手取りが増えない状況は、賃上げを行っていても起こり得ます。給与から天引きする社会保険料・所得税・住民税などの金額も、賃上げとともに上がる可能性があるためです。加えて、企業の負担も増加が見込まれます。本記事では、給与が上がっているのに手取りが増えない仕組みを解説した上で、福利厚生を組み合わせる待遇改善について見ていきましょう。
手取りが増えないのはなぜ?主な理由
エデンレッドジャパンの実施した「ビジネスパーソンの手取りに関する意識調査」によると、給与は上がっていても「手取りが増えた実感はない」と回答した人が約90%でした。
手取りが増えない理由は複数あります。代表的なものは以下の4つです。
- 給与が増えると社会保険料も増えるため
- 所得税の負担が増えるため
- 住民税は前年の所得をもとに計算されるため
- 物価が上昇しているため
それぞれの理由について解説します。
関連記事:約9割が“給与は上がっても、手取りが増えた実感なし” 企業の約半数は、「福利厚生」で対策も
給与が増えると社会保険料なども増えるため
従業員の給与からは、厚生年金保険料・健康保険料・雇用保険料などの社会保険料が差し引かれます。給与が増えても、増加分のすべてが手取りにならないのはこのためです。
厚生年金保険料は、毎月の給与などの報酬を一定の幅で区分した標準報酬月額や標準賞与額に保険料率をかけて計算され、事業主と従業員がそれぞれ半分ずつ負担します。
健康保険料も、原則として事業主と従業員が負担を分け合う仕組みです。厚生年金保険料と同様で、標準報酬月額に保険料率をかけて計算します。
雇用保険についても、労働者と事業主の双方が保険料を負担する仕組みです。2026年度の雇用保険料率は、一般の事業の場合、労働者負担が0.005%(5/1,000)、事業主負担が0.0085%(8.5/1,000)と定められています。
また2026年度からは子ども・子育て支援金制度が始まりました。被用者保険では2026年度の支援金率は0.23%です。従業員と企業が半分ずつ負担します。
いずれも給与が増えるに従って保険料も増える仕組みになっているため、賃上げで増えた額面給与の分だけ、そのまま手取りが増えるわけではありません。
参考
:協会けんぽ|令和8年度保険料額表
:厚生労働省|令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内
所得税の負担が増えるため
給与からは社会保険料だけでなく、所得税も差し引かれます。
従業員の所得税は、企業が毎月の給与や賞与から源泉徴収する仕組みです。毎月の給与から差し引かれる所得税額は、給与所得の源泉徴収税額表などをもとに計算され、年末調整によって1年間の税額との過不足が精算されます。
給与が増えると、所得税の負担も増える場合があります。これも、昇給額がそのまま手取り額の増加につながらない理由です。
ただし、実際の所得税額は給与額だけで決まるものではありません。給与所得控除や各種所得控除なども関係します。
住民税は前年の所得をもとに計算されるため
住民税も、手取りに影響する税金の1つです。
個人住民税の所得割は前年の所得金額に応じて課税されます。給与所得者の場合、原則として6月から翌年5月までの給与から特別徴収される仕組みです。
そのため、給与が増えた場合、その影響が翌年度の住民税に反映されることがあります。
例えば、前年より給与が増えた場合、翌年度の住民税が増えることで、「給与は上がったのに手取りが思ったほど増えない」と感じることがあります。
給与の変化と住民税の変化には時間差があるため、人事担当者が従業員から手取りについて相談を受けた場合には、社会保険料だけでなく住民税の仕組みについても説明するとよいでしょう。
物価が上昇しているため
手取り額そのものが増えていても、生活に使うお金が増えていれば、従業員が給与アップの効果を実感しにくいことがあります。
例えば、給与が増えて手取り額が上がっても、物価上昇の影響で食料品や光熱費などの支出が以前より増えていれば、自由に使えるお金が増えたと感じにくくなります。
従業員の待遇を考える際には、手取りの増加額に加えて、物価の上昇率も考慮しましょう。総務省の「消費者物価指数」によると、2025年の消費者物価指数は、2024年と比べると3.2%上昇しています。
賃上げによって手取り額が増えていても、物価上昇によって生活にかかる支出がそれ以上に増えていれば、従業員は待遇改善の効果を実感しにくいかもしれません。
関連記事:【2026年版】物価高はなぜ起きる?原因・最新の見通し・企業の対策をわかりやすく解説
参考:総務省|消費者物価指数 2025年(令和7年)12月分及び2025年(令和7年)平均
「給与が増えたのに手取りが増えない」具体例
例えば、月給30万円から31万円に昇給した場合、額面給与は1万円増えます。しかし、実際に従業員が受け取る手取り額の増加は1万円ではありません。まずは昇給前後のイメージを確認しましょう。
