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レジリエンスとは何か?VUCA時代に求められるしなやかな組織のポイント

レジリエンスとは何か?VUCA時代に求められるしなやかな組織のポイント

2025.07.28

レジリエンスは英語で「はね返り」や「弾力」を意味する言葉です。「回復力」「再起力」「しなやかさ」などの意味もあることから転じて、困難を乗り越えて回復する力を意味します。

今、企業にレジリエンスが求められるのはなぜなのでしょうか?レジリエンスについての基礎的な知識を押さえた上で、企業のレジリエンス強化につながる取り組みについて見ていきましょう。

レジリエンスとは回復力やしなやかさのこと

レジリエンスは物理学の分野では、外からの力で変形したものが元に戻ろうとする力を表す言葉です。

心理学では、何か困難なことが起こったとき、しなやかにその状況を乗り越えるための精神的回復力をさします。

高いレジリエンスを備えていれば、逆境でも諦めずに目標達成に向けて努力をし続けられますし、強いストレスのある状況でも回復していけるでしょう。打たれ強さとも表現できます。

レジリエンスには複数の種類があります。それぞれの分野におけるレジリエンスについてチェックしましょう。

災害レジリエンスとは

災害レジリエンスとは、災害が起こり困難な状況に陥ったときに、基本的な機能を維持しつつ、災害の悪影響から回復していくシステムやコミュニティ・個人・社会の力のことです。

想定される被害はもちろん、想定外の被害が起こったときにも、災害レジリエンスが高い状態であれば対応できます。

環境レジリエンスとは

環境変化への適応能力を表すのが環境レジリエンスです。気候変動が生態系や社会へ与える影響を予測して準備・対応する「気候変動レジリエンス」や、自然環境に備わっている自然生態系の復元力を表す「生態学的レジリエンス」などがあります。

看護におけるレジリエンスとは

看護師は業務量の多さや責任の重さなどから、ストレスの多い仕事です。メンタルヘルスを良好に保ちつつ働き続けるには、看護師自身がレジリエンスを高めていく必要があります。

また患者が自らの意欲や能力を引き出してレジリエンスを高められるように看護師が行う働きかけも、看護におけるレジリエンスのポイントです。

関連記事:看護師の賃上げ完全ガイド|診療報酬改定の影響と賃上げしないリスクを解説

建築におけるレジリエンスとは

地震・水害・風害などの自然災害が起こったときの、建築の防災力や耐久力が建築におけるレジリエンスです。災害時に強く、対応力や回復力を持つ住宅を「レジリエンス住宅」と呼びます。

レジリエンスの2つの因子

レジリエンスが働くときには、ストレス・困難・問題などにつながる「危険因子」と、そこから回復していくときの「保護因子」があります。2つの因子にどのような特徴があるのかを見ていきましょう。

危険因子

ストレス・困難・問題などの原因になるのが危険因子です。危険因子の具体例には、慢性的に多すぎる業務量・パワハラ・人間関係のトラブル・過去の失敗・病気・災害・戦争などがあります。

関連記事:【最新版】職場のストレス原因ランキング|企業が実践すべき取り組みとは?

保護因子

ストレス・困難・問題などを乗り越えるために、レジリエンスを促すのが保護因子です。困難に直面したときにその状況から脱するには、以下にあげる3つの因子が影響を及ぼします。

因子

具体例

個人内因子

性格・考え方など先天的なもの

能力因子

問題解決能力など後天的なもの

環境因子

家族・友人などの支援

レジリエンスを促す精神的回復力

レジリエンスを促す保護因子のうち、個人内因子のことを精神的回復力ともいいます。精神的回復力を構成するのは「新奇性追求」「感情調整」「肯定的な未来志向」の3つです。それぞれの特徴を紹介します。

精神的回復力

特徴

新奇性追求

・新しいものごとや人などへの興味
・前向きにチャレンジする姿勢や行動

感情調整

・怒りや悲しみなどマイナスの感情のコントロール

肯定的な未来志向

・前向きな未来に向かって目標やビジョンを持つこと
・目標やビジョンの実現に向けて実践していくこと

レジリエンスを促す2つの要因

平野 真理の「レジリエンスの資質的要因・獲得的要因の分類の試み―二次元レジリエンス要因尺度(BRS)の作成」によると、レジリエンスを促す要因には、先天的な気質に関連する「資質的レジリエンス要因」と、後天的に獲得しやすい「獲得的レジリエンス要因」があります。

