【社労士監修】178万の壁で社会保険はどうなるか解説。扶養から外れるケースは?

公開日: 2026.01.28

更新日: 2026.10.02

【税理士監修】178万の壁で社会保険はどうなるか解説。扶養から外れるケースは?

監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)

178万円の壁とは、所得税がかからない年収の上限のことです。ただし、社会保険には別の加入基準があります。178万円以下で働いていても、勤務先の条件などによって社会保険への加入が必要になったり、扶養から外れたりすることもあるでしょう。178万円の壁と社会保険について解説します。

178万円の壁で社会保険はどうなる?

178万の壁は、「令和8年度税制改正の大綱の概要」に盛り込まれた所得税に関する基準です。社会保険の加入条件に関係するものではありません。

社会保険に関係する年収の壁には、106万円の壁と130万円の壁があります。3種類の年収の壁について、以下の表でチェックしましょう。

年収の壁

主に関係する制度

106万円の壁

勤務先の社会保険

130万円の壁

社会保険の扶養

178万円の壁

所得税

年収の壁を超えると、従業員は税金や社会保険料の負担が増えるため、額面の給与は上がっているにもかかわらず、手取り額が少なくなる可能性があります。

関連記事:【税理士監修】178万の壁とは?社会保険加入との関係やメリット・デメリット

社会保険の扶養から外れる年収

社会保険に関わる年収の壁は、106万円の壁・130万円の壁の2種類です。2つの年収の壁によって、社会保険の扶養から外れる年収について解説します。

勤務先の社会保険に加入するケース

2026年9月時点では、以下の要件を満たしている従業員は、勤務先で社会保険へ加入しなければいけません。

  • 従業員51人以上の企業に勤務している
  • 年収106万円(月8万8,000円)を超えている
  • 週20時間以上勤務している
  • 2カ月を超える雇用の見込みがある
  • 学生ではない

この要件に「年収106万円(月8万8,000円)を超えている」が含まれていることから、勤務先の社会保険に加入し始める年収のことを、106万円の壁といいます。

ただし「年収106万円(月8万8,000円)を超えている」という賃金要件は、最低賃金の上昇により週20時間働くと賃金が月額8万8,000円を超える地域が増えたことから、2026年10月の廃止が決まっています。

また、企業規模に関する要件は、以下のように段階的に廃止されていく計画です。

企業規模要件の変更タイミング

変更後の企業規模要件

2025年10月

従業員51人以上

2027年10月

従業員36人以上

2029年10月

従業員21人以上

2032年10月

従業員11人以上

2035年10月

従業員10人以下

「週20時間以上勤務している」ことが新たな年収の壁として働く恐れはあるものの、106万の壁は今後なくなっていきます。

関連記事:【税理士監修】106万円の壁撤廃はいつから?撤廃でどうなるか影響を解説

参考:厚生労働省|社会保険適用拡大特設サイト|事業主のみなさま

130万円を超えて扶養から外れるケース

年収130万円は社会保険の扶養認定に関する年収の壁です。年収130万円を超えると、原則として社会保険の扶養から外れるため、勤務先の社会保険への加入や、国民健康保険・国民年金への加入などが必要になります。

178万円の壁と社会保険を年収別にシミュレーション

178万円の壁と社会保険の関係を理解するには、年収ごとにどの制度が関係するのかを確認すると分かりやすくなります。

ここでは、給与収入のみのケースを想定して見ていきましょう。なお、社会保険の加入・扶養の判定は、年収だけで決まるわけではありません。勤務先の規模や労働時間などによっても異なります。

年収120万円の場合

年収120万円の場合、178万円には達していないため、給与収入だけでほかに所得がなければ、原則として所得税はかかりません。2026年分について、給与収入が178万円以下の場合は、給与所得控除74万円と基礎控除104万円によって所得税がかからない仕組みです。

一方、社会保険については、年収120万円でも扶養から外れる可能性があります。勤務先の社会保険の要件を満たしている場合は、年収130万円未満であっても勤務先の社会保険への加入対象となるためです。

2026年9月時点では、従業員51人以上の企業で週20時間以上働くなどの条件を満たしていると対象となります。

以上より、年収120万円では「178万円未満だから社会保険も扶養内」とは判断できません。所得税と社会保険は、それぞれの基準を確認する必要があります。

年収140万円の場合

年収140万円の場合も178万円には達していないため、給与収入のみでほかに所得がなければ、原則として所得税はかかりません。

ただし、社会保険については注意が必要です。

企業に勤務する配偶者や親などの健康保険の被扶養者となっている場合、一般的には年間収入130万円未満であることなどが扶養認定の基準となります。そのため年収140万円では、社会保険の扶養から外れる可能性があります。

扶養から外れた場合、勤務先の社会保険の加入要件を満たしていれば、勤務先で健康保険・厚生年金保険に加入することになるでしょう。勤務先の社会保険の対象とならない場合には、国民健康保険や国民年金への加入が必要となるケースがあります。

年収180万円の場合

年収180万円の場合、178万円を2万円上回るため、178万円を超えた部分に所得税がかかります。ただし、178万円を超えた2万円すべてに所得税がかかるわけではなく、所得控除などを踏まえて税額が計算されます。

