監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)
企業には、条件を満たす契約社員を健康保険や厚生年金保険などの法定福利厚生に加入させる義務があります。一方、住宅手当や食事補助といった法定外福利厚生は、同一労働同一賃金の原則のもと、正社員との不合理な待遇差をつけることが禁止されています。本記事では、気になる待遇差について、最新の改正情報をもとにわかりやすく解説します。
契約社員にも福利厚生は適用される?基本ルールを解説
契約社員とは、雇用期間が定められた有期労働契約で働く社員のことです。法定福利厚生は契約社員にも適用義務があり、住宅手当や食事補助などの法定外福利厚生も、正社員との不合理な待遇差は原則として認められていません。まずは、基本ルールを押さえておきましょう。
法定福利厚生と法定外福利厚生の違い
福利厚生は、大きく「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」の2種類に分けられます。
法定福利厚生は法律で企業に提供が義務付けられているもので、健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険、子ども・子育て拠出金の6種類が該当します。これらは契約社員であっても、後述する加入条件を満たせば必ず適用されるものです。
一方、法定外福利厚生は企業が任意で設ける制度で、住宅手当、家族手当、食事補助、慶弔見舞金、社員旅行などが含まれます。法律上の支給義務はありませんが、正社員にのみ提供し、契約社員を一律で対象外にした場合、後述する同一労働同一賃金の原則に反するおそれがあるため注意が必要です。
関連記事:【税理士監修】福利厚生費の勘定科目完全ガイド!迷いやすい支出をわかりやすく解説
契約社員が法定福利厚生に加入できる条件
健康保険と厚生年金保険は、1週間の所定労働時間と1カ月の所定労働日数が正社員の4分の3以上であれば、契約社員も加入対象です。これに満たない短時間労働者についても、週20時間以上勤務し、賃金が月額8.8万円以上であるなどの要件を満たせば、2024年10月から従業員数51人以上の企業で加入対象となっています。
なお、2025年6月成立の年金制度改正法により、まず企業規模要件(現在の51人以上)が2027年10月から段階的に縮小され、2035年10月には撤廃されることが決まりました。さらに、最低賃金の上昇によって週20時間以上働けば自動的に月額8.8万円以上となる地域が増えてきたことから、この賃金要件自体も2026年10月を目処に撤廃される見込みです。
つまり、企業規模や賃金額にかかわらず、週20時間以上勤務する短時間労働者は社会保険の加入対象に含まれていく方向にあります。
契約社員が法定福利厚生に加入できる主な条件は、以下のとおりです。
| 保険・制度の種類 | 主な加入条件(契約社員) | 備考 |
|---|---|---|
|
健康保険・厚生年金保険 |
週20時間以上・月給8.8万円以上(51人以上規模) ※短時間労働者の特例 |
2026年10月に賃金要件撤廃予定 |
| 雇用保険 | 週20時間以上・31日以上の雇用見込み | |
| 労災保険 | すべての労働者が対象(条件なし) | |
| 介護保険 | 40〜64歳で、健康保険に加入している場合 | 65歳以上は納め方が異なる |
| 子ども・子育て拠出金 | 厚生年金保険の被保険者である場合 | 事業主が全額負担 (本人負担なし) |
※健康保険・厚生年金保険の本来の加入条件は「1週間の所定労働時間・1ヵ月の所定労働日数が正社員の4分の3以上」です。表の条件は、これに満たない短時間労働者にも加入対象を広げる特例(短時間労働者の適用拡大)の要件です。
参考:厚生労働省|社会保険の加入対象の拡大について
参考:日本年金機構|短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大
契約社員と正社員、福利厚生にはどんな差があるのか
正社員と契約社員の福利厚生には、実際にどのような差があるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
