近年の新卒採用では、会社説明会のあり方が成果を左右する重要な要素となっています。理念や制度よりも「働くリアル」を感じられる情報を求める学生が増える中、企業に求められる対応とはどのようなものなのでしょうか。本記事では、最新の調査結果をもとに、効果的な説明会設計のポイントを解説します。
採用環境の変化で、会社説明会の「役割」が変わった
採用活動の早期化やオンライン化が進み、学生の行動は大きく変わりました。情報が容易に手に入る今、会社説明会は単なるPRの場ではなく、学生の「志望度を左右する重要な機会」となっています。なぜこの変化が起き、企業はどのように対応すべきなのか、その背景を見ていきましょう。
採用活動の早期化が加速

就職活動の開始時期は年々早まり、企業の説明会の実施も前倒し傾向にあります。
リクルート就職みらい研究所の「就職白書2025」によると、卒業年次前年の2月までに面接や内々定を実施する企業の割合は、面接(対面)が51.2%(前年比+11.6ポイント)・面接(Web)が61.8%(前年比+11.0ポイント)でした。また、内々定・内定出しが43.3%(前年比+13.1ポイント)と、ともに前年より10ポイント以上増加しています。
採用広報解禁の3月以前から選考を進める動きも年々拡大しており、採用スケジュール全体が前倒しになっているのが実情です。
その結果、企業と学生が初めて接点を持つ機会となる会社説明会の重要性が、これまで以上に高まっています。
タイパ重視で情報を「選ぶ」学生たち

出典:MIL株式会社のプレスリリース|【Z世代400名調査】就活生の72%が新卒向け会社説明会において、「オンライン」を重視すると回答
MIL株式会社の「会社説明会に関する意識調査」では、学生の72.0%が「会社説明会の望ましい形式はオンライン」と回答しました。 これは単なる形式の好みではなく、「移動時間を省き、短時間で多くの企業を効率的に比較したい」というタイパ(タイムパフォーマンス)志向の表れです。
実際、少子化で売り手市場が続く中、学生は複数の選択肢を持ち、自ら最適な手段で情報を収集する傾向を強めています。 これは、企業が従来どおり一方的に理念や制度を語るだけでは、学生の関心を引くことは難しくなりつつあることを意味します。
関連記事:中小企業が新卒採用を行うメリットを解説!採用できない課題への対策
学生が会社説明会で「本当に知りたい」こと
学生の志望度を高めるには、彼らが重視するポイントを的確に把握し、説明会の内容設計を見直すことが欠かせません。では、実際に求められている情報とはどのようなものなのでしょうか。
「募集要項」と「社風」が上位に

出典:MIL株式会社のプレスリリース|【Z世代400名調査】就活生の72%が新卒向け会社説明会において、「オンライン」を重視すると回答
MIL株式会社の「会社説明会に関する意識調査」によると、学生が説明会でもっとも知りたい内容は「募集要項(勤務地・給与・福利厚生)」(40.9%)が最多で、「社風・職場の雰囲気」(35.0%)が続きます。また、「先輩社員によるリアルな働き方・体験談」(31.8%)が4番目に多く選ばれている点も見逃せません。
この結果からは、給与や勤務地といった条件面だけでなく、「自分がここで働く姿をイメージできるかどうか」が重視されていることが分かります。
満足度の高い会社説明会にするためには、従業員座談会や現場密着型コンテンツなど、学生の関心と直結するプログラムを提供することが重要です。
企業側が陥りやすい「理念偏重」の落とし穴
会社説明会を実施するにあたり、多くの企業が企業理念や事業方針、福利厚生などの制度的な情報に重点を置きがちです。
しかし、前述のとおり、実際に学生が求めているのは「どんな人が働き、どんな雰囲気の職場なのか」という日常のリアルです。採用広報で多く見られる「数字で見る会社」や「経営ビジョンの説明」は、学生にとって抽象的に映る可能性が否定できません。
理念を語ること自体は重要ですが、それを「実際の従業員の体験」と結びつけて語ることで初めて共感が生まれます。説明会の目的は、情報提供と同時に「共感の形成」でもあることを踏まえた構成が必要です。
「情報量」より「理解しやすさ」を求める傾向

