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退職代行サービスとは?メリット・デメリット 職場づくりのヒントを解説

退職代行サービスとは?メリット・デメリット 職場づくりのヒントを解説

2025.05.21

「本日は依頼主様の退職の件でご連絡いたしました」
ある日突然、このような第三者からの電話に戸惑う人事担当者が増えています。
以前は考えられなかった「退職代行サービス」ですが、今や言い出しにくい職場環境や引き留めへの不安から、少なからず従業員がサービスに頼る時代になりました。なぜ従業員がそこまでして辞めたいと思うのか、企業には何ができるのか。本記事では、人事担当者として把握しておきたい退職代行の概要と、その先にある職場づくりのヒントを解説します。

退職代行サービスとは

退職代行サービスとは、従業員が企業に退職の意思を伝えられない場合に、専門業者が代わりに退職の意思を伝えるサービスです。珍しい存在ではなく、マイナビの2024年調査によれば、直近1年間に転職した人の16.6%が退職代行サービスを利用しています。20代の利用率は18.6%と高く、若年層を中心に退職方法の一つとして一般化しつつあると言えるでしょう。

サービス運営側は宣伝を強化しており、SNSやネット広告で「即日対応」「LINE対応」など、利用者視点の訴求を展開しており、一般的な認知も広がっています。

出典:マイナビ|マイナビキャリアリサーチLab 退職代行サービスに関する調査レポート(2024年)

退職代行サービスが増えた社会的背景

現在100社以上はある、とされている退職代行サービスは、2000年代後半から2010年代初頭にかけて日本で登場しました。退職代行サービスが増えた背景には、以下のような複数の要因が絡み合っています。

1.仕事に対する価値観が変化

終身雇用の崩壊と転職が一般化したことで、退職に対する心理的ハードルが下がりました。「一つの企業で働き続ける」という価値観から「自分のキャリアは自分で決める」という価値観へのシフトしており、若い世代では特に顕著です。フリーランスという選択肢も増え、合わない職場や早期退職に抵抗が少なくなってきています。

2.人手不足による「引き留め」

少子高齢化と労働力人口の減少により、「人材確保」が企業の重要課題とされていることで、退職希望者への引き留めが増加しています。マイナビ調査(2024年7月)によれば、退職代行サービス利用の最多理由は「退職を引き留められた(引き留められそうだから)」で全体の約4割を占めました。このような「辞めさせない姿勢」が、第三者を介した退職手段の需要を高める要因となっています。

出典:マイナビ|マイナビキャリアリサーチLab 退職代行サービスに関する調査レポート(2024年)

3.ソーシャルメディアの普及

インターネットやSNSの普及は、退職代行サービスの認知度を飛躍的に高めました。「辞めたいのに辞められない」という悩みと、その解決策が広く共有される環境が整ったのです。

実際に、インターネットで「退職代行」と検索すれば、退職代行サービスの内容や体験談をすぐにチェックできます。

4.心身の健康を重視

長時間労働やパワハラなど職場のストレスが社会問題となる中、令和5年度「過労死等の労災補償状況」によると、精神障害による労災支給決定数は増加傾向にあります。

一方で働き方改革や健康経営の推進により、「健康を犠牲にしてまで働き続ける必要はない」という価値観が社会に広く浸透してきました。無理な職場環境からの離脱をあるべき選択肢として考える方が増えていることも、退職への心理的ハードルを下げている要因の一つと言えるでしょう。

退職代行 サービス出典:厚生労働省 労働基準局補償課|令和5年度「過労死等の労災補償状況」の訂正について

5.ブラック企業の存在

長時間労働やパワハラなどが社会問題として認識された背景に、いわゆる「ブラック企業」のような退職のハードルが非常に高い企業の存在があり、退職代行へのニーズを高めています。こういった職場の場合、心理的に退職するのが難しい課題がありますが、その解決策として退職代行サービスが活用できます。

