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【税理士監修】昇給で手取りが減る?収入が増えた実感ナシの理由も解説

公開日: 2024.05.28

更新日: 2026.04.17

【税理士監修】昇給で手取りが減る?収入が増えた実感ナシの理由も解説

監修者:舘野義和(税理士・1級ファイナンシャルプランニング技能士 舘野義和税理士事務所)

昇給をしても手取り収入が減る、もしくは増えた実感が得られないことがあります。主な要因は、所得税・住民税・社会保険料といった税・社会保険の負担です。昇給したとしても実質手取りが増えたと感じられないならば、企業にとっても従業員にとっても見過ごせない事態です。
本記事では、昇給しても手取りが減る理由、税以外の手取り減少の要因、手取り減少を軽減する方法などを解説します。企業ができる従業員の実質手取りを増やす取り組みの一つに、福利厚生の導入があります。その仕組みやメリットも確認しましょう。

昇給で手取りが減るのは税・社会保険負担が理由

昇給しても手取りが増えないのは、日本の税制度や社会保険制度による影響が考えられます。所得から差し引かれる税・社会保険料について、確認しましょう。

1. 所得税の増加

日本では累進課税制度が採用されており、年収が増えるとより高い税率が適用されます。昇給で年収が上がると、高い税率の所得税が課せられるため、手取り額が減少する可能性があります。

累進課税制度による増加

所得税は累進課税であるため、年収が高くなるほど以下のとおり高い税率が適用されます。

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円 から 1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円 以上 45% 4,796,000円

※平成25年から令和19年までの各年分の確定申告においては、所得税と復興特別所得税(原則としてその年分の基準所得税額の2.1%)を併せて申告・納付することとなります。

出典:国税庁|No.2260 所得税の税率

このように、昇給により年収が増え、上位の税率区分に入ると、より高い税率が課されて所得税額が増加します。結果として手取りが減る可能性があるのです。

なお、給与体系により異なりますが、通常は以下のように課税額が変更されます。

  • 当月締め、当月支給の場合:昇給月の4月分給与から新税率適用
  • 月末締め、翌月支給の場合:昇給月の翌月5月分給与から新税率適用

扶養親族の減少による所得税の増加

納税者に所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合には、一定の金額の所得控除が受けられます。扶養親族が減少する場合も、扶養控除額が減るため所得税額が増加し、結果として手取りが減ってしまう可能性があります。

区分 控除額
一般の控除対象扶養親族 38万円
特定扶養親族 63万円
老人扶養親族 同居老親等以外の者 48万円
老人扶養親族 同居老親等 58万円

出典:国税庁|No.1180 扶養控除

2. 住民税の増加

住民税は、前年の所得に基づいて計算されます。住民税は道府県民税4%、市町村民税6%の10%一律です。住民税が上がる場合、6月から新しい金額に変更されます。収入が上がった場合、比例して住民税が上がります。特に社会人2年目の場合は注意が必要です。

社会人2年目で住民税が適用

社会人2年目の6月からは、1年目の所得に応じた住民税額が適用されるため、手取りが減少しがちです。1年目は課税対象となる前年度の所得がありませんが、2年目になると入社した前年4月〜12月までの所得が発生するためです。前年度所得の増加分について、翌年6月から12月まで住民税が増額され、手取り減少の要因になります。

社会人3年目になると、前年度の所得である1月〜12月分が課税対象です。2年目ほどではありませんが、住民税額が増えるため、手取り減少につながります。

3. 社会保険料の増加

社会保険料は、健康保険料と厚生年金保険料の合計額です。昇給後は、新しい社会保険料が適用されるため、手取り減少になる可能性があります。

社会保険料の「随時改定」制度による社会保険料増加

社会保険料には「随時改定」の制度があり、昇給月の給与を基に3か月後から新しい保険料額が天引きされます。昇給月の4月から6月までの3か月間の給与平均により、一定の要件以上の報酬月額の変動があった場合、7月分の給与から新しい社会保険料が適用される仕組みです。随時改定が実施される要件も確認しましょう。

【随時改定が実施される3つの要件】

(1)昇給または降給等により固定的賃金に変動があった。
(2)変動月からの3か月間に支給された報酬(残業手当等の非固定的賃金を含む)の平均月額に該当する標準報酬月額とこれまでの標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じた。
(3)3か月とも支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上である。

