賃上げ難倒産とは、十分な賃上げが難しい企業で、従業員がより良い待遇を求めて転職したり必要な人材を採用できない結果、人手不足に陥って起こる倒産のことです。このような人手不足による倒産を避けるために、企業では何ができるのでしょうか?従業員や求職者へのアピールにつながる制度や、福利厚生を活用した第3の賃上げについて解説します。
賃上げ難倒産とは
物価が上がっていく局面では、給与を上げないままでいると、従業員の実質的な手取りが減少します。従業員の待遇を改善するために、企業では物価上昇に合わせて賃上げを行いますが、中には賃上げをし続けるのが難しい企業もあるでしょう。
ベースアップや初任給アップが難しい企業では、より良い待遇を求める従業員が転職したり、新たな人材の採用が進みにくくなったりする結果、深刻な人手不足に陥る可能性があります。
賃上げが難しいことで起こった人手不足により、事業の運営が立ち行かなくなることで発生するのが、賃上げ難倒産です。
関連記事:人手不足倒産を回避せよ!賃上げ難時代に"食事補助"という打開策
賃上げ難倒産が増えている
帝国データバンクの「「従業員退職型」の倒産動向(2024年)」によると、賃上げ難倒産は2024年に過去最多となりました。
2024年の人手不足倒産342件のうち、従業員や経営幹部の退職がきっかけとなった、従業員退職型の倒産(賃上げ難倒産)は87件で、2023年と比べて約30%増加しています。
2024年の平均就業者数は「労働力調査(基本集計) 2024年(令和6年)平均結果」によると6,781万人で過去最多となりました。その一方で2024年の転職者数は331万人となり、3年連続で増加していることが「労働力調査(詳細集計) 2024年(令和6年)平均結果」から分かります。
また厚生労働省の「令和5年 雇用動向調査結果の概要」によると、「定年」や「会社都合」などは含めない個人的理由で転職した人のうち、「給料等収入が少なかった」ことを理由としてあげたのは、男性8.2%・女性7.1%と高い割合でした。
労働者数は増えているけれど、より良い待遇で働ける職場を求めて転職する人も増えており、賃上げをはじめとする待遇改善が難しい企業では人手不足が進行している状況といえます。
参考:
帝国データバンク|「従業員退職型」の倒産動向(2024年)
e-Stat|労働力調査|主要項目(労働力人口,就業者,雇用者,完全失業者,非労働力人口,完全失業率)
総務省統計局|労働力調査(詳細集計) 2024年(令和6年)平均結果
厚生労働省|令和5年 雇用動向調査結果の概要
2025年賃上げの現状
ここでは2025年4月17日に日本労働組合総連合会が発表した「2025 春季生活闘争 第 4 回回答集計結果」を元に、2025年の賃上げについて確認していきましょう。
参考:日本労働組合総連合会|全体は5%超えを維持!中堅・中小組合も健闘が続く!~2025 春季生活闘争 第 4 回回答集計結果について~
関連記事:賃上げ率の見通しは?2025年春闘の予想や第3の賃上げについて解説
2024年を上回る賃上げ率
日本労働組合総連合会の2025年4月17日の発表によると、全体の賃上げ率は5.37%です。歴史的な賃上げとなった2024年同時期の5.20%を上回る賃上げ率となっています。
中小企業の賃上げも進行
2025年春闘に向けて、日本労働組合総連合会は「2025春季生活闘争 闘争方針」で格差是正に取り組むことを表明していました。
その結果として、2025年春闘では、従業員数999人以下の企業の賃上げ率も、以下のように前年を上回っています。
従業員数 |
賃上げ率(2025年4月時点) |
賃上げ率(2024年4月時点) |
300~999人 |
5.22% |
5.25% |
100~299人 |
5.06% |
4.92% |
~99人 |
4.66% |
4.19% |
広がる賃上げ疲れ
帝国データバンクの「2025年度の賃金動向に関する企業の意識調査」によると、2025年度に賃上げに取り組む企業は61.9%となっており、調査開始から初めて60%を超えました。
企業規模別に見ても、従業員数6人以上の企業ではいずれも賃上げを実施する割合が60%以上です。ただし従業員数5人以下の企業では、賃上げを実施するのは43.2%にとどまっています。
加えて2025年度に「賃上げを実施しない」と回答した企業の割合は、以下のように企業規模が小さいほど高い傾向です。
従業員数 |
2025年度に賃上げを実施しない割合 |
1,000人超 |
6.4% |
301~1,000人 |