手当・退職金・賞与における待遇差
厚生労働省の調査では、正社員同様の職務に従事していても、有期契約労働者に退職金を支給している事業所は9.8%、賞与を支給している事業所は58.6%にとどまっています。賞与や退職金は長期勤続や継続的な貢献を前提に設計されることが多く、有期雇用である契約社員が対象外となるケースもあります。
住宅手当や家族手当についても、正社員のみを対象とする企業は少なくありません。これらの待遇差自体は直ちに違法とはいえませんが、企業側には、なぜその差を設けているのかを合理的に説明できる根拠が求められます。
説明できない待遇差は、同一労働同一賃金の観点から法的リスクにつながるおそれがあります。
参考:厚生労働省|有期労働契約に関する実態調査(事業所調査)
参考:厚生労働省|雇用形態に関わらない公正な待遇の確保
食事補助・社員食堂の利用における待遇差
社員食堂を契約社員が利用できない、食事手当の額が正社員より少ないといった声は珍しくありません。
同一労働同一賃金ガイドラインでは、社員食堂などの「福利厚生施設」について不合理な差を禁止していますが、令和8年4月の改正により「福利厚生施設(給食施設、休憩室及び更衣室をいう)」という定義が条文上に明記され、令和8年10月1日から適用されることになりました。これにより、社員食堂の利用において契約社員を対象外とする扱いは、ガイドライン上いっそう問題視されやすくなります。
次の章で解説する不合理性の判断基準に照らすと、職務内容に差がないにもかかわらず食事補助だけ対象外としている場合、説明が難しいケースもあります。
住宅手当や賞与に比べて見直しのハードルが低く、対応しやすい分野でもあることから、待遇差の議論を進める入り口として、まず食の福利厚生の見直しを進めるのも効果的です。
関連記事:【2026年版】食事補助とは?福利厚生に導入するメリットと支給の流れ
「同一労働同一賃金」の原則とは?契約社員の待遇差は違法なのか
契約社員の待遇差は、どこまでなら違法とならないのでしょうか。2020年に施行されたパートタイム・有期雇用労働法や最高裁判例を参考に紐解いていきましょう。
パートタイム・有期雇用労働法が定める「不合理な待遇差」の禁止
パートタイム・有期雇用労働法(正式名称:短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)は、同一企業内の正社員と非正規雇用労働者の間で、基本給や賞与、福利厚生などあらゆる待遇について不合理な差を設けることを禁止しています。
この法律は大企業は2020年4月、中小企業は2021年4月から適用されました。対象となる雇用形態は契約社員・パート・アルバイト・派遣労働者などです。
違反した場合の罰則規定はありませんが、都道府県労働局による助言・指導の対象となるほか、労働者から損害賠償を求める民事訴訟に発展するおそれもあるため、企業としても軽視できません。福利厚生の見直しも、この法律への対応の一環として位置づけられています。
参考:e-Gov 法令検索|短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律
関連記事:「同一労働同一賃金」の"おかしい"現状|日本と海外の違いから解説
日本郵便事件の最高裁判決から学ぶ判断基準
2020年10月15日、契約社員と正社員の待遇差を争った日本郵便事件において、最高裁判所は、年末年始勤務手当・祝日給・扶養手当を契約社員に支給しないこと、病気休暇・夏期冬期休暇を契約社員に付与しないことについて、いずれも不合理であると判断しました。
判断の核心は、各手当・休暇の趣旨が契約社員にも当てはまるかどうかです。たとえば、扶養手当は継続的な勤務を前提とした生活保障であり、契約更新を重ね継続勤務が見込まれる契約社員にも趣旨が及ぶとされました。
一方で、同時期の別の最高裁判決では、退職金や賞与の不支給は不合理でないとされた事実があります。待遇の種類によって判断が分かれる点に注意が必要です。
参考:厚生労働省|参考(最近の裁判例)|日本郵便(東京・大阪・佐賀)事件
令和8年10月施行のガイドライン改正で何が変わる?
