働き方改革とは?中小企業にも対応が求められる理由
働き方改革とは、一人ひとりの事情に応じて多様な働き方を選べる社会を実現するための取り組みです。政府主導で進められており、長時間労働の是正・生産性向上・多様な人材の活躍推進などを主な目的としています。
背景にあるのは、少子高齢化による労働人口の減少です。長時間労働を前提とした働き方では企業運営が成り立ちにくくなっており、限られた人材で成果を出せる体制づくりが急務となっています。
関連記事:働き方改革とは?取り組みが必要な理由や罰則をわかりやすく解説
中小企業の働き方改革はいつから始まった?
働き方改革関連法は2019年から順次施行されています。中小企業には猶予期間が設けられていましたが、現在は主要制度の多くが適用済みです。特に重要な制度は以下の2点です。
- 時間外労働の上限規制:2020年4月から
- 同一労働同一賃金:2021年4月から
「残業でカバーする働き方」や「曖昧な待遇差」には、2026年5月時点では対応できていなければいけない状況です。
参考
:厚生労働省|時間外労働の上限規制
:厚生労働省|同一労働同一賃金
大企業と中小企業で異なるポイント
働き方改革への対応は、大企業と中小企業で異なります。大企業には専任の人事部門やDX推進部署があることが多い一方、中小企業では経営者や現場責任者が兼務しているケースも珍しくありません。システム投資や人員確保に使える予算が限られているのも中小企業の特徴です。
一方で、中小企業には意思決定の速さという強みがあります。制度変更や業務改善を現場レベルで素早く進められる小回りの良さは、大企業にはないメリットです。
中小企業の働き方改革の現状
中小企業は働き方改革について、現在どのような状況に置かれているのでしょうか。働き方改革の実現に関する課題や、実施していない中小企業が抱えるリスクなどについて見ていきましょう。
多くの中小企業が抱える人材を取り巻く課題
中小企業の多くは、以下のような課題を抱えています。
- 人手不足
- 採用難
- 長時間労働の常態化
- 業務の属人化
- 従業員の高齢化
中小機構が2026年3月に実施した「中小企業景況調査」によると、全産業の従業員過不足DI(過剰-不足を計算した数値)は-23.2でした。0を超えている業種が1つもないことから、業種を問わず人手不足感が強い状況であるといえます。
また、中小企業では一人あたりの業務範囲が広くなりやすい傾向があり、特定の従業員に仕事が集中しがちです。その結果、特定の従業員以外が業務に対応できないケースが発生しやすく、残業が当たり前の状態に陥りやすい状況があります。
働き方改革が進み、従業員の働きやすい環境を整備する企業が増えている中、業務の属人化や長時間労働などが発生しやすい環境では、人材の採用も定着もスムーズに進みにくくなります。
働き方改革への対応が後手に回ることで人材確保が滞り、その結果としてさらに働き方改革に取り組みにくくなるという悪循環も生じかねません。
参考:中小機構|中小企業景況調査|調査報告書
「働き方改革で中小企業は潰れる」といわれる理由
中小企業の中には、従業員のマンパワーに頼った経営を続けているケースもあるかもしれません。そのような中小企業では、働き方改革への対応に以下のような不安を抱いていることもあるでしょう。
- 残業削減で売上が下がるのではないか
- 人件費やシステム導入でコストが増加するのではないか
- 人手不足で業務が回らなくなるのではないか
特に、既に人員に余裕がない企業では「現場が立ちゆかなくなる」という危機感から、今後の方針を決めかねていることも考えられます。
改革しないリスクのほうが大きい理由
一方で、働き方改革に取り組まないことで生じるリスクも見逃せません。労働環境が改善されない企業は人材採用が難しくなりやすいですし、早期離職のリスクも考えられます。離職率の上昇によって採用や教育のコストがかさむ悪循環に陥ることもあるでしょう。
今いる従業員が、より良い待遇の職場を求めて、転職をすることも考えられます。働き方改革は単なる法律への対応ではなく、企業の競争力を維持するために欠かせない人材確保を目的とした取り組みであると捉えることが重要です。
中小企業が働き方改革に取り組むメリット
ここでは、中小企業が働き方改革に取り組む代表的なメリット4点を紹介します。
採用力向上につながる
JobQ Townの「2024年 転職条件の実態調査」によると、転職先を決める際に働き方を優先すると回答した人の割合は65.8%でした。給与を優先する人の割合よりも多いことから、求職者の働きやすさを重視する傾向が分かります。
特に20代は働き方を優先する人が71.1%と多いため、若手人材の採用を目指している場合には、残業時間や休暇制度・福利厚生などの整備を行い、働き方改革に取り組むことが重要です。
参考:JobQ Town|2024年 転職条件の実態調査
離職率低下につながる
働き方改革による長時間労働の是正や柔軟な働き方の導入は、従業員満足度の向上につながります。有給を取りやすい環境づくりや業務負担の平準化が進めば、従業員のストレス軽減と定着率向上につながるでしょう。
今いる従業員が「長く働き続けたい」と考える職場づくりをすることで、離職率低下を目指せます。
生産性向上につながる
働き方改革は労働時間を削減することではなく、限られた時間の中で成果を出せる体制を整えることです。そのためには、以下のような取り組みが役立ちます。
- 不要な会議の削減
- 業務フローの見直し
- ペーパーレス化
- 情報共有の効率化
- DX化による業務効率化