一方社会保険は、年収180万円という金額だけで加入の有無が決まるわけではありません。勤務先の社会保険の加入要件を満たしている場合は、勤務先の健康保険・厚生年金保険への加入対象となります。

また、家族が加入する健康保険の被扶養者となっている場合は、一般的な扶養認定の基準である年収130万円未満を超えているため、社会保険の扶養から外れる可能性があります。

このように、年収180万円では「178万円の壁を超えたことによる所得税」と「社会保険の加入・扶養」の両方を分けて考えなければいけません。

178万円の壁に対して企業が取るべき対応

2026年の給与から、所得税がかかり始める年収は178万円となり、新たに178万円の壁ができました。この動きに対して、企業ではどのような対応が必要なのでしょうか?

社内制度をチェックする

まずは現状の社内制度を確認しましょう。現在の制度やルールに変更が必要な可能性があります。例えば、就業規則にパートやアルバイトが長時間働きにくくなるような内容があれば、見直しを検討するとよいでしょう。

また178万円の壁になったことで、パートやアルバイトの働き方が変わるかもしれません。従業員の雇用状況や社会保険の加入状況について現状を把握した上で、希望の働き方についてヒアリングしましょう。

制度について従業員へ説明する

所得税に関する年収の壁が178万円に引き上げられることで、実際にどのような変化があるのかを従業員に説明することも必要です。「もっと働きたい」と考えているけれど、制度の仕組みを把握できておらず現状維持を選んでいる従業員もいるかもしれません。

どこまでなら所得税がかからないまま働けるのか、社会保険への加入はどこから必要になるのか、自社の状況に合わせて説明する資料やマニュアルを用意しておくとスムーズです。

「年収の壁・支援強化パッケージ」の活用を検討する

社会保険の適用拡大によって、社会保険に加入するパートやアルバイトが増える企業もあるでしょう。従業員が年収の壁を意識することなく働きやすい環境を整備するには、国が用意している「年収の壁・支援強化パッケージ」の活用が有効です。

106万円の壁対策には、「キャリアアップ助成金(短時間労働者労働時間延長支援コース)」が役立ちます。

パートやアルバイトなどの有期雇用労働者などを新たに社会保険に加入させたうえで、労働時間の延長といった収入アップにつながる取り組みを行うと、従業員1人あたり最大75万円の助成金を受け取れる制度です。

130万円の壁対策には、被扶養者認定を利用できるかもしれません。繁忙期や人手不足によって、年収が130万円を超えたことを企業が証明すれば、期限付きで被扶養者認定を受けられる可能性がある仕組みです。

関連記事:【社労士監修】年収の壁対策はキャリアアップ助成金を活用!待遇改善に役立つ福利厚生も

参考
:厚生労働省|「年収の壁」への対応
:厚生労働省|年収の壁対策として、労働者1人につき最大75万円を助成します

178万円の壁についてよくある質問

178万円の壁により、企業や企業で働く従業員にはどのような影響があるのでしょうか。よくある質問をチェックしましょう。

年収178万円までなら社会保険に加入しなくてよい?

いいえ。178万円は所得税に関する基準であり、社会保険の加入条件とは別です。178万円の壁の範囲内で勤務していても、社会保険への加入が必要になるケースもあります。

106万円の壁はなくなる?

2026年10月には賃金要件が撤廃されるため、「106万円」という金額を基準とする壁はなくなります。ただし、社会保険の適用そのものがなくなるわけではありません。週20時間以上の勤務など、ほかの要件によって加入対象となる仕組みは続きます。

年収が130万円を超えたらどうなる?

原則として社会保険の扶養から外れるため、勤務先の社会保険加入や国民健康保険・国民年金などについて確認が必要です。

178万円の壁に対応しよう

2026年分から、給与収入のみでほかに所得がない場合、年収178万円以下では所得税がかかりません。ただし、社会保険には勤務先で加入するための要件や、扶養認定の基準があります。パートやアルバイトの中には、社会保険を意識して就業調整を行う従業員もいるでしょう。

この変化に対応するには、社内制度のチェックと、従業員への分かりやすい説明が欠かせません。あわせて社会保険に関係する年収の壁を意識することなく働きやすいよう、「年収の壁・支援強化パッケージ」の活用も検討するとよいでしょう。

また、所得税の非課税枠を活用できる福利厚生の導入も有効です。例えば、食事補助は一定の要件を満たして導入すると、従業員の納める所得税額を増やすことなく支給できるため、実質的な手取りアップにつながります。

この仕組みの利用に、ソフトやアプリのセットアップといった手間をかけることなく導入可能な、エデンレッドジャパンの提供する食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」を検討してみてはいかがでしょうか。

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社会保険労務士 吉川明日香

社労士と民間企業の人事部で働くハイブリッド型社労士。労働者、経営者、人事担当者それぞれの視点から、バランスのとれたサポートを心がけています。子育て世代の生活環境や就業環境の課題を探るために保育士の資格を取得し、特定の専門分野を作らず、給与計算、手続き業務、労務相談、助成金等、幅広く実践的なアドバイスを行っています。
吉川社会保険労務士事務所
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