企業には、労働安全衛生法などの関連法令に基づき、従業員のメンタルヘルスに配慮した職場環境を整える義務があります。さらに健康経営の観点からも、独自にメンタルヘルスケアを推進することは有効です。本章では、メンタルヘルスへの取り組みで成果を上げた事例や、健康経営における実践方法、従業員支援に役立つサービスを紹介します。
健康経営とメンタルヘルスの定義
健康経営を掲げる企業や、今後健康経営の実施を検討する企業にとって、従業員のメンタルヘルスへの配慮は重要な課題です。まずは「健康経営」と「メンタルヘルス」とはどのようなものなのかについて解説します。
健康経営とは
健康経営とは、1990年代にアメリカで提唱されはじめた「健康な従業員こそが収益性の高い企業を作る」という主張をベースとする経営手法です。具体的には「従業員の健康維持・改善に向けた施策にかかる経費をコストではなく投資として捉える」考え方です。
また、日本では深刻な少子高齢化を受け、今後人材不足があらゆる企業を円滑に経営・運営していくための大きな課題になると考えられています。企業が既に雇用契約を結び、勤務してくれている従業員の健康に配慮することは、人材確保の観点からも経営戦略の重要な要素の一つです。
こうした背景から、2006年、NPO法人健康経営研究会が発足されました。同研究会では「企業が従業員の健康に配慮することによって、経営面においても大きな成果が期待できる」という考えをもとに「人という資源を資本化し、企業が成長することで、社会の発展に寄与すること」が今後の経営戦略に必要だという主張を行っています。
近年、企業経営や成長とはつながりが深いSDGsの観点からも、日本国内の企業にとって健康経営は重要な取り組みです。日本企業や日本全体が、国際的に取り残されないようにするためにも、健康経営に着目した企業作りが必要だと見られています。
参考:ACTION!健康経営
メンタルヘルスとは
近年「メンタルヘルス」という言葉が日常的に使われるようになりました。メンタルヘルスとは直訳すると「心の健康」という意味です。メンタルヘルスは脳の働きと密接な関係があり、主に精神疾患など「心や脳の病を患っている」もしくは「先天的な発達や脳の障がいがある」状態について語られるときに用いられます。
長年、日本では、メンタルヘルスにまつわる問題について気軽に口にしづらい傾向がありました。しかし、日本の精神医療や社会が進歩するにつれ、メンタルヘルスの問題は誰にでも起こりうるものという捉えられ方へと変化しつつあります。
健康経営とメンタルヘルスの関係性
健康経営とメンタルヘルスには密接な関係性があります。健康経営は、従業員の身体的な健康だけでなく、心の健康も包括的に考えるものです。従業員の身体の健康や生産性と、メンタルヘルスとは密接に関連しているからです。
厚生労働省が健康経営の概要を定めた「現在の健康づくりの取組と今後の施策について」や施策計画をまとめた「5健康増進計画」では「(3)心の健康づくりの推進」として心の健康、つまりメンタルヘルスに関する目標やプログラムを紹介しています。
さまざまな研究結果からも、メンタルヘルスは健康経営と密接であると証明されており、2018年に産業医科大学産業生態科学研究所教授で産業保健経営学の第一人者である森晃爾教授も「メンタルヘルスの領域は、すでに健康経営の大きな根幹である」と特集論文「健康経営とメンタルヘルス」の要約で発表されています。
健康経営を阻害するメンタルヘルス不調の要因例
健康経営を目指す上で知っておきたい、メンタルヘルスを崩す可能性のある職場や、労働環境でのストレス要因を見ていきましょう。
長時間労働
従業員のメンタルヘルスの不調と長時間労働の因果関係は、日本国内でも以前から指摘されています。
少し古い研究データですが、RIETI(独立行政法人経済産業研究所)が2014年に発表した論文「従業員のメンタルヘルスと労働時間」でも「労働時間の長さはメンタルヘルスを毀損する要因となりうることが実証的に認められた」としています。
この論文では「長時間労働をする人の年齢や性別などの属性」「労働が無償性のいわゆるサービス残業か有償か」によっても、メンタルヘルスに与える影響は異なるとしていますが「労働時間の長さや職場環境の改善が一次予防対策として有効となりうること、こうした改善を図ることによって悪くなりかけた心の健康を取り戻すことも可能である」と証明しています。
コミュニケーション不足
