監修者:舘野義和(税理士・1級ファイナンシャルプランニング技能士 舘野義和税理士事務所)
2026年度税制改正に向けて、各府省庁の要望が出そろいました。2026年度の税制について議論する元となる要望には、どのような意見が盛り込まれているのでしょうか?中でも中小企業に関係する要望を見ていきましょう。
経済産業省「食事補助の非課税限度額の見直し」
経済産業省は、企業が食事補助を支給するときの、所得税非課税限度額の引き上げについて要望を提出しました。
食事補助の所得税非課税限度額の引き上げは、内閣が経済運営や財政運営を行う際の指針となる「経済財政運営と改革の基本方針2025(骨太の方針)」にも、物価上昇を踏まえて見直すことが盛り込まれています。
関連記事:【2025年】社食補助上限額の最新情報は?|改正議論と企業への影響を解説
参考
:経済産業省|令和8年度概算要求・税制改正要望について|令和8年度税制改正に関する経済産業省要望【概要】
:内閣府|経済財政運営と改革の基本方針2025
食事補助の非課税限度額の現状
企業が従業員に食事を支給した場合の非課税限度額は1カ月あたり3,500円です。従業員が食事代のうち半分以上を負担していれば「食事代-従業員が負担している食事代」で計算できる金額が、3,500円までは給与として扱われず、所得税がかかりません。
40年以上据え置かれてきた非課税限度額
現状(2025年10月時点)の食事補助の非課税限度額は、1970年代に定められてから、40年以上にわたり金額が据え置かれてきました。
2020年を100とした消費者物価指数を見ると、2024年の平均108.5に対して、1970年の平均は30.9です。大きく物価が上がっているにもかかわらず、非課税限度額だけはそのままの状態となっており、現在の物価に合っていない状況といえます。
関連記事:食事補助の上限が引き上げへ?|2025年最新動向をわかりやすく解説
参考:e-Stat|消費者物価指数|中分類指数(1970年~最新年)
「食事補助上限枠緩和を促進する会」も要望書を提出
「食事補助上限枠緩和を促進する会」(幹事社:株式会社エデンレッドジャパン)も、食事補助の非課税限度額引き上げに向けて、政府へ要望書を提出しました。
エデンレッドジャパンが実施した「食事補助制度の実態調査」によると、物価高の前と同等の昼食を食べようとする場合に必要な、理想のランチ費用は1万5,493円です。
この結果を元に、要望書では理想の昼食予算の半額を上回る、8,000円への非課税枠引き上げを求めています。
関連記事
:「食事補助」非課税上限の引き上げに向け、 政府へ要望書を提出
:「食事補助制度の実態調査」を公開 ~9割の従業員が「食事補助」非課税上限アップを歓迎~
非課税限度枠を活用した実質的な手取りアップは「チケットレストラン」がおすすめ
エデンレッドジャパンが提供する食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」は、一定の利用条件下であれば所得税が非課税になるため、従業員の実質的な手取り額アップにつながります。
加えて日々の昼食代の負担もサポートできるため、従業員の待遇改善に役立つ福利厚生サービスです。
「チケットレストラン」を物価高対策を目的に導入した法人の事例として、名古屋商工会議所を紹介します。
物価高や賃上げ対策の一環としてチケットレストランを導入した名古屋商工会議所。その結果、全職員が勤務体系関係なく、いつでもどこでも利用できる公平性が職員の満足度を大きく向上させました。さらに、欠食しがちだった職員がランチを摂るようになった、健康を意識した食品を以前より手に取るようになったという声が多くあがり、健康経営に貢献しています。
詳細な導入事例はこちら:名古屋商工会議所
関連記事:“福利厚生”で実質手取りアップと高いエンゲージメントの実現を「#第3の賃上げアクション」プロジェクト
経済産業省「事業承継税制の特例措置の期限延長」
事業承継税制とは、中小企業が事業承継しやすくなるよう、非上場株式などを後継者が引き継ぐときに納税猶予や免除を行う制度のことです。
特例措置では、猶予割合が100%になり、対象者を拡充し、雇用要件を見直し、より活用しやすくなっています。加えて、後継者が将来的に事業を売却・廃業する場合の税負担軽減も可能な措置です。
中小企業が事業承継を行うときには、非上場株式を経営者から後継者へ譲渡・贈与することで引き継ぎます。
中小企業の非上場株式の株価は、資産から負債を差し引いた純資産の合計額を算出して、発行している株式数で割ることで算出する方法(「純資産価額方式」と言います)や事業内容が類似している上場企業の株価・利益・配当・純資産を比較して算出する方法(「類似業種比準方式」により評価額を算定します。毎年利益を出していたり、資産に土地・建物・機械設備などの不動産がある場合など、株価が高額になることは珍しくありません。
後継者は経営者から非上場株式の贈与を受けるとき、親族であれば相続税もしくは贈与税を、親族でなければ贈与税を納める必要があります。事業承継税制の特例措置は、この税負担を軽減し、中小企業の事業承継を促す目的で設けられました。
経済産業省では、中小企業の事業承継がスムーズかつ早期に行われることを目標に、特例措置の期限延長を要望しています。