実際に、このような方法で働き方改革を推進した企業では、生産性向上や利益増加につながった事例も報告されています。
人件費削減につながる
業務効率化や業務分担の見直しが進めば、残業時間の削減も可能です。残業時間が減れば人件費が減るため、コスト削減にもつながります。
中小企業の働き方改革でよくある課題
中小企業が働き方改革を進めるときに、ぶつかりやすい壁についても見ていきましょう。あらかじめ意識しておくべき壁を知ることで、必要な対策を取りやすくなります。
人手不足で改革に着手できない
日々の業務をこなすだけで手いっぱいという中小企業では、必要性は分かっていても働き方改革に割けるリソースがないという状況も起こり得ます。
IT・DX化が進まない
働き方改革では、勤怠管理や情報共有のデジタル化も必要です。ただし、中小企業ではIT人材の不足や、導入コストがかかること、現場の抵抗感などから、DX化が進みにくい傾向があります。
管理職の意識改革が難しい
管理職の意識改革や職場の風土づくりが伴わず、働き方改革制度を実施しても職場に浸透しないこともあります。このような場合には、働きやすい環境づくりのために時短勤務制度やリモートワーク制度などを整えたとしても、あまり利用されません。
中小企業が働き方改革を成功させる進め方
中小企業の働き方改革はどのように進めればよいのでしょうか。中小企業に合った現実的なステップを紹介します。
現状を把握する
最初のステップは自社の現状を把握して課題を可視化することです。例えば以下の状況を確認すると、働き方改革に向けて何から取り組むべきか優先順位が分かります。
- 月ごとの残業時間
- 有給取得率
- 離職率
- 属人化している業務
- 繁忙期の負荷状況
現状把握をせずに働き方改革に取り組むと、現場に合わない施策になりかねません。
小さく始める
大規模な改革を一気に進める必要はありません。まず一部の部署で試験的に導入する、日々発生する小さな業務を自動化するなど小さく始めることで、働き方改革を抵抗感なく進めやすくなります。
現場負担を減らす施策から始める
現場がラクになる以下のような施策から始めることも、働き方改革では重要です。
- 勤怠管理システムの導入
- ペーパーレス化
- Web会議の活用
- 業務マニュアルの整備
施策に取り組み始めて、ラクになったことが体感できると、従業員の中に「働き方改革にもっと積極的に取り組もう」という空気が醸成されていきます。
福利厚生を活用する
従業員が働きやすい環境をつくるには、福利厚生の活用も意識するとよいでしょう。従業員満足度向上につながりやすい施策を導入することで、心身の健康やモチベーションを高く保ちつつ働く環境を整えられます。
例えば、食事補助・健康支援・柔軟な休暇制度などの中から、自社の従業員が「ほしい」と感じるようなニーズのある制度を選んで導入しましょう。
また福利厚生の中には、条件を満たして導入すると、所得税の非課税枠を活用できるものもあります。例えば食事補助は、所得税の非課税枠を活用できる福利厚生の1つです。制度の活用によって、実質的な手取りアップにもつながります。
経営層が継続的に発信する
働き方改革の取り組みは、制度を導入しただけでは定着しません。職場に根付かせるには、経営層から繰り返し、なぜ必要なのか、どのように役立つのか、といったことを発信し続ける必要があります。
中小企業が活用できる助成金・補助金
働き方改革を進めるときには、コストがかかる施策もあります。コストを理由に働き方改革が滞るといったことを避けるために、中小企業が働き方改革に活用できる助成金について押さえておきましょう。
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制度名
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コース名・枠
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働き方改革につながる概要
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働き方改革推進支援助成金
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労働時間短縮・年休促進支援コース
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残業削減や年次有給休暇取得促進に向けて、勤怠管理システム導入・業務効率化設備・就業規則整備などを支援
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働き方改革推進支援助成金
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勤務間インターバル導入コース
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勤務終了後から次の出勤まで一定時間を空ける「勤務間インターバル制度」の導入を支援
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働き方改革推進支援助成金
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業種別課題対応コース
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建設業・運送業・病院など、長時間労働が課題となりやすい業種の労働時間削減や生産性向上を支援
