若手社員の離職理由を知ることは、自社に隠されている構造的な課題を明らかにするための重要なステップです。本記事では、離職にまつわる最新の調査結果をもとに、令和の離職観や離職の理由とその予兆・企業が取るべき具体策を多角的に解説。若手社員の離職を防ぎ、エンゲージメントを高めるための実践的なヒントをお届けします。
調査で見えてきた「令和の離職観」とは
近年の調査からは、離職が「特別な選択肢」ではなく、ごく自然なキャリアの一部として受け入れられつつある実態が見えてきます。特に若年層では、早期離職や転職への心理的ハードルが大きく下がっており、企業にとっても「定着ありき」の採用戦略は通用しなくなっているのが実情です。ここでは、ジョブ総研の調査をもとに、令和時代における「離職観の変化」を読み解きます。
参考:Job総研『2025年 退職に関する意識調査』を実施しました
離職の心理的ハードルは94.3%が「下がった」と実感
出典:Job総研『2025年 退職に関する意識調査』を実施しました
Job総研は、2025年3月、全国の20~50代の男女を対象に「2025年 退職に関する意識調査」をおこないました。
同調査では「退職に対する心理的ハードル」について、回答者の94.3%が「下がっていると思う」と回答しています。年代別では、20代と40代が96.5%・50代が91.9%・30代は91.0%となり、年代による価値観の違いも明らかとなりました。
この調査結果からは、終身雇用の保証が薄れる中、転職によるキャリアアップが若手人材を中心にごく一般的な選択肢となっていることがわかります。
「早期離職が当たり前」と感じている人が8割近く
出典:Job総研『2025年 退職に関する意識調査』を実施しました
「今の時代、早期離職は当たり前か」との設問に対しては、77.8%の人が「当たり前だと思う」と回答しました。
厚生労働省の統計を見ても、令和3年3月に卒業した新規大卒就職者のうち、34.9%が入社から3年以内に離職しています。若手を中心とした早期離職は、もはや例外的なものではないといえそうです。
一方で、早期離職が増加し、転職周期が早まることにともない「人材が育成されない」「管理職が減る」「企業の賃上げが必須になる」などの課題も浮き彫りとなっています。
参考:厚生労働省|新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)を公表します
退職意欲が連鎖する「同僚の退職」の影響
出典:Job総研『2025年 退職に関する意識調査』を実施しました
同じくJob総研の調査によれば、同僚の退職によって「転職意欲が上がる」と回答した人は68.1%にのぼりました。
特に年齢や職務内容が近い同僚の離職は、自身のキャリアを見直すきっかけになりやすく、連鎖的な退職を引き起こす要因にもなります。
なお、同僚の退職でネガティブな印象を持つ年数については、平均が1.2年以内でした。これに対し、ポジティブな印象を持つ年数を聞くと、平均が4.2年以降となっています。この数字からは、入社から3年前後が一般的に妥当な退職時期として受け取られていることがわかります。
関連記事:離職率の平均は?日本の現状と改善に向けた効果的な取り組みを紹介
若手が離職を決断する3つの理由
出典:ProFuture株式会社/HR総研|「若手社員の離職防止とオンボーディング」に関するアンケート
短期間での離職が一般的になった今、企業には若手が離職に至るそもそもの理由を理解することが求められています。HR総研の調査によると、若手社員の離職の原因トップ3は、企業規模を問わず「業務内容にミスマッチ」「待遇」「上司との人間関係」でした。ここでは、同調査をもとに、企業の課題を整理します。
業務内容のミスマッチ
若手社員の離職理由として多く挙げられるのが「業務内容のミスマッチ」です。大企業では38%・中堅企業で31%、中小企業でも28%がこの理由を選んでおり、企業規模を問わず共通の課題となっていることがわかります。
具体的なケースとしては「採用時に業務の魅力を過剰に強調され、入社後にズレを感じた」「配属先が希望通りにならなかった」などが挙げられます。
企業は、入社後に「話が違う」「これでは続けられない」と感じさせないような工夫をすることが大切です。
待遇への不満
中堅企業における若手社員の離職理由のトップは「待遇」で、全体の半分にあたる49%を占めています。大企業・中小企業を見ても、それぞれ2位に位置しています。
一般的に待遇は、従業員に対する企業姿勢の表れとして受け取られるものです。好待遇の企業は、従業員に「大切にされている」という実感を与えられるため、モチベーションやパフォーマンス、ひいては業績の向上も期待できます。