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負担項目 |
昇給前 |
昇給後 |
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額面給与 |
30万円 |
31万円 |
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健康保険料 |
1万4,775円 |
1万5,760円 |
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子ども・子育て支援金 |
345円 |
368円 |
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厚生年金保険料 |
2万7,450円 |
2万9,280円 |
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雇用保険料 |
1,500円 |
1,550円 |
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源泉所得税 |
6,320円 |
6,650円 |
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手取り額 |
24万9,610円 |
25万6,392円 |
※東京都在住、40歳未満、協会けんぽに加入しているケースで試算
※40歳以上の場合には介護保険料も天引き
※前年の所得に次第で住民税も天引き
この試算では、額面が1万円増えているにもかかわらず、手取りの増加額は6,782円です。額面給与とともに健康保険や厚生年金なども増えているため、手取り額の増加分は1万円を下回ります。
「昇給すると損」は本当?
昇給によって手取りの増加額が額面給与の増加額を下回ることはありますが、これは「昇給すると損」ということではありません。
例えば健康保険や厚生年金は給与が増えれば保険料が増加します。その分手取りは減りますが、将来受けられる年金給付などは手厚くなる仕組みです。
企業は、従業員が「昇給したのに手取りがあまり増えない」と感じる可能性を考慮して、給与の仕組みを分かりやすく伝えるとよいでしょう。
手取りが増えないことで企業が抱える3つの課題
手取りが増えにくいことによる影響は、従業員だけにとどまりません。企業にとっても、賃上げの効果・採用・定着などを考える上で重要なテーマです。
ここでは手取りが増えにくいことによって発生する、企業の課題について解説します。
従業員が昇給の効果を実感しにくい
昇給によって額面給与が増えると、より大きな金額の社会保険料や税金などを天引きしなければいけません。その結果、手取りの増加額は額面給与の増加額を下回ります。
企業が賃上げを実施しても、手取り額は額面給与ほど上がらないため、従業員は「期待していたほど上がらなかった」と感じることもあるでしょう。
昇給は従業員の処遇改善において重要な施策です。ただし給与額だけを見て待遇改善の効果を判断すると、従業員が実際に感じる賃上げのインパクトとの間に差が生じることがあります。
この差を埋めるには、人事担当者は給与の引き上げに加えて、福利厚生や働きやすさなども含めて、従業員に提供する待遇全体の見直しに取り組むとよいでしょう。
採用・定着に影響する可能性がある
従業員が実際に生活するためには、給与から税金や社会保険料などが差し引かれた後の手取りが十分な金額でなければいけません。
特に物価が上昇している現在の状況では、額面給与を上げるだけでなく、生活にかかる負担の上がり幅まで考慮して待遇を考えることが求められます。
給与は就活生や求職者が入社する企業を決めるときに重要な判断ポイントです。また今いる従業員が「今後も働き続けたい」と考えられるかどうかにも影響します。
エデンレッドジャパンの実施した「ビジネスパーソンの手取りに関する意識調査」によると、額面給与よりも手取りを意識するようになったと回答した人の割合は83.1%でした。
従業員の多くが手取りを意識するようになった今、採用・定着を考える上でも、給与だけでなく実際に受け取れる金額や生活負担に目を向けることが重要です。
関連記事:約9割が“給与は上がっても、手取りが増えた実感なし” 企業の約半数は、「福利厚生」で対策も
賃上げすると企業側の負担も増える
企業が従業員の給与を引き上げると、企業側の人件費も増加します。
増えるのは給与の増加分だけではありません。健康保険・厚生年金・雇用保険などは従業員と折半で保険料を負担していますし、子ども・子育て拠出金や労災保険など企業のみが負担するものもあります。
従業員が暮らしに余裕を持てるよう、手取りをより多くする目的で賃上げを行うときには、企業の負担がどれだけ増えるかも確認しておかなければいけません。
従業員の手取りと企業の人件費はどう違う?