出典:日本年金機構|随時改定(月額変更届)

このように昇給4か月後に新しい社会保険料額が差し引かれるため、一時的に手取り減少が起こる可能性があります。

4. 国民負担率は増加

手取りが増えない背景には、税金や社会保険料の存在だけでなく、その負担割合(国民負担率)の上昇もあげられます。国民負担率とは、税と社会保険料を合わせた公的負担の割合です。

財務省のデータによると、2015年から2024年の10年間で以下のように推移しています。

  2015年 2024年
国民負担率 42.3% 45.8%
租税負担 25.2% 27.5%
社会保障負担 17.1% 18.2%

手取りが増えない

出典:財務省|国民負担率(対国民所得比)の推移

民間給与実態統計調査」によると、2015年の年収平均は423万4,000円、2024年は477万5,000円です。

423万4,000円×42.3%=179万982円(2015年の国民負担)
477万5,000円×45.8%=218万6,950円(2024年の国民負担)
218万6,950円-179万982円=39万5,968円(国民負担10年間の増額分

平均年収に当てはめると、1人あたりの税・社会保険料の負担額は10年間で約40万円増加しています。名目の給与が上がっても、手取りの増加が実感しにくい一因です。特に社会保険料は給与明細上で変化に気づきにくいものの、少子高齢化を背景に毎年少しずつ引き上げられており、影響は着実に積み重なっています。

出典:財務省|国民負担率(対国民所得比)の推移

実質手取りを減らす税・社会保険以外の理由

定期昇給やベアなどの給与アップが実施されると、手取りが増えると期待します。しかし、給与アップでも手取りが増えた実感がないケースがあるようです。どのような理由であるか、確認しましょう。

1. 実質賃金の伸び悩み

名目賃金は増えていても、物価上昇による影響で実質賃金が伸び悩めば、手取り増加の実感は得にくいでしょう。名目賃金とは、貨幣で受け取った賃金そのものです。セットで考えられているのが実質賃金ですが、労働者が実際に受け取る名目賃金から消費者物価指数を差し引いたものとなります。実際に使えるお金が増えたと実感するためには、実質賃金の上昇が重要です。

以下は、厚生労働省「毎月勤労統計調査 2025(令和7)年分結果速報」です。物価上昇が始まる前の2019年から2025年にかけてでは、2022年以降にマイナス推移が継続していることがわかります。

手取り増えない2出典:厚生労働省|毎月勤労統計調査 2025(令和7)年分結果速報

続いて、令和元年から令和4年の詳しい数値についても確認しましょう。

実質賃金指数、名目賃金指数(現金給与総額) (調査産業計、事業所規模5人以上)

実質賃金 実質賃金前年比 名目賃金 名目賃金前年比 消費者物価指数 消費者物価指数前年比
令和元年 101.2 -1.0 101.2 -0.4 100.0 0.6
令和2年 100.0 -1.2 100.0 -1.2 100.0 0.0
令和3年 100.6 0.6 100.3 0.3 99.7 -0.3
令和4年 99.7 -0.9 102.4 2.1 102.7 3.0
令和5年 97.1 -2.5 103.5 1.2 106.6 3.8
令和6年 99.3 -0.3 109.2 2.8 110.0 3.2
令和7年 98.0 -1.3 111.7 2.3 114.0 3.7

出典
厚生労働省|毎月勤労統計調査 年平均結果の推移 
厚生労働省|毎月勤労統計調査 2026(令和8)年2月分結果速報等

グラフでは実質賃金は減少傾向が長く続いていることがわかります。最近のデータでは、令和3年には0.6ポイント増加したものの、翌年には再び減少となり、以降はマイナスが続いているなど、実質賃金は伸び悩んでいる状況と言えるでしょう。

2. 福利厚生制度の見直しで実質手取りが減少

リモートワークの普及により、従来の福利厚生制度が見直され、実質的な従業員収入が減少している企業もあります。見直し事例としては、以下のようなものがあげられます。

  • 社宅制度の廃止・住宅手当のカット
  • テレワーク導入で通勤交通費の支給廃止
  • 人件費削減を理由に家族手当や住宅手当の廃止

こうした制度変更により、名目上の給与は維持しつつも、実質的な収入が減少する状況が生まれています。企業がコストカット等を理由に福利厚生制度を見直し、賃上げ分を相殺するような動きをしているということです。背景には、正規・非正規の格差是正の流れや、手当の公平性を重視する動きもあるため、福利厚生の見直しは一概には悪いと言えません。しかし、制度変更の裏側で従業員の実質収入が下がっているケースもあるのです。

出典:朝日新聞社:初任給引き上げ、原資はどこから?

