賃上げ率は2025年も2024年と同水準となると予想されています。2023年・2024年と賃上げが実施されていますが、同時に物価高が進行しており実質賃金は下がっているためです。連合の発表した「2025春季生活闘争 闘争方針」や「中間集計結果」とともに、賃上げのメリットや第3の賃上げについても見ていきましょう。
賃上げ率の推移と2025年の見通し
2025年の賃上げ率の見通しを見ていくために、まずはこれまでの賃上げ率の推移をチェックします。
年 |
賃上げ率 |
2006年 |
1.79% |
2007年 |
1.86% |
2008年 |
1.88% |
2009年 |
1.67% |
2010年 |
1.69% |
2011年 |
1.71% |
2012年 |
1.72% |
2013年 |
1.71% |
2014年 |
2.07% |
2015年 |
2.20% |
2016年 |
2.00% |
2017年 |
1.98% |
2018年 |
2.07% |
2019年 |
2.07% |
2020年 |
1.90% |
2021年 |
1.78% |
2022年 |
2.07% |
2023年 |
3.58% |
2024年 |
5.10% |
2.00%前後で推移してきた賃上げ率が、2023年・2024年で一気に上がっています。5%を超える賃上げ率となったのは33年ぶりのことです。
2025年春闘の中間集計結果では、高水準の賃上げ傾向が継続しています。大企業だけでなく中小企業やパート・アルバイトでも、前年に近いかそれを上回る賃上げが実現しつつあるのです。詳細な数値については、後ほど企業規模別に解説します。
まずは、なぜ2025年も高水準の賃上げが続いているのか、その理由を見ていきましょう。
実質賃金の減少
2024年には歴史的な賃上げが行われ、名目賃金は上がりました。賃上げの動きはパートをはじめとする非正規雇用で働く従業員にも広がりつつあります。
ただし実質賃金の推移を見ると、名目賃金の上昇に反して減少している状況です。
「毎月勤労統計調査令和5年分結果速報の解説」で実質賃金・名目賃金・消費者物価指数の推移を見ると、名目賃金が上がっているにもかかわらず、消費者物価指数の上昇により実質賃金が下がっているのが分かります。
エデンレッドジャパンの実施した「ビジネスパーソンのランチ実態調査2024」によると、このような状況の中で、ビジネスパーソンの約8割が「家計が苦しい」と感じています。
働いても生活が苦しいままでは、従業員の労働意欲が低下する可能性もあります。
2024年と同程度の賃上げは、実質賃金の上昇に向けて欠かせない取り組みといえるでしょう。
関連記事:歴史的賃上げでも…8割以上が「お小遣いが増えていない」!「ビジネスパーソンのランチ実態調査2024」
深刻さを増す人手不足
賃上げは人手不足対策にも有効です。同業他社より高額の賃金を提示できれば、スムーズな採用が期待できます。
実際に、サントリーホールディングスは人材確保を意識して、2024年9月時点で2025年に約7%の賃上げ実施を表明しました。
少子高齢化の進行により、業種を問わず人手不足が深刻化していく中、人手不足解消に向けた賃上げは必要不可欠といえるでしょう。
関連記事:人材確保に効く!福利厚生ランキング|導入のメリットと注意点も
2025年春闘はどうなる?
連合(日本労働組合総連合会)は2024年11月28日に「2025春季生活闘争 闘争方針」を発表しました。2025年春闘に、連合はどのような姿勢で臨むのでしょうか?
関連記事:【2024春闘】賃上げ率5.10%を達成!持続可能な賃上げ戦略とは
賃上げの定着を目指す
日本の経済状況は長らく停滞しており「賃金は上がらないもの」「物価は上がらないもの」といった考えが浸透しています。ただし2021年後半ごろから、物価が上がり始めました。
続いて2023年・2024年には、これまで2%前後で推移していた賃上げ率も上昇しました。さらに個人消費を増やし、経済の好循環を作り出すには、賃上げが欠かせません。
連合では賃上げを定着させるために「みんなでつくろう!賃上げがあたりまえの社会」をメインスローガンに、2025年も2024年と同水準の賃上げ率となるよう、取り組むことを表明しています。
「暮らしがよくなった」実感を得ることを目指す
歴史的な賃上げが行われたにもかかわらず実質賃金は下がっており、一般的なビジネスパーソンの暮らしは決して向上しているとはいえません。
連合は2025年も賃上げを要求することで、実質賃金を上げ、生活向上の実感を得られる状況づくりを目指しています。
格差是正に取り組む
賃金は企業規模・雇用形態・性別などによって格差が存在しています。例えば賃金や賃上げ率は企業規模が大きいほど高いケースが多いため、大企業で働く従業員ほど賃上げを実感しやすい状況といえるでしょう。
