【結論】同一労働同一賃金で「正社員の方が低い」のは違法?
正社員の待遇が非正規社員より低いこと自体は、同一労働同一賃金の対象外であり、原則として違法にはなりません。
パートタイム・有期雇用労働法(正式名称:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)8条・9条は、あくまで非正規雇用者の待遇を正社員水準へ引き上げるための仕組みだからです。
たとえば、正社員の法定内所定外労働の割増率が0%で契約社員が25%というように、特定の手当や割増率で正社員側が低いケースでも、正社員側の待遇を是正する法的根拠はありません。
参考:厚生労働省|同一労働同一賃金特集ページ
参考:e-Gov 法令検索|短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律|第8条
関連記事:【社労士監修】同一労働同一賃金とは?企業が知っておくべき基本と取り組み手順
正社員と非正規社員で逆転現象が起きるのはなぜ?
逆転現象の主な原因は、待遇の不合理性について、基本給・賞与・各種手当を個別に判断する同一労働同一賃金ガイドラインの仕組みにあります。
この仕組みの下では、非正規雇用者の待遇改善が手当単位で段階的に進むため、一部の手当だけ非正規側が正社員を上回るという部分的な逆転が生じます。
前章で述べた通り、こうした逆転自体の是正を法律が企業に義務づけているわけではありません。しかし企業には、待遇差について正確に把握し、労働者から問われた際に説明できる状態にしておくことが求められます。
参考:厚生労働省|同一労働同一賃金ガイドライン
同一労働同一賃金の是正時のポイント
正社員と非正規社員の待遇差に向き合うにあたっては、とくに注意したい2つのポイントがあります。ひとつは「安易な引き下げ」を避けること、もうひとつは2026年10月に新設・強化される説明義務への対応です。以下、順に解説します。
「正社員の待遇を下げて揃える」対応は法的リスクが高い
正社員と非正規社員の待遇差を解消する手段として、正社員の待遇を引き下げて非正規側に揃える対応は避けましょう。
同一労働同一賃金ガイドラインには、「待遇差の解消にあたり正社員の待遇を引き下げることは望ましい対応ではない」旨が明記されています。また、労働者の合意なく賃金や手当を引き下げることは、労働条件の不利益変更に該当する可能性が否定できません。この場合、従業員から未払い賃金や損害賠償を請求されるリスクがあります。
こうしたリスクを避けるためには、仕事内容の区分を明確化する対応や、全雇用形態を横断した制度への刷新など、正社員の待遇を維持したまま是正する方法を検討することが望まれます。
参考:厚生労働省|同一労働同一賃金特集ページ
関連記事:【同一労働同一賃金】福利厚生の不合理な差とは?リスクと対処法を完全解説
2026年10月施行、雇入れ時の「説明を求める権利」明示が義務化
2026年10月1日以降、パート・有期社員を雇入れる際、「待遇差について説明を求めることができる」旨を労働条件通知書に明記することが義務付けられます。
これは、これまでの「求めがあれば説明する」義務(第14条)とは別の、雇入れ時に必ず生じる明示義務(第6条)です。違反すると行政指導の対象となり、改善が見られない場合は10万円以下の過料が科される可能性があります。
また、待遇差について、これまで通用していた「正社員人材確保のため」という抽象的な説明だけでは不十分とされ、職務内容や配置変更の範囲など客観的な事実に基づく説明が求められます。
第14条にまつわる是正指導件数は令和元年度の1,823件から令和6年度には4,623件へ増加しており、対応の必要性は高まっています。
参考:厚生労働省|パートタイム・有期雇用労働者に関するルールが変わります
参考:厚生労働省|パートタイム・有期雇用労働法及び労働者派遣法の施行状況等について
参考:e-Gov 法令検索|短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律|第14条
関連記事:【社労士監修】同一労働同一賃金の見直し完全ガイド|2026年10月改正で何が変わる?