関連記事:【社労士監修】「福利厚生をなくす」場合は不利益変更に注意!そのステップを解説

手取り減少を軽減する方法

昇給しても手取りを減少させないためには、工夫が必要です。たとえば、所得税の課税対象額を減らすことで、給与アップしても手取り減少を軽減できます。活用できる主な制度は以下の通りです。

生命保険料控除・個人年金控除

加入している生命保険、個人年金保険、介護医療保険の保険料は所得控除の対象です。企業に勤める従業員の場合は年末調整、または確定申告で申告することで、節税効果を得られます。

医療費控除

年間の医療費の合計額から医療費の補填として受け取った保険金等を差し引き、さらに10万円(または合計所得の5%のいずれか少ない方)を控除した残りの金額について、最大200万円まで所得控除が受けられます。高額な医療費がかかった年は、積極的に活用しましょう。

ふるさと納税

自治体等への寄付金は所得控除の対象となり、さらに自治体から特産品などの返礼品が送られてくる嬉しい制度がふるさと納税です。2,000円を超える寄付額に対して、控除が受けられます。納税により、特産品が獲得できるのもふるさと納税のメリットです。

個人型確定拠出年金(iDeCo)

iDeCoの掛金は、全額所得控除の対象となります。さらに運用時の利益にも優遇税制が適用され、20.315%の税金が非課税です。老後資金などの積み立てと節税という2つのメリットが得られます。

NISA

一定額までの投資について、運用益に課税されない制度がNISAです。2024年からは年間投資上限額が引き上げられ、節税メリットが高まっています。また、2026年度の税制改正大綱では、未成年向けのつみたて投資枠の創設や、債券ファンドの対象商品追加が盛り込まれており、早ければ2027年から開始される見込みです。

出典:金融庁|NISAを知る:NISA特設ウェブサイト

関連記事:【税理士監修】2026年度「税制改正大綱」を完全解説!何が変わる?押さえるべき15のポイント

福利厚生で従業員の手取りアップが可能

従業員の昇給により、手取りが減るのは企業にとっても悩ましい問題です。それならば、福利厚生に注目してみませんか。実は、福利厚生を充実させることで、従業員の実質的な手取りを増やすことが可能です。次に詳しく理由を解説します。

なぜ福利厚生で実質手取りが増加するのか

一定の要件を満たした福利厚生は課税対象とはならず、可処分所得が増える分だけ実質的な手取り収入がアップします。つまり、給与以外の支給を増やせば、税負担を増やすことなく手元に残る金額を増やせるのです。

福利厚生費と昇給による賃上げ額とを比較しましょう。賃上げ分に対しては、所得税や社会保険がかかりますが、一定の要件を満たした福利厚生費は、所得税がかからないため、税負担分が手元に残ります。福利厚生で手取りが増加するのはこのような仕組みによるものです。

昇給 手取り 減少_02

物価高騰が続く現在、従業員へ還元できる方法を模索している企業が増えています。従業員の実質的な購買力を維持するための賃上げニーズも高まるばかりです。しかし、賃金を引き上げるだけでは企業側のコストが嵩んでしまいます。特に、中小企業にとっては賃上げへの対応が難しい状況です。

そこで注目されているのが、従業員の「手取り収入アップ」と「企業の負担軽減」の両立が可能な福利厚生の活用です。このような新しいアプローチは「第3の賃上げ」という名称とともに、注目を集めています。

チケットレストランの概要

食事補助で日本で最も導入実績がある「チケットレストラン」は、第3の賃上げ の代表例として注目されている食の福利厚生サービスです。福利厚生の食事補助を通じて、手取りを多く残せます。導入から運用までシンプルで、従業員の勤務形態を問わず公平に利用できます。そのため、全従業員がリモートワークをしている企業や、食堂のない病院などでも重宝されるサービスです。さらに、2026年4月1日以降に支給される食事分は毎月7,500円(税別)までなら非課税での運用ができ、従業員の税負担を増やしません。