6.6% |
101~300人 |
7.8% |
51~100人 |
6.0% |
21~50人 |
8.5% |
6~20人 |
11.4% |
5人以下 |
30.2% |
賃上げの必要性を認識していても、思うように取り組めない企業もあるでしょう。ここではエデンレッドジャパンが実施した「賃上げ疲れ実態調査2025」を元に、継続的な賃上げへの負担感について見ていきます。
参考:帝国データバンク|2025年度の賃金動向に関する企業の意識調査
関連記事:賃上げ疲れ実態調査2025~7割以上の企業が春闘による“賃上げ圧力”を実感~
賃上げ疲れを感じている企業は77%
「賃上げ疲れ実態調査2025」によると、継続的な賃上げに負担を「とても感じている」「やや感じている」と回答した、賃上げ疲れを実感している企業は77%でした。
賃上げ疲れの影響として回答の割合が最も高いのは、68.7%の「企業収益の圧迫」で、次いで33.1%の「事業への投資抑制」という結果です。賃上げの結果、中長期的な経営計画に影響が出ているケースもあると考えられます。
関連記事:【2025年最新】賃上げ疲れとは?データで読み解く実態と対策
人手不足解消にはそれでも賃上げが必要
賃上げの影響が経営判断にまで及んでいるケースがあるにもかかわらず、新卒採用を行っている企業では79.8%が新卒初任給を引き上げています。企業規模別に見ても、大企業86.1%・中小企業73.8%です。
理由として回答した割合が高いのは、「応募数の確保・辞退防止」79.6%、「同業他社との競争力強化」44.8%で、いずれも人材確保を目的としています。
負担感があるとしても、人材を確保して人手不足を解消するために、賃上げを実施している企業が多いといえる結果です。
関連記事:【2025年最新】人手不足の日本の現状と中小企業の生き残り戦略
人手不足解消に向けて賃上げ以外にできること
人手不足の解消を目的として初任給の引き上げに取り組んでいる企業は、企業規模を問わず70%を超えています。ただし賃上げによる負担増により、3社に1社は「事業への投資抑制」を行っている状況です。
このような状況で人手不足解消に取り組むために、賃上げ以外の待遇をアピールしている企業もあります。「2026年卒 企業新卒採用予定調査」によると、賃上げ以外の待遇で就活生にアピールしている割合は以下の通りです。
待遇 |
アピールしている割合 |
住宅手当・借り上げ社宅 |
46.4% |
営業手当・資格手当などの諸手当 |
45.5% |
休暇制度 |
44.9% |
リモートワーク・転勤なしなど勤務地に関する制度 |
27.1% |
食事補助などの各種補助 |
21.6% |
育児サポート |
20.8% |
オフィス・社員食堂などの職場環境 |
19.3% |
時差出勤・フレックスタイム制などの勤務時間に関する制度 |
15.1% |
健康増進・ヘルスケアサポート |
12.3% |
奨学金返済補助・代理返済 |
12.0% |
年代・階級ごとのモデル年収 |
12.0% |
入社後の昇給幅 |
7.2% |
その他 |
2.9% |
アピールしている企業の割合が高い待遇について、それぞれの内容や特徴を見ていきましょう。
参考:マイナビ リサーチLab|2026年卒 企業新卒採用予定調査
住宅手当・借り上げ社宅
住宅手当とは企業が従業員の住居費をサポートする制度のことです。企業が定めた規定に従って支給します。
借り上げ社宅は賃貸住宅を企業名義で契約して、従業員へ貸し出す制度です。定められた要件を満たすと、給与として課税されないため、従業員の実質的な手取り額アップに役立ちます。
住居費は家計に占める割合が高い支出のため、求職者や就活生に喜ばれる制度といえるでしょう。
関連記事:【社労士監修】家賃補助で従業員の実質収入アップ|福利厚生を活用した新時代の報酬戦略
営業手当・資格手当などの諸手当
特定の業務に携わることで得られる営業手当などの手当や、業務に関連する資格を取得すると得られる資格手当も、求職者や就活生へのアピールに有効です。
「第二種電気工事士を取得すると月1万円」というように、具体的な内容を分かりやすく提示するとよいでしょう。
関連記事:【社労士監修】手当の種類一覧を紹介!ユニークな手当や非課税の手当もチェック
休暇制度
休暇制度を充実させれば、働きやすさをアピールできます。法律で定められている有給休暇の他に、企業独自の休暇制度を設けてもよいでしょう。
単に休暇制度を設けるだけでなく、実際に休暇を取得しやすい職場環境を整備するのもポイントです。
