Z世代の離職について、「すぐに辞めてしまう」「忍耐力が足りない」といった声も聞かれますが、実際のデータではどうなっているのでしょうか。本記事では、厚生労働省最新データや民間企業の調査結果をもとに、Z世代の離職率に関する情報を整理し、彼らが離職する理由と効果的な防止策を解説します。
Z世代とは?デジタルネイティブ世代の特徴
Z世代とは、1990年代半ばから2010年代初めに生まれた世代です。2025年現在では15〜30歳前後が該当し、新卒や若手従業員の多くがこの世代に含まれます。
平成不況、リーマンショック、東日本大震災などシビアな社会情勢とSNSの普及という豊かな情報環境の中で育ったデジタルネイティブ世代です。生まれたときからインターネットやスマートフォンが身近にあったため、情報収集能力が高く、多様な価値観を受け入れる柔軟性を持っています。職場でも「自分らしくありたい」といった価値観を持ち、それに寄り添うコミュニケーションを好む傾向があります。
Z世代の離職率は本当に高い?データで検証
離職率とは、一定期間に組織を離職した労働者の割合を示す指標です。計算式は「離職率=離職者数÷期初の常用労働者数×100」で求められます。
Z世代の離職率推移(年齢階級別)
厚生労働省が発表している「雇用動向調査」(令和5年)によると、年齢階級別離職率は下表の通りです。
| 年齢階級 | 離職率 | 全世代平均との差 |
| 19歳以下 | 36.7% | +21.3ポイント |
| 20~24歳 | 28.9% | +13.5ポイント |
| 25~29歳 | 20.6% | +5.2ポイント |
| 全世代平均 | 15.4% | - |
確かにZ世代の離職率は全世代平均を大きく上回っており、特に19歳以下では3人に1人以上が離職している計算になります。
出典:厚生労働省|雇用動向調査・年次別推移 (性・年齢階級別離職率/2024年8月27日)
過去データとの比較:若者の離職率は昔から高い
今から30年程度前の統計として、平成13年 雇用動向調査結果を見てみましょう。平成5年(1993年、32年前)から平成13年(2001年、24年前)までの年齢階級別離職率の推移を見ると、以下のことがわかります。
19歳以下の離職率推移
- 平成5年:27.6%
- 平成9年:37.8%
- 平成13年:45.6%
20~29歳の離職率推移
- 平成5年:20.1%
- 平成9年:21.6%
- 平成13年:24.1%
現在のZ世代の離職率(19歳以下36.7%、20〜24歳28.9%、25〜29歳20.6%)は、過去のデータと比較すると同程度の水準です。若い世代の離職率が高いのは今に始まったことではなく、長年の傾向であると言えるでしょう。
新卒離職率3年以内・1年以内・2年以内をチェック
新卒の離職率は3年3割、とよく言われます。ここでは、2024年10月に厚生労働省が公表した「新規学卒者の離職状況」から3年以内の離職率を見ていきましょう。
新卒3年以内離職率
Z世代の離職率が高いとされるのは、3年以内の離職率では傾向として当てはまるようです。
2024年10月に厚生労働省が公表した「新規学卒者の離職状況」によると、2021年(令和3年)3月卒業者の3年以内離職率は以下の通りです。大卒の離職率は2005年以来16年ぶりの高水準となり、3人に1人以上の割合で3年以内に離職していることが示されました。
- 大卒:34.9%(前年比2.6ポイント増)
- 短大等卒:44.6%(前年比2.0ポイント増)
- 高卒:38.4%(前年比1.4ポイント増)
- 中卒:50.5%(前年比2.4ポイント減)
新卒1年以内離職率
続いて新卒1年以内の離職率です。令和3年3月卒業者の1年以内離職率を見ると、大卒では毎年1割以上(12.3%)が1年以内で離職している現状があります。
- 大卒:12.3%
- 短大等卒:18.5%
- 高卒:16.7%
- 中卒:31.4%
新卒2年以内離職率
令和3年3月卒業者の2年以内離職率は以下です。大卒では、24.6%の離職率です。
- 大卒:24.6%(1年目12.3% + 2年目12.3%)
- 短大等卒:32.6%(1年目18.5% + 2年目14.1%)
- 高卒:28.9%(1年目16.7% + 2年目12.2%)
- 中卒:42.5%(1年目31.4% + 2年目11.1%)
出典:厚生労働省|新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)を公表します
Z世代の男女・世代別離職理由ランキング
次に、Z世代が離職した理由を押さえましょう。厚生労働省の「令和5年雇用動向調査」による、転職入職者が前職を辞めた理由を見ていきます。