加盟店は全国に25万店舗以上

チケットレストラン」は、全国25万店舗以上の加盟店で利用できます。夜食やおやつなどにも使用でき利便性が高く、コンビニや3大牛丼チェーン店でも使えるため、従業員の働き方や事業所の立地に影響を受けません。直接雇用している従業員であれば、パート・タイマーやアルバイトの従業員にも提供できるため、非正規雇用の従業員に提供できる福利厚生としても、ご活用いただけます。

いつでもだれでも使える公平性

福利厚生を廃止する理由の一つとしてあげられるのが、手当の公平性です。その点、「チケットレストラン」は全従業員に公平に利用機会を提供できるのが特徴であり、強みです。だれでも使えることに魅力を感じて導入を決意される企業も増えています。ほかにも、採用強化、人材定着、企業イメージアップなど、企業の抱える課題をさまざまな角度からアプローチできます。

出典:国税庁|No.2594 食事を支給したとき

関連記事:導入実績4,000社以上!チケットレストラン導入によるメリット・デメリット

手取りが増えない悩みについてのFAQ

企業も従業員も、昇給しても増えない手取りに頭を抱えています。よくある質問をまとめました。

Q. 給料が上がっているのに、手取りが増えた実感がないのはなぜ?

A. 昇給分に対して所得税・住民税・社会保険料の負担が増えるため、額面が上がっても手取りの増加幅は小さくなります。実質賃金は2022年以降マイナス推移続きです(厚生労働省「毎月勤労統計調査」)。手取り額が数字として増えていても、生活にゆとりを感じにくい構造があります。

Q. 給料が上がって手取りが減ることはありますか?

A. あります。昇給により税率区分が上がる、社会保険料の随時改定が発生するなどのケースです。一時的に手取りが減ることがありえます。また、扶養親族が減ることで控除額が下がると、税負担が増加します。

昇給のタイミングや金額によっては、従業員から「給料が上がったのに手取りが減った」と声が上がることもあるため、仕組みを把握しておくことが大切です。

Q. 手取りが増えないと感じる状況下で、企業ができることは?

A. 賃上げ以外の手段として、非課税要件を満たした福利厚生の導入があります。給与への上乗せと異なり、一定の要件を満たした現物給付は課税対象外となるため、同じコストでも従業員の可処分所得を実質的に増やせるのです。

こうした福利厚生を活用した処遇改善のアプローチは「第3の賃上げ」として、今メディアから注目されています。税の負担増に影響しない仕組みにより、手元に残る金額を増やして生活実感の改善につなげる企業が増えています。

また、食事補助は2026年4月1日の改正により、企業負担分の非課税上限が月額7,500円に引き上げられました。税等の負担増を抑えながら従業員の手取りを増やす手段として、「チケットレストラン」のような食の福利厚生サービスが注目されています。

関連記事:【税理士監修】食事補助の非課税上限が7500円へ!給与にしないための非課税の条件を解説

企業ができる支援で従業員の手取り収入を増やそう

物価高騰の影響で、従業員の実質的な手取り収入を維持・向上させることが企業の課題となっています。単に賃金を引き上げるだけでは限界があり、企業の負担も大きいです。

そこで注目されているのが、福利厚生の充実による「第3の賃上げ」です。食事補助の福利厚生は要件を満たすと非課税となり、従業員の可処分所得、つまり実質手取りを増やせます。たとえば、非課税を活用した食の福利厚生サービス「チケットレストラン」の導入などです。

福利厚生の拡充は、従業員の待遇改善と企業の人件費抑制の両立につながります。さらに公平性が高まれば、企業イメージの向上や人材確保・定着にも役立つでしょう。

企業は、福利厚生制度の見直しなどにより、従業員の実質手取りアップを目指せます。そうすることで従業員のモチベーション向上や優秀な人材確保にもつながり、結果として企業のさらなる発展が期待できます。「チケットレストラン」を活用してみませんか。

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税理士 / 1級ファイナンシャルプランニング技能士 舘野義和

コンサルティング会社・通販会社など様々な業種で働いている中で、税理士を目指すことを決意。1級FP 、日商簿記1級や宅建資格などを取得しており、幅広い視野と知見でサポートしております。
舘野義和税理士事務所
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