5月病によるメンタルヘルス不調は、若手社員の離職に直結する経営リスクです。適応障害やうつ病が潜む可能性もあり、「気持ちの問題」と放置するだけでは対応が遅れます。本記事では、企業が今すぐ実践できる5月病の早期発見方法と、職場・コミュニケーション・健康サポートの3軸による具体的な対策をわかりやすく解説します。
「5月病」とは?
「5月病」はよく耳にする言葉ですが、正式な医学用語ではありません。まずは、5月病の概要から整理していきましょう。
5月病|GW明けころに見られる心身の不調
5月病とは、新しい環境への適応がうまくいかず、GW明けごろに心身の不調が現れる状態の総称です。進学・就職・異動など4月に生活環境が大きく変わったあと、緊張の糸が緩む連休明けに症状が出やすいことから、この名がつきました。
症状は大きく以下の3つに分けられます。※詳細は後述
- こころの不調(無気力・不安感・集中力の低下)
- からだの不調(倦怠感・不眠・頭痛・食欲不振)
- 行動の変化(遅刻や欠勤の増加・ミスの増加・対人交流の回避)
新入社員や、異動や昇進などで環境が変わった中堅・管理職をはじめ、誰もが陥る可能性のある不調です。
GW明けに不調が集中するのはなぜ?
4月は入社・異動・転勤など、多くの変化が一度に押し寄せる時期です。自覚の有無にかかわらず、新しい環境に適応しようと緊張状態が続く人は少なくありません。
ところがGWの長期休暇でその緊張が一気に緩むと、自律神経のバランスが乱れてしまいます。この乱れが「だるい」「やる気が出ない」「眠れない」といった症状として現れるのが、5月病のメカニズムです。
加えて、春から初夏にかけての寒暖差や気圧の変動も身体的なストレスとして重なり、不調を後押しします。その結果、「環境に慣れてきたはずなのに調子が悪い」「なんだかやる気が出ない」という状態に陥ってしまうのです。
適応障害・うつ病との違い
5月病は時期や状況を表す俗称であり、それ自体は医学的な診断名ではありません。背景にある状態として多いのが適応障害とうつ病ですが、この2つにも重要な違いがあります。
適応障害は、特定のストレス原因(職場環境・人間関係など)と症状の関連が明確で、そのストレス因から離れると症状が改善しやすい状態です。一方うつ病は、ストレス因から離れても抑うつ状態が持続し、日常生活全般に支障が及ぶ点で異なります。
5月病と呼ばれる状態の多くは適応障害に近いケースですが、放置することでうつ病へ移行するリスクがあります。
そのため、企業として大切なのは、従業員自身が「5月病です」と申告しているからといって軽視しないことです。症状が2週間以上続く、業務に支障が出ている、本人がつらいと感じているという状態であれば、医療機関や産業医への相談を促す判断が必要です。
若手社員が5月病になりやすい3つの理由
5月病は「若手がなりやすい」とよく言われますが、これはどういった理由からなのでしょうか。ここでは、若手社員が5月病になりやすい主な理由を3つの視点で解説します。
入社直後の「理想と現実のギャップ」が若手を直撃するから
就職活動中に描いていた職場のイメージと、入社後に直面する現実には、多かれ少なかれギャップがあるものです。しかしこのギャップが受け入れ難いほど大きいものだった場合、人は適応することができません。
加えて、入社直後は業務や人間関係を覚えることに精一杯で、「仕事を通じて何を達成したいのか」という目標を見失いやすい時期でもあります。特にオンボーディング(入社後の教育・受け入れ体制)が不十分な場合、若手社員は孤立したまま不安を抱え込み、5月病リスクが高まります。
企業には、研修や業務の引き継ぎだけでなく、「一人ひとりがこの会社で働く意味」を早期に実感させる関わりが求められるといえそうです。
関連記事:若手社員の離職防止に必要な取り組みは?新卒の離職率もチェック
周囲に相談できないから
入社間もない若手社員は、職場での立場や人間関係がまだ固まっていない時期です。「こんなことで相談していいのか」「弱いと思われたくない」という心理が働きやすく、不調のサインを出せないまま状態が悪化するケースが少なくありません。