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デジタル化・AI導入補助金
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通常枠
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勤怠管理・労務管理・情報共有ツールなどのIT導入による業務効率化・DX推進を支援
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キャリアアップ助成金
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正社員化コース
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非正規雇用社員の正社員転換によって、人材定着や安定雇用を促進
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事業再構築補助金
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成長分野進出枠(通常類型)
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DX化・業務転換・生産性向上を伴う事業再構築を支援し、働き方改善や業務効率化につなげる
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助成金や補助金は後払い形式が多いため、事前の資金計画が必要です。申請条件や対象経費も細かく定められているため、必要に応じて社労士など専門家へ相談するとスムーズに進めやすくなります。
関連記事:【社労士監修】福利厚生に使える助成金と補助金!種類や特徴とおすすめ施策を紹介
参考
:厚生労働省|働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)
:中小企業デジタル化・AI導入支援事業|デジタル化・AI導入補助金2026
:厚生労働省|キャリアアップ助成金
:事業再構築補助金
中小企業が働き方改革を進めるポイント
中小企業が働き方改革を実効性があるものにするには、制度の導入だけでなく、実際に使われる仕組みをつくることが不可欠です。この点を踏まえたポイントを紹介します。
現場が変化する仕組みをつくる
働き方改革を進めるときには、単に制度を増やすのではなく、現場で実際に動く仕組みにすることが重要です。
例えば、休暇制度を充実させたなら、実際に従業員が休暇を取得できる体制を整えなければいけません。そのためには業務の見直しが必要なケースもあるでしょう。
小さなコストで始められる取り組みから始める
業務効率化のためにシステムを導入するとなると、大きなコストがかかります。一方、今ある業務を洗い出して無駄を削減することは、最小限のコストで実施可能です。まずは今すぐ取り組める働き方改革の施策は何があるかを明確にしましょう。
福利厚生による働きやすさの改善に取り組む
従業員の働きやすさは、福利厚生の充実度によっても変わります。働き方改革の一環として、自社の従業員のニーズに合う福利厚生を整備するのも有効です。
ただし、導入しても利用率が低いと期待した効果を得られない可能性があります。労働政策研究・研修機構の実施した「企業における福利厚生施策の実態に関する調査」によると、従業員の利用率が50%を超えるのは、日常的に利用できる食事に関する福利厚生でした。
毎日のように使える福利厚生を提供することは、従業員が日常的にメリットを実感しやすいため、満足度向上や定着率改善につながります。
関連記事:【2026年版】食事補助とは?福利厚生に導入するメリットと支給の流れ
参考:労働政策研究・研修機構|企業における福利厚生施策の実態に関する調査
中小企業の働き方改革でよくある疑問に回答
中小企業の働き方改革について、よくある質問もチェックしましょう。
働き方改革で中小企業は本当に厳しくなるのでしょうか?
短期的にはコストや手間が増えることもあります。ただし対応しない場合には、採用や定着で競合他社との差が開きかねません。働き方改革の取り組みには、コストを抑えて取り組めるものもあるため、できる範囲で始めることが重要です。
中小企業でも働き方改革は必要ですか?
必要です。人材不足が深刻化する中、必要な人材の確保には、働きやすい環境を整えることが欠かせません。
中小企業が活用できる助成金や補助金には何がありますか?
代表的な制度として、働き方改革推進支援助成金・IT導入補助金・業務改善助成金などがあります。
人手不足時代に選ばれる企業になるために
働き方改革は、法律を守るために仕方なく行うものではありません。採用・定着・生産性などを高めるために行う経営戦略です。中小企業だからこそ、意思決定の速さを活かして、現場に合った施策を素早く取り入れるとよいでしょう。大切なのは制度を整えることではなく、使える制度で現場をラクにすることです。
この観点から、日常的に利用できる食事補助といった福利厚生の導入に取り組むのもよいでしょう。日々の食事代の負担軽減や、条件を満たした導入で利用できる所得税の非課税枠により、実質的な賃上げが可能です。
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