参考:経済産業省|令和8年度概算要求・税制改正要望について|令和8年度税制改正に関する経済産業省要望【概要】
経済産業省「少額減価償却資産の取得価額の損金算入特例措置の延長」
「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例措置」とは、パソコンや事務機器など時間の経過とともに価値が目減りしていく減価償却資産のうち、購入費用が30万円未満のものについて、年間合計300万円までは全額損金算入できる仕組みのことです。
中小企業者を対象とするこの特例措置は、今の制度のままでは2025年度末に適用期限が終了します。中小企業では、経理に携わる人材を多く雇用することも、今いる人材の業務負担を増やすことも難しいでしょう。
売上高に対する人件費を含む販売費や一般管理費の割合は、資本金1億円以上の企業で16%前後であるのに対し、中小企業では30%に届くほどです。
30万円未満の減価償却資産について、経理の上で管理が不要なままであれば、経理を担当する人材を新たに雇い入れる必要がありません。売上高に対する人件費を含む販売費や一般管理費の割合を抑えることにつながります。
この比率を20%以下の水準とする目的で、経済産業省は同特例措置の延長を要望しています。
参考:経済産業省|令和8年度概算要求・税制改正要望について|令和8年度税制改正に関する経済産業省要望【概要】
内閣府「地方の企業拠点強化を促す税制措置の拡充・延長」
内閣府から提出された要望には、地方の企業拠点強化を促す雇用促進税制の拡充と延長の要望が盛り込まれています。地方に本社機能を持つ施設を整備して、そこで働く従業員を増やした場合に、従業員1人につき最大3年間で170万円の税額控除を受けられる制度です。
地方に本社がある企業が施設を増築する拡充型と、都心に本社のある企業が地方に本社を移す移転型の2種類があります。
この制度により、東京圏から地方へ移転する企業は2024年度に過去最高となりました。国全体の発展に向けて、東京一極集中を是正するという目的は、一定程度達成されているといえます。
企業のさらなる移転と、地方での雇用創出の実現に向けて、内閣府は雇用促進税制の2028年3月末までの適用期限延長と、税額控除率の引き上げを要望しています。
内閣府「国家戦略特区におけるスタートアップ企業等が対象となり制度の延長」
国家戦略特区とは、スタートアップ企業が新たな取り組みを実施しやすい環境を整えるために、新たなルール作りと作られた特例を活用できる制度です。
例えば歴史的建造物を宿泊施設にする場合に、要件を満たしていれば旅館業法のフロント設置義務を免除する特例をはじめ、さまざまな制度が設けられています。
このような国家戦略特区で事業に取り組むスタートアップ企業のうち、制度の対象となる企業は所得控除やエンジェル税制を利用可能です。
所得控除を利用すると、一定のIoTや医療分野のスタートアップ企業は、設立から5年未満の期間に法人の所得の18%を課税所得から控除されます。
エンジェル税制は、一定の雇用増加や売上高営業利益率2%以下などの要件を満たす設立後3年未満の小規模企業や、売上高営業利益率2%以下などの要件を満たす設立後5年未満の未満の医療・バイオ・農業分野の中小企業が対象の制度です。
これらの企業に個人が出資する場合に、800万円までの株式取得にかかった費用の金額か、総所得金額等の40%の金額のうち、いずれか少ない方の金額から2,000円を控除した金額を、投資した個人の総所得金額等から差し引けます。
これらの制度はいずれも適用期限が2026年3月31日までとなっているため、内閣府では適用期限の2年間延長の要望を提出しました。
2026年度税制改正の動向をチェック
2026年度税制改正に向けて、各府省庁の要望が出そろっています。提出された中から、中小企業に関係する以下の要望を紹介しました。
- 食事補助の非課税限度額上限の見直し
- 事業承継税制の特例措置の期限延長
- 少額減価償却資産の取得価額の損金算入特例措置の延長
- 地方の企業拠点強化を促す税制措置の拡充・延長
- 国家戦略特区におけるスタートアップ企業等が対象となり制度の延長
2025年10月時点では要望の段階のため、2026年度税制改正の内容が決定したわけではありません。決定するときに内容が変更となる可能性もあるため、関連する制度について今後の動向をチェックしていきましょう。
エデンレッドジャパンが幹事を務める「食事補助上限枠緩和を促進する会」でも、食事補助の非課税限度額見直しについての要望書を提出しました。40年以上据え置かれていた非課税限度額が見直されることで、物価上昇への対策として活用しやすくなることが期待できます。
参考:「食事補助」非課税上限の引き上げに向け、 政府へ要望書を提出
:食事補助の上限枠緩和に向け、自民党小泉進次郎議員、古川康議員らに要望書を提出
これを機に食事補助を導入するなら、一定の要件を満たして非課税枠を利用できる食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」の活用を、検討してみてはいかがでしょうか。
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