深刻化する人材不足に、企業はどう向き合うべきなのでしょうか。少子高齢化や労働市場の変化など、複合的な要因により、日本企業は人材確保の課題に直面しています。本記事では、データに基づいて人材不足の実態を分析し、解決に向けた対策を紹介します。
日本における人材不足の現状
日本で人材不足がどれほど深刻になっているのか、データで把握しましょう。
全体の概況|人材不足を実感する企業は約9割
エン・ジャパン株式会社運営の「人事部のミカタ」が実施した人事担当者向けのアンケート(2024年10月〜11月実施)では、企業の88%が人材不足を実感しており、2022年と比較して6ポイント上昇しています。これは、日本における人材不足問題がさらに深刻化していることを明確に示します。
出典:PR TIMES|2024年「企業の人材不足」実態調査ー人事・採用担当者向け情報サイト『人事のミカタ』アンケート
雇用形態別概況|5割以上の企業が正規従業員不足を実感
帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2024年10月)」によると、正規従業員が不足していると感じる企業の割合は51.7%に達しています。日本では半数以上の企業で、正規従業員が足りないことを示します。
出典:帝国データバンク| 人手不足に対する企業の動向調査(2024年10月)
深刻度を増す「人材不足倒産」|2024年は過去最多
帝国データバンクによる調査では、2024年の「人手不足倒産」が10月時点で287件にのぼり、過去最多を記録しました。人材不足は企業経営を揺るがす深刻な課題になっているのです。
出典:帝国データバンク| 人手不足に対する企業の動向調査(2024年10月)
大企業・中小企業別の現状
中小企業は、特に人材不足に悩まされています。大企業に比べて「知名度が低い」、「福利厚生など労働条件が不十分」といった点で、人材確保に苦戦しがちです。
内閣府の法人企業景気予測調査(令和6年10~12月期調査)における従業員判断BSI(※1)では、大企業の27.4に対し、中小企業は31.7となり、4.3ポイントの差が人材不足感の強さを示します。
出典:内閣府|法人企業景気予測調査(令和6年10~12月期調査)
※1「従業員数判断BSI(Business Survey Index)」:企業の人員状況を示す指標。期末時点での従業員数について、「不足気味」と回答した企業の割合から「過剰気味」と回答した企業の割合を差し引いて算出する。数字が大きい=人材不足感が強い。
業界別の現状
厚生労働省が発表した令和6年(2024年)11月の「労働経済動向調査」では、深刻化する業界別の人材不足状況が明らかになりました。全体平均で46ポイントの不足超過となっているため、業界問わず人材不足感は強いですが、特に「医療・福祉」、「建設業」、「運輸業」での不足感が顕著です。
- 医療・福祉業界(D.I.値※2:63ポイント)
- 建設業(D.I.値※:57ポイント)
- 運輸業・郵便業(D.I.値※:57ポイント)
- 学術研究、専門・技術サービス業(D.I.値※:56ポイント)
出典:厚生労働省|労働経済動向調査(令和6年11月)の概況
※2「D.I.値(Diffusion Index)」:企業の人員状況を示す指標。「不足」と回答した企業の割合(%)から「過剰」と回答した企業の割合(%)を差し引いて算出する。数字が大きい=人材不足感が強い。
医療・福祉業界
医療・福祉業界は、少子高齢化に伴う医療需要の高まりを受け、看護師や医師不足が深刻です。D.I.値は63ポイントで、最も人材確保に苦戦しています。パーソル総合研究所の「労働市場の未来推計 2030」によれば、2030年時点で医療・福祉業界は約187万人の人材不足が予測されています。
出典:パーソル総合研究所:労働市場の未来推計 2030
介護業
高齢者の増加に伴い、医療・福祉業と密接な介護業界でも人材不足が深刻化しており、慢性的な人材不足に悩まされています。厚生労働省によると、2026年には25万人、2040年には57万人の介護職員が不足すると推測されました。
出典:厚生労働省|介護人材確保に向けた取組
建設業
建設業では、労働条件の厳しさ、高齢化が進む労働者層、若い世代の低い定着率が原因で、人材確保が困難です。厚生労働省の調査では、D.I.値が57ポイントと高い水準です。
関連記事:2025年ショックで建設・住宅業界の人手不足が深刻化?解決策と対応事例
運輸業・郵便業
運輸業・郵便業も、D.I.値が57ポイントと人材不足感が強い業界です。物流需要増加にもかかわらず、高齢化や長時間労働など厳しい労働条件があり、運転手や倉庫作業員などの人材不足が深刻化しています。
関連記事:運送会社が人手不足の理由は?人手不足で倒産しないための対策も確認
学術研究、専門・技術サービス業
学術研究、専門・技術サービス業も、D.I.値は8月時点の60ポイントから56ポイントとなり、依然として人材不足感が強い業界です。高度な専門知識が求められるため、DX推進に伴い重要性が高まっていると考えられます。
関連記事:【2030年問題】IT人材不足の時代を生き抜く企業戦略とは?
