借り上げ社宅・家賃補助・住宅手当、3つの違いを整理
住宅支援の制度は大きく3種類に分かれます。名前が似ているため混同されることがありますが、税務上の扱いと運用の仕組みが異なります。
借り上げ社宅とは
借り上げ社宅は、企業が法人名義で賃貸物件を契約し、企業が貸主となって、従業員へその賃貸物件を貸し出す制度です。家賃の支払いは企業が行い、従業員は給与天引きで一定の「使用料」を負担します。
後述する非課税条件を満たせば、企業が負担する家賃分は現物給与として課税されることはありません。企業・従業員の双方にとって税負担を抑えることができる制度です。
家賃補助・住宅手当とは
家賃補助は従業員が個人名義で契約した物件に対して、企業が補助金を支給する制度です。「家賃補助」と「住宅手当」は、名称は異なりますが、税務上は現金の支給と同じ扱いになるため、支給額にかかわらず原則として給与課税です。従業員の所得税・住民税・社会保険料すべてに影響します。
なお、社内で「家賃補助」と呼んでいても、企業が法人名義で契約している場合は、税法上は借り上げ社宅として扱われます。
関連記事:福利厚生の社宅とは?導入メリットや税務ルール、住宅手当との違いを解説
3制度の比較表
制度の違いを比較表で整理します。
| |
借り上げ社宅 |
家賃補助・住宅手当 |
| 賃貸契約の名義(家賃を支払う者) |
企業 |
従業員 |
| 支給するもの |
住宅(現物) |
現金 |
| 課税区分 |
条件付きで非課税 |
給与課税 |
| 物件 |
企業が管理 |
従業員が自由に選択 |
| 企業の運用負担 |
大きい |
小さい |
出典
:国税庁|No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき
:国税庁|No.2600 役員に社宅などを貸したとき
関連記事:福利厚生の非課税・課税ルールを徹底解説【税理士監修・2026年版】
借り上げ社宅と家賃補助で税負担はどう変わるか
借り上げ社宅と家賃補助の最も大きな差は、従業員に支給した住宅補助が課税されるかどうかです。
家賃補助は給与課税される
家賃補助として、例えば月3万円を支給した場合、年間36万円が課税所得に加算されます。所得税・住民税・社会保険料すべてに影響するため、従業員の手取りへの恩恵は支給額より少なくなります。企業側も社会保険料の事業主負担が増加する可能性があります。
国税庁のタックスアンサーでも次のように明記されています。
現金で支給される住宅手当や入居者が直接契約している場合の家賃負担
社宅の貸与とは認められないので給与として課税されます。
出典
:国税庁|No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき
:国税庁|No.2600 役員に社宅などを貸したとき
借り上げ社宅が非課税になる条件
借り上げ社宅は、以下の条件を満たすことで給与課税されません。
- 従業員から「賃貸料相当額」の50%以上を徴収していること
賃貸料相当額は、次の①〜③の合計額で算出します。
- ①(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)× 0.2%
- ②12円 ×(建物の総床面積㎡ ÷ 3.3㎡)
- ③(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)× 0.22%
実務上は固定資産税の課税標準額が毎年変わり、上記の計算を都度行うのは手間がかかります。「実際の家賃の50%以上」を従業員負担とする形で運用しているケースもあるようです。
なお、借り上げ社宅の賃貸料相当額は固定資産税の課税標準額をもとに算出するため、課税標準額を貸主に確認する必要があります。
関連記事:【税理士監修】住宅手当は課税・非課税どちら?それぞれのケースや課税額を解説
借り上げ社宅を導入する際の注意点
借り上げ社宅は税負担の軽減に強みがある一方、運用面では企業側の負担が集中します。
企業側の事務負担
借り上げ社宅では、物件ごとに選定から契約・更新・解約まで一貫して企業が管理の主体となります。担当者の異動や退職があっても速やかに引き継ぎができる体制づくりも必要です。
また、空室が出ても賃料の支払い義務は続くため、入退居のタイミング管理が収支に影響します。退去時の原状回復費用や違約金も企業負担となるケースがあるため、契約条件の確認が欠かせません。
社内規程の整備が必要
借り上げ社宅を提供するにあたって、入居後のトラブルを防ぐ目的で、事前に「借り上げ社宅管理規程」を整備する必要があります。規程には以下の項目を盛り込むのが一般的です。
- 入居資格
- 入居期限
- 同居人の範囲
- 仲介料・敷金の負担者
- 使用料の設定
- 禁止事項(第三者への転貸など)
- 光熱費・町内会費など入居者負担の範囲
- 損害賠償
- 退去時の手続き
- 退去期間
借り上げ社宅のメリット・デメリットまとめ
借り上げ社宅の良い点と配慮が必要な点をまとめます。
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内容 |
