ストレスチェックとは、従業員のメンタルヘルス不調の予防を目的として、企業が実施する検査のことです。2025年11月時点では従業員数50人未満の企業は義務化されていませんが、今後は全ての企業が実施しなければいけなくなります。
新たにストレスチェックが義務化される中小企業では、どのような準備が必要なのでしょうか?あわせて55万人以上が受検しているストレスチェックのデータ分析結果から、職場のストレス傾向について見ていきましょう。
企業が実施するストレスチェックに関するQ&A
まずはストレスチェックに関するQ&Aで、企業が実施するストレスチェックに関する概要を押さえていきましょう。
ストレスチェックの目的は?
ストレスチェックの目的は、メンタルヘルス不調の予防です。心の健康状態が悪化すると、仕事へのモチベーションが下がり仕事の質や生産性も低下していきます。
ストレスチェックの実施により、従業員が自分のメンタルヘルスの状態を客観的に把握する機会を設けることで、働き方を調整したり、積極的な休養を取ったりできるようにします。
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ストレスチェックは全ての企業が義務化の対象になっている?
ストレスチェックは従業員数50人以上の企業に義務化されています。また労働安全衛生法及び作業環境測定法の改正により、2028年からは従業員数49人以下の企業も含めて、全ての企業に実施が義務化されることとなりました。
ストレスチェックの実施体制を整える手順は?
ストレスチェックの実施体制を整えるには、従業員へストレスチェックの実施について伝えた上で、「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル(案)」内に掲載されている「ストレスチェック制度実施規程(モデル例)」を参考にルールを作成します。
次に「社内の実務担当者」「ストレスチェックの委託先」「医師の面接指導の依頼先」「実施時期と対象者」「調査票と高ストレス者の選定方法」を決定しましょう。
ストレスチェックから分かることは?
ストレスチェックでは、従業員が自身のメンタルヘルスの状況を把握できる他、集団分析によって企業は「高ストレス者率」「ハラスメントの実態」「給料やボーナスへの満足度」などが分かります。
ストレスチェックとは
厚生労働省の「ストレスチェック制度導入マニュアル」によると、ストレスチェックとは従業員のストレス状態を調べる検査のことです。
ストレス度合いを調べるには質問票を使用します。「仕事について」「自分自身の状態について」「自分の周りにいる人について」などの質問に従業員が回答した結果を集計・分析することで、従業員のストレス度合いを確認可能です。
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ストレスチェックの目的はメンタルヘルス不調の予防
ストレスチェックを行うのは、従業員のメンタルヘルス不調を予防するためです。従業員が自分のストレス状況を自覚することで、ストレスをため込むことがないよう仕事の仕方を変えたり、休暇を取ったりできるようにします。
従業員がメンタルヘルスを良好に保ちやすくなる職場環境への改善に、企業が取り組むきっかけにもなるでしょう。
関連記事:職場のメンタルヘルスケアとは?ストレスの原因や対策のポイント
ストレスチェックの対象者
厚生労働省の「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」によると、ストレスチェックの対象者となるのは、以下の要件を満たしている従業員です。
① 期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、当該契約の契約期間が1年以上である者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者を含む。)であること。
② その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分の3以上であること。
この要件を満たしていれば、パートも対象者となります。
関連記事:【社労士監修】ストレスチェックの義務化はパートも?拡大方針の対象事業場についても解説
ストレスチェックの義務化
ストレスチェックは2015年12月から、常時50人以上の従業員を雇用している企業に義務化されました。義務化の対象となっている企業では、ストレスチェックを1年に1回実施しなければいけません。
ストレスチェック義務化の拡大
厚生労働省の「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律について(報告)」によると、労働安全衛生法及び作業環境測定法の改正により、ストレスチェックの義務化が、常時雇用している従業員数が49人以下の企業にも拡大することとなりました。
「ストレスチェック制度の効果的な実施と活用に向けて」によると、全体の実施率は84.3%ありますが、実施が努力義務となっている従業員49人以下の企業では37.8%にとどまっているのが現状です。
義務化の対象拡大による、規模の小さな企業での実施率向上が、働く人全体のメンタルヘルス向上につながるでしょう。
ただし改正内容の施行までには、十分な準備期間を確保するとされており、交付から3年以内の政令で定める日から義務化される予定です。遅くとも2028年には、全ての企業でストレスチェックを実施しなければいけません。
現時点ではストレスチェックが努力義務となっている企業も、施行までの期間にストレスチェックの実施体制を整えておく必要があります。
関連記事:【社労士監修】ストレスチェック義務化の対象が拡大|概要から対応策まで解説
参考:厚生労働省|労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律について(報告)
従業員に受検の義務はない
常時雇用の従業員が50人以上の企業(2025年11月時点)に実施が義務化されているストレスチェックですが、従業員に受検の義務はありません。
企業は実施しなければいけませんが、従業員は受検の拒否も可能です。
中小企業がストレスチェックの実施体制を整備する手順
