社宅のメリットには、要件を満たせば会社が負担した家賃に所得税がかからない、社会保険料の負担軽減、採用や人材定着にも役立つ、など多数あります。一方、管理の手間や空室リスク、社宅を使えない社員との不公平感、従業員の将来の年金額への影響といったデメリットも。本記事では、2026年10月の改正もふまえ、詳細を解説します。
社宅とは?住宅手当・社員寮との違い
社宅とは、企業が用意した住宅を従業員に貸す制度です。自社で保有する物件を貸す「社有社宅」と、賃貸物件を法人名義で借りて貸す「借り上げ社宅」の2種類があります。
似た制度として「住宅手当」や「社員寮」があり、税金や社会保険の扱いが異なります。違いは次の表のとおりです。
| 社有社宅 | 借り上げ社宅 | 住宅手当 | 社員寮 | |
|---|---|---|---|---|
| 物件 | 会社が所有 | 会社が賃貸契約 | 従業員が自分で契約 | 会社が所有または賃貸契約 |
| 所得税 | 一定額以上の家賃を受け取れば非課税 | 一定額以上の家賃を受け取れば非課税 | 給与として課税 | 一定額以上の家賃を受け取れば非課税 |
| 社会保険 | 本人負担が基準額以上なら報酬に含めない | 本人負担が基準額以上なら報酬に含めない | 報酬に含まれる | 本人負担が基準額以上なら報酬に含めない |
| 物件選び | 会社の規程の範囲内 | 会社の規程の範囲内 | 従業員が自由に選べる | 会社の規程の範囲内 |
参考:国税庁|No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき
関連記事:福利厚生の社宅とは?導入メリットや税務ルール、住宅手当との違いを解説
住宅手当との違いは「住宅を貸すか、現金を払うか」
住宅手当と社宅のもっとも大きな違いは、会社が「現金」を支給するか、「住宅」そのものを貸すかです。
住宅手当は給与と一緒に支払う手当のため、所得税や住民税、社会保険料の計算対象になります。国税庁は、現金で支給する住宅手当や、入居者本人が直接契約している物件の家賃を会社が負担する場合について、社宅の貸与とは認めず給与として課税すると示しています。
一方、会社が契約者となって住宅を貸す社宅は、従業員から一定額以上の家賃を受け取っていれば給与として課税されません。同じ住宅支援でも、支給の形によって税負担が変わります。
関連記事:住宅手当は福利厚生?家賃補助を会社が導入するメリット・相場・課税を解説
社員寮との違いは「呼び方と住まいの形」
社員寮と社宅の違いは、主に呼び方と住まいの形にあります。
何を基準に両者を呼び分けるかは企業によって異なり、共通のルールはありません。単身者向けか家族向けか、浴室や食堂などの共用設備があるかどうかなど、企業ごとの慣例があります。
一方、税金のルールは共通です。国税庁は「社宅や寮など」をまとめて扱っており、従業員から受け取る家賃の基準となる「賃貸料相当額」や、その50%以上を受け取れば差額に課税されないというルールは、どちらにも当てはまります。
企業にとってのメリット・デメリット
社宅は、会社と従業員の双方にメリットがある制度です。ただし、運用には手間やコストがかかるため、導入すれば必ず得をするわけではありません。ここでは企業側のメリットとデメリットを2つずつ解説します。
企業のメリット
企業が社宅を導入する主なメリットは、次の2つです。
- 社会保険料の会社負担を抑え、福利厚生費を効率よく使える
- 採用と人材定着の強化につながる
社会保険料の面で住宅手当より有利になるだけでなく、人材の確保にも役立ちます。詳しく見ていきましょう。
社会保険料の会社負担を抑え、福利厚生費を効率よく使える
企業にとってのメリットとして、まず挙げられるのが、社会保険料の会社負担を抑えられることです。
住宅手当は報酬に含まれるため、支給額に応じて会社の保険料も増えます。しかし社宅なら、本人負担が「現物給与の価額」以上であれば住宅分は報酬に含まれません。
さらに、従業員から「賃貸料相当額」の50%以上の家賃を受け取れば、会社負担分は給与として課税されません。同じ費用でも従業員に届く価値が大きくなり、福利厚生費を効率よく使えます。
なお、賃貸料相当額は次の3つの合計(月額)で、借り上げ社宅でも貸主に課税標準額を確認して計算します。
- 建物の固定資産税の課税標準額×0.2%
- 12円×(総床面積÷3.3㎡)
- 敷地の固定資産税の課税標準額×0.22%
参考:日本年金機構|全国現物給与価額一覧表(厚生労働大臣が定める現物給与の価額)
採用と人材定着の強化につながる
社宅は、採用力の強化と人材の定着にもつながる施策です。
