生の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
初任給引き上げの代替には、エデンレッドジャパンの提供している食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」がおすすめです。
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エデンレッドジャパンブログ編集部
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