人手不足が深刻化する中、企業が新卒採用を成功させるには、人材の志向を的確に捉えたうえで、自社の魅力をいかに伝えるかが重要です。そこでこの記事では、最新の調査結果をもとに、学生が重視するポイントや企業がとるべき採用戦略をわかりやすく解説しています。注目の「第3の賃上げ」についても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
少子化と売り手市場で「採用難」は新たな経営課題に
少子化に伴い、採用市場の供給人口が減少する中で、企業の人材戦略は大きく変化しつつあります。まずは、採用市場の実態から整理していきましょう。
売り手市場の継続で採用競争が過熱
2025年卒以降の採用市場においても、売り手市場の傾向は継続すると見られています。背景にあるのは、若年人口の減少と有効求人倍率の高止まりです。
リクルートワークス研究所の調査によると、2026年卒の大卒求人倍率は1.66倍でした。2025年卒の1.75倍からは0.09ポイント低下したものの、学生1人に対して1社以上が求人を出している状況に変わりはありません。
採用競争が過熱する中、企業は戦略的に差別化を図らなければ新卒人材を確保できない局面を迎えています。
参考:リクルートワークス研究所|大卒求人倍率調査(2026年卒)|調査
人材確保の主戦場は「新卒」にシフトしつつある
かつては即戦力を求めて中途採用に注力する企業が多くありましたが、近年は新卒採用の重要性が再評価されています。
この背景には、限られた人員での持続的成長を図る必要性や、中途人材の獲得競争の激化・人件費の高騰といった課題が挙げられます。
また、企業文化や理念に染まりやすく、将来の幹部候補として計画的に育成しやすい点も新卒ならではの魅力です。企業にとって新卒採用は、単なる人数合わせではなく、将来の組織づくりを左右する戦略的投資となっているのです。
関連記事:新卒採用のメリットとは?採用成功から定着率向上までの完全ガイド
学生の企業選びに見る価値観の変化
Z世代は「やりがい」や「自己成長」を重視すると思われがちですが、物価高や将来不安といった社会的背景の中で、現実的な視点から企業選びをする傾向が高まっています。
出典:マイナビキャリアリサーチLab|2026年卒大学生就職意識調査
マイナビキャリアリサーチLabがおこなった「2026年卒大学生就職意識調査」によれば、「企業を選択する場合にどのような企業がよいか(あてはまると思う項目を2つまで選択)」との問いに対し、もっとも多い51.9%の学生が「安定している会社」と回答しました。
次点は「自分のやりたい仕事(職種)ができる会社」の27.2%ですが、こちらは年々下降傾向にあります。
一方、3位となった「給料の良い会社」は25.2%ながら、長期的に増加傾向にあり、2位との差はすでにほとんどありません。
この結果からは、コロナ禍や物価高騰といった社会的な変動を経て、学生の企業選択における基準がより確実で現実的な方向へと向かっていることが読み取れます。
社会人の「理想の就活」に学ぶ、採用戦略のヒント
Z世代の就職観を理解するにあたり、参考にしたいのが、すでに社会で働いている層が「今あらためて就活をするなら」と考えたときの価値観です。ここでは、パーソルキャリア株式会社の調査結果をもとに、企業のあるべき姿を再確認するためのヒントとして整理していきましょう。
参考:JobQ[ジョブキュー]|Job総研「2025年 理想の就活実態調査」を実施
社会人の7割が「スキル」より「賃金アップ」を重視
出典:JobQ[ジョブキュー]|Job総研「2025年 理想の就活実態調査」を実施
パーソルキャリア株式会社が全国の社会人男女を対象におこなった調査によると「2025年に“賃金アップ”と“スキルアップ”のどちらを優先したいか」との設問に対し、71.7%が「賃金アップ派」と回答しました。
また「もう一度就活する際に優先するなら」との設問についても「賃金派」が52.6%と、過半数を超えています。
特に20代ではその傾向が顕著で、60.6%が賃金を優先すると回答しました。この結果からも、若年層ほど経済的安定を求める傾向が強まっていることがわかります。
物価高が就職観に及ぼすリアルな影響