従業員が受け取る手取り給与と、企業が従業員1人に対して負担する人件費は同じではありません。企業が待遇改善を検討するときは、給与明細に表示される従業員負担だけでなく、企業側の負担も把握しておく必要があります。
ここでは、従業員の給与から差し引くものと、企業が負担するものに加えて、実際に賃上げした場合に増える企業の負担について見ていきましょう。
従業員の給与から差し引くもの
従業員の給与からは、主に次のような費用が差し引かれます。
- 健康保険料
- 厚生年金保険料
- 雇用保険料
- 介護保険料 ※40歳以上64歳まで
- 子ども・子育て支援金
- 所得税
- 住民税 ※前年の所得による
ただしすべての従業員に同じ控除が発生するわけではありません。例えば介護保険料は、原則として40~64歳までの医療保険加入者が対象になるため、40歳未満の従業員の手取りには影響しない項目です。
額面給与からこれらを差し引くと、従業員の手取り額となります。
企業が給与以外に負担するもの
企業が従業員に給与を支払うときには、給与以外にも以下を負担しています。
- 健康保険料
- 厚生年金保険料
- 雇用保険料
- 介護保険料 ※40歳以上64歳まで
- 子ども・子育て支援金
- 子ども・子育て拠出金
- 労災保険料
例えば、厚生年金保険料は事業主と従業員がそれぞれ半分ずつ負担します。健康保険料についても、原則として労使で折半する仕組みです。
雇用保険も事業主負担があります。加えて、企業のみが負担する、子ども・子育て拠出金や労災保険料も、賃上げとともに増加する負担です。
1万円昇給すると企業の負担はいくら増える?
企業が従業員の給与を1万円引き上げた場合、企業の負担は単純に1万円増えるというわけではありません。給与が上がれば、その分負担する社会保険料なども上がるためです。
具体的に増える負担額を、月給30万円から31万円に賃上げするケースで確認しましょう。
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企業の負担項目 |
月給30万円 |
月給31万円 |
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健康保険 |
1万4,775円 |
1万5,760円 |
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厚生年金保険料 |
2万7,450円 |
2万9,280円 |
|
雇用保険料 |
2,550円 |
2,635円 |
|
子ども・子育て支援金 |
345円 |
368円 |
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子ども・子育て拠出金 |
1,080円 |
1,152円 |
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労災保険料 |
900円 |
930円 |
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給与を含めた企業の負担額 |
34万7,100円 |
36万125円 |
※東京都在住、40歳未満、協会けんぽ加入、一般の事業に勤務する従業員を想定して試算。実際の負担額は加入する健康保険、雇用保険の適用事業、標準報酬月額などによって異なります。
このとき増える企業の負担額は1万3,025円です。昇給額の1万円のみを費用と考えると、実際に必要な資金との差が出てしまいかねません。
従業員の手取りを増やすために企業ができる4つの対策
従業員の手取りアップに向けて、企業ではどのような取り組みができるのでしょうか。代表的な施策は以下の通りです。
- 給与水準を見直す
- 各種手当を見直す
- 福利厚生を充実させて実質的な生活支援を行う
- 実質的な賃上げにつながる福利厚生を導入する
ここでは企業にも従業員にもプラスになる待遇に活かせるよう、4つの対策の詳細を解説します。
給与水準を見直す
待遇改善を考える上で、まず検討したいのが給与水準そのものの見直しです。基本給の引き上げや定期昇給・ベースアップなどの実施により、従業員の処遇を直接改善できます。
最低賃金へ対応するのはもちろん、人材の採用や定着への対策、職務内容・経験・能力などへの正当な評価としても重要です。