令和8年4月28日、改正同一労働同一賃金ガイドラインが公布されました。同年10月1日から適用されます。
今回の改正では、日本郵便事件の判決ロジックの一部がガイドラインに明文化されました。たとえば家族手当は、契約更新を繰り返すなど継続的な勤務が見込まれる契約社員には、正社員と同一の支給が必須と新たに規定されています。
また、給食施設(社員食堂)、休憩室、更衣室といった「福利厚生施設」についても、利用機会に不合理な差を設けてはならない対象であることが条文上で明確になりました。
さらに、企業が待遇差の説明を十分に行わなかった事実そのものが、待遇差を不合理と判断する根拠のひとつになりうることも新設されています。
退職手当や夏季冬季休暇も独立した項目として明記されており、企業はこれらの最新ルールに沿って福利厚生を点検することが求められます。
参考:厚生労働省|改正後の同一労働同一賃金ガイドライン(厚生労働省告示第430号)
説明義務とは?従業員から問われたときの企業の対応
パートタイム・有期雇用労働法では、契約社員などの非正規雇用労働者から待遇差の内容や理由について説明を求められた場合、企業は説明する義務を負うと定められています。
説明を拒んだり、説明を求めたことを理由に不利益な取り扱いをすることは認められません。説明の際は、待遇の決定基準やその待遇を設けている目的について、正社員との比較に基づき具体的に示す必要があります。
厚生労働省はこうした説明に活用できる点検・検討マニュアルを公表しており、自社の待遇差を整理し説明する際の参考資料として活用できます。求められたときに慌てないよう、日頃から準備しておきましょう。
参考:厚生労働省|不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(業界別マニュアル)
契約社員の待遇差を見直す4ステップ
契約社員の待遇差を是正するには、どのような手順で進めればよいのでしょうか。厚生労働省のマニュアルによると、社員タイプの分類から是正の社内展開まで、大きく4つのステップに整理できます。順を追って解説します。
参考:厚生労働省|不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル
ステップ1:社員タイプを分類し、均等待遇か均衡待遇かを確認する
最初のステップは、自社で雇用している労働者の社員タイプを整理し、契約社員が「均等待遇」「均衡待遇」のどちらの対象になるかを確認することです。
均等待遇とは、正社員と職務内容・配置変更の範囲が将来にわたって同一と見込まれる場合に適用され、待遇に一切差を設けられない厳格なルールです。一方、均衡待遇は、職務内容等に違いがある場合に適用され、待遇に差をつけることは許されますが、その差が不合理であってはなりません。
どちらに当たるかで、以降のステップでの検討の進め方や負担の大きさが大きく変わるため、最初に正確に見極めることが重要です。
ステップ2:待遇ごとの適用状況と決定基準を洗い出す
次に、社員タイプごとに個々の待遇の現状を整理します。
住宅手当・家族手当・食事補助・賞与・退職金など、待遇ごとに比較対象となる正社員との間で「適用の有無」と「決定基準」に違いがあるかを確認していく作業です。
ここで重要なのは、ステップ1で判別した社員タイプによって対応が異なる点です。均等待遇の対象者に違いが見つかった場合は、その時点で検討の余地なく是正が必要です。一方、均衡待遇の対象者については、違いがあるという事実をここで一覧化するだけでよく、その違いが不合理かどうかの判断は次のステップ3で行います。
決定基準が明文化されていない場合は、人事担当者の認識や慣行を確認しながら整理しましょう。厚生労働省が配布しているワークシートを活用すると、漏れなく一覧化できます。
ステップ3:待遇差の合理性を検討する
均等待遇の対象者については、待遇に違いがあれば不合理性を検討する余地なく是正が必要です。
均衡待遇の対象者については、各待遇の性質や目的に立ち返り、その趣旨が契約社員にも当てはまるかどうかを検討します。日本郵便事件の判断枠組みが示すとおり、職務内容や人材活用の仕組みに実質的な違いがないにもかかわらず差を設けている場合は、不合理と判断されるリスクが高まります。
逆に、正社員に限定する合理的な理由が説明できる場合は、直ちに問題とはなりません。誰がどのように判断したのか、検討の経緯を記録に残しておくことも重要なポイントです。
ステップ4:是正の方針を決め、社内に展開する
合理性の検討結果をもとに、是正が必要な待遇差については具体的な対応方針を決め、社内に展開します。
待遇を引き下げる形での是正は、不利益変更として労働者の同意や合理的な理由が必要になるため避けましょう。是正内容は就業規則や労働条件通知書に反映し、対象となる契約社員への説明も丁寧に行います。
一度の見直しで終わらせるのではなく、雇用形態や事業環境の変化に応じて、定期的に点検を続けていく姿勢こそが、不合理な待遇差を未然に防ぐうえで欠かせません。
継続的な運用を社内に根づかせていく意識を、企業として共有しながら持つことが大切です。
契約社員にも公平な福利厚生を。低コストで導入できる「食事補助」
