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【社労士監修】年収の壁対策はキャリアアップ助成金を活用!待遇改善に役立つ福利厚生も

【社労士監修】年収の壁対策はキャリアアップ助成金を活用!待遇改善に役立つ福利厚生も

2024.04.22

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監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)

「年収の壁」対策として、キャリアアップ助成金に「社会保険適用時処遇改善コース」が設けられました。2023年10月に行われた最低賃金の引き上げにより、パートやアルバイトの働き控えが発生している企業では、助成金の活用が打開策になるかもしれません。これから助成金の申請を検討している企業に役立つよう、3つのメニューや対象者などについて紹介します。年収の壁に影響することなく待遇改善を期待できる福利厚生についても見ていきましょう。

年収の壁とは

「年収の壁」とは扶養の範囲内で働ける年収が、配偶者や親の扶養に入っている従業員の働き方を限定している状態のことです。

扶養の範囲内であれば、収入があっても配偶者や親などに養われているとみなされるため、税金や社会保険料などの負担が発生しません。

超えると手取りが減る可能性のある年収の壁は複数あります。ここでは「103万円の壁」「106万円の壁」「130万円の壁」についてチェックしましょう。

所得税の課税に関わる「103万円の壁」

年収103万円を超えると、従業員本人の所得に所得税がかかります。所得税がかからない範囲で働きたいと考える従業員は、年収が103万円を超えないよう、勤務時間を調整することがあるため、103万円の壁と表現されています。

この103万円は給与所得控除額55万円と基礎控除額48万円の合計額です。控除後の課税所得が0円になるため、所得税がかかりません。

社会保険料に関わる「106万円の壁」「130万円の壁」

さらに年収が106万円を超えると、パートやアルバイトで働く従業員は、配偶者や親の扶養を抜けて自身の勤務先で厚生年金や健康保険へ加入する必要があります。

従業員101人以上(2024年10月以降は51人以上)の企業で年収106万円(月8万8,000円)を超えて、週20時間以上勤務している場合が対象です。

従業員100人以下(2024年10月以降は50人以下)の企業でも、パートやアルバイトが年収130万円を超えると、社会保険の被扶養者の対象から外れるため、自分で国民年金や国民健康保険へ加入しなければいけません。

以前より年収が増えても、社会保険料の負担分を差し引くと、手取り額が下がるケースもあります。手取り額を減らさないよう、年収106万円や年収130万円以下に働き控えることが「106万円の壁」や「130万円の壁」です。

年収の壁・支援強化パッケージによるサポート

厚生労働省の実施する「年収の壁・支援強化パッケージ」は、複数ある年収の壁のうち、社会保険料に関わる「106万円の壁」「130万円の壁」が対象です。3つの対応からなる「年収の壁・支援強化パッケージ」について紹介します。

106万円の壁への対応「キャリアアップ助成金」

106万円の壁への対応として、2023年10月から設けられたのは、キャリアアップ助成金の「社会保険適用時処遇改善コース」です。

年収106万円(月8万8,000円)を超えたパートやアルバイトは、従業員101人以上(2024年10月以降は従業員51人以上)の企業で週20時間を超えて勤務している場合、厚生年金や健康保険へ加入しなければいけません。

年収が増えたとしても、社会保険料の天引きで手取り額がこれまでより少なくなる人もいるでしょう。年収106万円を超えても、従業員の手取り額を減らすことがないよう活用できるのが、キャリアアップ助成金の「社会保険適用時処遇改善コース」です。

従業員が負担する社会保険料相当額を上限に、企業が社会保険適用促進手当を支給すると、従業員1人につき最大50万円の支援を受けられます。

130万円の壁への対応「被扶養者認定の円滑化」

社会保険の被扶養者の対象外となる年収130万円以上のパートやアルバイトは、従業員100人以下(2024年10月からは従業員50人以下)の企業で働いていても、自分で国民年金や国民健康保険へ加入しなければいけません。

