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【2025年最新】福利厚生費の見積書・内訳書作成マニュアル|建設業・一般企業対応

【2025年最新】福利厚生費の見積書・内訳書作成マニュアル|建設業・一般企業対応 【社労士監修】

2025.12.02

監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)

福利厚生費の内訳書や見積書を作成する際は、法定と任意の福利厚生費を区別することが重要です。中でも建設業では、法定福利厚生費を見積書に明示することが推進されているため、ルールに則った丁寧な対応が求められます。本記事では、業種別の内訳書・見積書作成方法から、課税・非課税の判断基準、実務上の注意点まで、業種を問わず、担当者が知っておきたい情報を解説します。

福利厚生費に関するよくある質問

福利厚生費の内訳書や見積書を作成する際、多くの担当者が疑問に感じるポイントをQ&A形式で整理しました。

Q1. 福利厚生費の割合はどのくらいが目安?

A. 法定福利費は労務費の約15〜17%、任意の福利厚生費は企業方針次第です。

法定福利費は労務費の約15〜17%が目安ですが、都道府県・業種・従業員構成により変動します。任意の福利厚生費は法的基準がなく、従業員一人あたり月額数千円〜数万円が一般的です。

Q2. 見積書に記載する義務はある?

A. 建設業では法定福利費の明示が推進されています。一般企業は法的義務なしですが、明示が望まれます。

建設業では国土交通省が法定福利費の明示を推進しています。下請から明示された法定福利費を元請が一方的に削減する行為は、建設業法第19条の3に違反する恐れがあるため注意が必要です。一方、一般企業では法的義務はありませんが、社内稟議や予算申請における透明性確保のため明示が望まれます。

Q3. 福利厚生費は課税される?

A. 法定福利費と法定外福利厚生費で扱いが異なります。

法定福利費の事業主負担分は、従業員の給与所得には含まれないため課税されません。一方、法定外福利厚生費は、種類と運用方法によって課税・非課税が決まります。※詳細は「費目区分と課税・非課税の境界を理解する」の項へ

関連記事:福利厚生として食事補助を導入するメリットは?非課税で提供する方法も

Q4. 外注・派遣社員にも適用できる?

A. 法定福利費と法定外福利厚生費で判断基準が異なります。

法定福利費は、雇用契約の有無と社会保険の加入義務で判断します。一人親方など、雇用契約がない場合は原則対象外です。

法定外福利厚生費は、雇用契約の有無と福利厚生規程の定義で判断します。ただし、同一労働同一賃金の観点から、正社員のみを対象とし、契約社員や派遣社員を除外することは不合理な待遇差として問題になる可能性があります。一部の従業員のみが対象となる制度は、給与課税のリスクも否定できません。

なお、派遣社員の法定外福利厚生は、原則として派遣元の制度を適用します。

参考:厚生労働省|同一労働同一賃金ガイドライン

関連記事:【社労士監修】同一労働同一賃金で派遣社員の働き方はどう変わる?企業のメリットも

Q5. 消費税は課税対象?

A. 法定福利費・任意福利厚生費ともに原則課税対象です。

社会保険料の支払い自体は消費税法上「非課税取引」です。ただし、建設業の見積書など請負代金の一部として法定福利費をまとめて計上する場合、見積書全体の計算では「(材料費+労務費+法定福利費+経費)× 消費税率」となることが一般的です。

これは取引上の扱いによるものであり、社会保険料自体に消費税がかかるわけではありません。任意福利厚生費(食事補助・健康診断など)は原則「課税仕入れ」として処理します。

福利厚生費の2つの種類|法定と任意の違いを理解する

福利厚生費には、法律で義務付けられた「法定福利費」と、企業が独自に設ける「法定外福利費(任意の福利厚生費)」の2種類があります。どちらも福利厚生費として扱われますが、その目的や計算方法、実務上の扱いは大きく異なります。正確な内訳書・見積書を作成するため、まずは両者の違いを理解しましょう。

法定福利費とは|法律で企業に負担が義務付けられた福利厚生費

法定福利費とは、法律により企業が負担を義務付けられた、各種保険料や拠出金の企業負担分を指します。対象となるのは以下の6項目です。

  • 健康保険
  • 介護保険
  • 厚生年金保険
  • 雇用保険
  • 労災保険
  • 子ども・子育て拠出金

健康保険・厚生年金保険は、従業員と企業が折半、雇用保険は労働者より事業主の負担割合が大きく設定されています。また、労災保険と子ども・子育て拠出金の負担は事業主のみです。これらの企業負担分を会計上「法定福利費」として処理します。