家計に占める割合が大きい住宅費を補助できることは、従業員にとって大きなメリットです。また、入社や転勤のたびに発生する住まい探しや初期費用の負担を会社が引き受けられる点は、従業員はもちろん、求職者にとって分かりやすい魅力となります。
厚生労働省の調査では、住宅手当などを支給している企業は全企業の41.7%で、企業規模が大きいほど割合が高くなっています。1人あたりの平均支給額は月18,700円です。採用で競合する企業がどのような住宅支援を用意しているかを確認し、自社の制度を見直すことが大切です。
参考:厚生労働省|令和7(2025)年就労条件総合調査 結果の概況
企業のデメリット
企業が社宅を提供するにあたっては、次の2つのデメリットがあります。導入前に負担の大きさを見積もり、対策を検討しておきましょう。
- 管理の手間とコスト変動のリスクがある
- 社宅を使えない従業員との間に不公平感が生まれやすい
管理の手間とコスト変動のリスクがある
社宅を運用すると、契約から退去まで会社が担う業務が増えます。
具体的に挙げると、入居前は物件探しと法人契約・賃貸料相当額の計算、入居中は家賃の支払いや給与からの控除・契約更新、退去時は解約手続き、敷金・原状回復費用の精算が必要です。
また、コストが変動するリスクも無視できません。借り上げ社宅は、空室になっても契約期間中は家賃がかかり、中途解約の条件によっては違約金が発生します。社有社宅の場合には、入居者が減っても固定資産税や修繕費がかかり続けます。
管理の負担を減らしたい場合は、物件探しから退去までの業務を外部に委託できる社宅代行サービスの活用も有効な選択肢です。
関連記事:【税理士監修】借り上げ社宅と家賃補助の違い|税負担・運用コスト・注意点を解説
社宅を使えない従業員との間に不公平感が生まれやすい
社宅の恩恵を受けられるのは、住宅を必要とする従業員に限られます。持ち家に住む従業員や実家から通う従業員、転勤のない従業員は対象外になりやすく、同じ会社で働いていても受け取る支援に差が生まれます。
こうした差が不公平感につながらないよう、企業は対象者や条件を明確にして社内に周知しておくことが大切です。
特に、正社員とパートタイム・有期雇用の従業員とで扱いを分ける場合は注意しましょう。パートタイム・有期雇用労働法第8条は、不合理な待遇差を禁じています。待遇差を設けるなら、仕事の内容や配置転換の範囲など、客観的な実態にもとづいて説明できるようにしておきます。
参考:e-Gov 法令検索|短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成五年法律第七十六号)
参考:厚生労働省|パートタイム・有期雇用労働法とは
従業員にとってのメリット・デメリット
社宅は、従業員にとってもメリットの大きい制度です。一方で、住まいの自由度や将来の給付にネガティブな影響を与える側面もあります。ここでは、従業員側のメリットとデメリットを整理し、制度設計で配慮したい点もあわせて解説します。
従業員のメリット
従業員にとっての主なメリットは、次の2つです。
- 所得税・住民税・社会保険料が減り、手取りが増える
- 初期費用と住まい探しの負担が軽くなる
毎月の手取りが増えるだけでなく、入社や転勤で住まいを移すときの負担も軽くなります。
所得税・住民税・社会保険料が減り、手取りが増える
社宅に住むと、同じ額を住宅手当で受け取る場合よりも手取りが増えます。
住宅手当は給与の一部として支給されるため、所得税・住民税がかかり、社会保険料の計算にも含まれます。
一方、社宅では要件を満たせば、会社が負担した家賃分は給与として扱われません。
住宅手当が支給されず、自己負担分も給与から差し引かれるため、給与明細だけを見ると少なく感じることもあります。それでも、税金・社会保険料と家賃を払った後に手元に残るお金で比べれば、社宅のほうが多くなるのです。
ただし、社会保険料が下がることは、後述する将来の給付への影響と表裏の関係にあるため注意が必要です。
初期費用と住まい探しの負担が軽くなる
社宅は企業が物件を契約するため、従業員は住まいを用意する負担を大きく減らせます。個人で賃貸物件を借りる場合、敷金や礼金、仲介手数料などのまとまった初期費用が必要です。しかし社宅なら、こうした費用を会社が負担する形をとれます。
また、物件探しや契約手続き、契約の更新も会社が担えば、従業員は新しい仕事に集中しやすくなります。
負担軽減の効果が特に大きいのは、入社直後で手持ちの資金が少ない新卒従業員や、短い期間で引っ越しが必要になる転勤者です。ただし、初期費用や更新料をどこまで会社が負担するかは企業ごとに異なるため、社宅規程で明確に定めておきましょう。