2つの要因に含まれる因子は以下の通りです。

要因

因子

特徴

資質的レジリエンス要因

楽観性

将来に不安を持っておらず期待して行動できる力

統御力

不安を感じることが少なく、ネガティブな感情や体調の悪さなどに振り回されずにコントロールできる力

行動力

目標の達成に向けて、もともとの忍耐力で努力し実行できる力

社交性

他者への不安や恐怖が少なく、積極的に関わりコミュニケーションを取れる力

獲得的レジリエンス要因

問題解決志向

現状の改善に向けて問題を解決する意思を持ち、解決方法を学ぶ力

自己理解

自分について理解して特性に合う目標設定や行動ができる力

他者心理の理解

他者の心理を認知的に理解し受け入れる力

参考:パーソナリティ研究 19巻 (2010) 2号|レジリエンスの資質的要因・獲得的要因の分類の試み―二次元レジリエンス要因尺度(BRS)の作成

企業にとってレジリエンスが重要な理由

困難から回復するためのレジリエンスが、企業にとって重要なものとなっているのには理由があります。ここでは3つの理由をチェックしましょう。

VUCA時代だから

日々目まぐるしく変化しており、この先の予測が難しい今のことを、VUCA時代ともいいます。VUCAは「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の頭文字からなる言葉です。

ビジネスシーンでいえば、つい先日までは最新だったものが、新しい技術の開発によりあっという間に古くなります。AIの進歩によって、そのスピードはさらに早まっているでしょう。

先の見通しが立てられない中でも、企業は仮説に従って意思決定を行い事業を展開していかなければいけません。確実なものがない中で進めていくため、困難な事態に陥ることもあるでしょう。

ピンチに直面したときに、その状況に対応して、再び軌道に乗せるにはレジリエンスが欠かせません。

従業員のメンタルヘルス不調予防につながるから

若手従業員のメンタルヘルス不調についての定量調査」によると、正社員として働く人のうち、14.3%が過去3年以内にメンタルヘルス不調を経験しています。

特に若年層ほど経験率が高く、20代男性は18.5%、20代女性は23.3%と約5人に1人がメンタルヘルス不調の経験者です。

また80.7%は仕事がきっかけでメンタルヘルス不調に陥っています。主な理由としてあげた人の割合が高いものを見ていきましょう。

メンタルヘルス不調の主な理由

あげた人の割合

仕事のプレッシャー・難しさ

23.1%

上司との関係・ハラスメント

21.6%

長時間労働

8.5%

職場の雰囲気の悪さ

7.2%

同僚との関係・ハラスメント

6.5%

従業員のレジリエンスの強化に取り組めば、メンタルヘルス不調の予防につながる他、復帰しやすくなることが期待できます。

関連記事:職場のメンタルヘルスケアとは?ストレスの原因や対策のポイント

参考:パーソル総合研究所|若手従業員のメンタルヘルス不調についての定量調査

企業のイメージアップにつながるから

レジリエンスの強化に取り組んでいる企業であることは、イメージアップにもつながります。社会情勢や業界を取り巻く環境の変化があっても、レジリエンスを自ら促せる企業であれば、しなやかに対応できるためです。

先の見通しを立てにくい時代だからこそ、どのような事態にも対応できる企業だという評価を得られれば、業績アップはもちろん、採用力の向上にもつながります。

関連記事:第二新卒の採用方法|求める人材を獲得するための採用力強化策も紹介

レジリエンスの強化につながる取り組み

企業がレジリエンスを強化するには、想定外の事態が起きたときにも対応できるような指針や、その指針に則って組織を動かせる人材が必要です。レジリエンスの強化に向けて必要な取り組みを解説します。

事業継続計画(BCP)をつくる

事業継続計画とは、緊急事態に直面した企業がコア事業の継続や早期復旧を行うために、日ごろから実施しておくべきことや、緊急時に事業継続するための方法などを定めておく計画のことです。Business Continuity Planの頭文字からBCPとも呼ばれています。

作成しておくことで、緊急時に速やかに対応できるのはもちろん、万一の事態に備えている企業として評価が高まることから、企業価値の向上も期待できるでしょう。

事業継続計画をつくるには、まず基本方針を立案して、以下の5ステップを繰り返すBCPサイクルの運用体制を確立します。その後はBCPサイクルを回しつつ、有事にはBCPに従って事業を継続する仕組みです。

  1. 事業を理解する
  2. BCPの準備・事前対策を検討する
  3. BCPをつくる
  4. BCPを定着させる
  5. BCPのテスト・維持・更新を行う

参考:中小企業庁|BCP(事業継続計画)とは

ダイバーシティ経営に取り組む

ダイバーシティは多様性を意味する言葉です。ダイバーシティ経営というと、年齢・性別・国籍・人種などの異なる、多様なバックグラウンドを持つ人材を生かした経営を意味します。

企業が、多様な人材がその能力を最大限に発揮できる機会を提供すれば、自由な発想からイノベーションが起こりやすくなるでしょう。生産性の向上や、競争力アップも期待できます。

先行きが不透明でこれまでの蓄積が通用しないケースも出てきている時代だからこそ、イノベーションの生まれやすい環境づくりに取り組むことで、どのような事態にも対応しやすくなります。