出典:MIL株式会社のプレスリリース|【Z世代400名調査】就活生の72%が新卒向け会社説明会において、「オンライン」を重視すると回答
同調査では、説明会後に「内容を振り返りたい」と回答した学生が37.7%にのぼりました。その理由の55.9%が「情報量が多く、一度では理解・整理できなかったから」です。
この結果は、説明会の評価が「情報の多さ」ではなく、「理解のしやすさ」に左右されることを示しています。
考えられる対策としては、スライドの枚数や話すスピードを抑える・要点を整理した構成にするなどが挙げられます。また、資料の後日共有や動画アーカイブなど、復習できる仕組みも効果的です。
成果を上げる会社説明会|4つの設計ポイント
では、実際に満足度の高い会社説明会を実現するにはどうしたらよいのでしょうか。ここでは、企業が意識したい4つの設計ポイントを紹介します。
① オンラインでも「空気」が伝わる演出
学生のニーズもあり、オンラインで会社説明会を行う企業は少なくありません。しかし、学生の満足度を高めるには、画面越しに「職場の空気」を感じられる工夫が重要です。
オフィスツアー動画や若手従業員の1日密着、ライブQ&Aを取り入れることで、学生は臨場感を得やすくなります。多くの企業が講義型の配信にとどまる点を踏まえると、他社との差別化にも寄与します。
なお、実際の執務エリアや休憩スペースを背景に登壇することも、学生の親近感を引き出す効果的な手法です。
関連記事:内定者の意識調査でわかる若手の本音|内定辞退・早期離職を防ぐ取り組みとは
② 学生の「共感」を得るストーリー設計
企業の印象を左右するのは、従業員自身が語るリアルなエピソードです。話者の経験に対する共感が、企業への興味や愛着につながります。
具体的な構成としては、実際の心の動きに合わせ「入社前の不安→入社後の実際→成長の瞬間→現在の仕事」という流れが効果的です。
さらに、近い世代の若手従業員に加え、異なる職種・立場の従業員を登壇させることで、学生が自分の未来を重ねやすくなります。
実際の業務や、組織の一員としての日常を「体験として伝える」ことが共感形成の鍵です。
③ 集中を途切れさせない時間設計の工夫
学生の集中力を維持するには、長時間の説明よりもテンポの良い進行が効果的です。情報を詰め込みすぎず、要点を整理して伝える構成を意識しましょう。
全体の構成は、おおむね20分前後を目安に、会社紹介・仕事紹介・従業員トーク・Q&Aをバランスよく組み合わせるとスムーズです。冒頭で全体像を提示し、各パートの切れ目で要点を整理すると理解が深まります。
話し手は一方的に話すのではなく、質問を交えてテンポを保つことが大切です。終了後にスライドや動画を共有し、復習できる仕組みを整えることで、理解度と満足度の両方が高まります。
④ 説明会後の接点づくりで関係を深める
会社説明会は学生との最初の接点であり、フォローの設計次第で採用成果が大きく変わります。
終了直後には、サンクスメールや当日の要約資料を送付し、自社への関心を維持しましょう。加えて、1〜2週間以内に若手従業員との座談会や個別相談会を設けると、学生は安心感を持って次のステップに進めます。
なお、フォローの目的は「売り込み」ではなく「信頼形成」です。企業側から一方的に情報を送るのではなく、質問や感想を受け取る場を用意するなど、双方向のコミュニケーションを意識しましょう。
学生が「この会社は自分を気にかけてくれている」と感じることで、志望度と愛着の双方が高まります。
福利厚生は「働くリアル」を伝える最強のコンテンツ