| メリット |
- 非課税条件を満たせば税負担を抑えられる
- 企業が契約すると通常よりも家賃が抑えられていることが多い
- 採用時の訴求力を高める
- 従業員の住居探しや契約手続きの負担を軽減できる
|
| デメリット |
- 契約・更新・解約など管理業務が企業に集中する
- 管理費や更新料などの企業負担が発生する
- 空室期間も家賃が発生するリスクがある
- 社内規程の整備が必要になる
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※借り上げ社宅の社会保険料の扱いは所得税とは別の扱いとなり、個々に整理が必要です。最終判断は、社労士が給与計算で対応します。導入前に社会保険労務士へ確認することをおすすめします。
家賃補助を導入する際の注意点
運用が簡便な家賃補助ですが、制度設計を誤ると想定外のコストや従業員間の不公平感につながります。
公平性を支給上のルールで担保
持ち家の従業員を対象に含めるか、賃貸のみに絞るか、上限額をどう設定するかを明確にしておく必要があります。支給対象者と非対象者の間で不満が生じないよう、規程として明文化しておくことが求められます。
【参考】住宅手当の支給金額
厚生労働省の「令和7年就労条件総合調査」によると、住宅手当を支給している企業の割合は45.7%、支給額の平均は月1万8,700円です。企業規模が大きいほど支給額も高く、1,000人以上では月2万1,100円、30〜99人規模では月1万7,800円となっています。制度設計の際の参考にしてください。
住宅手当は、扶養家族の有無や持ち家の有無でも金額に差を設ける場合があります。東京都産業労働局の「中小企業の賃金事情(令和7年版)」をみてみましょう。
一律支給の場合
| 扶養家族の有無 |
平均支給額 |
| 扶養家族あり |
18,822円 |
| 扶養家族なし |
17,363円 |
住宅の形態別支給の場合
| 住宅形態 |
扶養家族あり |
扶養家族なし |
| 賃貸 |
28,612円 |
21,491円 |
| 持家 |
18,170円 |
15,081円 |
扶養家族がいる場合や賃貸を利用している場合の方が、支給金額が多いことがわかります。
出典
:厚生労働省|令和7(2025)年就労条件総合調査の概況
:東京都|中小企業の賃金事情(令和7年版)
社会保険料への影響を試算
家賃補助は標準報酬月額に算入されるため、支給額によっては企業・従業員双方の社会保険料が増加します。賃上げの代替として家賃補助を検討する場合、社会保険料まで考慮して実質的にかかるコストを試算してから判断することをおすすめします。
家賃補助のメリット・デメリットまとめ
家賃補助のメリットやデメリットをまとめます。
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内容 |
| メリット |
- 居住地や物件の選択を従業員に委ねられるため生活スタイルに合わせた住まいを確保しやすい
- 企業側の管理業務がほとんど発生しない
- 制度として早期に導入しやすい
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| デメリット |
- 支給額が給与課税される
- 社会保険料の標準報酬月額に算入され企業・従業員双方の負担が増える可能性がある
- 支給ルールの公平性を担保する規程の設計が求められる
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関連記事:【税理士監修】所得税が非課税になる手当を一覧で確認!非課税となる要件も解説
借り上げ社宅or家賃補助|向いている企業・慎重な検討が必要な企業
以下では、借り上げ社宅か家賃補助かを選択する際のポイントとなる内容をまとめます。
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借り上げ社宅 |
家賃補助 |
| 向いている企業 |
- 採用時の住居サポートを重視
- 非課税効果を利用したい
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- 運用負荷を少なくしたい
- 従業員の居住エリアを限定しない制度導入を早期に始めたい
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| 慎重に検討すべき企業 |
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- 金銭的負担をなるべく抑えたい(コストと税負担が増えるため)
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両制度を組み合わせている企業もある
制度は一方のみを選ぶ必要はありません。転勤・異動対象者には勤務地近くの借り上げ社宅、地元での採用者やリモート勤務者には家賃補助、という形で使いわけている企業もあります。勤務形態や雇用形態に合わせた組み合わせを検討してもよいでしょう。