建設業において見積書に明示が求められる法定福利費は、労災保険料を除く現場労働者(技能労働者)にかかる事業主負担分を指します。

法定外福利費とは|企業が任意で負担する福利厚生費

法定外福利費は、企業が任意で導入する法定外福利厚生制度にかかる費用です。具体的には以下のような制度が挙げられます。

  • 住宅手当
  • 食事補助
  • 慶弔見舞金
  • 社員旅行
  • 健康診断の拡充
  • 資格取得支援
  • レクリエーション費用 など

法定福利費が法律で義務付けられた「コスト」であるのに対し、法定外福利費は企業が戦略的に提供する「投資」という違いがあります。

建設業では人手不足が常態化しているため、採用力強化の目的で法定外福利厚生の充実を検討する企業も少なくありません。一般企業においても、従業員満足度向上や人材定着を目的に、任意の福利厚生を導入する動きが広がっています。

関連記事:【2025年版】福利厚生導入の目的とは?経営課題を解決する戦略と実例

業種で異なる「実務上の扱い」

法定福利費と法定外福利費の区別は全業種共通ですが、内訳書や見積書の作成実務は業種によって異なります。

建設業では、平成25年から国土交通省により法定福利費の見積書への明示が推進されています。これは、元請・下請間で法定福利費の負担配分が不透明になり、社会保険未加入問題が深刻化したことへの対策です。見積書や契約書で法定福利費を明示することで、適正な取引と社会保険加入の徹底を図っています。

一般企業では、法定福利費の見積書明示は特に推進されていません。ただし、任意の福利厚生費については、社内稟議や予算申請のために内訳書を作成するケースが多くあります。例えば費用対効果の説明や課税・非課税の判断では詳細な内訳が必要です。

つまり、建設業と一般企業の違いは、制度そのものではなく、内訳書・見積書を作成する目的にあるといえます。

【建設業向け】法定福利費の内訳書と見積書の作り方

建設業では、平成25年から国土交通省のガイドラインに基づき、法定福利費を見積書に明示することが推進されています。これは法律上の義務ではありませんが、元請・下請間の適正な取引と社会保険加入の徹底を目的とした重要な取り組みです。

法定福利費の計算方法

法定福利費の基本的な計算式は以下の通りです。

法定福利費 = 労務費 × 法定福利費率

法定福利費率とは、各保険の事業主負担分を合算したものです。2025年度の標準的なケース(東京都・協会けんぽ・建築業)では、以下のように計算します。

項目 事業主負担率
健康保険料(東京都) 4.955%
厚生年金保険料 9.15%
雇用保険料(建設の事業) 1.1%
介護保険料(標準) 約0.42% 
子ども・子育て拠出金 0.36%
合計 約16.0%

※介護保険料は加入率を加味して算出

計算例: 労務費100万円の場合 → 100万円 × 約16.0% = 約16万円

ただし、この割合はあくまで目安です。実際には以下の要因で変動します。

  • 都道府県:健康保険料率は都道府県により異なります
  • 従業員の年齢構成:介護保険は40歳以上65歳未満のみが対象のため、対象者の割合により0.2%~0.8%程度の幅があります※
  • 工事の種類:建設業の労災保険料率は建築事業0.95%、舗装工事業0.9%、道路新設事業1.1%など業種により異なります
  • 保険料率の改定:健康保険料率や雇用保険料率は毎年度見直されます

正確な法定福利費を算出する際は、自社の都道府県、加入保険、従業員構成、事業の種類を確認し、最新の保険料率を適用することが重要です。

※介護保険料は「介護保険料率1.59%(事業主負担0.795%)× 40~64歳の加入率」で算出した目安です。従業員構成により実際の負担率は約0.2~0.8%程度の範囲で変動します。

参考: 協会けんぽ|全国健康保険協会|令和7年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます
参考:日本年金機構|厚生年金保険料額表
参考:厚生労働省|雇用保険料率について
参考:厚生労働省|令和7年度の労災保険率について(令和6年度から変更ありません)

見積書の記載ルール

見積書では、法定福利費を「労務費」と分けて独立した項目として明示する必要があります。国土交通省のガイドラインでは、以下の形式が推奨されています。

【推奨される記載形式】

  1. 材料費・労務費・経費(法定福利費を除く)の小計を示す
  2. 法定福利費を別項目として記載。内訳欄に「対象項目」「対象金額」「適用する料率」「算出された金額」を明記

法定福利費の根拠を明示することで、元請との協議や値引き要求への説明がスムーズになります。透明性の高い見積書は、元請・下請双方の信頼関係構築につながります。

関係者別の注意点(元請・下請・一人親方)

法定福利費の取り扱いは、立場によって責任と注意点が異なります。

【元請業者の責任】

下請から法定福利費が明示された見積書を受け取った場合、その金額を尊重し、一方的な値引き要求をしてはなりません。

法定福利費を削減したり、他の費用項目で減額調整を行い、結果として「通常必要と認められる原価」に満たない金額で契約を締結したりした場合、建設業法第19条の3「不当に低い請負代金の禁止」に違反する恐れがあります。また、下請の社会保険加入状況を確認し、未加入の場合は加入を指導する必要があります。