6.​​若年層特有の動向

退職代行サービスの普及には若年層の就労観の変化が影響しています。マイナビの調査によれば、退職代行の利用率は20代が18.6%と最も高く、30代17.6%、40代17.3%、50代4.4%と年齢が下がるほど高くなっています。

「1.仕事に対する価値観が変化」のとおり多様な働き方の選択肢が身近になったことで、「合わない職場からの撤退」を実現する手段として、退職代行サービスが受け入れられているようです。若年層特有の傾向が、退職代行サービス市場の拡大を後押ししている要因の一つと言えるでしょう。

出典:マイナビ|マイナビキャリアリサーチLab 退職代行サービスに関する調査レポート(2024年)

関連記事:【退職代行】調査で見えた「職場の本質的課題」とは?効果的な対策も

退職代行サービスは3パターン

退職代行サービスには以下の3種類があります。企業側としては、交渉を試みてくる場合には権限や資格を確認するようにしましょう。下表が概要です。

  退職意思の伝達 退職日等の交渉 裁判の代理
民間企業 できる できない できない
退職代行ユニオン できる できる できない
弁護士 できる できる できる

参考:ランスタッド|人事担当者が押さえておきたい「退職代行サービス対応の基本」

民間企業の退職代行サービス:手軽だが限定的

多くの退職代行サービスが該当します。「本人に代わって退職の意思を表示する」という役割のみを担います。未払いの賃金等の交渉や調整はできず、退職の意思を伝えることのみ可能です。

退職代行ユニオン:交渉の余地あり

退職代行ユニオンは、中小企業などで企業に労働組合がない場合に、労働者が加入できる外部の労働組合です。「団体交渉権」を持つため、退職の意思伝言以上のことができます。有給休暇の消化交渉など、ある程度の調整が可能です。

弁護士:最も包括的だが高額

弁護士が提供するサービスは最も対応範囲が広く、法的なトラブル解決まで対応します。ただし、費用は割高になるのが一般的です。利用された場合、企業側も裁判等相応の対応が求められます。

退職代行サービスのメリット

なぜ従業員は、わざわざお金を払ってまで代行サービスを使うのでしょうか。その心理を理解することは、企業側の対策を考える上での出発点となります。

1.心理的ハードルの排除

「辞めます」と直接言うのは、多くの人にとって精神的負担です。以下のようなトラブルや企業風土がある場合、言い出すための心理的ハードルが高くなります。

  • 上司との人間関係がすでに悪化している
  • パワハラやセクハラの被害にあっている
  • 企業風土として退職を打ち明けにくい雰囲気がある

マイナビ調査によると、退職代行利用の理由として首位の「退職を引き留められた(引き留められそう)(40.7%)」となり、2位は「自分から言い出せる環境でない(32.4%)」、3位は「退職を伝えた後トラブルになりそうだから(23.7%)」と続きます。退職意向があっても自ら切り出しにくく、意向を伝えても退職するのが難しい様子がうかがえます。

出典:マイナビ|マイナビキャリアリサーチLab 退職代行サービスに関する調査レポート(2024年)

2.即日退職の実現

「今すぐに辞めたい」という切実な思いを持つ従業員にとって、退職代行は有効な選択肢です。精神的に追い詰められた状態や、健康上の理由で職場に行けなくなったケースなどで利用されています。

3.交渉の専門家による安心感

労働組合や弁護士は、専門知識を持つ第三者です。交渉への安心感が得られます。有給消化や退職金、残業代未払いなどの問題を抱える従業員には、一人で立ち向かうよりも強力な味方となります。

4.確実な退職の保証

「辞めたいと言っても認めてもらえない」というケースで、退職代行は確実な解決策になります。第三者が介入することで、企業側も法的な観点等も踏まえ、対応せざるを得なくなるからです。

