【結論】扶養控除は廃止されない。令和8年度改正で「要件緩和」へ
令和8年度税制改正大綱(翌年度以降の税制改正の方向性を示す政府方針)では、扶養控除を廃止する内容は示されていません。16歳未満の扶養控除は平成23年分から廃止されていますが、現在の16歳以上の扶養控除は存続しています。
大綱では、扶養親族の所得要件を現行の58万円から62万円(給与収入換算で約131万円)へ引き上げる方針や、基礎控除・給与所得控除のダブル引き上げによる課税最低限の緩和が打ち出されました。方向性は「廃止」ではなく「要件緩和」です。
これらは令和8年分以降の税制として適用が予定されています。企業の実務としては、制度廃止への対応ではなく、「扶養判定基準の変更」や「社会保険の壁とのズレ」を前提とした実務の見直しが重要です。
参考:財務省|令和8年度税制改正の大綱
参考:国税庁|No.1180 扶養控除
関連記事:【税理士監修】2026年度「税制改正大綱」を完全解説!何が変わる?押さえるべき15のポイント
扶養控除とは?「廃止」と言われるのはなぜ?
令和8年度においても、扶養控除そのものが廃止される方針は示されていません。では、なぜ「廃止」という言葉が広がっているのでしょうか。本制度の基本とあわせて整理します。
扶養控除の基本
扶養控除とは、生計を一にする配偶者以外の親族を扶養している場合に、納税者本人の所得から一定額を差し引くことで、所得税や住民税の負担を軽減する制度です。
対象はその年の12月31日時点で16歳以上の扶養親族で、一般扶養親族は38万円、特定扶養親族(19歳以上23歳未満)は63万円など、年齢区分ごとに控除額が定められています。適用には合計所得金額の要件があり、給与収入のみの場合の判定基準は給与所得控除を差し引いた後の所得です。
令和8年度税制改正大綱によると、令和8年分からこの所得要件が従来の58万円から62万円以下へと引き上げられる方針です。また、給与所得控除の最低保障額も69万円へと引き上げられるため、給与収入のみであれば年収約131万円以下(所得62万円+控除69万円)が扶養の基準となります。
企業の実務では、年末調整において「扶養控除等(異動)申告書」に基づき要件を確認し、源泉徴収額へ反映します。所得要件や課税最低限の見直しは都度行われていますが、現時点(2026年2月)で扶養控除そのものを廃止する方針は示されていません。
理由① 16歳未満の扶養控除が2011年に廃止されたから
「扶養控除がなくなる」との誤解が広がる理由のひとつに、平成23年分(2011年分)より16歳未満の扶養控除が廃止された事実があります。
これは、子ども手当(現在の児童手当)の創設に伴い、税制上の控除による支援から現金給付による支援へ制度を転換したためです。その結果、16歳未満の子どもは扶養控除の対象外となりました。一方で、16歳以上の扶養控除は現在も存続しており、一般扶養親族38万円などの控除額も維持されています。
過去に「一部廃止」があったという記憶があるため、改正のたびに全面廃止と混同されやすい構造があるのです。
理由② 年収の壁の見直し議論が「廃止」と混同されているから
扶養控除の廃止がささやかれるもうひとつの要因は、「103万円の壁」や「178万円の壁」といった年収基準の見直し議論が、制度廃止と混同されていることです。
令和8年度税制改正大綱では、扶養親族の合計所得金額要件を58万円から62万円へ引き上げる方針や、基礎控除・給与所得控除の見直しによる課税最低限の引き上げが明記されました。これは扶養に入れる範囲を広げる方向の要件緩和であり、扶養控除の廃止ではなく、適用範囲の見直しという位置づけです。
なお、一般扶養親族38万円などの控除額そのものを引き下げる内容は示されていません。
関連記事:【税理士監修】年収の壁とは?2025年の最新動向と106万・160万の壁などをチェック
所得税・住民税はいつから変わる?令和8年以降の適用時期を整理
所得税と住民税とでは、税制改正の適用時期が異なります。ここでは、令和8年度税制改正大綱に基づき、実務スケジュールの観点から整理します。
所得税は令和8年分から要件緩和が適用予定
令和8年度税制改正大綱では、扶養親族の合計所得金額要件を58万円から62万円へ引き上げる方針が示されています。あわせて、基礎控除は58万円から62万円へ、給与所得控除の最低保障額は65万円から69万円へ引き上げられる方針です。
これにより、年収131万円(62万円+69万円)まで所得税がかからない水準となります。適用は令和8年分の所得税からとされており、実務上は令和8年中の給与について年末調整で反映される想定です。
ただし、大綱はあくまでも方針であり、最終的には例年3月頃の関連法案の成立を確認したうえで対応する必要があります。
「103万円の壁」令和8・9年は「178万円の壁」へ