ここまで見てきた待遇差の是正策として、食事補助は契約社員にも公平に提供しやすく、低コストで導入できる福利厚生です。具体的な魅力やおすすめのサービスを紹介します。
食事補助が契約社員との待遇差是正に向いている理由
食事補助は、内勤・外勤、勤務地、雇用形態を問わず、貴社と直接雇用契約のある従業員であれば公平に提供しやすい福利厚生です。
社員食堂のように一部の拠点や職種に利用が限定されないため、契約社員を含むすべての従業員が同じ条件で利用できます。さらに、一定の要件を満たせば非課税で支給できる制度であり、非課税上限は2026年4月1日より月額3,500円から7,500円に引き上げられました。
これにより、年間最大9万円が非課税対象となり、同額を現金で賃上げした場合と比較して従業員の実質的な手取りをより増やせるようになっています。
物価上昇が続くなか、企業・従業員双方にとっての導入メリットの大きさから、ますます注目度が高まっている福利厚生施策です。
参考:国税庁|食事の現物支給に係る所得税の非課税限度額の引上げについて
関連記事:【税理士監修】食事補助の非課税上限が7500円へ!給与にしないための非課税の条件を解説
世界で6,000万人が利用中「チケットレストラン」
エデンレッドジャパンが提供する食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」は、非課税枠を活用しつつ、全国25万店舗以上の加盟店での食事を半額で購入できるサービスです。
加盟店のジャンルは、コンビニ・ファミレス・カフェ・三大牛丼チェーンなど幅広く、使用する人の年代や好みを問いません。勤務時間中にとる食事であれば利用する時間や場所の制限もないため、内勤・外勤・リモートワーク・夜勤者など、すべての従業員が公平に利用できる点も魅力です。
食事補助として日本で約40年、世界6000万人に利用されてきた実績と安心のサポート体制が高く評価され、すでに 4000社以上が導入する人気サービスとなっています。
関連記事:チケットレストランの魅力を徹底解説!ランチ費用の負担軽減◎賃上げ支援も
【Q&A】契約社員の福利厚生にまつわるよくある質問
ここでは、契約社員の福利厚生に関して多く寄せられる質問とその回答をまとめました。制度の導入や見直しを検討する際の参考として、気になる項目から確認してみてください。
Q. 契約社員にボーナスや退職金は出ますか?
【A. 法律上の支給義務はなく、企業の判断によります。】
賞与・退職金は法定外福利厚生にあたり、企業が任意に定める制度です。契約社員に支給しない企業も多くありますが、正社員と職務内容が同様で説明できない場合は不合理と判断されるリスクがあります。
Q. 契約社員でも社会保険に加入できますか?
【A. 一定の勤務時間・雇用期間の条件を満たせば加入できます。】
健康保険・厚生年金保険は週の所定労働時間が正社員の4分の3以上、雇用保険は週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みが条件です。なお、企業規模要件は2027年10月から段階的に撤廃され、賃金要件も2026年10月を目処に撤廃される見込みです。
Q. 福利厚生に差があるのは違法ですか?
【A. 差があること自体は違法ではなく、不合理な差が禁止されています。】
契約社員には「均等待遇」と「均衡待遇」のいずれかが適用されます。均等待遇の対象者は待遇に差を設けられませんが、均衡待遇の対象者は、合理的な理由が説明できる差であれば認められます。
Q. 契約社員にも公平に使える福利厚生にはどんなものがありますか?
【A. 食事補助など、雇用形態を問わず利用できる制度が代表的です。】
食事補助は勤務地や職種を問わず公平に利用しやすく、非課税のメリットもあるため、契約社員との待遇差是正の第一歩として導入する企業が増えています。
関連記事:「チケットレストラン」の仕組みを分かりやすく解説!選ばれる理由も
Q. 令和8年10月のガイドライン改正で何が変わりますか?
【A. 令和8年10月から、福利厚生施設や家族手当などの取扱いが明確化されます。】
社員食堂などの福利厚生施設や家族手当について、契約社員への対応が条文上で明確になり、説明不足自体が不合理性の判断材料になる規定も新設されます。早めの点検をおすすめします。
契約社員の福利厚生は「公平な見直し」から始めよう
契約社員にも、健康保険や厚生年金保険などの法定福利厚生は適用義務があります。また、住宅手当や食事補助などの法定外福利厚生も、正社員との不合理な差を放置すれば法的リスクにつながりかねません。
とくに令和8年10月には、同一労働同一賃金ガイドラインの改正が施行され、福利厚生施設や家族手当の取扱いがより明確になります。まずは「チケットレストラン」のような、雇用形態を問わず公平に提供しやすい食事補助制度から、待遇差の見直しに着手してみてはいかがでしょうか。小さな一歩が、従業員満足度や企業イメージの向上にもつながります。
関連記事:【チケットレストラン完全ガイド】メリット・コスト・導入事例まで徹底解説
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社会保険労務士 吉川明日香