職場は社会人にとって1日の大半を過ごす場所です。上司や同僚と円滑なコミュニケーションが取れない職場では、大きなストレスがかかることは想像にかたくありません。勤務先でコミュニケーションがうまく取れない状況にあると、居心地の悪さを感じるだけでなく、ミスも起こりやすくなり、新たなストレスの要因につながります。
経済産業省が発行している「企業の「健康経営」ガイドブック~連携・協働による健康づくりのススメ~」でも、コミュニケーションの活性度がワークエンゲージメントや従業員の満足度向上につながる評価対象としています。また、健康経営の具体例に「ストレスをためないよう、コミュニケーションの機会を増やす」という取り組みを行う企業をあげ、健康経営施策及び成果として紹介しています。
ハラスメントの発生と取り組み不足
ハラスメントをわかりやすく言い換えると、軽いものだと「嫌がらせ」に近く、重いものだと「犯罪」の範疇に及びます。
厚生労働省が2024年に発表した「令和5年度職場のハラスメントに関する実態調査」によると、勤務先がハラスメントの予防・解決に「積極的に取り組んでいる」と回答した人は、パワハラを経験した割合が最も低くなりました。反対に「あまり取り組んでいない」と回答した人は、経験した割合が最も高くなっています。この結果から、ハラスメント予防と解決に取り組んでいる企業の方がハラスメントが起こりにくいことがわかります。
また、ハラスメントの予防・解決のための取り組みのメリットには「職場のコミュニケーションが活性化する/風通しが良くなる」の割合が最も高く、次いで「会社への信頼感が高まる」が選ばれました。
「休職者・離職者が減少する」や「メンタルヘルス不調者が減少する」もメリットとして言及されており、職場でのハラスメントへの取り組みに盛んな企業ほど、先にあげた長時間労働を含む職場環境とコミュニケ―ションの改善も含めて、健康経営を実施する上でのメンタルヘルスへの配慮が優れた企業であることがわかります。
なお、職場のハラスメントが発生する職場環境については、パワハラ・セクハラとともに「上司と部下のコミュニケーションが少ない/ない」、「ハラスメント防止規定が制定されていない」、「失敗が許されない/失敗への許容度が低い」、「残業が多い/休暇を取りづらい」など健康経営におけるメンタルヘルスケアの指針とはかけ離れた状況にあることが報告されています。
参考:厚生労働省|職場のハラスメントに関する実態調査について
栄養と運動不足
メンタルヘルスと栄養・運動不足の因果関係はさまざまな論文で触れられています。厚生労働省のホームページにも「適度な運動や、バランスのとれた栄養・食生活は身体だけでなくこころの健康においても重要な基礎となる」と明記されています。「食生活支援」「運動奨励」は、健康経営の評価において、メンタルヘルスへの直接的な取り組みとはされていません。しかし、企業がメンタルヘルスに配慮した健康経営を行う上で、メンタルヘルスケアと食事・運動は切っても切れない関係性があります。
健康増進や生活習慣病予防などへの対策として企画する取り組みや制度も、包括的に見るとメンタルヘルスケアにもつながっています。たとえば、企業内のスポーツレクリエーションや部活動は、運動不足の改善による健康増進だけでなく、スポーツを通じた心身のリフレッシュや従業員間のコミュニケーション増加にも寄与するものです。
また、社員食堂などを通じた企業の従業員への食生活支援は、生活習慣病予防をベネフィットにあげるケースが多く見られます。これにとどまらず、従業員が1日1食、健康的な食事を取れることにより、メンタルヘルスにも良い効果を及ぼすことを期待して食事補助制度を設ける企業がほとんどです。
社員食堂を新たに増設するとなると、企業には大きな負担がかかります。また、新型コロナウイルス感染症によるパンデミック以降、リモートワークを導入した企業も多く、社員食堂や置き型配食サービスなどの食事支援は利用できる人が少ないという不公平感も生まれます。
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出社する従業員はもちろん、リモートワークやワーケーション、交代制シフトや出張などさまざまなスタイルで働く全国の従業員が利用できるため、平等で使い勝手が良いサービスとの評価を得ています。さらに、昼食に限らず、就業時間内であれば好きなタイミング・場所で利用できる自由度の高さや、導入・運用コストを最小限に抑えられる点など、労使ともに多くのメリットがあるサービスです。