このような格差是正に向けて、連合は具体的な賃上げの目安を提示しました。全体としては5%の賃上げを交渉しつつ、中小労組に向けては6%の賃上げを求める考えです。
さらに年齢ごとに到達すべき賃金の最低到達目標水準も、以下の通り定めています。
中位数 |
第1四分位 |
|
35歳 |
30万3,000円 |
25万2,000円 |
30歳 |
27万9,000円 |
23万8,000円 |
加えて非正規雇用で働く従業員の賃金引き上げにより、雇用形態による格差是正も目指す計画です。具体的な数値目標として、経験年数5年以上で時給1,400円以上を目指します。
賃金の底支えを目的として、全ての従業員に対して時給1,250円以上での締結を目指す方針も打ち出しました。
2025年春闘中間集計結果:企業規模別賃上げ
2025年春闘では、連合が中小企業の賃上げをさらに強化する意向を示しているように、企業規模で賃上げの実現可能性が異なっています。ここでは、組合員数1,000人以上を大企業、300人未満を中小企業として、2025年春闘の中間集計結果を見ていきましょう。
2025年春闘中間集計結果:大企業の賃上げ
2025年春闘の第4回回答集計結果(4月17日公表)では、組合員数1,000人以上の場合、平均金額で17,707円、平均賃上げ率5.43%です。2024年の第4回回答集計結果では、金額16,402円、率で5.24%だったことから、昨年度を上回る水準での賃上げが表明されています。
例えば、トヨタは2025春闘で5年連続の満額回答です。賃上げ額は17種類の職種・階級ごとに月9,950円〜2万4,450円となります。
参考:日本労働組合総連合会|2025 春季生活闘争 第 4 回回答集計結果
参考:日本経済新聞|トヨタ、5年連続の満額回答 賃上げ最大2万4450円に
関連記事:賃上げを表明した企業一覧。2025年春闘の動向や第3の賃上げも解説
2025年春闘中間集計結果:中小企業の賃上げ
続いて、組合員数300人未満の中小企業についてです。2025年春闘の第4回回答集計結果(4月17日公表)によると、平均金額で13,283円、平均賃上げ率は4.97%と公表されました。2024年の第4回回答集計結果では、金額で12,170円、率で4,75%だったことから、中小企業でも高い賃上げ表明をしている努力が伺えます。
中小企業の場合、賃上げと組み合わせることで受け取れる金額や率が増える賃上げ関係の助成金・補助金が充実しているなどを活かすなど、引き続き企業努力が期待されます。
関連記事:【社労士監修】2025年4月最新|賃上げ関連の助成金・補助金まとめ
参考:日本労働組合総連合会|2025 春季生活闘争 第 4 回回答集計結果
2025年春闘:パート従業員の賃上げで注目「イオン」
2025年の賃上げは正規雇用の従業員だけでなく、パート・アルバイト労働者などの非正規雇の従業員にも及んでいます。2025年の春闘では、UAゼンセンなど労働組合や大手企業を中心として、パート労働者への高い水準の賃上げが注目されています。
連合がまとめた「有期・短時間・契約等賃金回答速報 No.15(2025年4月15日掲載)」によると、2025年賃上げの象徴的存在であるイオングループ関係組合のほとんどが7%以上の賃上げ率で妥結しました。2024年に続く高水準の賃上げを継続することになり、2025年のパート賃上げ実現に影響を与えています。
UAゼンセン加盟組合の中でも、従業員の約6割がパート従業員であるイオングループは、非正規雇用の従業員の賃金水準向上を牽引する重要な存在です。
参考:日本労働組合総連合会|有期・短時間・契約等賃金回答速報 No.15(2025年4月15日掲載)
参考:日本経済新聞|〈賃上げ 2025〉UAゼンセン、パート時給70.1円上げ
2025年の賃上げについてよくある質問と回答
2025年の賃上げ率や賃上げ動向について、多くの方が疑問に思う内容とその回答をまとめました。「2025年の賃上げはどうなるのか」「2025年の最低賃金はいくらになるのか」といった疑問に対する情報を整理しています。
Q1:2025年の賃金は上がりますか?
A:はい、2025年は多くの企業・業種で賃金上昇が予想されています。連合の闘争方針は大企業5%以上、中小企業では18,000円以上・6%以上が掲げられました。
連合による「第4回回答集計結果」では、大企業では5.43%、中小企業でも4.97%と高い水準で、パート・アルバイトなど非正規雇用者へも7%超の賃上げが実施される企業も見られます。ただし、業種や企業規模によって差があるため、自社の状況を確認する必要があります。
参考:日本労働組合総連合会|2025 春季生活闘争方針について
参考:日本労働組合総連合会|2025 春季生活闘争 第 4 回回答集計結果
Q2:2025年の最低賃金はいくらになりますか?