アルバトロス社の調査(対象者15,934件、2022年3月15日〜2024年7月31日のサービス利用者を対象)による、退職代行モームリの利用者の「退職代行利用経緯・退職理由の調査結果」を見てみましょう。

  • 上司からハラスメントを受けている:33.9%
  • 上司から退職を止められる:30.2%
  • サービス残業がある:24.7%
  • 勤務外での仕事がある:18.7%
  • 有給が使えない(圧力がある):13.0%
  • 所定通りの公休が取れていない:7.6%

    ※複数回答可

このようにハラスメント、退職引き留め、サービス残業など職場の在り方に起因する理由で利用しています。確実な退職ができることを踏まえると、退職代行サービスを利用せざるを得ない状況に至った背景を考える視点が必要かもしれません。

出典:PR TIMES|退職代行モームリ累計利用者15,934名分のデータ・利用された企業情報を公開 | 株式会社アルバトロスのプレスリリース

退職代行サービスのデメリット

一方で、退職代行サービスにはいくつかのデメリットも存在します。

1. 費用負担

自分で退職する場合と比べて、費用がかかります。一般的に3万円〜5万円程度が料金相場です。費用は利用者(退職者)が負担する必要があります。

2. 企業との関係

利用により、従業員側は企業側からの印象が悪くなる可能性があります。業界が狭い場合、将来的に何らかの不利が生じるケースもありえます。

3. 引き継ぎの問題

退職代行サービスを利用すると、基本的に出社不要になるため業務の引き継ぎができません。企業内外の関係者に迷惑がかかる可能性があります。

4. 企業側から連絡が来る可能性

退職代行サービスを利用しても、企業側が連絡を試みる可能性は残ります。

退職代行サービスに対する企業側の対応ステップ(事後対応)

退職代行サービスから連絡があったとき、企業はどう対応すべきでしょうか。冷静かつ適切に対処するための手順を解説します。

ステップ1.代行業者の身元確認

連絡があった代行業者の実態を確認しましょう。電話でのやりとりだけでは身元を正確に把握できません。詐欺の可能性もあるため、慎重な対応が求められます。

ステップ2.本人の退職依頼意思を確認

退職代行業者が本当に従業員から正式な依頼を受けているかを確認するため、本人が委任したことがわかる内容や退職の意思について、メール等で情報提供を求めるのもよいでしょう。

ステップ3.法的対応を確認

従業員の雇用形態を確認し、法律上いつ退職できるかを整理します。民法では期間の定めがない雇用契約の場合「退職申し出から2週間後に雇用契約が終了する」と規定されています。就業規則よりも民法の規定が優先されるため、注意が必要です。

ステップ4.退職届の提出を業者経由で依頼

退職手続きを正式に進めるには書面による退職届が不可欠です。電話連絡のみでは不十分なので、本人からの退職届の提出を退職代行サービス業社に依頼します。その際、貸与したPCや社員証、健康保険証などの返却方法も合わせて案内できると、退職までの流れがスムーズです。

ステップ5.退職手続きを実行

退職届を受領したら、企業側で手続きを進めます。手続き完了後は退職代行業者や本人へメールや書面で通知し、記録を残すことがポイントです。社会保険などが影響する場合は、その旨も含めます。

退職代行サービスを利用されないための対応策(予防策)

企業は退職代行サービスの利用を減らすために、以下のような対策を検討できます。

1. 職場環境の改善

退職代行サービスが利用される背景には、職場環境に問題がある可能性があります。前述のアルバトロス社調査のとおり、慢性的な人手不足や長時間労働、日常的なハラスメントの横行などが見られるケースで使用されているためです。

こうした状況を防ぐには、まず現状の職場環境を客観的に評価することから始めましょう。匿名のアンケートや1on1での対話を通じて、実際に従業員が感じている課題を把握します。