人材不足を引き起こす4つの原因
多くの企業で深刻化する人材不足について、なにが原因なのかを解説します。
1.少子高齢化による労働力人口の減少
厚生労働省によると、2020年から2070年にかけて、日本の生産年齢人口は7,509万人から4,535万人に減少します。高齢化率も28.6%から38.7%に上昇します。急激な人口減少と高齢化の進行は、企業の人材不足を引き起こす大きな要因です。
前述の業界別人材不足状況で把握したように、特に医療や介護業界では、看護師や介護職員の不足が深刻化します。
出典:厚生労働省|我が国の人口について
2.働き方の多様化への遅れ
現在、労働市場では働き方の多様化が急速に進んでいます。育児や介護との両立、副業・兼業の容認、フリーランス形態での就業など、働き手のニーズは従来の働き方の枠を超えて広がっています。しかし企業によっては、こうした変化に十分な対応ができていないのが実態です。
例えば、総務省の「令和5年通信利用動向調査報告書」によると、ワークライフバランスの向上や介護・育児との両立を目的にテレワークを導入する企業が出てきています。しかし、こうした柔軟な働き方の導入は一部の企業に限られ、従来型の勤務体制を続けているケースもあります。働き手のニーズに企業が十分対応できていないことが、人材確保の重要な課題となっているのです。
出典:総務省|令和5年通信利用動向調査報告書(企業編)
3.コロナ禍による労働市場の変化が人材不足を加速
コロナ禍は産業構造を大きく変え、労働市場の需給ミスマッチを深刻化させました。飲食などの対面サービス業では他業界へ流出した人材が需要回復後も戻らず、人材不足が継続しています。また製造業では、為替変動の影響で国内生産が回帰し、新たな人材需要が生まれています。こうした産業構造の変化への迅速な対応が、企業の人材確保の鍵となるでしょう。
4.DXへの対応の遅れとIT人材不足
DX(デジタルトランスフォーメーション)を進める上で、IT人材が足りず苦慮している企業が増えています。総務省の調査によると、DX推進における課題として「人材不足」を挙げた企業は、大企業、中小企業ともに50%を超えました。
出典:総務省|デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究の請負
大企業では、「既存システムとの関係」、クラウドやAIなど新技術に詳しい「ICT人材不足や知識不足」が主な課題となっています。中小企業ではこれらに加えて「資金不足」も懸念事項となっており、DX推進の障壁となっています。
出典:総務省|デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究の請負
人材不足を解消する4つの対策
企業の半数が課題として挙げる「人材不足」への具体的対応策を紹介します。
1.福利厚生の充実|従業員満足度向上・企業イメージ向上
若手の採用を目指す企業には、福利厚生の充実が有効です。大和ライフネクストが実施した調査(2024年7月、新規就職する学生400人が対象)によると、企業選びで「福利厚生が整っている」ことを重視する学生は44.3%に上りました。
さらに、企業選択の判断基準として「福利厚生が整っていること」を最も重視すると回答した学生は18.3%となっており、若年層の採用では福利厚生の充実が重要な差別化要素となっています。
出典:大和ライフネクスト|2025年卒・Z世代の就活トレンド 学生400人を調査「社員寮」に関する学生の意見とは?