リモートワーク・転勤なしなど勤務地に関する制度
リモートワークを整備して自宅で働けるようにしたり、転勤なしで働けるようにしたりすれば、ライフステージが変化しても従業員は働き続けやすくなります。
将来のことを考えて就職先を選びたいと考えている求職者や就活生に選ばれやすくなる制度です。
食事補助
食事補助とは従業員の食事代を企業がサポートする制度です。一定の要件を満たして導入すれば、従業員の給与として課税されないため、実質的な手取りアップにつながります。
食事で利用できる制度のため、日常的に活用できるのがポイントです。
第3の賃上げにつながる「チケットレストラン」
エデンレッドジャパンでは、家計の負担軽減を果たし、“実質手取りを増やす”ことができる福利厚生サービスを活用した実質的な“賃上げ”のことを「第3の賃上げ」と定義しました。
継続的な賃上げが難しい場合でも、福利厚生による「第3の賃上げ」であれば実施しやすいでしょう。
ここでは「第3の賃上げ」につながる福利厚生として、エデンレッドジャパンの提供している食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」を紹介します。
関連記事:“福利厚生”で実質手取りアップと高いエンゲージメントの実現を「#第3の賃上げアクション」プロジェクト
公平に食事補助を提供できる
食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」は、全国にある25万店舗以上の加盟店で食事を購入できます。
社員食堂やお弁当のように、食事を提供できる場所が限定されないため「毎日異なる現場で仕事をしている」「常駐先で仕事をしている」「リモートワークで仕事をしている」など、働く場所によらず都合の良い時間帯に利用可能です。
対象となる従業員が公平に利用できるため、名古屋商工会議所や関西エアポートオペレーションサービス株式会社のように「従業員が公平に利用できる福利厚生を探していた」という企業での導入事例もあります。
詳細な導入事例はこちら:
名古屋商工会議所
関西エアポートオペレーションサービス株式会社
従業員の満足度アップにつながる
いつでもどこでも食事補助を利用できる「チケットレストラン」の利便性の高さから、従業員の満足度アップにつながったのは、共進運輸株式会社です。
同社の従業員は約半数がシフト制で働くドライバーのため、駐車スペースを考えることなくいつでも利用できる福利厚生サービスを検討していました。
コンビニや飲食店で利用できる「チケットレストラン」が勤務形態にフィットしたことで、従業員の満足度向上につながっているそうです。
詳細な導入事例はこちら:共進運輸株式会社
従業員の離職防止につながる
食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」の導入は従業員の離職防止にもつながります。
株式会社sumarchでは「チケットレストラン」をはじめとする充実した福利厚生サービスを整備した結果、転職を検討していた従業員が「自社より待遇の良い企業がなかった」と転職を考え直したケースもあったそうです。
また株式会社ほねごりでは、複数の採用施策を実施するとともに「チケットレストラン」をアピールすることで、新卒採用数の倍増につながりました。
人手不足の解消に向けて、今いる従業員にも求職者にも魅力的な福利厚生といえます。
詳細な導入事例はこちら:
株式会社sumarch
株式会社ほねごり
賃上げ難倒産の対策に「チケットレストラン」の活用を
物価高が続く中、賃上げを行わなければ従業員の実質的な手取り額は減少してしまいます。より良い待遇を求めて転職する従業員も出てくるでしょう。
このような状況の中、継続的な賃上げが難しい企業が、従業員や経営幹部の退職をきっかけに倒産することを賃上げ難倒産といいます。
人手不足を避けるために、企業収益が圧迫されたり事業への投資を抑制したりしてでも賃上げを実施している企業もありますが、継続は難しいかもしれません。
そこで役立つのが、福利厚生を活用して実質的な手取り額アップを行う第3の賃上げです。食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」もその1つといえます。
対象となる従業員に公平に提供でき、従業員満足度アップにもつながる福利厚生サービスを、賃上げ難倒産の対策として活用してみませんか。
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