従来、所得税が発生しない年収水準は、基礎控除(48万円)と給与所得控除(55万円)の合計額を基準とする「103万円の壁」として広く知られてきました。その後、控除額の見直しにより水準は段階的に引き上げられています。
令和8年度税制改正大綱では、基礎控除を62万円、給与所得控除の最低保障額を69万円へ引き上げる方針が示されており、通常の計算では年収131万円まで所得税がかからない水準となります。
さらに、令和8年分および令和9年分については、物価高騰への対応として、基礎控除に42万円、給与所得控除に5万円を加算する特例が設けられる方針です。これにより、最大で年収178万円まで所得税がかからない仕組みとなります。
ただし、この178万円は納税者本人の合計所得金額が489万円以下であることが条件であり、かつ期間限定の措置です。すべての従業員に一律で適用されるわけではないため、企業側は適用要件を正確に整理したうえで説明する必要があります。
関連記事:【税理士監修】178万の壁とは?社会保険加入との関係やメリット・デメリット
住民税は1年遅れ|令和9年度分から反映
住民税は前年の所得を基準に翌年度課税される仕組みであるため、所得税よりも改正内容の反映が1年遅れます。
令和8年中の所得に対する基礎控除や所得要件の見直しは、原則として令和9年度分の住民税から適用される見込みです。そのため、所得税は令和8年分から新基準、住民税は令和9年度分から新基準という時間差が生じます。
企業には「所得税は下がったのに住民税が変わらない」といった問い合わせが増える可能性を念頭に、源泉徴収と住民税特別徴収の仕組みを説明する準備が求められます。
要注意!税法と社会保険の「壁のズレ」
扶養控除の見直しを検討するうえで重要なのが、税法上の基準と社会保険上の基準が異なる点です。令和8年度の税制改正方針により、税の「壁」は大きく動きますが、社会保険の加入基準(106万・130万)は税制ほど急激には動かず、むしろ「適用拡大」の方向にあります。詳しく見ていきましょう。
106万円・130万円の壁はどうなる?
社会保険の加入基準は、税法上の扶養とは別に定められています。
短時間労働者の健康保険・厚生年金保険の加入に関する基準(いわゆる「106万円の壁」)と、被扶養者認定の基準(いわゆる「130万円の壁」)は、以下の通り役割が異なります。
| 項目 |
106万円の壁 |
130万円の壁 |
| 制度の性格 |
勤め先の社会保険への強制加入 |
家族の扶養(被扶養者)から外れるライン |
| 主な対象 |
特定の条件を満たすパート・アルバイト等 |
家族の扶養に入っているすべての人 |
| 主な要件 |
①週20時間以上 ②月額8.8万円以上 ③2カ月超の雇用見込み ④学生ではない ⑤企業規模51人以上 ※ |
勤務先の条件に関わらず、年収が130万円以上になれば適用 |
| 結果 |
勤務先の社会保険に加入し、保険料を負担 |
扶養を外れ、自身で保険料を負担 |
※企業規模要件は2027年10月から段階的に引き下げられ、最終的に撤廃されるロードマップが示されています
このうち賃金要件は、年金制度改正法に基づき撤廃が進められる方向です。また、現在「従業員数51人以上」とされている企業規模要件も、2027年10月から段階的に引き下げられ、最終的には完全撤廃されるロードマップが示されています。
一方で、誰もが社会保険上の扶養から外れる年収130万円の基準は維持されています。
参考:厚生労働省|社会保険適用拡大 特設サイト|従業員のみなさま|社会保険の加入条件やメリットについて
税金はゼロでも社会保険料で手取りが減る逆転現象も
令和8年度税制改正大綱によると、令和8・9年は特例で最大178万円まで所得税がかからない方針です。しかし、社会保険の基準(106万円や130万円)を超えると、本人が健康保険料や厚生年金保険料を負担することになります。
例えば、年収150万円の場合、所得税は「非課税」となりますが、社会保険料が発生するため、結果として年収129万円(社保扶養内)の時よりも手取り額が大幅に減少するという逆転現象が生じます。
この「税は減るが手取りは増えない」構造は、従業員からの問い合わせや就業調整の判断に直結します。企業としては、税制改正だけでなく社会保険の基準も含めた総合的な説明体制を整えることが重要です。
参考:日本年金機構|国民年金の第3号被保険者制度のご説明
関連記事:【社労士監修】第3号被保険者制度の廃止はされる?いつから?背景、影響、今後の展望
税制が変わる時代「福利厚生の充実」という選択肢
税制や社会保険の基準が頻繁に見直される中、企業には、制度変更に振り回されにくい支援策が求められています。ここでは、従業員の実質的な手取りを支える方法として注目される福利厚生について、おすすめのサービスとともに解説します。