2024年度の国民年金保険料は月1万6,980円です。国民健康保険料は自治体により異なります。ここでは新宿区のケースを見ていきましょう。前年の総所得金額等が25万円であれば、40~64歳以外は月5,467円、40~64歳は月6,842円です。

合計すると、40~64歳以外は月2万2,447円、40~64歳は月2万3,822円の負担増となります。

将来受け取れる自分自身の年金額を増やすという面ではメリットもありますが、手取り額を減らしたくないと考える人にとってはデメリットです。

ただし社会保険料の負担を避ける目的で勤務を調整していても、繁忙期や人手不足によって年収130万円を超えることもあります。このようなときには被扶養者認定が活用できるかもしれません。

突発的な理由で年収130万円を超えたことを企業が証明すれば、年収130万円以上であっても期限付きで被扶養者認定を受けられる可能性があります。

また被扶養者認定は新たな「年収の壁」を作り出すことがないよう、上限額は設定されていません。

厚生労働省の「事業主の証明による被扶養者認定Q&A」によると、被扶養者の年収が配偶者や親などの被保険者の年収を上回ると、被扶養者が主に生計を維持しているとみなされて被扶養者認定が削除されるとあります。

参考:日本年金機構|国民年金保険料

参考:新宿区|令和6年度 国民健康保険料 概算早見表(総所得金額等)

参考:厚生労働省|事業主の証明による被扶養者認定Q&A

配偶者手当への対応「見直しに役立つ資料の公開」

年収の壁は税金や社会保険の負担増によってのみできるものではありません。企業が従業員に支給している配偶者手当を理由に、就業時間を調整するケースもあります。

例えば「配偶者が年収106万円までの従業員に月1万円の手当を支給する」といった要件で配偶者手当を実施している企業であれば、手当を受け取るために従業員の配偶者が働き控えることが考えられるでしょう。

ただし配偶者手当を単に廃止するだけでは、不利益変更とみなされかねません。年収の壁として働くことがないよう、配偶者手当を廃止・縮小するときには、基本給や子ども手当などの増額といった対策も必要です。

従業員も交え、自社に合う制度になるよう、よく検討するとよいでしょう。厚生労働省では制度の見直しに役立つフローチャートを掲載した資料「配偶者手当を見直して若い人材の確保や能力開発に取り組みませんか?」を公開しています。

賃金制度や福利厚生制度の見直しにより、これまで配偶者手当に使っていた資金により、スムーズな人材確保が期待できます。

参考:厚生労働省|配偶者手当を見直して若い人材の確保や能力開発に取り組みませんか?

キャリアアップ助成金についてわかりやすく解説

106万円の壁への対応として、キャリアアップ助成金の「社会保険適用時処遇改善コース」が2023年10月に設けられました。年収の壁対策を実施することで、従業員1人につき最大50万円の助成を受けられる制度です。

これから活用を検討している企業に役立つよう「キャリアアップ助成金 社会保険適用時処遇改善コース」を参考に、助成金について解説します。

参考:厚生労働省|キャリアアップ助成金 社会保険適用時処遇改善コース

「社会保険適用時処遇改善コース」に設けられた3つのメニュー

キャリアアップ助成金の「社会保険適用時処遇改善コース」には「手当等支給メニュー」「労働時間延長メニュー」「併用メニュー」の3つのメニューがあります。それぞれのメニューについて見ていきましょう。

手当等支給メニュー

手当等支給メニューでは、従業員に社会保険を適用させるとき、社会保険料のうち従業員の負担分を上限に、手取り額の減少を軽減するための社会保険適用促進手当を支給する場合に助成金を受け取れます。

中小企業が利用する場合、1人当たりの助成額は、1年目と2年目に10万円を2回、3年目に10万円を1回の、最大50万円です。助成金の要件は1年目・2年目・3年目で以下のように異なります。