【Q&A】借り上げ社宅や家賃補助でよくある質問
借り上げ社宅や家賃補助などの制度理解を助けるFAQをまとめました。
Q. 住宅手当と家賃補助の違いは何ですか?
A. 住宅手当と家賃補助は呼び名が異なりますが、税務上原則として給与として扱われます。どちらも従業員が個人で契約した住居に対して企業が金銭を支給する仕組みで、給与課税の対象となります。
Q. 借り上げ社宅は、従業員が自分で物件を選べる?
A. 企業の規程によります。従業員が希望する物件を企業が審査・承認したうえで法人名義で契約する「指定物件型」と、企業があらかじめ物件を用意する「提供型」があります。前者であれば、従業員が希望する物件を指定可能です。
例えば「freee福利厚生」などの社宅サービスでは、「仲介会社は指定されますが、物件は従業員の皆様が自由に選ぶことは可能です」とFAQに紹介されています。
Q. 借り上げ社宅の使用料はどう設定すればいいですか?
A. 国税庁No.2597に基づく「賃貸料相当額」の50%以上を従業員から徴収することが非課税条件です。計算が複雑なため、実務上は「実際の家賃の50%」を従業員負担とする方法が一般的です。「賃貸料相当額」は、固定資産税の課税標準額をもとにした計算も必要になるため、顧問の税理士等へ確認することをおすすめします。
非課税を活用するなら食事補助にも注目
今、物価高を受け、生活負担を軽減する手段として福利厚生が注目されています。「第3の賃上げ」とも呼ばれる非課税の福利厚生サービスを活用して手取りを増やす仕組みは、従業員の手元に残る金額が増えるだけでなく、「賃上げ疲れ」の回避として企業でも導入しやすい方法です。
食事補助は、企業側のコスト面と毎日使えて従業員に響きやすい効果から、導入しやすい非課税の福利厚生です。比較的取り入れやすく、2026年4月1日より、食事補助の非課税上限額が月額3,500円から7,500円(税別)へ引き上げられたことも後押しとなり、導入する動きが増えています。
食事補助の非課税枠を活用できる福利厚生サービスとして、約40年の実績を持つ「チケットレストラン」があります。「チケットレストラン」は固定費0円・契約後は最短2週間で導入でき、全国25万店舗以上の加盟店(コンビニ・飲食チェーン等)で利用できる食の福利厚生サービスです。勤務形態や勤務場所を問わずに提供できるため、公平性を備えます。食事補助の活用も検討してみてください。
非課税枠拡大が施行された4月の「チケットレストラン」新規契約数は、前年比約1.7倍と増えました。中小企業では3社に1社が非課税枠上限の7,500円でサービスを開始しています。
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自社に最適な住居サポートと福利厚生を選ぶために
借り上げ社宅と家賃補助の違いについて、税務・運用コスト・従業員へのメリットの観点から解説しました。借り上げ社宅は税負担軽減のメリットが大きい一方、企業側の管理工数がかかる点に留意が必要です。対して家賃補助は運用が簡便ですが、課税対象となるため実質的なコスト設計には注意が求められます。
さらに、生活支援の施策として「食事補助」の活用も有効です。非課税枠が拡大された今、「チケットレストラン」のような食事補助の福利厚生サービスを組み合わせることで、導入の手間を抑えつつ、従業員にとって実用的な福利厚生を充実させられます。
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