2.賃上げの実施|優秀な人材確保・従業員のモチベーション向上
人材獲得の成果を生むために、賃上げは重要な戦略です。業界水準を上回る給与の実現により、採用力を向上させることが可能です。現場の優秀な従業員の流出を防ぎ、採用・教育コストの削減にも直結します。
NRIの賃上げに関する調査(2024年5月実施)では、就業先の賃上げ実施で、従業員の働くモチベーションが「上がった(12.5%)」、「やや上がった(41.0%)」となり、賃上げによるモチベーション向上、生産性アップが期待されます。
さらに、賃上げ実施は「従業員を大切にする企業」としての評価にもつながるでしょう。人材市場での存在感を高め、より質の高い人材の採用につながります。
出典:野村総合研究所|賃上げで収入が増えた就労者の約4割が「暮らし向きが良くなる」と回答、今後の消費活動にも積極姿勢を示す
3.採用対象の拡大|女性・シニア人材・外国人の活躍
採用難が続く中、活用しきれていない労働力を活用する方法もあります。「女性」と「シニア人材」の採用です。政府も女性の就労を促すため、年収の壁撤廃に向け多くの議論を重ねています。シニア人材の活躍の足かせとなる、在職老齢年金(在職支給停止の仕組み)についても、人材不足を背景に2022年以降、支給停止調整額の見直しが行われています。
今、働く意欲のある人材の活躍を後押しする環境が、着実に整いつつあるのです。こうした制度改革を追い風に、今こそ女性・シニア人材の採用を積極的に進めるべき時期といえるでしょう。
参考記事:【税理士監修】106万円の壁撤廃はいつから?撤廃でどうなるか影響を解説
参考記事:【2025最新】在職老齢年金とは?シニア雇用と制度をわかりやすく解説
4.多様な働き方の推進|テレワーク、フレックスタイム、短時間勤務
テレワーク、フレックスタイム、短時間勤務といった柔軟な働き方は、人材確保のための解決策の一つです。職場に通う時間に縛られない、子どもの送迎に合わせて働き始められる、週3日だけ働けるなど、従来の「9時から5時まで」の働き方では実現できなかった選択肢を提供できます。
就活サイト運営で知られるエン・ジャパンが実施した、7000人に聞いた「アフターコロナの働き方」調査によると、テレワークなどの柔軟な働き方ができることが、転職活動における企業選びに「とても影響する」が30%、「少し影響する」が33%と、合計で63%が影響すると回答しました。
採用市場において、柔軟な働き方の有無は、企業の選考を左右する重要な要素となっています。
出典:エン・ジャパン|7000人に聞いた「アフターコロナの働き方」調査
毎日使えて嬉しい食の福利厚生「チケットレストラン」
最後に、導入負担が少なく効果を実感しやすい福利厚生を紹介します。
「毎日のランチをよりお得に、より手軽に」がエデンレッドジャパンが提供する食の福利厚生サービス「チケットレストラン」のコンセプトです。全国25万店舗以上で利用でき、コンビニからカフェ、ファミレスまで、従業員が好きな店で使えます。ランチだけでなく、夜勤の食事やおやつ時間にも利用可能で、内勤・外勤・在宅勤務を問わず全従業員が活用できます。
企業側は食事補助の非課税枠を活用してコストを抑えられ、従業員は一定の利用条件下で所得税が非課税となり実質手取りを増やすことが可能です。こうした特長から、すでに3,000社が導入し、毎日20万人が利用しています。
関連記事:チケットレストランの魅力を徹底解説!ランチ費用の負担軽減◎賃上げ支援も
人材不足を克服し、持続的な成長へ
業界を問わず広がる人材不足に対し、企業には具体的な対策が求められています。賃上げによる待遇改善、多様な働き方の推進、採用対象の拡大など、それぞれの企業に合った施策を組み合わせることが重要です。
その一例として、「チケットレストラン」のような福利厚生の充実も効果的です。導入負担が少なく、全従業員が平等にメリットを享受できることから、すでに3,000社が導入し、採用力と定着率の向上に貢献しています。
人材不足の解消は、一朝一夕には実現できません。運用が簡単で導入のハードルが低い「チケットレストラン」で、まずは課題解消への第一歩を踏み出してみませんか。
参考記事:「#第3の賃上げアクション2025」始動、ベアーズが新たに参画~中小企業にこそ“福利厚生”による賃上げを! “福利厚生”で、より働きやすく、暮らしやすい社会へ~
「賃上げ実態調査2025」を公開~歴史的賃上げだった2024年も“家計負担が軽減していない”は7割以上!
新キャンペーンのお知らせ:従業員の生活支援に!「第3の賃上げ」導入応援キャンペーン開始 ~食事補助サービス「チケットレストラン」で“手取りアップ”を実現~
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