関連記事:ダイバーシティ推進で企業価値向上!取り組み事例や経営上のメリットを解説

職場の心理的安全性を高める

企業のレジリエンスを高めるには、職場の心理的安全性の向上が役立ちます。心理的安全性とは、従業員一人ひとりが、社内で不安なく発言したり能力を発揮したりできる状態のことです。

心理的安全性が高い職場をつくるには、以下のポイントを押さえておくとよいでしょう。

  • 意見を否定せずポジティブな反応をする
  • メンバー全員が議論に参加するよう促す
  • 職場で共通のゴールを設けて協力体制を築く
  • 一人ひとりの担当している仕事の種類と進捗を可視化する
  • 客観的で適切な評価方法で評価する
  • 従業員同士のコミュニケーションを促す施策を実施する

関連記事:心理的安全性を高める方法|人間関係のストレスがない職場づくりのメリット

従業員のレジリエンスを高める取り組み

企業全体のレジリエンスを強化するには、従業員一人ひとりのレジリエンス向上も重要です。ここでは従業員のレジリエンス強化につながる取り組みを紹介します。

一人ひとりの現状を把握する

従業員のレジリエンスを高めるときには、まず一人ひとりのレジリエンスの現状を把握しましょう。過度のストレスを感じながら日々の仕事に取り組んでいる従業員に対して、レジリエンス強化の取り組みを積極的に行えば負担になりかねません。

個々の従業員に合ったペースで進められるよう、ストレスチェックの実施から始めるとよいでしょう。またレジリエンスを測定する「レジリエンススケール」や「精神的回復力尺度」などもあります。

関連記事:【社労士監修】ストレスチェックの義務化はパートも?拡大方針の対象事業場についても解説

チャレンジを評価する

レジリエンスを高めるには、積極的なチャレンジがポイントです。自分の能力の範囲内で問題なく進行できる仕事のみを行っている場合、問題や困難が発生しにくいため、レジリエンスを発揮する機会が限られます。

これまでやったことのない仕事へのチャレンジは、ミスや失敗につながるかもしれません。このような困難に直面したときに、回復の方法を模索することで、レジリエンスの強化につながります。

できたことを評価する

新たなことにチャレンジした従業員は、ミスや失敗をすることもあるでしょう。このとき重要なのは、チャレンジの結果できたことについてフィードバックを行い評価することです。

フィードバックを繰り返し受けることで、従業員は「自分ならできる」という自己効力感を育めます。新しいことへのチャレンジに尻込みすることがなくなっていき、チャレンジによりレジリエンスを強化できる好循環をつくれるでしょう。

関連記事:集団的効力感とは?自己効力感と共に高め企業成長を実現!活用方法を紹介

自社のビジョンを伝える

ビジョンや企業理念は、従業員が仕事をする上で、どのように考え行動すればよいかという指針になります。従業員が自社のビジョンを正しく理解すれば、どのような状況であっても自信を持って行動できるようになるでしょう。

ビジョンや企業理念は1度伝えただけでは浸透しません。朝礼やミーティングなどで伝えたり、日ごろから目に入るところに掲示したりするとよいでしょう。

また企画書やプレゼンに対して、ビジョンや企業理念に沿っているかという視点からもフィードバックをすると、従業員が意識しやすくなります。

レジリエンス認証とは

企業のレジリエンス強化が十分行われていることを客観的に示すには、レジリエンス認証を受けるのもよいでしょう。

内閣官房国土強靭化推進室の示す国土強靭化に賛同して、事業継続に関する一定の取り組みを行っている企業や個人事業主などを「国土強靱化貢献団体」として認定する制度です。

自社の事業継続計画が専門家に評価されることで改善につながる可能性がある他、認証マークを付けることでレジリエンス強化の取り組みをアピールすることもできます。

指定の書類をそろえて応募し、書類審査と面接審査を通過すると、認証を取得可能です。審査や認証には、企業規模に応じた費用を支払います。

参考:
一般社団法人 レジリエンスジャパン推進協議会|レジリエンス認証概要
一般社団法人 レジリエンスジャパン推進協議会|レジリエンス認証申請される方へ

レジリエンスの強化をアピールにつなげよう

困難から回復する力をレジリエンスといいます。先行きが不透明なVUCA時代に、企業がどのような状況にも対応できるようレジリエンスを強化することは、企業価値の向上にもつながる取り組みです。

業績アップはもちろん、スムーズな人材採用や、今いる人材の離職防止なども期待できるでしょう。

企業のレジリエンスを高めるには、事業継続計画の作成やダイバーシティ経営、職場の心理的安全性の向上などが役立ちます。併せて従業員一人ひとりのレジリエンス向上にも取り組みましょう。

また人材確保に向けては、エデンレッドジャパンの提供している食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」の導入を検討してみてはいかがでしょうか。93%という高い従業員満足度を誇る食の福利厚生サービスも、求職者へのアピールにつながります。

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エデンレッドジャパンブログ編集部

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