関連記事:「チケットレストラン」の仕組みを分かりやすく解説!選ばれる理由も
健康経営法人のメンタルヘルスへの取り組み事例
ここでは、新たにメンタルヘルス対策へ取り組むにあたっての参考として、平成21年に厚生労働省が発表した「心の健康づくり事例集」から成功事例を2つ紹介します。
介護事業者:「めんたる案内所」の開設
高齢者介護福祉施設の運営事業を営むA社では、300名以上の従業員のほとんどが介護職員です。
介護には「力仕事」といったイメージがありますが、実際には「対人援助」です。介護を必要とする高齢者の気持ちや心を理解したうえで、ケアするために介護職員自身も心を砕く「感情労働」ともいわれています。
加えて、昨今のめまぐるしい制度改正と慢性的な人材不足が重なり、A社では従業員が抱える多大なストレス要因を危惧していました。「従業員の心と体が健康でなければ、良い介護サービスは提供できない」と奮起し、従業員だけでなく介護サービスを受ける利用者のためにもメンタルヘルス対策の体制整備に取り組み始めたそうです。
A社がまず取り組んだのは体制作りでした。理事長をトップとしたメンタルヘルス対策組織図を作成し、従業員にもわかりやすく可視化しました。続いて、ライン管理者を中心とする相談体制を確立し、管理者を対象とするラインケア研修会で周知したそうです。
次に、新たな取り組みとして「メンタルヘルス推進委員会」を発足し、法人内のメンタルヘルス相談窓口として「めんたる案内所」を3カ所開設しました。「案内所」とネーミングしたのには、相談をする・受ける双方の立場のスタッフにとってメンタルヘルスの相談自体がストレス要因とならないようにするためです。
委員は、法人事務局を中心に、看護・庶務・人事の職員と安全衛生委員で構成されています。案内所で相談を受ける従業員のために、適切な対応を学ぶ相談技法の研修も整えたうえで、専用のメールアカウントを開設、全従業員に周知しました。
案内所の次の支援として見直したのが「産業医」の役割です。それまで産業医との主な関わりは定期健康診断ぐらいだったそうですが、産業医を相談・受診医療機関として位置づけを明確にし、メンタルヘルスを患った場合の専門医との連携・職場復帰支援・助言を受けることを体制図へ明示しました。
さらに、外部相談機関として地域の医師会相談窓口と連携ができる体制を整備し、医師会の専門スタッフに相談可能な体制を整えました。ここで完成した体制図を前に、従業員のメンタルヘルスはさまざまな機関とつながり、組織全体で取り組む必要があると認識を新たにしたそうです(図1)。

相談体制ができた後は「ラインケアマニュアル」「実施要綱」「セルフケアマニュアル」を作成しました。一人ひとりが「心の健康づくり」について理解し、「自分の健康は自分で守る」ことの必要性について全従業員に向けて発信し、セルフケア研修も行いました。
また、相談を受ける側のライン管理者についても「部下の変調への気付きとその対応」についてライン管理者研修を行い、役割を明確にしたそうです。
A社では、これらのメンタルヘルスに重きを置いた健康経営施策について「まだ、目に見える効果があったわけではないが『心の健康づくり』が必要なことは、ほとんどの職員が理解してくれたと感じている。メンタルヘルスについてさまざまな情報が飛び交う中で、マニュアルや研修で正しい知識を身につけ、ストレス対策に意識を向けたことが大変大きな成果」であると自己評価しています。
また「今後も整備した体制の維持と、突発的な出来事に対応できる、さらなる体制整備が必要である」とし、「予防」「早期発見」の視点から「メンタルヘルス推進委員会をはじめ、ライン管理者が常に新しい情報に耳を傾ける」と報告を締めくくっています。
医療品製造業:「メンタルヘルス不調者予備軍の発見」に重点
医療品製造を事業とするB社は、約70名の従業員を雇用していますが、もともとメンタルヘルス不調による休職者はいない状態でした。しかし「もし不調者が出た場合、どのように対処すべきか」について、日ごろから管理者を含む従業員は漠然と危機感を持っていたそうです。
健康経営の観点からも、リスク管理の一つとして、企業内の安全衛生委員会が主体となってメンタルヘルス推進を掲げました。これには専門知識が必要なため、メンタルヘルスケア支援専門家のサポートを受けることにしました。まずは、支援専門家の的確なアドバイスを受け、相談しやすい職場環境を整える体制作りを強化したのです。