若手社員の離職防止には、給与水準をはじめとする待遇への納得感が必要であることがわかります。
上司との人間関係
同調査では、中小企業の34%・中堅企業の36%・大企業の32%が「上司との人間関係」を若手社員の離職理由として挙げています。
特に新卒者をはじめとする若手社員にとって、直属の上司は「企業への愛着」に直結する存在です。信頼関係が築けていない場合、不満や不安を相談できずに内面化し、孤立感が募ることで退職に至るケースが少なくありません。
企業には、若手社員の心情に寄り添った丁寧なサポートが求められます。
企業が見落としがちな「離職の予兆」
実際に離職を申し出る前の段階で、すでに従業員の気持ちが自社から離れかけているケースは少なくありません。こうした「離職予備軍」に早期に気づけるかどうかが、定着率を左右する重要なポイントです。ここでは、企業が見逃しがちな「離職の予兆」を3つ紹介します。
「会話が減る」「笑顔を見せない」などコミュニケーションの変化
離職を考え始めた従業員は、無意識のうちに職場内でのコミュニケーションを避けるようになります。具体的には、以下のような変化が見られます。
- 雑談に加わらなくなる
- あいさつをしなくなる
- 笑わなくなるなど、表情の変化が乏しくなる
- 一人でいる時間が増える
こうした小さな変化に気づくためには、上司だけでなく、同僚やチーム全体で日頃から声をかけ合う風土づくりが不可欠です。「何となく元気がない」「話しかけづらくなった」といった感覚こそ、組織が拾うべき最初のサインです。
勤務態度・パフォーマンスの低下
エンゲージメントが下がった従業員は、行動面にも以下のように変化が現れます。
- ミスが増える
- 仕事中の集中力が続かない
- 報告や相談が減る
- やる気の低下が隠しきれなくなる
こうした変化は「怠け」ではなく「働く意義の喪失」や「期待とのギャップ」によって引き起こされているのかもしれません。
特に、真面目で優秀な人材ほどフラストレーションを内面化しやすく、結果として思いがけない変化が現れる傾向にあります。上記のような兆候が見られたら、頭ごなしに叱るのではなく、まずは丁寧に背景を確認することが大切です。
体調不良や私用による欠勤の増加
ストレスの蓄積は、心身の不調として表れやすいものです。エンゲージメントが低下した従業員においては、体調不良を理由とする欠勤や早退、有給休暇の頻度が増える傾向があります。
日々の業務にプレッシャーやストレスを感じながらも、誰にも相談できずに抱え込んだ結果、出勤が心理的にも身体的にも難しくなる──そんな状態が「静かな離職予備軍」の兆候であるケースは決して少なくありません。
また、別の可能性として、私用や体調不良を理由にした休暇の裏で転職活動が進められているケースもあります。
いずれにせよ、こうした欠勤の背景に何があるのかを上司やチームが丁寧に拾い上げ、必要に応じて業務量の調整やメンタル面のケアをおこなうことが大切です。
関連記事:【退職代行】調査で見えた「職場の本質的課題」とは?効果的な対策も
若手社員の離職を防ぐ「職場設計」
若手社員の定着には、入社直後からの職場体験が大きく影響します。仕事に対する理解が浅く、環境の変化にまだ慣れていない新卒層にとって、職場の「最初の印象」がその後の自社に対する愛着やモチベーションを大きく左右するからです。ここでは、若手が定着する職場環境をどう設計すべきか、企業が注力すべき要素を整理します。
新卒者が感じやすい「ギャップ」へ対応する
新卒者が早期に離職を決断する背景には、多くの場合、入社前に描いていた理想と現実のギャップがあります。
「業務内容が想像と違った」「想定よりも忙しい」「社風が合わない」といったギャップが生まれるのを防ぐには、採用時に提示する自社の業務内容やイメージと、実際のそれとを一致させることが大切です。
入社前の対策としては、人事と現場との連携を強化し、現場社員との接点づくりやインターンシップ制度の導入・入社後には配属に対する配慮と説明など、ギャップを最小限に抑える仕組みをつくることが求められます。
「横のつながり」の強化で不安の芽を拾う
若手社員が早期に離職してしまう理由のひとつに、相談できる相手がいないことによる孤立感があります。特に新卒者をはじめとする若手社員は、先輩や上司など「縦のつながり」に偏りやすく、よりストレスを溜めやすい傾向にあるため注意が必要です。
対策としては、同期社員同士の交流機会を設けたり、年齢の近い先輩社員をメンターに任命したりするなど、心理的に話しやすい環境を提供する方法が考えられます。
もちろん、縦のつながりも大切です。定期的な1on1ミーティング等を通じ、普段は言えない不安や不満を吸い上げ、課題の早期解決を図りましょう。「聞かなくても声が届く」体制が、離職の芽を摘む鍵です。