 

要件

1年目

社会保険適用促進手当などとして賃金の15%以上分を従業員へ追加支給すること。

2年目

社会保険適用促進手当などとして賃金の15%以上分を従業員へ追加支給するとともに、3年目以降に以下の取り組みを行うこと。

3年目

基本給を18%以上増額すること。 ※労働時間延長との組み合わせも可能

要件を満たす取り組みを6カ月間継続したあと、2カ月以内に申請することで利用できる助成金です。

労働時間延長メニュー

所定労働時間を延長して、従業員へ社会保険を適用させるのが労働時間延長メニューです。

原則として延長前6カ月の週平均実労働時間と延長後6カ月の週所定労働時間を比べたときの延長時間と、賃金の増額に応じて、中小企業であれば従業員1人につき6カ月で30万円の助成金を受け取れます。

助成金を受け取れるのは、以下の取り組みを6カ月継続したあと、2カ月以内に申請した場合です。

 

週所定労働時間の延長

賃金の増額

4時間以上

3時間以上4時間未満

5%以上

3時間以上3時間未満

10%以上

1時間以上2時間未満

15%以上

併用メニュー

1年目に社会保険適用促進手当を支給して手当等支給メニューを活用し、2年目に労働時間延長メニューに取り組むことで、1人当たり50万円の助成金を受け取れるのが併用メニューです。

以下の取り組みを6カ月間継続したあと、2カ月以内に申請することで助成金を受け取れます。

 

要件

1年目

社会保険適用促進手当などとして賃金の15%以上分を従業員へ追加支給すること。

2年目

週所定労働時間の延長

賃金の増額

①4時間以上

②3時間以上4時間未満

5%以上

③2時間以上3時間未満

10%以上

④1時間以上2時間未満

15%以上

助成金の期間はいつからいつまで

キャリアアップ助成金の「社会保険適用時処遇改善コース」は、106万円の壁に対応するための時限措置として設けられました。対象となるのは、2023年10月~2025年度末までに従業員に社会保険を適用した企業に限られます。

助成金の対象者

助成金の対象となる従業員は、2023年10月以降に社会保険の被保険者となった従業員です。加えて社会保険の加入日から6カ月間継続して雇用されており、社会保険の加入日から過去2年以内に同事業所で社会保険に加入していないことも満たしている必要があります。

加えて各メニューごとに、以下の要件を満たしていなければいけません。

メニュー

要件

手当等支給メニュー

・社会保険加入日から最長2年間の手当等の支給後の働き方について労使で話し合う予定がある

労働時間延長メニュー

・社会保険加入日から2カ月以内に週所定労働時間を一定時間延長できる

併用メニュー

・社会保険加入日から最長2年間の手当等の支給後の働き方について労使で話し合う予定がある
・社会保険加入日から1年経過時点で労働時間の延長ができる見込みである

助成金の申請手続き

キャリアアップ助成金の「社会保険適用時処遇改善コース」を利用するには、まず「キャリアアップ計画書」の作成が必要です。作成した計画書は、事業所の所在地を管轄している労働局かハローワークへ提出します。

キャリアアップ計画書を提出したら、計画に沿って6カ月間取り組みを継続しましょう。その後指定の申請書を作成し、事業所の所在地を管轄する知道府県労働局かハローワークへ提出します。

GビズIDを取得すると「雇用関係助成金ポータル」を使い、オンラインで申請可能です。

キャリアアップ助成金のデメリット

キャリアアップ助成金の「社会保険適用時処遇改善コース」を利用すると、2023年10月以降に新たに社会保険へ加入する従業員1人当たり、最大50万円の助成金を受けられます。ただしメリットばかりではありません。制度の利用を検討するときに役立つよう、デメリットを紹介します。