同調査では、もう一度就活をする際の優先は「賃金派」と回答した332人を対象に「スキルよりも賃金を優先する理由に物価高は関係するか」を尋ねています。
その結果「関係する派」が82.5%(「とても関係する」35.8%、「関係する」28.0%、「どちらかといえば関係する」18.7%)と、大半を占めることがわかりました。
この結果から明らかになったのが、賃金重視の背景に、昨今の物価上昇や生活コストの増大が強く影響している事実です。社会人の実感として「将来的なキャリア形成」よりも「今の生活の安定」を優先せざるを得ない現状が浮き彫りになっています。
こうした実感は、これから社会に出るZ世代の学生にも共有されていると考えられます。現実的な待遇・支援制度への注目度はますます高まっていくでしょう。
新卒採用に失敗すると、企業はどうなるのか
新卒採用の失敗は、単なる人手不足にとどまらず、長期的な経営課題へと発展しかねないものです。ここでは「採用できなかった場合に何が起こるのか」を明らかにしていきます。
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幹部候補が育たない
若手人材の不在により、内部からのマネジメント層が育たず、経営基盤が脆弱に。中途採用で補っても企業文化との適合に時間がかかる可能性があり、信頼関係構築にも課題が残ります -
中堅従業員の離職リスクが高まる
本来は若手に任せる業務が中堅層に集中し、業務負担が増大します。OJTやルーティン業務が重なり、モチベーション低下や離職につながるケースも見られます -
ノウハウの継承が途絶える
熟練従業員から若手への暗黙知の伝達が途絶え、技術や判断力の属人化が加速。ベテランの退職とともに貴重な知見が失われるリスクが高まります -
変革・DXの推進力が弱まる
Z世代に見られるデジタルリテラシーや柔軟な発想が欠如することで、業務改善や新規事業推進の原動力が失われます。組織が硬直化する懸念もあります -
採用ブランド・人的資本評価が低下する
継続的に人が集まらない企業という印象が定着すれば、次年度以降の採用にも悪影響を与えます。投資家からの評価にも響き、企業価値の低下につながりかねません。
採用活動の成否は、組織の将来像に直結する経営課題です。厳しい市場環境だからこそ、戦略的かつ継続的な取り組みが不可欠といえるでしょう。
新卒採用を成功させるには?
採用難が続く現在、企業が新卒採用を成功させるには、学生の価値観を的確に把握し、それに応じたアプローチを講じることが不可欠です。ここでは、「賃金」「働き方」「成長支援」の3つの観点から、企業が実践できる具体的な取り組みを整理します。
初任給を引き上げる
出典:株式会社 帝国データバンク[TDB]|初任給に関する企業の動向アンケート(2025 年度)|(2025年2月14日)
帝国データバンクの調査によると、2025年4月入社の新卒社員について、支給する初任給を前年度から引き上げた企業の割合は71.0%・平均引き上げ額は9,114円でした。
学生にとって初任給は「安心できる生活の基盤」であり、具体的な金額提示が志望動機にも大きく影響します。一方で、賃上げには固定費増のリスクも伴うため、経営と人事が連携してバランスの取れた制度設計が必要です。
他社よりも1万円多い初任給が、採用成功の決め手になることもある今、金額によるメッセージ性は無視できません。
関連記事:中小企業が新卒採用を行うメリットを解説!採用できない課題への対策
柔軟な働き方に対応する
Z世代の多くは、ワークライフバランスを重視した働き方を望む傾向にあります。
これを踏まえると、フレックスタイム制度やリモートワーク、時短勤務といった柔軟な働き方の導入は、企業の魅力を高める有効な手段です。
柔軟性のある制度は、育児や介護などライフステージの変化にも対応しやすく、長期的な人材の定着にもつながります。併せて、制度そのものを整えるだけでなく、実際に利用しやすい運用体制や社内文化を構築することも重要です。制度があっても使いにくい環境では、学生の心には響きません。
入社後のキャリア支援体制を整える
出典:【内定者意識調査】25卒が内定期間に求める支援1位… 先輩社員との関係構築 | 組織開発・人材育成|ALL DIFFERENT(旧:ラーニングエージェンシー)