※「その他の個人的理由」「会社都合」による離職は除いています。
Z世代男性の離職理由
男性の離職理由を3つの年齢層で見てみましょう。
19歳以下 男性の離職理由
- 労働時間、休日等の労働条件が悪かった(28.4%)
- 職場の人間関係が好ましくなかった(23.0%)
- 仕事の内容に興味を持てなかった(9.4%)
20~24歳 男性の離職理由
- 労働時間、休日等の労働条件が悪かった(11.4%)
- 給料等収入が少なかった(10.5%)
- 職場の人間関係が好ましくなかった(7.5%)
25~29歳 男性の離職理由
- 仕事の内容に興味を持てなかった(14.1%)
- 給料等収入が少なかった(11.7%)
- 労働時間、休日等の労働条件が悪かった(10.6%)
男性は年齢とともに「労働条件→給与→仕事内容」へと関心が移行する傾向です。20代前半男性では労働条件(11.4%)と給料(10.5%)がほぼ同率となり、20代後半では「仕事内容」(14.1%)が最重要に変化します。
Z世代女性の離職理由ランキング
続いて女性の離職理由です。
19歳以下 女性の離職理由
- 職場の人間関係が好ましくなかった(22.9%)
- 給料等収入が少なかった(7.3%)
- 仕事の内容に興味を持てなかった(6.3%)
20~24歳 女性の離職理由
- 労働時間、休日等の労働条件が悪かった(15.6%)
- 職場の人間関係が好ましくなかった(13.3%)
- 給料等収入が少なかった(9.1%)
25~29歳 女性の離職理由
- 労働時間、休日等の労働条件が悪かった(18.4%)
- 職場の人間関係が好ましくなかった(14.8%)
- 仕事の内容に興味を持てなかった(9.0%)
女性は「人間関係→労働条件」へと重視点が移行する特徴があります。10代では人間関係が離職に至る最大の理由です。20代では「労働条件」が1位となり、人間関係は2位に変化します。
Z世代の離職防止に貢献する要素
Z世代全体では、ワークライフバランスを保てる労働条件が求められています。特に10代女性にとって重要となるのが良好な人間関係です。男女ともに20代後半になると、将来にわたって働き続けたいと思える収入・仕事内容を意識するようになります。
- ワークライフバランスを保てる「労働条件」
- 良好な「人間関係」の構築
- 将来にわたって働き続けたいと思える「収入」や「仕事内容」
3年以内に辞めたZ世代の離職理由ランキング
もう一つ、3年以内と時間軸を設定したZ世代の退職理由もチェックします。OpenWorkの「3年以内に辞めたZ世代の入社&退職理由ランキング」によると、厚生労働省のデータとは一部異なる結果が出ています。
3年以内に辞めたZ世代の離職理由は以下の通りです。
- キャリア・個人成長(31.7%)
- 仕事へのやりがい(20.2%)
- 人間関係・社風(20.0%)
- ワークライフバランス(18.5%)
- 給与・待遇面(5.6%)
- 安定性(4.0%)
「キャリア・個人成長」による離職理由が最多という点が、厚生労働省の結果との違いです。自己成長につながるか、キャリアを描けるかという視点は、3年以内の離職率が高い企業にとって、重要なキーワードになります。
以下、「仕事へのやりがい」「人間関係・社風」「ワークライフバランス」と働く環境に関する理由が続きます。長く働く上で、自己成長につながるか、やりがいはあるのか、プライベートとバランスよく働けるか、といった内的な要素が重要であることがこの調査結果からも読み取れます。
出典:OpenWork|3年以内に辞めたZ世代の入社&退職理由ランキング
Z世代の離職を防ぐ対策
2つのZ世代の離職理由ランキングで上位にランクインした「労働条件」「人間関係」「仕事の内容」「自己成長」「収入」について、Z世代向けの対策を解説します。
1.「労働条件」を改善して離職防止
「労働条件」への対策は、Z世代がワークライフバランスを当然としている世代である点を踏まえて対応します。長時間労働はZ世代にとって不満要因です。残業時間を可視化するシステムを導入し、上司による定期チェック、業務量適正化、ノー残業デーの設定などを徹底します。
また、働く場所と時間に自由度を持たせることも重要です。テレワーク・ハイブリッド勤務の制度整備、フレックスタイム制度、時差出勤制度の活用により、Z世代が求める「自分らしい働き方」を実現できます。制度は設けるだけでは不十分で、個人のライフスタイルに合わせて適切なタイミングで活用できているかも含めて対応し、労働条件への満足度を高めましょう。
2.「人間関係」を見直し離職防止
Z世代の離職理由で多い「人間関係」への対策では、従来の上下関係を前提としたコミュニケーションの見直しが必要です。