関連記事:【社労士監修】社宅制度で人材確保と定着率向上を実現!福利厚生戦略の新トレンド
従業員のデメリット
従業員側のデメリットは、次の2つです。
- 住まいを自由に選べず、退職時には退去が必要になる
- 標準報酬月額が下がり、将来の年金や傷病手当金が減る場合がある
住まいを自由に選べず、退職時には退去が必要になる
社宅は会社が契約者になるため、従業員が住まいを自由に選べない場合があります。
家賃の上限やエリア、間取りなどの条件は社宅規程で決まり、希望どおりの物件に住めるとは限りません。家族や同居人の範囲、ペットの可否なども規程や物件の条件に左右されます。
また、退職すると社宅を出る必要があるため、次の住まいが決まる前に退去期限が来ると、従業員の負担は大きくなります。
こうした不満を防ぐためにも、退職時に退去までの猶予期間を設ける、結婚や出産で家族が増えたときの住み替えのルールを決めておくなど、規程の段階で配慮しておきましょう。
標準報酬月額が下がり、将来の年金や傷病手当金が減る場合がある
社宅で社会保険料が下がると、標準報酬月額をもとに計算する給付も少なくなる場合があります。代表的なものは次の2つです。
- 老齢厚生年金(報酬比例部分):平均標準報酬額(賞与を含む)×5.481/1000×2003年4月以降の加入月数
- 傷病手当金:支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均÷30×2/3(1日あたり)
いずれも、同じ額を住宅手当で受け取る場合と比べた影響です。目先の手取りが増える一方、将来の年金や病気で休んだときの給付が減る可能性がある点は、従業員に伝えておく必要があります。
制度を導入する際は、メリットとあわせて説明することが大切です。
参考:日本年金機構|は行 報酬比例部分
参考:協会けんぽ|傷病手当金|給付と手続き
【2026年10月】社宅の現物給与価額の算定方法が改正
2026年10月1日から、社会保険で社宅を評価する方法が変わりました。住宅の現物給与価額の単価が「1畳あたり」から「床面積1㎡あたり」に改められ、対象の面積も変わっています。
改正前は居間や寝室など居住用の部屋だけが対象でしたが、改正後は玄関や台所、浴室なども含めた総面積が対象です。たとえば東京都の単価は1㎡あたり月1,330円のため、総面積30㎡の社宅なら価額は39,900円です。本人負担が月3万円であれば、差額の9,900円が報酬に加算されます。
なお、価額は社宅の所在地ではなく勤務地の都道府県のものを使います。既存の社宅も含め、自己負担額が新しい価額を下回っていないか確認しておきましょう。
| 2026年9月30日まで | 2026年10月1日から | |
|---|---|---|
| 単価の単位 | 1畳あたり(月額) | 総面積1㎡あたり(月額) |
| 対象の面積 | 居間・寝室など居住用の部屋のみ | 住宅の総面積(別棟の物置・車庫、共用部分を除く) |
| 東京都の単価 | 2,830円 | 1,330円 |
| 大阪府の単価 | 1,780円 | 820円 |
| 愛知県の単価 | 1,560円 | 710円 |
参考:日本年金機構|令和8年4月から現物給与の価額が改正されます
社宅制度の導入・見直しの進め方
社宅制度を導入・見直すときは、まず社宅規程を整え、段階を踏んで進めることが大切です。規程には、少なくとも次の項目を定めておきましょう。
- 対象者
- 物件の条件(家賃の上限、エリア、間取り)
- 自己負担額の決め方
- 初期費用、更新料、原状回復費用の負担区分
- 同居人やペットの扱い
- 退職・異動時の退去期限
特に従業員の場合、自己負担額は、賃貸料相当額の50%以上かつ現物給与の価額以上に設定すると、給与課税も社会保険の報酬への加算も避けられます。
具体的な進め方は、以下の5ステップです。
| ①現状の把握 ②運用方式の決定 ③規程の策定 ④就業規則の改定と従業員への説明 ⑤運用と定期的な見直し |
住宅手当から切り替える場合は、従業員への丁寧な説明が欠かせません。
関連記事:【社労士監修】社会保険料がかからない手当とは?一覧で詳しく紹介
社宅とあわせて検討したい「第3の賃上げ」としての食事補助
社宅は、給与で支払うよりも従業員の実質的な手取りを増やせる福利厚生です。エデンレッドジャパンは、こうした福利厚生の活用を、定期昇給、ベースアップに続く「第3の賃上げ」と定義しました。
ただし、前述のとおり、社宅の恩恵を受けられるのは住宅を必要とする従業員に限られます。そこで、近年社宅とあわせて注目されているのが、福利厚生としての「食事補助」です。