従業員に対しては、あらためて全従業員に対し、ストレスチェックシートによる状況把握と現状、不調者がいないという情報の真偽性の把握に努めました。結果として、数名のメンタルヘルス不調予備群に入る従業員が判明したため、産業医による面談を行いました。
驚くべきことに、面談を受けた人は、自分のストレスや心の弱り具合には気づいていなかったそうです。面談により、何にストレスを感じているかを再認識し、セルフケアの第一歩につながりました。
B社は、それまで「メンタルヘルス不調による休職者がいないという現状は幸運なこと」と認識していましたが、維持していくことへの重要性も再認識したといいます。そのため、まずメンタルヘルスについての従業員の相談窓口を設置しました。
この相談窓口がB社ならではのユニークな施策となったのは、各部署から「話しやすい人」を選び「メンタルヘルスケア委員」として窓口業務を担当させたからです。こうして任命されたメンタルヘルスケア委員は、事業所内スタッフとして、管理職や衛生管理者とともにこれからの活動の主軸となっていきました。
B社が着目した「話しやすい人」は、コミュニケーションスキルが備わった人材であるとともに、B社がメンタルヘルケア施策に取り組む前から、ラインケアにおいて重要な声かけを日常的に行っていた人材です。このメンタルヘルスケア委員が委員会を立ち上げ、衛生管理者を含め月に1回メンタルヘルスケア委員会議を開催し「メンタルヘルスケア委員の従業員への周知の仕方」「相談箱の設置及び利用方法」「相談窓口への専用メールアドレスの決定」などを検討・決議してきました。
また、企業もメンタルヘルスケア委員が「アサーショントレーニング」(自分の意見を適切に相手に伝えられるようにトレーニングする方法)などの外部講座参加を後押しし、他の委員や管理者への指導も行う予定としています。
こうしたメンタルヘルス教育・支援活動の一環として、メンタルヘルスケア委員の研修、管理職研修、従業員研修などを受講し、メンタルヘルスケアへの関心や必要性などの知見を社内で共有することに成功しました。
メンタルヘルス対策による成果としては、支援活動を通じた企業内研修などにより従業員一人ひとりが心の健康に関心を持ち、セルフケアの大切さを学んだこととしています。また、管理監督の立場にある従業員は、ラインケアの重要性と職場における対処法などを学び、今後の参考としました。
従業員が心の健康に不安を抱えたときには、相談窓口の利用やメンタルヘルス研修を受講するなどの対処法を明示したことで、大多数の従業員が抱いていた漠然とした不安感の減少につながったと自己評価しています。
また、課題として引き続き従業員のメンタルヘルスケアを続けることと、メンタルヘルスケアの年間計画及び中期計画等をたて、マニュアルとシステムを作り上げることを目標としています。さらに、今後はメンタルヘルス不調による休職者が出ることを想定し、メンタルヘルスケアの方法や職場復帰支援についても前向きに取り組んでいるそうです。
健康経営におけるメンタルヘルスケアを含む指針
企業がメンタルヘルスに重きを置いた健康経営施策を実施する大きなきっかけの一つとなったのが、厚生労働省が平成18年に「労働者の心の健康の保持増進のための指針」を定め、職場におけるメンタルヘルス対策を推進したことです。
この指針には以下のように明記されています。
本指針は、労働安全衛生法第70条の2第1項の規定に基づき、同法第69条第1項の措置の適切かつ有効な実施を図るための指針として、事業場において事業者が講ずるように努めるべき労働者の心の健康の保持増進のための措置(メンタルヘルスケア)が適切かつ有効に実施されるよう、その原則的な実施方法について定めるものです。
つまり、事業を運営する代表者は、自ら事業で雇用関係のある従業員へのメンタルヘルスケアを積極的に推進・表明する必要があるということです。そのためは、専門の委員会などを設け十分に調査・審議を行い「心の健康づくり計画」を策定する必要もあるとしています。
心の健康づくり計画を進めるにあたり、重要視されているのが「4つのケア」です。「4つのケア」とはどういう内容なのか、詳しく見ていきましょう。
参考:厚生労働省|職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~
セルフケア
事業者は労働者に対して、次に示すセルフケアが行えるように支援することが重要です。また、管理監督者にとってもセルフケアは重要であり、事業者はセルフケアの対象として管理監督者も含めることが明記されています。従業員のセルフケアとして、企業が推進すべき内容は次の通りです。