働きやすい職場環境を整備する
柔軟な働き方や物理的な職場環境の整備は、若手の定着において軽視できない要素です。
具体例としては、フレックスタイム制・リモートワーク・時短勤務といった柔軟な働き方の導入、清潔なオフィスや休憩スペースの整備などが挙げられます。
これらは単に利便性を高めるだけでなく、職場への「安心感」や「自分らしく働ける」感覚づくりに貢献します。また、制度があっても現場で活用されていないケースもあるため、使いやすさの設計や運用の柔軟性も重要です。
単なる制度の有無だけでなく、実際に活用できるかどうかを基準にした現場目線の環境整備が、定着支援の基盤となります。
賃上げをはじめとする待遇の改善を進める
若手社員の離職を防ぐには、納得感のある待遇も不可欠です。
物価高が続く今、収入の満足度は生活の安定に直結します。待遇は「自分がどう評価されているか」を測る指標でもあるため、単なるベースアップや定期昇給だけでは、他社との比較や将来不安を払拭するには不十分です。
従業員が明確なメリットを感じられ、同時に他社との差別化を図るには、成果や成長に応じた報酬設計・評価の透明性・フィードバックと連動した給与体系が求められます。
一方で、企業規模や経営状況によっては、賃上げが現実的ではないケースもあります。この場合、一時金や福利厚生など、企業に負担の少ない形での待遇改善を検討するのもひとつの方法です。
特に福利厚生は、一定の条件を満たすことで所得税の非課税枠を活用できるため、給与で同額を支給するよりも従業員の実質的な手取りを増やす効果が期待できます。企業の法人税の削減も可能な、企業側・従業員側の双方にとってうれしい施策です。
注目の福利厚生「チケットレストラン」
福利厚生の中でも、特に広く支持を集めているサービスに、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」があります。
「チケットレストラン」は、従業員のランチ代を企業が補助する食事補助の福利厚生サービスです。導入企業の従業員は、全国25万店舗以上の加盟店での食事を実質半額で利用できます。
加盟店のジャンルは幅広く、コンビニ・カフェ・ファミレス・三大牛丼チェーン店など、さまざまなニーズに対応可能です。また、勤務時間中にとる食事の購入であれば、利用時間や場所の制限もありません。
業種や勤務体系を問わず柔軟に利用できる福利厚生として、すでに3,000社を超える企業に導入され、メディアの注目度も高まっているサービスです。
関連記事:NHK「おはよう日本」で紹介!「チケットレストラン」はどんなサービス?SKソリューションの事例も紹介
導入企業の声|人材定着と生産性向上に貢献する「チケットレストラン」
交通安全施設施工・販売等を手がける「道路サービス株式会社」では、「チケットレストラン」の導入により、人材の定着率維持に一定の成果が見られたといいます。
従業員からは「バランスを考えプラス一品できるようになった」「朝早い現場でもコンビニで朝食を買って食べられるようになった」といった声もあり、栄養バランスの改善や、それによる生産性の向上といった副次効果も実感されているようです。
現場周辺のコンビニで利用できる利便性も好評で、人手不足が深刻化する中にあっても、他社との差別化に有効な制度として活用されています。
参考:https://douro-s.co.jp/
導入事例ページ
「チケットレストラン」の詳細は「こちら」からお問い合わせください。
離職率を下げ、定着率を高める企業になるために
若手社員を中心とした離職は、決して個人の問題ではなく、企業の構造や仕組みによって引き起こされる「組織としての構造的課題」です。各種調査結果からは、若手社員の早期離職が当たり前になりつつある現実と、それにどう対応するかが企業価値を左右する時代であることが明らかになりました。
重要なのは、離職理由や兆候を「後追い」で対処するのではなく、採用から育成・配置・評価・福利厚生に至るまで、一貫して「人が定着する仕組み」を構築することです。「ここで働き続けたい」と感じられる環境をつくることは、人材の流出を防ぎ、企業の継続的成長につながる重要な礎でもあります。
人材の定着推進の施策をコストではなく未来への投資ととらえることこそ、これからの企業に求められるスタンスといえるでしょう。
参考記事:「#第3の賃上げアクション2025」始動、ベアーズが新たに参画~中小企業にこそ“福利厚生”による賃上げを! “福利厚生”で、より働きやすく、暮らしやすい社会へ~
:「賃上げ実態調査2025」を公開~歴史的賃上げだった2024年も“家計負担が軽減していない”は7割以上!
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