待遇差を見直す2つの方法
待遇差への向き合い方には、「基本給や賞与など、差の理由を合理的に説明できるようにする方法」と、「通勤手当や食事補助のように、差そのものをなくす方法」の2つがあります。詳しく見ていきましょう。
差を説明できる制度
基本給や賞与のように、職務内容や責任の程度によって差が生じやすい待遇は、差自体をなくすよりも、なぜ差があるのかを説明できる制度に整えることが現実的です。
具体的には、正社員・非正規社員を問わず「役割」を基準に基本給の水準を決め、勤務地や勤務時間の制約といった合理的な条件の違いに応じて支給比率を調整する、役割等級制度への刷新が考えられます。
仕事内容ではなく雇用形態そのものを理由に差をつける説明は、2026年10月施行の改正ガイドラインでは通用しにくくなるため、客観的な基準づくりが重要です。
関連記事:同一労働同一賃金ガイドラインとは?2026年改正のポイントをわかりやすく解説
差そのものをなくす制度
通勤手当や食事補助のように、雇用形態によって必要性が変わらない待遇は、差そのものをなくす方が合理的です。
最高裁は、2018年6月1日のハマキョウレックス事件判決において、契約社員に給食手当を支給しないことは不合理と判断しました。勤務中に食事をとる必要性は雇用形態にかかわらず異ならないためです。
こうした待遇は、雇用形態を問わず一律に支給する方が、差の理由を説明する手間もかからず、労使トラブルの予防にもつながります。
参考:労働基準判例検索-全情報|ハマキョウレックス(差戻審)事件
参考:国税庁|食事の現物支給に係る所得税の非課税限度額の引上げについて
雇用形態を問わず一律導入しやすい「チケットレストラン」
エデンレッドジャパンが提供する「チケットレストラン」は、全国25万店舗以上の加盟店での食事を半額で購入できる食事補助の福利厚生サービスです。雇用形態や勤務地、勤務時間を問わず一律に利用できるため、非正規社員を含めたすべての従業員に公平な制度を導入しやすい点が特徴です。
一定の要件を満たせば、所得税の非課税枠の対象にもなるため、企業側・従業員側双方にメリットの大きい施策として、すでに 4000社以上が導入する人気サービスとなっています。
関連ページ:食事補助を福利厚生で導入するならチケットレストラン
非課税枠の詳細については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
関連記事:【税理士監修】食事補助の非課税上限が7500円へ!給与にしないための非課税の条件を解説
同一労働同一賃金にまつわるよくある質問
ここでは、同一労働同一賃金について企業からよく寄せられる質問に回答します。
Q. 同一労働同一賃金は、正社員同士の待遇差にも適用されますか?
【A. 適用されません。】
同一労働同一賃金は、正社員などの通常の労働者と非正規雇用労働者との間の格差是正を目的とした制度であり、正社員同士の待遇差はそもそも対象外です。年齢や評価による差は、この制度の観点からは問題になりません。ただし、性別を理由とした賃金差別は労働基準法第4条で禁止されているほか、賃金以外の待遇についても男女雇用機会均等法に抵触するおそれがあるため注意が必要です。
参考:e-Gov 法令検索|労働基準法|第4条
参考:e-Gov 法令検索|雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律|第6条
Q. 待遇差について労働者から説明を求められたら、いつまでに対応すればいいですか?
【A. 明確な期限の定めはありません。】
パートタイム・有期雇用労働法には、説明を求められてから何日以内に回答すべきという期限規定はありません。ただし、求めがあった場合は遅滞なく説明することが前提とされており、口頭と資料をあわせて用いる、またはわかりやすい資料を交付する方法が示されています。対応を先延ばしにすると、行政指導の対象になるおそれがあります。
Q. 同一労働同一賃金のルールは、中小企業にも適用されますか?
【A. 適用されます。】
パートタイム・有期雇用労働法は、大企業には2020年4月1日から、中小企業には猶予期間を経て2021年4月1日から全面施行されています。現在は企業の規模にかかわらず、すべての企業が対応の対象です。「うちは小さい会社だから関係ない」という認識は誤りであるため、注意が必要です。
参考:厚生労働省|パートタイム・有期雇用労働法及び労働者派遣法の施行状況等について
Q. 派遣社員にも同じルールは適用されますか?
【A. 派遣社員には別のルールが適用されます。】
派遣社員については、パートタイム・有期雇用労働法ではなく、労働者派遣法に基づく「派遣先均等・均衡方式」または「労使協定方式」のいずれかで待遇が決定されます。比較の対象となる労働者や決定方式が異なるため、本記事で解説した内容がそのまま当てはまるわけではありません。
関連記事:【社労士監修】同一労働同一賃金で派遣社員の働き方はどう変わる?企業のメリットも
「正社員の方が低い」を放置せず、待遇差の理由を説明できる状態に
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【この記事のまとめ】
・正社員の方が待遇が低いこと自体は、同一労働同一賃金の対象外で直ちに違法ではない ・2026年10月の改正で、雇入れ時の説明義務への対応がこれまで以上に求められる ・待遇差の理由を説明できる状態を整えることが、労使トラブルの予防につながる
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正社員の待遇が非正規社員より低いケースは、多くの場合、直ちに違法とはなりません。とはいえ、実際のケースでは、待遇差が従業員の不満につながる可能性が十分に考えられます。
2026年10月の改正で説明義務への対応がこれまで以上に求められる中、待遇差の理由を整理し、いつでも説明できる状態にしておくことが、企業のリスク管理につながります。
差そのものをなくしたい場合は、「チケットレストラン」のように雇用形態を問わず一律に導入できる制度への切り替えも、有効な選択肢のひとつです。
関連記事:「チケットレストラン」の仕組みを分かりやすく解説!選ばれる理由も
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