・ストレスやメンタルヘルスに対する正しい理解
・ストレスへの気づき
・ストレスへの対処
ラインによるケア
「ラインによるケア」とは、部署やプロジェクトチームなど1企業をさらに小規模のラインで括った場合に考えられる、上司と部下・同僚同士などの職場の人間関係におけるケアと考えるとよいでしょう。ラインによるケアには次のような視点をもって取り組むことが大事です。
・職場環境等の把握と改善
・メンタルヘルス不調の早期発見
・労働者からの相談対応
・職場復帰における支援
事業場内産業保健スタッフ等によるケア
事業場内産業保健スタッフ等とは産業医・保健師・看護師などの医療スタッフや、メンタルヘルス委員会の会員にあたる従業員によるケアです。こうしたスタッフはセルフケアとラインによるケアが効果的に実施されるよう、労働者及び管理監督者に対する支援を行うことが重要だと考えられています。事業場内産業保健スタッフは次に示す心の健康づくり計画の実施に当たり、中心的な役割を担います。
・具体的なメンタルヘルスケアの実施に関する企画立案
・個人の健康情報の取扱い
・事業場外資源とのネットワークの形成やその窓口
・職場復帰における支援
事業場外資源によるケア
企業のメンタルヘルスケアにおける事業場外資源によるケアとは、病院や地域保健機関、EAPなどのメンタルヘルスケア専門機関のサポートによる支援のことです。従業員へのメンタルヘルスケアに取り組むうえで、事業場外資源の介入を不可欠と考える企業もありますが、自社の個性に合わせ導入の範囲を見極める企業もあります。メンタルヘルスの事業場外資源から受けられるサポートには、特設委員会や従業員への研修以外に次のようなケアがあります。
・情報提供や助言を受けるサービスの活用
・ネットワークの形成
・メンタルヘルス不調者の職場復帰における支援
健康経営とメンタルヘルスケアにメリットがある福利厚生サービス例
企業がメンタルヘルスに関する施策を実行する上で、外部組織と手を組む必要性が生じる場合があります。「事業場外資源」とされる産業医や地域医師会など医療分野での外部との取り組みも重要な項目ですが、従業員のメンタルヘルス維持と改善のために、もっと気軽に取り入れられる福利厚生サービスもあります。ここでは、健康経営とメンタルヘルスケアにメリットがある福利厚生サービスを4つ紹介します。
健康経営の施策に役立つ「RIZAPウェルネスプログラム」|RIZAPグループ株式会社
独自のRIZAPメソッドを用いて従業員の生活習慣改善をサポートするのがRIZAP「RIZAPウェルネスプログラム」です。専門トレーナーが一人ひとりに寄り添い、熱意あふれるセミナーや個別指導を通じて、参加者の行動変容を促します。19種類の健康セミナーや、健康コラム、E-ラーニング、3か月で集中的に生活習慣を改善するプログラムは、企業のニーズに合わせてカスタマイズが可能です。導入企業は1,950社以上、体験者も31万人を超え、講師満足度は98%以上と高く評価されています。
メンタルヘルスケアに特化したプログラムも提供されています。昨今、ストレス社会と呼ばれる中、従業員のメンタルヘルス不調は深刻な問題です。自己肯定感を高めストレスへの対応力を高めるセミナーや、管理監督者が部下への寄り添い方を学べるラインケア向けセミナーで心の健康を守るための知識とスキルを提供します。
目的、予算、対象、日時、形式に応じてさまざまなアレンジが可能であり、シフト制や多拠点展開の企業でも導入しやすいです。「健康経営優良法人」の認定取得にも貢献できるため、企業イメージの向上にもつながるでしょう。
参照元:RIZAPウェルネスプログラム|RIZAP法人|人材価値を最大限引き出す人的資本経営を推進
オフィスdeリラックス|株式会社イーヤス
株式会社イーヤスが提供する「オフィスdeリラックス」は、プロの施術師が依頼主の企業へ定期的に出張訪問し、従業員の心身の疲れやストレスを軽減・解消する、福利厚生サービスです。
現在は、東京・大阪・名古屋・札幌と都市部でのみ提供されているサービスですが、導入企業では、利用率90%以上と人気があります。メンタルとフィジカル、両方のヘルスケアには疲れの解消が大きな意味を持っています。「オフィスdeリラックス」はたまった疲れや姿勢・癖などに直接アプローチして従業員の健康促進を手助けする福利厚生サービスといえるでしょう。