ベテラン社員であれば頼れる同僚や上司との信頼関係がすでにある一方、若手にはそのネットワークがまだありません。管理職が「元気そうに見えた」と後から気づくパターンは、こうした若手特有の孤立構造が背景にあります。
「相談しても大丈夫」という心理的安全性を、組織として意図的につくることが求められます。
テレワーク・ハイブリッド勤務などで孤立しやすいから
入社直後の若手社員にとって、先輩や同僚との何気ない会話は、仕事の不安を解消したり職場に馴染んでいく上で重要な役割を果たします。
一方、テレワークやハイブリッドワークが定着しつつある近年は、ランチの雑談や業務の合間の一言といった偶発的なコミュニケーションが生まれにくいのが実情です。
関係性が薄いまま孤立した状態で業務をこなし続けることは、若手にとって精神的な負荷が大きく、5月病リスクを高めます。
すでに職場に根付いているベテラン社員と異なり、若手ほど孤立しやすい点を、企業として認識しておく必要があります。
関連記事:テレワーク・リモートワークにおけるコミュニケーションの課題と解決方法【好事例10選も / 企業名も掲載】
5月病はどう見極める?「不調のサイン」と早期対応のポイント
5月病は、本人が「つらい」と言い出せないまま悪化するケースが少なくありません。そのため、周囲が早期にサインに気づき、適切に動ける体制を整えることが、離職防止の要となります。ここでは、人事担当者と管理職が共有しておきたい見極め方と初動の対応を整理します。
こころ・からだ・行動の3軸で見る|不調のサインチェックリスト
不調のサインは一種類ではなく、こころ・からだ・行動の3つの側面で現れます。以下を参考に、「いつもと違う」変化を見逃さないようにしましょう。
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【こころのサイン】 □ やる気・意欲の急激な低下 【からだのサイン】 □ 倦怠感・頭痛・めまいが続く 【行動のサイン】 □ 遅刻・欠勤が増えた |
どれかひとつではなく、複数のサインが重なっていると見受けられる場合は、本人への声かけや専門家への相談を検討するタイミングです。
関連記事:職場のメンタルヘルスケアとは?ストレスの原因や対策のポイント
「大丈夫?」より「最近どう?」
不調のサインに気づいた管理職が最初に取る行動が、従業員のその後の回復を大きく左右します。
この場面で、特に重要なのが「問いかけ方」です。「大丈夫?」というYES/NOで答えられる質問(クローズド・クエスチョン)は、反射的に「大丈夫です」と答えるケースも多々見られるため、大切なサインを見落とす結果になりかねません。
こうした事態を避けるには、「大丈夫?」の代わりに「最近どう?」「今一番困っていることは?」のような、自由に答えられる質問(オープン・クエスチョン)を使いましょう。これにより、従業員の本音を引き出しやすくなります。
5月病を放置した場合のリスク|離職・コスト・組織への連鎖的影響
「もう少し様子を見よう」という判断が、より深刻な事態をもたらすケースもあります。ここでは、5月病を放置した場合に考えられる2つのリスクについて解説します。
若手の早期離職が組織にかける「見えないコスト」
厚生労働省の調査によれば、大学卒の新規学卒就職者の3年以内離職率は、長年にわたって約3割前後で推移しています。5月病をきっかけとしたメンタル不調が、その離職を後押しするケースは少なくありません。
若手社員1名を採用・育成するには、求人広告費・採用担当者の人件費・研修コストなどを含めて相当の費用が発生します。具体的な金額は企業規模や職種によって異なりますが、数十万円から百万円を超えるケースも珍しくありません。
早期に離職されれば、そのコストはほぼ回収できないまま失われます。早期対応への投資は、コスト削減の観点からも合理的な選択です。
参考:新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)を公表します
一人の不調が職場全体に波及する|チームへの負荷と「第2の離職者」