ALL DIFFERENT株式会社の調査によれば、2025年卒の内定者のうち、もっとも多い67.9%が「色々なことを学び成長できること」を入社に向けた期待として挙げています。
これは、待遇と同時に「成長できる環境かどうか」が重視されていることを示すものです。企業としては、新人研修・OJT・メンター制度・ジョブローテーション・資格取得支援など、明確なキャリア支援体制を整備・発信することが求められます。
「この会社で長く働けそう」と思える道筋を可視化することが学生の安心感につながり、応募率や定着率の向上につながります。
新卒採用における「第3の賃上げ」という選択肢
初任給の引き上げが進む一方で、財務的な理由から恒常的な賃上げが難しい企業も少なくありません。そうした企業が新卒採用で選ばれるために有効なのが、福利厚生を通じた「実質的な手取りの向上」です。ここでは、「第3の賃上げ」(エデンレッドジャパンが定義)として注目される福利厚生の活用法と、具体的な導入事例を紹介します。
福利厚生が実質的な賃上げに有効な理由
※図はチケットレストランの場合について、簡略化して表現しています。福利厚生の賃上げ効果は他にも複数の仕組みがあります。
一定の条件を満たす福利厚生は、所得税の非課税枠を活用できるため、同額を給与として支給するよりも、従業員の実質的な手取り額を増やせます。また、福利厚生は福利厚生費として経費計上できるため、企業側は法人税の削減が可能です。
このような、実質的な手取りアップや家計負担の軽減につながる福利厚生を活用した賃上げの手法について、エデンレッドジャパンは、定期昇給とベースアップに次ぐ「第3の賃上げ」として提唱しました。
企業側のコストを抑えながら、効果的な待遇の改善が実現できる施策として、広く注目を集めています。
関連記事:「第3の賃上げ2025」とは?福利厚生で実現する新時代の賃上げ戦略
食の福利厚生サービスなら「チケットレストラン」
「第3の賃上げ」の代表例として挙げられるのが、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」です。
「チケットレストラン」は、従業員のランチ代を企業が補助する食の福利厚生サービスで、導入企業の従業員は、全国25万店以上の加盟店での食事を実質半額で利用できます。
加盟店のジャンルは、ファミレス・コンビニ・三大牛丼チェーンなど幅広く、勤務時間中にとる食事の購入であれば、利用時間や場所の制限もありません。
なお、愛知県で地域密着型の住まいに関するサービスを提供する「株式会社sumarch」では「チケットレストラン」を含む充実した福利厚生や給与面により「自社より好待遇の企業はなかった」と、転職を考え直した従業員もいるそうです。
このように「チケットレストラン」は、業種や勤務体系を問わず柔軟に利用できる福利厚生としてすでに3,000社を超える企業に導入され、数々の有名メディアでも取り上げられています。
導入事例:株式会社sumarch様
「チケットレストラン」の詳細は「こちら」からお問い合わせください。
関連記事:名古屋テレビ「ドデスカ+」で実質手取りを増やす福利厚生としてチケットレストランが紹介されました
NHK「おはよう日本」で紹介!「チケットレストラン」はどんなサービス?SKソリューションの事例も紹介
新卒採用のトレンドを踏まえたこれからの採用戦略とは?
学生が企業選びで重視するのは「安定した環境」「納得感のある賃金」「柔軟な働き方」「成長できる制度」といった、生活や将来を見据えた現実的な価値観です。企業には、これらの志向を的確に捉え、自社の強みと結びつけた訴求をおこなうことが求められます。
賃上げが難しい場合でも「チケットレストラン」のような福利厚生を活用すれば、実質的な手取りアップにつながり、学生への印象も高まります。トレンドを踏まえた多角的な施策を検討し、自社の採用市場における競争力を高めましょう。
参考記事:「#第3の賃上げアクション2025」始動、ベアーズが新たに参画~中小企業にこそ“福利厚生”による賃上げを! “福利厚生”で、より働きやすく、暮らしやすい社会へ~
:「賃上げ実態調査2025」を公開~歴史的賃上げだった2024年も“家計負担が軽減していない”は7割以上!
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