また、「オフィスdeリラックス」の利用により、コミュニケーションをはじめとした職場の環境づくりに役立ったという声もあります。従業員のセルフケア意識向上にもつながっているという声もあるそうです。
ライフサポート倶楽部|リソルライフサポート株式会社
リソルライフサポート株式会社が提供する「ライフサポート倶楽部」は、ウェルビーイングを意識した健康支援福利厚生サービスに力を入れる、総合福利厚生代行サービスです。
健康支援サービスでは「従業員一人ひとりが、ライフイベントを経ても離職することなく仕事とプライベートの調和を図りながら定年まで元気に働き続けられる従業員を増やすこと」に重点を置き、サービスの提供と充実を図っています。
ライフイベントや心身の健康不調を経験した従業員の職場復帰は、人材確保と健康経営におけるメンタルヘルスケアにとって重要な課題と捉えられており、福利厚生サービスで一端を担えれば、企業・従業員の双方にとってメリットが大きいでしょう。
「ライフサポート倶楽部」は、特に女性活躍支援に注力しており、出産・育児・介護にまつわるサービスを広く提供しています。保養やワーケーションに利用できる施設利用にまつわるサービスもあり、日々の健康管理や息抜きだけでなく、リフレッシュもサポートします。
「チケットレストラン」|株式会社エデンレッドジャパン
エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」はICカード配布型の食事補助の福利厚生サービスです。多様なワークスタイルの従業員が利用できるため、コロナ禍を発端としたリモートワークの普及とともに導入する企業が増えています。
「チケットレストラン」への加盟店は、25万店舗を超えており、さまざまな好みや食に関する特性がある人でも平等に健康な食事を実現するために利用できます。
たとえば、普段の食事に「チケットレストラン」を利用して、コンビニやスーパーでプラス1品、健康食を取り入れるのもおすすめの利用方法です。さらに「チケットレストラン」には、ヘルシー志向のレストランやカフェも加盟しています。従業員の健康づくり、栄養管理に直結した食事補助サービスといえるでしょう。
また、「チケットレストラン」を導入することで期待できる効果として、どのような働き方をする従業員でも「企業は自分の健康に配慮してくれている」と感じられることがあげられます。ワークエンゲージメントにつながり、従業員のメンタルヘルスにも良い効果があるといえるでしょう。
こうした数々の魅力が高く評価され「チケットレストラン」は導入企業での利用率98%・継続率99%を誇る人気の福利厚生となっています。
関連記事:チケットレストランの魅力を徹底解説!ランチ費用の負担軽減◎賃上げ支援も
「チケットレストラン」導入事例|株式会社鈴木商店
株式会社鈴木商店では、健康経営優良法人の認定を目指し、認定項目のひとつ「食生活改善に関する取り組み」を満たす必要がありました。同時にフルリモートワーク環境でも全従業員が平等に利用できる福利厚生を探していたことから、両者を満たす「チケットレストラン」の導入に踏み切ったそうです。その結果、同社は2023年、2024年、2025年と、3年連続で健康経営優良法人に認定されています。
「チケットレストラン」導入後、同社の健康習慣アンケートでは肯定的な回答が増加し、朝食を毎日とる従業員の割合が40%から48%に上昇するなど、健康意識の向上が見られました。煩雑な経費精算が不要な点も含め、企業と従業員双方にメリットがあると評価されているそうです。
URL:https://www.suzukishouten.co.jp/
導入事例:株式会社鈴木商店
おわりに
健康経営を成功させるには、具体的なメンタルヘルス施策の企画と実施が欠かせません。体制づくりや従業員教育、医療機関との連携が重要視されていますが、手軽にメンタルヘルスに働きかけられる福利厚生サービスの利用も効果があるといわれています。
健康経営とメンタルヘルスにまつわる、さまざまな公的文書や論文では「企業がメンタルヘルス対策の改善を図ることで、悪くなりかけた心の健康を取り戻せる」と示唆されています。すぐに取り入れられ、企業・従業員の満足度が高い対策として「チケットレストラン」の導入もぜひ検討してみましょう。
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エデンレッドジャパンブログ編集部
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