従業員数49人以下の企業が、2028年の改正された労働安全衛生法及び作業環境測定法の施行に向けて、ストレスチェックの実施体制を整備するには、どのような手順で進めればよいのでしょうか。
厚生労働省が2025年11月時点で作成している「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル(案)」をもとに、体制を整備する手順を紹介します。
ストレスチェック実施の事前準備
ストレスチェックの実施に向けて、まずは従業員に導入の方針を示します。このとき、ストレスチェックの回答はプライバシーが保護されることや、不利益な扱いにつながらないことなどを説明しましょう。あわせて従業員からの意見を聞く機会も設けます。
次に、従業員からの意見を踏まえつつ、ストレスチェックの実施体制や実施方法などに関係するルールを作成します。「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル(案)」内に掲載されている「ストレスチェック制度実施規程(モデル例)」を参考にアレンジすると作成しやすいでしょう。
ストレスチェックの実施体制と実施方法の決定
実施体制と実施方法では、以下の項目を決めます。
- 社内の実務担当者
- ストレスチェックの委託先
- 医師の面接指導の依頼先
- 実施時期と対象者
- 調査票と高ストレス者の選定方法
従業員数49人以下の中小企業でストレスチェックを実施するときには、外部機関へ委託するとよいでしょう。社内には委託先の外部機関との連絡調整などを行う実務担当者を設置します。
あわせてストレスチェックの委託先を選びましょう。外部機関から「サービス内容事前説明書」を受け取り、内容を確認した上で決定します。
ストレスチェックの結果によっては、医師の面接指導が必要になります。ストレスチェックを委託する外部機関が用意しているオプションで医師の面接指導を利用するか、地域産業保健センターに依頼するか、あらかじめ決めておきましょう。
ストレスチェックは1年ごとに1回実施することが決まっているため、どの時期に行うかも決定します。加えて対象者の要件に該当する従業員を選定しましょう。
またストレスチェックの調査項目や調査の実施形態・高ストレス者の選定方法は、委託先の意見を参考にしつつ、自社の状況に合わせて決定します。
例えば1人1台ずつ業務用のパソコンを支給している企業であればWeb上での回答が便利ですが、そうでない場合には紙へ記入する方がスムーズです。
ストレスチェックで何が分かる?データの分析結果をチェック
ストレスチェックを1年ごとに1回のペースで実施すると、個々の従業員が自身のストレス度合いを客観的に知るきっかけになる他、集団分析によって自社のストレス傾向を把握できます。
ここでは集団分析で見えてくるストレス傾向の一例として、ドクタートラストが実施したデータ分析を紹介します。2024年度には、1,777の企業や団体に所属する、55万人以上の従業員が受検したストレスチェックの集団分析です。
参考:共同通信PRWire|2024年度、累計267万人超のストレスチェックデータを分析
高ストレス者率の現状や推移
ストレスチェックの結果、過度な心理的ストレスがかかっていると判断された従業員のことを「高ストレス者」といいます。メンタルヘルスチェックの集団分析では、高ストレス者の現状や推移を確認可能です。
ドクタートラストが実施したデータ分析によると、2024年度のストレスチェックでは、60代の高ストレス者率が増加傾向にありました。
他の世代と比べると60代の高ストレス者率は低いものの、割合は2023年度より1.9ポイント増加しています。40代・50代の責任の担う中高年層も高ストレス者率は昨年より上がっていますが、60代よりは低い1.0ポイント増でした。
60代の高ストレス者率アップは、高年齢者雇用安定法の改正で65歳までの雇用が義務付けられたことや、人材確保の観点からシニア世代の活躍が期待されていることなどが関係していると考えられます。
また20代・30代の若年層の高ストレス者率は低下しており、特に20代は2023年度と比べて2.7ポイント減でした。
関連記事:【最新版】職場のストレス原因ランキング|企業が実践すべき取り組みとは?
パワーハラスメントをはじめとするハラスメントの実態
ストレスチェックには「職場で自分がいじめにあっている(セクハラ、パワハラを含む)」といった項目があります。この項目を集計することで、自社で何らかのハラスメントを受けていると感じている従業員の割合を確認可能です。
ハラスメントやハラスメントと受け取られるようなコミュニケーションが発生していると分かれば、その解決に向けた取り組みを実施できます。
ドクタートラストが実施したデータ分析では、ハラスメントを受けていると回答した人の割合は5.5%でした。2023年度の5.7%よりは下がっており改善が見られるものの、一定数がハラスメントを受けていると感じる状況があると分かります。
関連記事:【社労士監修】パワハラ防止法|中小企業義務化で相談件数急増!定義・罰則も
給料やボーナスへの満足度
ストレスチェックには「自分の仕事に見合う給料やボーナスをもらっている」といった質問項目があります。この項目を集計すると、自社の給料やボーナスへの満足度がどの程度か把握可能です。
ドクタートラストが実施したデータ分析によると、2024年度は62.0%の人が「自分の仕事に見合う給料やボーナスをもらっている」に「そうだ、まあそうだ」と回答しています。この項目は2019年のストレスチェックから「そうだ、まあそうだ」の割合が増加傾向です。
物価高騰が続く中、賃上げを実施する企業が規模を問わず増えた結果と考えられます。
対象拡大に向けてストレスチェックの実施体制を整備しよう
2028年にストレスチェックは全ての企業が義務化の対象となります。現時点で実施していない企業では、早いタイミングで導入の準備を行いましょう。
ストレスチェックを実施すると、従業員が自身のメンタルヘルスの状況を把握できる他、企業は集団分析によって自社の「高ストレス者率」「ハラスメントの実態」「給料やボーナスへの満足度」などを把握できます。
分析結果を参考にしながら、職場環境改善や従業員満足度向上につながる取り組みを実施することも可能です。
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