出典:2026年卒 大学生キャリア意向調査7月<入社予定先の決定と不安> | マイナビキャリアリサーチLab
学生が企業を選ぶ決め手は、給与や勤務地だけではありません。マイナビが2025年7月におこなった「2026年卒 大学生キャリア意向調査7月<就職活動・進路決定>」によると、26卒の学生が内々定を承諾した決め手として、もっとも多く挙げられたのが「福利厚生制度が充実している(37.9%)」でした。次いで「希望する勤務地で働ける(31.1%)」、「給与や賞与が高い(29.1%)」と続きます。
福利厚生の中でも、食事補助や住宅補助のような従業員の生活を支えるサービスは、福利厚生としてのアピール度が高く、学生への説明でも効果的です。
たとえば、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、全国25万店舗以上の加盟店での食事代が実質半額になる食事補助の福利厚生です。利用する時間や場所を問わず、一定の条件を満たすことで所得税の非課税枠の対象となり、実質的な手取りアップが実現します。
会社説明会の中で、こうした自由度の高い福利厚生に言及することにより、学生に対し「自分がこの会社で働く姿」をリアルに想像させることが可能となります。
関連記事:「チケットレストラン」は勤務時間外・休日も利用できる?導入メリットも解説
会社説明会にまつわるよくある質問
会社説明会の改善策を理解しても、実際の運営で迷うケースは少なくありません。ここでは、現場の担当者が悩みやすいポイントを整理し、実務に落とし込むためのヒントをQ&A形式で紹介します。
Q1. オンラインと対面、どちらを重視すべき?
A. 目的によって使い分けるのがもっとも効果的です。
学生に知識を伝える段階ではオンラインでも十分効率的ですが、職場の雰囲気や従業員の人柄をより深く伝えるには対面が適しています。
企業の魅力を余さず伝えるには、両者を補完的に組み合わせ、オンラインで興味を引き、対面で信頼を深める流れが理想です。開催形式の優劣ではなく、「学生に何を感じ取ってもらうか」を基準に選択しましょう。
Q2. 説明会の内容でもっとも重視すべき点は?
A. 制度よりも「働く人と日常」を見せることです。
会社概要や理念を丁寧に伝えることは大切ですが、それだけでは学生の印象に残りません。若手従業員のリアルなエピソードや、チームで働く姿などを通じ、職場の温度感を可視化しましょう。
学生が「この会社で働く自分」を想像できるかどうかが、志望度を大きく左右します。
Q3. 印象に残る説明会をつくるには?
A. 「体験」として記憶に残る演出を意識しましょう。
長時間の説明よりも、短く印象的な体験設計が効果的です。スライドに頼りすぎず、現場風景や従業員の声を映像や対話で伝えることで、学生の集中を維持できます。
福利厚生を紹介する場合も、制度の説明ではなく、実際に利用する場面を紹介するとリアリティが増します。
Q4. 説明会後のフォローはどうすればよい?
A. 「接点を切らさない工夫」が志望度維持の鍵です。
説明会直後に要約資料やメッセージを送付し、後日個別相談や従業員座談会を設けるなど、継続的な関係づくりを意識しましょう。
学生が「気にかけてもらえている」と感じられるコミュニケーションが、結果的に内定承諾率や定着率の向上につながります。
「伝える」から「実感できる」会社説明会へ
採用活動が多様化する中で、会社説明会は単なる情報発信の場から、学生が企業の価値観を「体感」する機会へと変化しています。これにともない、企業は一方的に自社を語る設計から、学生が「ここで働く自分」を想像できる設計に変えていく必要があります。
学生が求めるのは、数字や制度の説明ではなく、日常のリアルです。社員の声や職場の空気、そこでの体験が企業理解を深めます。「チケットレストラン」のような日常で活躍する福利厚生も、「従業員を大切にする」企業文化のアピールとして効果的です。
これからの時代、共感を生む会社説明会は、採用効率だけでなく定着率や企業ブランド力を高めるための不可欠な施策です。学生の目線に立って、戦略的に会社説明会を活用しましょう。
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エデンレッドジャパンブログ編集部
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