既に社会保険を適用している従業員は対象外

同じパートやアルバイトとして働いている従業員でも、2023年10月までに社会保険に加入済みの場合には、助成金の対象になりません。ただし助成金の対象にならないからといって、社会保険適用促進手当を支給しないでいると、不公平感につながるでしょう。

助成金の対象にならない従業員に対しても社会保険適用促進手当の支給は可能ですが、その分企業の負担は大きくなります。

企業負担の保険料は対象外

従業員の社会保険料は、企業と従業員が折半で支払います。このうちキャリアアップ助成金の「社会保険適用時処遇改善コース」で助成金の対象となるのは、従業員の負担分のみです。

企業が負担する社会保険料は対象外のため、助成金では企業の負担増を賄えません。

「年収の壁」に影響しない待遇改善策

パートやアルバイトで働く従業員の待遇を改善するために時給を上げると、年収の壁を超えずに働きたいと希望している従業員は、これまでより勤務時間を少なくしなくてはいけない可能性があります。

年収の壁に影響しないよう、待遇改善を行うには、時給アップと福利厚生の活用を併用するのがおすすめです。どのような福利厚生制度を導入すると、年収の壁を超えずに待遇を改善できるのでしょうか?

福利厚生の活用

福利厚生の中には、要件を満たしていれば支給しても給与として扱われないものがあります。社宅・通勤手当・在宅勤務手当・資格取得手当・食事手当などです。

これらの福利厚生を支給すると、従業員がこれまで負担していた出費を企業がサポートすることで、可処分所得を増やせます。実質的な賃上げにつながる取り組みです。

エデンレッドジャパンではこの実質的な賃上げを、定期昇給(第1の賃上げ)、ベースアップ(第2の賃上げ)に続く、第3の賃上げと定義して「#第3の賃上げアクション」を広く呼びかけています。

関連記事:【税理士監修】所得税が非課税になる手当を一覧で確認!非課税となる要件も解説

関連記事:“福利厚生”で実質手取りアップと高いエンゲージメントの実現を「#第3の賃上げアクション」プロジェクト

手当の支給は採用や定着にもプラス

従業員の採用や定着を促すときにも福利厚生は役立ちます。人材確保に福利厚生を活用するなら、求職者や従業員が求めている福利厚生を導入しなければいけません。

マイナビの「2024年卒大学生活動実態調査 (4月)」によると、2024年卒の大学生が求める割合の高い福利厚生では、住宅手当や食事手当などの諸手当を希望する割合が74.1%でした。

また働く男女501人を対象に実施した「あったら嬉しい福利厚生に関する意識調査」では、住宅手当や食事補助などが上位にランクインしています。

待遇改善を目的とした福利厚生の導入は、人材確保の課題への対策にもつながる取り組みです。

参考:マイナビ|2024年卒大学生活動実態調査 (4月)

参考:ビズヒッツ|あったら嬉しい福利厚生に関する意識調査

関連記事:中小企業が人材確保する方法は?自社の取り組みに役立つ事例を紹介

食事補助なら「チケットレストラン」がおすすめ

所得税が非課税となる要件を満たしつつ、手間を抑えて福利厚生を導入したいと考えているなら、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」がおすすめです。

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実際に使い勝手の良さから、導入した企業では従業員の98%が利用しています。満足度も93%と高く、多くの従業員に喜ばれているサービスです。

年収の壁対策は助成金や福利厚生で

2023年10月に行われた最低賃金の引き上げにより、年収の壁対策が注目を集めています。パートやアルバイトの働き控えを抑えるために活用できるよう、厚生労働省では時限措置としてキャリアアップ助成金の「社会保険適用時処遇改善コース」を設けました。

要件を満たす取り組みを実施することで、対象となる従業員1人当たり最大50万円の助成金を受け取れます。

加えておすすめするのが、福利厚生の拡充による待遇改善です。通勤手当や食事手当など、要件を満たすと所得税の課税対象外となる手当を支給することで、従業員の可処分所得を増やせます。

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