A:2025年の最低賃金は、全国平均で1,100円前後になる可能性があります。2024年度は全国平均で1004円から1,055円(引き上げ率5.1%)となっており、この動きが続けば1,100円前後が見込めます。
また、連合は、2025年度の最低賃金取り組み方針で、「誰もが時給1,000円」の達成を目標に掲げました。2024年時点で16都道府県が既に1,000円に到達しています。
さらに連合は「一般労働者の賃金中央値の6割水準」を目指すとしており、現在の49.3%から大幅な引き上げが見込まれます。地域間格差の是正も進められる方針です。これまで最低賃金が低かった地域における引き上げも期待できます。
現在の賃上げ水準を中長期的に継続した場合、「一般労働者の賃金中央値の6割水準」をシミュレーションしたものでは、2035年ごろに「1,600 円〜1,900円程度」になる見込みです。
なお連合とは別に、政府は「2020年代に全国平均1,500円」という高い目標を掲げています。
出典:日本労働組合総連合会|2025 年度最低賃金取り組み方針
参考:厚生労働省|地域別最低賃金の全国一覧
参考:日本労働組合総連合会|2025 年度最低賃金取り組み方針
企業が賃上げに取り組むメリット
賃上げの実施にはコストがかかります。企業が賃上げに取り組むことで、コストを回収できるようなメリットがあるのでしょうか?賃上げのメリットを見ていきましょう。
従業員のモチベーションが上がる
十分な賃上げを実施すれば、従業員のモチベーションアップが期待できます。物価上昇が続く中、賃上げを実施していなければ、従業員の実質賃金は以前より減少している状態です。
努力しても生活が苦しい状態が続けば、従業員のモチベーションは下がっていくでしょう。モチベーションが低い状態では、業務の効率が落ちることも考えられます。
賃上げを行うことで、従業員が積極的に仕事に取り組むようになれば、業績アップにもつながるかもしれません。
人材確保につながる
他社と比べて魅力的な賃金を提示できれば、人材確保にもプラスに働きます。新しい人材の採用がスムーズに進みやすくなるのはもちろん、今いる人材の離職を防ぐことにもつながるでしょう。
仕事の依頼があったとしても、人材不足では引き受けられません。事業拡大のチャンスを逃す可能性もあります。
また必要な人材が不足すれば、事業計画に沿った企業の運営ができなくなる恐れもあるでしょう。計画の変更を余儀なくされる事態も起こり得ます。
関連記事:防衛的賃上げの実態と中小企業の課題|人材確保のための厳しい選択
従業員の手取り額アップに第3の賃上げが有効
賃上げを実施するときには、福利厚生を活用した第3の賃上げも検討しましょう。物価高が続く中、賃上げのみでは従業員が手取り額アップを実感しにくい可能性があります。福利厚生の拡充による第3の賃上げの特徴を知り、従業員の待遇改善に活かしましょう。
関連記事:“福利厚生”で実質手取りアップと高いエンゲージメントの実現を「#第3の賃上げアクション」プロジェクト
第3の賃上げの仕組み
定期昇給を第1の賃上げ、ベースアップを第2の賃上げとしたとき、福利厚生を活用した実質的な手取り額アップの仕組みを、エデンレッドジャパンでは第3の賃上げと定義しました。
第3の賃上げを導入するときに利用するのは、要件を満たすことで従業員の税負担を増やすことなく支給できる福利厚生です。例えば食事補助や社宅などがあります。一定の利用下で支給した場合、給与で支給するより手取り額アップを実感しやすい仕組みです。
パート・アルバイトの待遇改善も可能
非正規雇用で働く従業員の中には、扶養内での勤務を希望するケースもあります。福利厚生を活用した「第3の賃上げ」は、一定利用条件下であれば所得税を非課税枠運用ができるため、賃金に大きな影響を与えることなく実質的な手取り額アップが可能です。そのためパート・アルバイトなどの待遇改善にも向いている方法です。
第3の賃上げには「チケットレストラン」がおすすめ
賃上げと併せて福利厚生を活用した「第3の賃上げ」の実施を検討しているなら、エデンレッドジャパンの提供する食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」の導入がおすすめです。
一定の要件を満たした場合、所得税の非課税枠運用ができるため、第3の賃上げに活用できます。
「ビジネスパーソンのランチ実態調査2024」によると、ランチ代を節約するために、欠食するビジネスパーソンは4人に1人いるそうです。そのうち半数以上が、ランチを食べないことで「集中力の低下」や「イライラの増加」など、仕事への悪影響があると回答しています。
食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」でランチ代をサポートすれば、節約目的で欠食する従業員を減らせるでしょう。従業員のパフォーマンス低下による生産性の低下を避けられます。
関連記事:歴史的賃上げでも…8割以上が「お小遣いが増えていない」!「ビジネスパーソンのランチ実態調査2024」
2025年の賃上げ動向を自社の賃上げに役立てよう
2025年も引き続き賃上げの動きは続いていくでしょう。歴史的な賃上げ率となった2024年と同水準の賃上げが行われることも考えられます。賃上げの動きは、中小企業や非正規雇用の従業員にさらに広がっていく見込みです。
また賃上げに取り組むときには、福利厚生を活用する第3の賃上げも検討しましょう。一定の利用条件下において、所得税の非課税枠を運用し支給できる福利厚生を活用すれば、従業員が手取り額アップを実感しやすくなります。
エデンレッドジャパンの提供する食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」を導入すれば、手間とコストを抑えつつ、従業員の待遇改善を実施可能です。
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