福利厚生が注目度を高める理由
給与として支給する金額は、原則として課税対象です。社会保険への加入が推進される中、実質的な手取りの減少を避けるため、働き控えをする労働者も少なくありません。
その点、一定の基準を満たす福利厚生は、従業員にとっては所得税の非課税枠を活用できるため課税対象になりません。さらに、企業側にとっても福利厚生費として損金算入が可能であるため、同額を給与として支給する場合と比べて法人税負担の軽減にもつながります。
また、充実した福利厚生の提供は、「従業員を大切にする企業」として従業員のエンゲージメントを高め、従業員の離職防止・採用力の強化に寄与します。
このように、従業員側・企業側の双方にメリットが大きい施策として、福利厚生の導入・見直しを進める企業が増えているのです。
関連記事:福利厚生費とは?該当条件や要件、具体例を税理士が丁寧に解説
食事補助の福利厚生「チケットレストラン」で従業員の生活をサポート
数ある福利厚生の中でも、近年特に人気を集めているもののひとつに「食事補助」があります。食事補助の福利厚生は、日々活用できるため利用率も高く、従業員へのアピール度も高いのが魅力です。
例えば、エデンレッドジャパンが運営する「チケットレストラン」は、企業と従業員との折半により、全国25万店舗を超える加盟店での食事を実質半額で利用できるサービスです。
加盟店のジャンルは幅広く、コンビニ・ファミレス・三大牛丼チェーン店・カフェなど、利用する人の年代や嗜好を問いません。また、勤務時間中にとる食事の購入であれば、利用する場所や時間に制限がないのも大きなメリットです。
令和8年度税制改正大綱では、企業が従業員へ提供する食事補助の非課税限度額について、現行の月額3,500円から7,500円へ引き上げる方針が明記されました。この改革を踏まえ、食事補助の福利厚生のニーズは今後さらに高まるものと予想されています。
参考:財務省|令和8年度税制改正の大綱
関連記事:【2026年版】食事補助とは?福利厚生に導入するメリットと支給の流れ
関連記事:【2026年版】食事補助の非課税枠上限が7,500円に引き上げへ!企業に求められる対応は?
関連記事:「チケットレストラン」の仕組みを分かりやすく解説!選ばれる理由も
扶養控除の廃止にまつわるよくある質問
ここでは、扶養控除の廃止にまつわるよくある質問をQ&A形式で紹介します。
Q. 扶養控除は今後なくなりますか?
A. 廃止の方針は示されておらず、むしろ要件緩和の方針です。
令和8年度税制改正大綱では、扶養控除そのものを廃止する内容は示されていません。扶養親族の所得要件を58万円から62万円へ引き上げる方針や、基礎控除・給与所得控除の見直しが明記されています。控除額(一般扶養38万円など)は維持される予定です。
参考:国税庁|No.1180 扶養控除
Q. 令和8年分の年末調整は何を基準に対応すべきですか?
A. 法案成立後の改正内容を基準に対応します。
税制改正大綱は政府の方針であり、実務上の根拠となるのは国会で成立した法律です。例年、税制改正関連法案は翌年3月頃に成立し、その年分の所得税に適用されます。令和8年分の年末調整で改正内容を反映できるかは、法案成立時期と施行規定によるため、国税庁の公表資料を確認したうえで対応しましょう。
Q. 178万円まで働いても問題ありませんか?
A. 税法上は条件付きで可能ですが、社会保険は別基準です。
令和8・9年分は、特例により最大178万円まで所得税がかからない方向ですが、これは納税者本人の合計所得金額が489万円以下であることが条件です。また、社会保険の加入基準(106万円・130万円など)は別制度であり、税がかからなくても保険料負担が生じる場合があります。税と社会保険を分けて判断する必要があります。
扶養控除は廃止ではなく要件緩和へ。企業は制度変更を前提に備える
令和8年度税制改正大綱では、扶養控除は廃止されず、所得要件の引き上げ(58万円→62万円)や基礎控除の見直しによって要件が緩和される方針が示されました。
注目の「178万円の壁」への拡大は、納税者本人の合計所得が489万円以下の場合に限る期間限定の税制措置であり、社会保険の加入基準とは別物です。
そのため企業には、「廃止への対応」ではなく、新基準(年収131万円〜178万円)による正確な扶養判定と、税制・社会保険のズレが招く「手取り逆転現象」の従業員への周知が求められます。
複雑な「壁」に左右されることなく従業員の手取りを安定して守るため、「チケットレストラン」をはじめとする福利厚生を活用し、多角的なサポート体制の構築を目指してはいかがでしょうか。
関連記事:チケットレストランの魅力を徹底解説!ランチ費用の負担軽減◎賃上げ支援も
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