メンタル不調者が出た職場では、その業務を周囲がカバーすることになります。これが続くと、カバーする側の残業増加・疲弊につながり、チーム全体のモチベーションが低下します。その結果、本来は不調ではなかった社員が、過負荷によって次の離職者になるという悪循環が生じる可能性も否定できません。
また、「あの会社は不調者を放置する」という評判は、採用ブランドにも影を落とします。人材不足が深刻な昨今、職場環境への評価は求職者の選択に直結します。
企業は、一人の不調を個人の問題にとどめず、採用力にまで波及するリスクとして捉えることが重要です。
企業が今すぐ取り組める5月病対策4選
厚生労働省は『職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~』の中で、職場のメンタルヘルス対策として「4つのケア」(セルフケア・ラインによるケア・事業場内産業保健スタッフ等によるケア・事業場外資源によるケア)を提唱しています。ここでは、この枠組みをベースに、人事担当者がすぐに動ける4つの具体策を紹介します。
参考:職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~
① 職場環境を整える
5月病の予防として最も根本的な対策は、不調が生じにくい職場環境をつくることです。具体的には、過重な残業の是正、透明性のある人事評価制度の整備、キャリアパスの明示が有効です。
厚生労働省の『雇用動向調査』では、若手の離職理由として「労働時間・休日等の労働条件」「給料等収入」「職場の人間関係」「仕事の内容」などが上位に挙げられました。
こうした「見えない不満」を放置したまま対症療法的な対策をとっても、根本的な解決にはつながりません。制度や数字で見える部分だけでなく、若手が感じている職場のリアルに向き合うことが求められます。
② コミュニケーションを制度化する
コミュニケーションが乏しい職場では、従業員一人ひとりが孤立感を抱きやすく、5月病のリスクも高まります。
テレワークやハイブリッドワークが普及した近年では、「コミュニケーションは自然に生まれるもの」という従来の認識は、現実にそぐわなくなっているのが実情です。
おすすめの対策としては、月1回以上の1on1ミーティングの定期実施(業務連絡だけでなく、キャリア不安や人間関係を聴く場として活用)、GW明けを意識したタイミングでのチームランチや対話の場の設定などが有効です。
コミュニケーションを制度化し、立場を超えた会話を推進する施策が、孤立防止として機能します。
関連記事:【社労士監修】離職防止につながるコミュニケーションのコツと心理的安全性
③ 食事・休養・相談窓口を「制度」で支える
心身の健康を維持するうえで、食事・睡眠・相談できる環境の3つは重要な基盤です。しかし、業務に追われる従業員ほど、食事を後回しにしたり、相談できる場所を知らないまま不調を抱え込みやすい実態があります。
こうした状況に対して有効なのが、福利厚生を通じた健康サポートです。
例えば、食事補助の福利厚生は、従業員が日常的にバランスのとれた食事を取りやすい環境をつくります。また、外部相談窓口(EAP:従業員支援プログラム)の整備は、社内では話しにくい悩みを匿名で第三者に打ち明けられる場として機能します。
いずれも「気をつけなさい」と個人に委ねるのではなく、組織が仕組みとして支える発想の転換です。従業員満足度の向上と、メンタル不調の予防を同時に実現できる、注目の投資です。
関連記事:【税理士監修】食事補助は現金支給できる?非課税限度枠を活用する条件とその他の施策を解説
食事補助の福利厚生「チケットレストラン」で従業員をサポート
食事補助の福利厚生サービスとして、近年注目度を高めているのがエデンレッドジャパンの「チケットレストラン」です。
「チケットレストラン」を導入した企業の従業員は、一定の条件を満たすことにより全国25万店舗以上の加盟店での食事を半額で利用できます。非課税を活用することにより、コストを抑えながら従業員の実質的な手取りアップにも寄与します。
導入した企業では、「社内コミュニケーションが活性化した」「採用力の強化に貢献した」などの声も多数寄せられる人気サービスです。