ただし給与水準の見直しのみで十分な手取りアップを実施すると、企業の負担額が大きくなりすぎる可能性があります。経営に影響することがないよう、予算を考慮しつつ、継続可能な範囲での賃上げに取り組むのが重要です。
各種手当を見直す
通勤手当・住宅手当・家族手当・資格手当など各種手当の見直しも待遇改善につながります。ポイントは自社の従業員の働き方やライフステージに合う手当の充実や導入をすることです。
例えば、子どもを養育している従業員が多いなら家族手当の支給が向いているかもしれません。一方、独身の従業員が多い企業で家族手当を充実させると、利用できない従業員は不公平に感じることもあります。
自社の従業員がどのような支援を必要としているかを確認した上で、充実・導入する手当を決めることが大切です。
また手当を見直すときには、手当によって税務上・社会保険上の取り扱いが異なる点にも注意しましょう。
関連記事:【2026年版】特別手当の非課税ルール完全ガイド|種類・社会保険の扱い・注意点も解説
福利厚生を充実させて実質的な生活支援を行う
給与以外の待遇を改善する方法として、福利厚生の充実度アップに取り組むのも有効です。
従業員の暮らしの質向上に役立つ、以下のような福利厚生を充実させることで、手取り額はそのままに生活支援を行えます。
- 食事支援
- 住宅関連の福利厚生
- 育児・介護支援
- 健康支援
- 資産形成支援
- レジャー・余暇支援
例えば、日常的に発生する仕事中の昼食代を支援すれば、従業員が毎月負担する生活費の一部を軽減できます。負担が減れば、その分を他の支出に充てることも可能です。
生活支援に役立つ福利厚生を導入するときには、従業員の利用しやすさを考慮するのがポイントとなります。事前にアンケートやヒアリングを通して、従業員が「利用したい」と考えている福利厚生について確認しておくとよいでしょう。
手取りの増加につながる福利厚生を導入する
従業員の手取りを増やすには、手取りの増加につながる福利厚生を導入するのも有効です。
福利厚生の中には、一定の要件を満たして導入すると、所得税が非課税となるものがあります。同額の賃上げと比べて、所得税の上昇分を抑えられる可能性があるため、実質的な手取りアップにつながる仕組みです。
ただしすべての福利厚生が非課税になるわけではありません。非課税になる福利厚生には、食事補助・通勤手当・社宅などがあります。これらは国が定める要件を満たして導入すれば、所得税が課税されません。
食事補助であれば、非課税で支給するために、以下の要件を満たしている必要があります。
- 従業員が食事代の半額以上を負担していること
- 「食事代-従業員の負担額」が月7,500円(税抜)以下であること
従業員の食事をサポートする制度を導入している場合でも、この要件を満たしていない場合には、課税対象となる点に注意しましょう。確実に要件を満たして導入するなら、食事補助の福利厚生サービスを活用する方法が有効です。
例えばエデンレッドジャパンの提供する「チケットレストラン」であれば、要件を満たして非課税で導入したい、という要望に対応できます。
加えて全国にある加盟店25万店舗以上で利用できるため、従業員の働く場所や休憩のタイミングなどを問わず、公平に利用しやすいのも特徴です。
関連ページ:食事補助を福利厚生で導入するならチケットレストラン
従業員に給与・控除の仕組みを分かりやすく説明する
賃上げや福利厚生の充実・導入などによる待遇改善を行うときには、整えた制度の内容を、従業員に分かりやすく伝えることも重要です。
説明が不十分なままでは「1万円の賃上げと聞いたのに手取りがそんなに増えていない」というように、不満を抱く従業員が出てきかねません。誤解を避けるには、以下の内容について、説明会を実施したり資料を配布したりするとよいでしょう。
- 額面給与と手取り給与の違い
- 社会保険料の仕組み
- 所得税の仕組み
- 住民税の仕組み
- 昇給によって控除額が変わる可能性
- 給与以外に企業が提供している福利厚生
給与や控除の仕組みについて詳しく説明する中で、企業が従業員の社会保険料を負担していることや、整備したけれど活用されていない福利厚生について、周知することも可能です。
企業が従業員に提供している待遇の理解が進むことで、従業員満足度や従業員エンゲージメントの向上も期待できます。
2026年は「手取り」に注目した待遇改善を