参考:e-Gov 法令検索|建設業法|第19条の3

【下請業者の責任】

自社が負担すべき法定福利費を適正に計算し、内訳を明示した見積書を元請に提出する必要があります。算出根拠(保険料率、対象人数、賃金額)を明確にすることは、元請との協議を円滑に進めるために重要です。

不当な値引き要求に対しては、法定福利費の必要性を説明し、毅然とした対応が求められます。

【一人親方の扱い】

一人親方や常時使用する労働者が5人未満の個人事業所は、健康保険・厚生年金保険の対象から除外されます。

ただし、見積段階では適用除外者の把握が困難なため、国交省ガイドラインでは「すべての現場作業員の加入を前提として法定福利費を計上し、契約時に元請と協議して最終金額を決定する」方法を推奨しています。

▼建設業にうれしい福利厚生のヒント

法定福利費とは別に、任意の福利厚生を導入する建設業も増えています。特に外勤が多い現場では、場所を問わず利用できる食事補助などが効果的です。詳しくは記事末尾へ。

【すべての企業向け】任意の福利厚生費の内訳書と見積書の作り方

福利厚生費の内訳書や見積書は、建設業以外にも無関係ではありません。ここでは、任意の福利厚生費について、社内稟議や予算申請のための見積書・内訳書を適切に作成するためのポイントを解説します。

費目区分と課税・非課税の境界を理解する

任意の福利厚生費は、運用方法によって「福利厚生費」「給与課税」「交際費」「旅費交通費」など異なる勘定科目になる可能性があります。福利厚生費として認められるためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • すべての従業員を対象にしていること
  • 社会通念上、妥当な金額であること
  • 換金性がないこと(現金・金券類を除く)

役職者のみや特定の部署のみを対象とした場合や、高価すぎる社員旅行等は、福利厚生ではなく給与として課税される可能性があるため注意が必要です。

参考:国税庁|No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行

内訳書・見積書に入れるべき項目

任意の福利厚生費の内訳書には、費用の根拠を明確にする項目が必要です。社内稟議や予算申請で説明しやすいよう、以下の項目を盛り込みましょう。

  • 福利厚生の種類・内容
  • 対象者数
  • 単価または上限額
  • 利用頻度・想定件数
  • 企業負担額・従業員負担額(該当する場合)
  • 月間・年間の総コスト
  • 部門別配賦方法(必要に応じて)
  • 証憑管理方法

これらの項目を明示することで、経営層が予算承認を判断しやすくなります。また、年度途中での実績確認や次年度予算策定の際にも、基準となる資料として活用できます。

経理・インボイス対応の実務ポイント

任意の福利厚生費を適切に経理処理するためには、以下のポイントを押さえる必要があります。

証憑管理:福利厚生費として経費計上するには、支出の証明となる領収書や請求書の保管が必須です。外部サービスを利用する場合は、利用明細や請求書を適切に管理します。

インボイス対応:適格請求書発行事業者からの請求書・領収書を保管することで、仕入税額控除の要件を満たせます。

部門配賦:部門別に費用配分する場合は、利用実績や人数按分など、明確な配賦基準を設定します。

課税・非課税の判断:福利厚生の種類や運用方法によって、課税・非課税の扱いが異なります。

義務的コストから戦略的投資へ。福利厚生費の"見える化"で信頼と定着率を高める

福利厚生は、法定・任意ともに企業にとって大切な施策です。法定福利厚生が法的な義務であるのに対し、法定外福利厚生は、従業員に対する企業姿勢であり、一種の投資でもあります。

法定外福利厚生を検討するにあたっては、食事補助など、直接的に従業員の生活を支える施策がより効果的です。エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」のように、時間や場所を問わず、全国25万店舗以上の加盟店を社員食堂のように活用できるサービスは、従業員の満足度向上にも寄与します。

福利厚生を戦略的に活用し、企業としての信頼構築や採用力・定着率の向上を目指してはいかがでしょうか。

関連記事:「チケットレストラン」の仕組みを分かりやすく解説!選ばれる理由も

▼「チケットレストラン」のお問い合わせは「こちら

参考:国土交通省|法定福利費を内訳明示した見積書の作成手順
参考:国土交通省|社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン

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社会保険労務士 吉川明日香

社労士と民間企業の人事部で働くハイブリッド型社労士。労働者、経営者、人事担当者それぞれの視点から、バランスのとれたサポートを心がけています。子育て世代の生活環境や就業環境の課題を探るために保育士の資格を取得し、特定の専門分野を作らず、給与計算、手続き業務、労務相談、助成金等、幅広く実践的なアドバイスを行っています。
吉川社会保険労務士事務所
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