2. オープンな対話ができる文化の形成

常にコミュニケーションできる関係づくりは、退職代行サービスを使われないためにできる有効な対策の一つです。上司と部下のコミュニケーションのために、1on1ミーティングを定例化したり、定期的なカウンセリングの実施をしたり、自己申告による配置換え制度などの導入を検討したりすることが施策として有効です。

3. 退職プロセスの見直し

退職代行サービスを利用する理由として、退職の引き留め(40.7%)、退職を言い出せる環境ではない(32.4%)、退職を伝えた後のトラブルを懸念(23.7%)といった回答が多いことから、次のような対策が打ち出せます。

  • 引き留め対策:退職希望者への対応ルールを明確にし、無理な引き留めをしない姿勢を共有
  • 言い出しやすさ:定期的な1on1で将来の悩みも安心して話せる関係性を構築
  • トラブル防止:退職手続きの流れと必要書類をわかりやすく整理
  • 管理職教育:退職申し出を冷静に受け止められるコミュニケーション研修を実施

4. 従業員満足度向上

従業員満足度を高めることが退職代行利用の予防に直結します。有効な施策として、以下があります。

  • 評価・報酬面での改善:成果が正当に評価される仕組みづくりと、生活に余裕をもたらす賃金水準
  • 働き方の選択肢:仕事とプライベートを両立できるリモートワークや、個人の事情に合わせた時間管理
  • 福利厚生の充実:従業員の希望を反映した福利厚生を拡充

大切なのは、定期的に従業員の声を聞く姿勢です。「食事補助があると非常に助かる」という声から食事補助の福利厚生サービスを導入した企業の事例(「チケットレストラン」導入事例ページ:株式会社ほねごり)も参考になるでしょう。結果的に大きな従業員満足につながった好例と言えます。

5. メンタルヘルスケアの充実

業界大手退職代行サービスEXITの調査(対象は2023年1月~3月利用者)で、メンタルヘルスの不調を退職理由に挙げた人が約6割にも上ります。「心の健康」と「職場定着」は密接なのです。

メンタルヘルス向上には、「話せる場所」を増やすことが大切です。産業医との面談や匿名相談窓口があれば、問題が深刻化する前に兆候をキャッチできます。

また、上司の「気づく力」の養成も欠かせません。管理職向け研修などで、部下の体調や業務の変化に敏感になり、適切な声かけができる人材を育てることで、チーム全体の心の健康を守りやすくなります。

出典:PR TIMES|【退職代行EXIT調査】Z世代の利用者の割合が約8割、メンタルヘルスの不調による退職が全体の約6割へ

6.採用ミスマッチ防止

厚生労働省の「新規学卒者の離職状況」では入社3年以内の離職率が約3割(令和3年度は34.9%)に達しており、期待と現実のギャップから退職代行に頼るケースも少なくありません。採用ミスマッチが解消されれば、退職代行サービスに頼る必要性も減少するでしょう。

  • 採用プロセスの見直し:「ありのまま」の職場を伝える職務説明や候補者との対話機会を増設
  • 適材適所の配置:強みを活かせる部署への異動支援と相談しやすい風土づくり
  • オンボーディング強化:入社後の不安解消と定期的な1on1で課題を早期発見
  • キャリアビジョンの提示:明確な成長の道筋と多様なキャリア選択肢の提示

入社前から一貫して寄り添うことで、「辞めたいけど言い出せない」状況を防ぎます。

出典:厚生労働省|新規学卒者の離職状況

今後の取り組みに向けて

退職代行サービスは、今や一つの社会現象として定着しつつあります。現状を悲観視するよりも、職場環境を見つめ直す貴重なシグナルとして受け止める姿勢が大切です。

誰もが「ここで働いてよかった」と思える組織であれば、退職するときも直接感謝の気持ちを伝えられるのではないでしょうか。

具体的な一歩として、多様な業種の企業で、従業員満足度向上等に効果を上げている「チケットレストラン」のような食の福利厚生サービス導入も、日常のプチ満足を支える効果的な施策となっています。

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