2026年4月から、子ども・子育て支援金制度が始まり、食事補助の非課税上限額が3,500円(税抜)から7,500円(税抜)に引き上げられました。これらは従業員の手取りや生活負担に関わる制度変更です。
また賃上げの動きが進む中で、賃上げしたにもかかわらず手取りの上昇額が賃上げ額と比べて小さいケースも見られます。従業員の暮らしにダイレクトに影響する手取りの注目度が上がっているといえるでしょう。
2026年4月から子ども・子育て支援金制度が始まっている
2026年4月から、子ども・子育て支援金制度が始まりました。社会全体で子育てを支えることを目的として導入された制度です。
2026年度の支援金率は0.23%とされています。この支援金率を標準報酬月額にかけて算出した金額を、企業と従業員で半分ずつ負担する仕組みです。
給与がこれまでと変わっていない場合には、子ども・子育て支援金の負担分だけ従業員の手取りは減っています。賃上げした場合でも、支援金がある分、増加額はこれまでよりも少なくないでしょう。
新たな制度が始まったことで、従業員から質問を受ける可能性もあります。企業は制度の内容を把握し、必要に応じて従業員へ説明できるように準備しておきましょう。
参考:日本年金機構健康保険組合|子ども・子育て支援金制度について
2026年4月から食事補助の非課税上限額が月7,500円になっている
食事補助の非課税上限額は、40年以上の間、月3,500円(税抜)で据え置かれてきました。この金額が、2026年4月から月7,500円(税抜)に引き上げられています。
要件を満たして導入していれば、これまでよりも多くの食事補助を非課税で従業員に支給可能です。実質的な手取りアップにつながる仕組みをより効果的に活用しやすくなる変更といえます。
関連記事:【税理士監修】食事補助の非課税上限が7500円へ!給与にしないための非課税の条件を解説
賃上げで適用される税率や標準報酬月額が変わり手取りの変化が小さくなる可能性
額面給与が上がると所得税の負担額が増えたり、社会保険では標準報酬月額の等級が上がったりするケースがあります。中には賃上げされたけれど、税額や社会保険料が増えてしまい、手取りの上昇額が非常に小さくなる場合もあるようです。
実際に従業員が受け取る手取りを重視する場合には、税率や標準報酬月額を考慮した賃上げの実施や、福利厚生を組み合わせた生活支援・実質的な手取りアップがポイントといえます。
関連記事:【税理士監修】昇給で手取りが減る?収入が増えた実感ナシの理由も解説
企業が手取り対策を行う際の注意点
従業員の手取りや生活負担への対応を考えるときに重要なのは、複数の制度のバランスです。
給与のみで十分な手取りを従業員が受け取れるよう設計すると、企業の負担が大きくなりすぎる可能性があります。ただし福利厚生のみを充実させるだけでは不十分です。企業の状況や従業員のニーズを踏まえて、待遇全体を設計する必要があります。
ここでは、具体的に考慮すべきポイントをチェックしていきましょう。
給与と福利厚生を単純に置き換えない
福利厚生は、給与とは異なる性質を持つ制度です。「福利厚生を充実させるから給与を上げなくてよい」という考え方ではなく、給与と福利厚生を組み合わせて待遇全体を改善していくことが重要といえます。
賃上げによる基本的な処遇改善と、福利厚生による暮らしの質の向上や働きやすい環境の整備の両方がバランスよく整うことで、従業員の「手取りが増えない」という状況や悩みの改善につながります。
企業の経営状況や人材戦略を踏まえて、継続して提供できる制度の検討が必要です。
従業員のニーズを把握する
給与制度や福利厚生を導入・見直しするときは、従業員が実際に何を必要としているのかを把握することが重要です。
例えば、住宅費の負担が大きい従業員と、毎日の食費を気にしている従業員では、必要とする支援が異なる可能性があります。
まずは今ある制度の利用状況を確認して、従業員のニーズを把握しましょう。従業員アンケートを行うのも有効です。
制度の数だけ増やしても、従業員の待遇改善につながるとは限りません。従業員が「ほしい」と感じており、かつ企業が継続しやすい制度を選ぶことが大切です。
手取りが増えないときに人事担当者が確認したいポイント
従業員から「給与が増えたのに手取りが増えない」と相談された場合は、まず給与明細の変化を確認して、昇給前後の所得税・住民税・社会保険料を確認しましょう。適用される税率や標準報酬月額が変わり、負担が大きくなっている可能性があります。