Z世代はSNSの「いいね」で承認欲求を満たしてきた世代のため、相手の反応を求めます。業務指示を出す際も「この件、どう思う?」と相談ベースで話すだけで、受け取り方が大きく変わるでしょう。失敗が生じたときも、「次はどうすればうまくいくと思うか」を一緒に考える支援型のマネジメントにより、信頼関係の構築につなげられます。
3.「仕事内容に興味が持てない」を解消して離職防止
仕事への理解が深まるとともに、「この仕事に興味が持てない」と思うことは、Z世代に限らず起こり得ることです。しかし「仕事が社会や顧客に貢献できている」という実感や小さな成功体験、適切な評価を通じて、やりがいを感じられるようになれば、仕事への満足度が高まります。
プロジェクトへの参画機会や支援制度を活用した資格取得の促進などのチャレンジ機会を創出することで、仕事への興味の幅を広げることができます。企業のSNS運用や業務改善提案など、他の世代にはない強みを活かす活躍の機会を創出するのも効果的です。
4.「自己成長」を促し離職防止
「キャリア・個人成長」への不満は、「ここでは自分の理想に向けた成長ができない」という実感から生まれます。
課題の根本には、日本の「メンバーシップ型雇用」の特徴が影響している可能性があります。新卒一括採用後に職務や配置を決める仕組みでは、個人の専門性向上よりも組織への適応が重視されがちです。そのため「成長機会が限られる」「配属の裁量が本人にない」といった不満が生まれやすくなります。
対策として有効なのは、個人の専門性を重視する要素の導入です。明確なキャリアパスの提示、専門スキル研修の充実、専門性や希望を考慮した配置転換、定期的なキャリア面談などにより、Z世代が求める「自分らしい成長」を実現できる環境を整備できます。手段の一つとして、ジョブ型人事制度の選択も視野に入れてもよいでしょう。
関連記事:ジョブ型人事制度とは?メリット・デメリット 40代への影響も解説
5.「収入」を高めて離職防止
Z世代の離職理由で上位にランクインする「収入」への不満への対策は複数あります。基本給の見直し、賞与制度の改善、各種手当の充実、そして福利厚生による実質的な待遇改善などが考えられます。
直接的な賃上げが困難な場合の選択肢
特に直接的な賃上げが困難な企業では、非課税枠を活用した福利厚生サービスにより、従業員の実質手取りを増やすアプローチが効果的です。従来の定期昇給やベースアップとは異なり、所得税の非課税枠を活用した福利厚生により、従業員の実質的な手取りを増やすことができます。
食事補助サービスの活用例
福利厚生による待遇改善の代表例として、食事補助があります。例えば食の福利厚生サービスである「チケットレストラン」では、一定の利用条件を満たすと全国25万店舗以上の加盟店でランチ代が実質半額になり、利用時間や場所の制限もありません。自分らしくありたい、コスパ重視、といったZ世代のニーズも「任意の場所とタイミングで使える柔軟性」や「食事代の軽減になる実用性」により満たすことができます。
名古屋商工会議所では、賃上げの一環として食の福利厚生サービス「チケットレストラン」を導入しています。「世代や家族構成、勤務体系に左右されず、全職員が利用できる公平性を保てるもの」として「チケットレストラン」は魅力的な選択肢です。サービスを介して待遇改善を実現した結果、満足度向上、健康経営にも貢献しました。
このような福利厚生サービスの活用により、Z世代が求める実質的な待遇改善を実現できます。
導入事例:名古屋商工会議所
Z世代の離職防止に向けた戦略
Z世代の離職率は確かに高い水準にありますが、これは若い世代に共通する長年の傾向でもあります。ただし、3年以内の離職率は高まる傾向があるため、彼らの価値観に合わせた働き方を実現していくことが大切です。
特に待遇面では、賃上げが困難な企業でも「チケットレストラン」などの手取りアップにつながる福利厚生サービス活用により、待遇改善を実現できます。時代に合った職場環境づくりで、優秀な人材の定着を目指しましょう。
当サイトにおけるニュース、データ及びその他の情報などのコンテンツは一般的な情報提供を目的にしており、特定のお客様のニーズへの対応もしくは特定のサービスの優遇的な措置を保証するものではありません。当コンテンツは信頼できると思われる情報に基づいて作成されておりますが、当社はその正確性、適時性、適切性または完全性を表明または保証するものではなく、お客様による当サイトのコンテンツの利用等に関して生じうるいかなる損害についても責任を負いません。
エデンレッドジャパンブログ編集部
福利厚生に関する情報を日々、ウォッチしながらお役に立ちそうなトピックで記事を制作しています。各メンバーの持ち寄ったトピックに対する思い入れが強く、編集会議が紛糾することも・・・今日も明日も書き続けます!

出典: