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【社労士監修】休職者の有給付与|出勤率8割ルールを事例付きでわかりやすく解説

【社労士監修】休職者の有給付与|出勤率8割ルールを事例付きでわかりやすく解説

2025.06.27

監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)

休職者への有給付与について、判断に迷うケースは少なくありません。本記事では、有給付与の判断基準のひとつ「出勤率8割ルール」を中心に、出勤率の計算方法や、パターン別の計算方法までわかりやすく解説します。併せて、従業員の休職を予防する職場環境改善のヒントも紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

有給休暇が付与される条件とは?出勤率8割ルールと計算式

有給休暇を付与するには、労働基準法第39条で定められた条件を満たす必要があります。まずは、制度の基本と出勤率の計算ルールを明確に整理します。

参考:年次有給休暇制度について

有給休暇が付与される2つの条件

労働基準法第39条は、有給休暇について以下のように定めています。

使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。

出典:e-Gov 法令検索|労働基準法|第39条

つまり、有給休暇を付与する条件は、次の2つです。

・勤続6カ月以上であること
・出勤率が8割以上であること

これらの条件に該当する従業員は、原則として10日の有給休暇が付与されます。以降、以下の表が示すように、勤続年数に応じて付与日数が段階的に増えていきます。

有給付与日数

なお、週所定労働日数や年間所定労働日数を満たす場合、パート・アルバイト等の非正規雇用の従業員も対象になる点にも注意が必要です。

パートやアルバイトの有給付与日数

参考:厚生労働省|年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています

画像出典:厚生労働省|年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。

出勤率8割の計算方法

出勤率の計算式は以下の通りです。

【出勤日数 ÷ 所定労働日数】

出勤日数
 有給休暇を含む、実際に労務を提供した日を指します。欠勤や私傷病による休職などは含まれません。法定休業日(産前産後休業・育児休業・介護休業)や、業務上のケガや病気(業務災害)による休業日は、労務を提供していなくても出勤したものとみなされるため、出勤日数に含めます。

所定労働日数
 就業規則や雇用契約で定められた出勤予定日数を指します。有給取得日や法定休業日(産前産後休業・育児休業・介護休業)、業務上のケガや病気による休業日も含みます。

これらの認識を間違えると、有給の付与・未付与の判定を誤る可能性があります。制度に即した計算ルールを正しく理解することが大切です。

休職中の従業員に有給休暇を付与するべき?判断のポイント

出勤率8割を判定する際、私傷病による休職や法定休業の扱いによって結果が大きく変わります。ここでは、休職の種類ごとの出勤率への影響を解説します。

私傷病による休職は出勤率に「影響する」

私傷病による休職は、出勤率を下げる要因となります。これは、私傷病による休職期間が所定労働日数(分母)には含まれる一方で、実際の出勤日数(分子)には含まれないためです。

例えば、体調不良やメンタル不調で長期にわたって休んだ場合、労働義務のある日に出勤しなかったとみなされ、出勤率の計算上は欠勤として扱われます。これにより出勤率が8割未満となれば、有給休暇は付与されません。これは、医師の証明のもと傷病手当金を受給している場合でも同様です。

なお、業務上のケガや病気(業務災害など)で休業した場合は、法律上「出勤したものとみなす」とされています。この場合、休業期間は出勤率の分子・分母の両方に含めて計算されるため、出勤率が下がることはありません。

産休・育休・介護休業は出勤率に「影響しない」

産前産後休業・育児休業・介護休業などの法定休業は、出勤したものとみなすため、出勤率には影響しません。

これは、これらの休業が労働基準法や育児・介護休業法により保護された制度であり、欠勤として扱うことは不適当であるためです。

例えば、6カ月間のうち2カ月間が育児休業であった場合、その2カ月分も所定労働日数に含め、かつ出勤したものとして計算し、残りの4カ月と合わせて8割以上の出勤率があれば有給休暇が付与されます。

「長期間休んでいたから有給はなし」と安易に判断してしまうと、違法な未付与となる可能性があります。計算のルールと対象日数の取り扱いは正確に把握しましょう。

参考:厚生労働省|育児・介護休業等に関する規則の規定例[簡易版]

出勤率の計算例|迷いやすい事例別シミュレーション

制度を理解していても、具体的なケースにあてはめると混乱しやすいのが出勤率の計算です。ここでは、私傷病による休職、法定休業、欠勤・遅刻早退など、実務でよく見かけるパターン別に出勤率の算定例を紹介し、間違いやすいポイントを解説します。

ケース①|休職期間がある従業員の出勤率

▼所定労働日数が240日のうち、私傷病で80日間休職し、10日間の有給を取得した場合

このケースでは、休職期間は分母に含まれ、分子からは除外されます。有給消化日は労働した日としてみなしてよい対象となるため、欠勤日として扱われるのは私傷病の80日分のみとなります。つまり

240日ー80日=160日

160日÷240日=約66.7%

出勤率が8割に届かないため、有給は付与されません。

このように、私傷病休職が長期に及ぶと、有給休暇の付与要件を満たさなくなる可能性が高くなります。

休職明けに出勤率の確認を怠った場合、不適切な付与や逆に不当な未付与につながるため、個別に丁寧な判断が求められます。

ケース②|産休・育休を含む出勤率の計算

▼所定労働日数240日のうち、60日の育児休業と10日間の有給を取得した場合

このケースでは、育児休業60日間と有給休暇10日間はともに分子・分母に含めてよい日ですので、控除する必要はありません。つまり、

240日÷240日=100%

出勤率が8割を超えるため、有給が付与されます。

このように、法定休業は分母・分子の両方に含めるため、長期休業があっても原則として出勤率に響くことはありません。

ケース③|欠勤・遅刻早退が多い従業員の場合

▼所定労働日数240日のうち、10日の有給を取得。50日が「1日あたり2時間以上」の遅刻・早退に該当している場合

「出勤しているものの、極端に遅刻や早退が多い場合」「遅刻・早退を繰り返し、不就労控除される日が多く発生する場合」など、企業によっては就業規則等で「その日を出勤とみなさない」と定めていることがあります。

しかし、年次有給休暇の出勤率を算定するにあたって、その日の所定労働時間のうち、少しでも労務を提供していれば、原則として「出勤日」として扱うのが法令上の原則です※。したがって、実際には遅刻・早退があっても出勤日としてカウントされ、出勤率の分子から除外されることはありません。

このケースでは、実出勤は【240日−10日=230日】、有給10日を出勤とみなして加算すると、

(230日+10日)÷240日=100%

出勤率が8割を超えるため、有給休暇の付与要件を満たします。

※就業規則で「長時間の遅刻・早退は欠勤扱い」と定めていたとしても、出勤率の算定には反映できません。このような場合は、出勤率ではなく人事考課や懲戒規定で対応するのが適切です。

出勤率向上と休職予防のための効果的な施策

出勤率8割に届かず、有給休暇の付与要件を満たせない従業員が増える背景には、勤務環境や制度運用に課題がある場合も少なくありません。ここでは、休職リスクを下げ、出勤率を安定させるための実践的な取り組みを紹介します。

柔軟な働き方の導入でストレスを軽減

働き方の柔軟性を高めることで、従業員のストレスを軽減し、体調不良による欠勤や休職を未然に防ぐことができます。

リモートワークや時差出勤、短時間勤務制度などを導入し、実際に活用できる運用体制と相談しやすい社内文化もあわせて整備することが重要です。

関連記事:【社労士監修】リモートワークにおすすめの福利厚生|働き方に合わせた制度の整備を

メンタルヘルスのサポート体制を強化する

メンタル不調による休職を防ぐには、予防と早期発見の仕組みが不可欠です。

定期的な面談やストレスチェック・産業医との連携体制の整備・管理職向けの研修やEAPの導入などにより、従業員が安心して相談できる環境を構築しましょう。

関連記事:職場のメンタルヘルスケアとは?ストレスの原因や対策のポイント

福利厚生で日常の健康管理を支援する

福利厚生制度は、従業員一人ひとりの日常生活の支援を通じて健康維持やモチベーションの向上に寄与します。

中でも食事補助は、栄養バランスの取れた食生活を支える実用的な施策として、メンタルと身体の両面での不調予防効果が期待されます。

関連記事:食事補助とは?福利厚生に導入するメリットと支給の流れ

※日本一の実績を持つ食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」の詳細は「こちら」。

出勤率の正しい理解と職場づくりが有給管理のカギ

有給休暇の適正な付与は、法令遵守の面だけでなく、従業員との信頼関係や職場環境づくりにも深く関わっています。特に出勤率8割ルールの計算は、制度の理解不足や判断ミスによってトラブルを招きやすいため注意が必要です。

柔軟な働き方の推進やメンタルヘルス対策、「チケットレストラン」をはじめとする福利厚生の充実など、休職予防効果が期待できる施策の導入も検討し、法令遵守と働きやすさを兼ね備えた職場づくりを目指しましょう。

参考記事:「#第3の賃上げアクション2025」始動、ベアーズが新たに参画~中小企業にこそ“福利厚生”による賃上げを! “福利厚生”で、より働きやすく、暮らしやすい社会へ~
    :「賃上げ実態調査2025」を公開~歴史的賃上げだった2024年も“家計負担が軽減していない”は7割以上!

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