昇給後に同様の問い合わせが増えているようであれば、従業員全体へ向けた説明が必要かもしれません。給与や給与から差し引かれるものについて、従業員が理解できるよう説明会や資料を用意します。
あわせて、賃上げを補う福利厚生の利用状況もチェックしましょう。従業員の生活支援を目的として導入した福利厚生の利用が進んでいない場合には、制度や利用方法のアナウンスによって、手取りが増えない状況や悩みの改善につながる可能性があります。
ポイントをチェックリストとしてまとめると以下のとおりです。
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チェック項目 |
対策 |
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昇給前後の所得税・住民税・社会保険料 |
適用される税率や標準報酬月額の変化など制度について説明する |
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昇給後に「給与が増えたのに手取りが増えない」という相談が増えているか |
相談が増えているようなら説明会や資料で説明する |
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生活支援につながる福利厚生の利用状況 |
利用率が低いなら制度や利用方法を知らせる |
「手取りが増えない」に関するよくある質問
手取りが増えない状況についてよくある質問へ回答します。
昇給したのに手取りが増えないのはなぜですか?
給与から差し引かれる社会保険料や所得税などが増えるためです。適用される税率や標準報酬月額が変われば、さらに手取りの伸びを実感しにくい可能性もあります。
給料が増えると社会保険料も増えますか?
適用される標準報酬月額が上がる、標準報酬月額が改定される、といった変化によって、負担する社会保険料が増える場合があります。
給与が増えなくても手取りが減ることはありますか?
社会保険料や所得税・住民税などの制度が変化すると、給与額が変わらなくても手取りが減る場合があります。
例えば2026年4月からは子ども・子育て支援金制度が始まり、給与から支援金が差し引かれています。給与が変わっていなければ、差し引かれる金額が増えた分、手取りは減っているでしょう。
企業が従業員の手取りを増やすにはどうすればよいですか?
賃上げに加えて、手当や福利厚生などを含めて総合的に待遇を見直すことが重要です。例えば食事補助をはじめとする日常的な生活費をサポートする福利厚生は、従業員の暮らしの負担を軽減する方法の1つです。
企業が給与を1万円上げると負担はいくら増えますか?
給与1万円に加えて、事業主負担の社会保険料などが増えるため、企業の負担は1万円を超えるでしょう。具体的な金額は、加入する健康保険や雇用保険の料率、従業員の条件などによって異なります。
手取りを増やすには「給与額」だけでなく「実質的な待遇」を考える
手取りが増えない主な理由は、給与から社会保険料や税金などが差し引かれるためです。給与が増えると、社会保険料や税額も増えるため、増加分がすべて手取りになるわけではありません。
また企業の負担も、給与の増加分だけではない点に注意しましょう。事業主負担の社会保険料なども増える可能性があるため、継続可能な制度になっているかを事前に確認した上で賃上げを行います。
従業員の手取りを大きく引き上げるための賃上げが難しい場合には、手当や福利厚生と組み合わせた待遇改善が有効です。給与や手当の見直しに加え、福利厚生によって日常生活の負担を軽減できれば、手取りアップと同様の効果が期待できます。
特に食事補助は、毎日の生活にかかる費用をサポートできる福利厚生の1つです。毎日のように利用できる制度のため、従業員の利用率が高くなりやすいのもポイントといえます。
加えて一定の要件を満たすと、所得税非課税で支給できるのも特徴です。この要件を満たして制度を導入するには、食事補助の福利厚生サービスを活用するとよいでしょう。
導入企業4000社以上の「チケットレストラン」であれば、非課税で支給するための相談も可能です。まずは資料請求で詳細を確認してみませんか。
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