詳しくは「導入事例」をご覧ください。
関連記事:チケットレストランの魅力を徹底解説!ランチ費用の負担軽減◎賃上げ支援も
④ ストレスチェックを「形式」で終わらせない
令和7年5月、改正労働安全衛生法が公布されたことにより、以後3年以内に労働者数50人未満の事業場においてもストレスチェックの実施が義務化されることが決定しました。
ストレスチェックは、実施するだけでは十分ではありません。結果を「活用する仕組み」に連動させることで、初めて早期発見のツールとして機能するものです。
具体的には、高ストレス者と判定された社員への産業医面談を確実に実施すること、集団分析結果を部署ごとに共有して組織的な課題を可視化すること、の2点が欠かせません。また、残業時間データや健康診断結果と組み合わせてハイリスク者を早期にスクリーニングする手法も、実践的な効果が期待できます。
ストレスチェックを「やった」で終わらせず、次の行動につなげる設計をしましょう。
参考:厚生労働省|「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」を公表します
【Q&A】メンタルヘルスと5月病にまつわるよくある質問
ここでは、「メンタルヘルスと5月病」について多く寄せられる質問をピックアップし、Q&A形式でお答えします。
Q1. 5月病は本人の意志の問題ではないのですか?
A. 意志の問題ではなく、環境への適応が追いつかない状態です。
5月病の背景には適応障害やうつ病が存在することもあり、これらは気持ちの持ち方や根性で乗り越えられる状態ではありません。「もっと頑張れ」「気の持ちようだ」という声かけは、本人をさらに追い詰めるリスクがあります。「意志の問題ではない」という前提を組織全体で共有することが、適切な初動の出発点です。
Q2. ストレスチェックで問題がなかった社員が5月病になることはありますか?
A. あります。ストレスチェックはあくまでスクリーニングツールの一つです。
ストレスチェックは一定時点での状態を測るもので、すべてのリスクを網羅できるわけではありません。検査時は問題がなくても、その後の環境変化や人間関係の悪化で不調が生じるケースは十分にあります。また、高ストレス者でも面談を申し出ない社員も珍しくありません。ストレスチェックの結果に安心するのではなく、日常の観察・1on1・声かけを組み合わせた多層的な対応が、早期発見の精度を高めます。
Q3. コストを抑えてできる5月病対策はありますか?
A. あります。声かけ・1on1・心理的安全性の醸成、食事補助をはじめとする福利厚生制度の整備などが挙げられます。
管理職が日常的に「最近どう?」と声をかける習慣、月1回の1on1ミーティングの実施、相談を受けたときに否定しない姿勢といった関わり方は、追加コストなしで実践できます。また、食事補助などの福利厚生制度を整え、従業員の健康サポートと満足度向上を中長期的に支える仕組みづくりも有効です。まずできることから始め、制度として整えていくという段階的なアプローチが、無理なく継続できる対策になります。
5月病対策は「人を守る」と同時に「組織を守る」投資
5月病によるメンタルヘルス不調は、「個人の問題」として扱ってよい時代ではありません。放置すれば若手社員の離職、チームへの負荷増大、採用ブランドの毀損という連鎖を招きかねない、企業にとって重要な課題です。
「職場環境を整える」「コミュニケーションを制度化する」「健康サポートを仕組み化する」「ストレスチェックを活用する」といった基本の施策から始め、働きやすい環境整備を進めましょう。「チケットレストラン」のような食事補助の福利厚生制度も、コミュニケーションの推進や健康サポートに有効です。
5月病対策は、従業員の心身を守る取り組みであると同時に、組織の持続的な成長を支える経営的投資です。離職の少ない魅力ある企業づくりの1歩として、ぜひ自社制度の見直しを進めましょう。
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