食事補助の場合、従業員が食事代の半分以上を負担し、会社の負担が月7,500円(税抜)以下であれば、給与として課税されません。「#第3の賃上げアクション」が実施した『「第3の賃上げ」実態調査2026』でも、導入されてうれしい「第3の賃上げ」の1位は食事補助(61.1%)でした。
参考:「第3の賃上げ」実態調査2026を公開。約8割が、賃上げに加え「福利厚生の充実も重要」と実感。「第3の賃上げ」は、従業員の生活と企業の競争力を支える経営戦略へ
4000社以上が導入する「チケットレストラン」
エデンレッドジャパンが提供する「チケットレストラン」は、全国47万ヵ所以上のお店での食事を半額で購入できる食事補助の福利厚生サービスです。直接雇用の従業員(パートやアルバイトを含む)、かつ勤務時間中にとる飲食物の購入であれば、雇用形態や勤務地を問わず利用できるため、公平な制度を導入しやすい点が特徴です。
2026年10月にはスマホ決済にも対応し、ますます利便性が高まりました。なお、企業向け食事補助サービスでApple Pay・Google Payの両方に対応したのは、業界初※となります。
こうしたさまざまな魅力が高く評価され、すでに 4000社以上が導入する人気サービスとなっています。
※エデンレッドジャパン調べ。2026年9月30日時点。日本国内で提供されている企業向け食事補助サービスにおいて、Apple PayおよびGoogle Payの双方に対応するサービスとして業界初。
参考:【開催レポート】「#第3の賃上げアクション2026」発表会
参考:【業界初※1】「チケットレストラン」がApple Pay・Google Payに対応!スマホひとつで“食事補助”が完結する「モバイルタッチ決済」を10月5日より提供開始 | 株式会社エデンレッドジャパンのプレスリリース
参考:チケットレストランにモバイルタッチ決済登場! - 従業員が必ず喜ぶ福利厚生カード
関連記事:食事補助とは?福利厚生に導入するメリットや種類・支給の流れを解説
関連記事:「チケットレストラン」の仕組みを分かりやすく解説!選ばれる理由も
【Q&A】社宅にまつわるよくある質問
ここでは、社宅について寄せられやすい疑問をピックアップし、Q&A形式で紹介します。
Q. 社宅を無償で貸すとどうなる?
【A. 賃貸料相当額の全額が、従業員の給与として課税されます。】
例外として、看護師や守衛など、仕事の都合で勤務場所の近くに住む必要がある従業員に貸す場合は、無償でも課税されないことがあります。
参考:国税庁|No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき
Q. 役員社宅も従業員と同じルール?
【A. 役員は、賃貸料相当額の全額以上を受け取らなければ、差額が給与として課税されます。】
従業員のような「50%以上なら課税しない」というルールはありません。また、賃貸料相当額の計算方法も、住宅の広さによって変わります。豪華社宅と判定された場合は、通常支払うべき使用料を受け取る必要があります(床面積240㎡超が判定の目安)。
Q. 住宅手当から社宅へ切り替えるときの注意点は?
【A. 住宅手当の廃止は不利益変更にあたる可能性があり、従業員の同意か、変更の合理性が必要です。】
企業が一方的に就業規則を変えて住宅手当を廃止しても、合理性が認められなければ無効になるおそれがあります。社宅への移行で手取りや負担がどう変わるかを示し、事前に丁寧に説明しておきましょう。
社宅のメリットを生かすには、制度設計と組み合わせが大切
社宅は、要件を満たせば税金と社会保険料の負担を抑えながら、手厚い住宅支援ができる制度です。主なメリットとデメリットは次のとおりです。
- 企業のメリット:社会保険料の会社負担の抑制、採用と人材定着の強化
- 企業のデメリット:管理の手間とコスト変動のリスク、社宅を使えない従業員との不公平感
- 従業員のメリット:手取りの増加、初期費用と住まい探しの負担軽減
- 従業員のデメリット:住まいの自由度の低下、将来の給付が減る可能性
社宅で生じがちな不公平感への対応としては、「チケットレストラン」のような、社宅以外の「第3の賃上げ」との組み合わせがおすすめです。ぜひ詳しい資料をご覧ください。
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エデンレッドジャパンブログ編集部
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