「心理的安全性」の欠如は、離職率の上昇・エンゲージメントの低下・イノベーション創出の停滞の原因となる深刻な経営課題です。組織の在り方やチームの成果を左右する心理的安全性について、本記事では、その定義やリスク・メリット・簡単な診断方法・具体的な構築方法など、知っておきたい情報を分かりやすく徹底解説します。
心理的安全性とは?経営に直結する"組織の土台"
心理的安全性とは「チームメンバーが対人関係のリスクを恐れることなく意見や懸念を表明できる状態」を指します。
これは単なる「働きやすい職場」ではなく、組織の生産性や競争力を左右する経営基盤です。
Googleが数年にわたり実施した「プロジェクト・アリストテレス」では、180以上のチームを分析した結果、チームの成果を決定づける最重要要素として心理的安全性が特定されました。
この概念は、ハーバード大学のエイミー・C・エドモンドソン教授が1999年に提唱したもので、「対人関係においてリスクのある行動をとってもこのチームでは安全であるという、チームメンバーによって共有された考え」と定義されています。
経営層が認識すべきは、心理的安全性が高い組織ほど、イノベーション創出力、問題解決スピード、従業員定着率において優位性を持つという事実です。
参考:Google re:Work - ガイド: 「効果的なチームとは何か」を知る
参考:DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー|心理的安全性とは何か、生みの親エイミー C. エドモンドソンに聞く 成長し続けるチームを育てる土台|チームマネジメント
関連記事:心理的安全性とは何か?職場における定義や「ぬるま湯」との違いを解説
心理的安全性が注目される理由
心理的安全性が経営課題として急浮上している背景には、労働環境の構造的変化があります。厚生労働省の「令和6年雇用動向調査」によれば、2024年の離職率は14.2%でした。前年比では1.2ポイント減少しているものの、人材の定着はやはり重要な課題です。また、ハイブリッドワークの普及により対面コミュニケーションが減少し、組織内の心理的距離が拡大している点も無視できません。加えて、人的資本経営の潮流により、2023年3月期決算から有価証券報告書への人的資本情報の開示が義務化され、従業員エンゲージメントや離職率といった指標が投資家の評価対象となりました。
こうした環境下で、心理的安全性は単なる人事施策ではなく、企業価値を左右する経営戦略の中核として位置づけられています。人材獲得競争が激化し、メンタル不調による休職者が増加する今、組織の持続的成長には心理的安全性の確保が不可欠です。
心理的安全性が低い職場のリスク
心理的安全性が欠如した組織では、表面的には平穏に見えても、水面下でさまざまな問題が進行します。以下、具体的なリスクを解説します。
人間関係のトラブル・対立が増える
心理的安全性が低い職場で生じやすいリスクとして、まず挙げられるのが、「人間関係のトラブル・対立の増加」です。
組織内の心理的安全性が低いと、メンバーが本音を言えず、誤解や不満が蓄積します。その結果、些細なすれ違いが大きな衝突に発展しやすくなるのです。
相談や確認を躊躇する人が増えると、「言った・言わない」問題が頻発し、チーム内に派閥が形成されたり、陰口や噂話が横行したりします。こうした人間関係の悪化は、協働を阻害するだけでなく、優秀な人材が「この組織では働き続けられない」と判断する直接的な離職要因となりかねません。
特に、管理職とメンバー間の信頼関係が損なわれた場合、組織全体のパフォーマンスが急速に低下します。対立が表面化したときには、すでに修復困難な状態に陥っているケースも少なくありません。
ケアレスミス・事故・品質低下が増える
「質問できない文化」は、ミスや事故の温床です。業務上の不明点や疑問を抱えたまま作業を進めた結果、手戻りが発生し、品質不良や納期遅延につながってしまうのも珍しい話ではありません。
特に医療・製造・建設といった安全性が求められる現場では、小さな確認不足が重大事故を引き起こすリスクがあります。
また、心理的安全性に欠ける組織では、顧客クレームが発生しても、担当者が上司への報告を躊躇しがちです。これは初動対応の遅れや、さらなる問題の拡大にもつながります。
さらに心理的安全性が低い組織では、ミスを隠蔽する文化が醸成されやすく、同じ失敗が繰り返される悪循環に陥ります。結果として、顧客満足度の低下、ブランド毀損、法的リスクの増大といった深刻な事態を招くことになるのです。
挑戦・改善提案が減り、成長が停滞する
「否定されるのが怖い」「失敗したら評価が下がる」という心理が支配的な組織では、新しいアイデアや改善提案が生まれません。メンバーは挑戦よりも現状維持を選び、前例の踏襲が常態化します。
特に、デジタル化やDX推進が求められる現代において、挑戦を奨励しない文化は企業の存続を脅かす致命的な弱点です。従業員の創造性や主体性が発揮されない組織は、長期的に衰退の道を辿ります。
メンタル不調や離職が増える
心理的安全性が低い職場では、従業員が常に緊張状態に置かれ、慢性的なストレスを抱えます。上司や同僚の顔色を伺いながら働く環境は、心身の健康を著しく損なうからです。
その結果、メンタル不調による休職者が増加し、さらに人手不足が深刻化するという悪循環に陥る可能性が高まります。また、組織への信頼が失われた従業員は、より良い環境を求めて離職を選択しやすいため、離職率の上昇は、採用コスト・育成コストの増大を招き、組織の知識やノウハウが流出する原因ともなります。
特に優秀な人材ほど転職市場での選択肢が多いため、組織に見切りをつけるスピードが速く、競争力の源泉である人的資本が急速に枯渇してしまうのです。
心理的安全性が高い組織のメリット
心理的安全性が確保された組織では、従業員のポテンシャルが最大限に発揮され、具体的な良い影響として表れます。以下、主なメリットを解説します。
生産性・パフォーマンスが向上する
心理的安全性が高い組織では、メンバーが活発に意見交換し、意思決定のスピードと質が向上します。これは、疑問点をその場ですぐに確認できる環境では、不明点を抱えたまま作業を進めることがなくなり、無駄な作業や手戻りが減少するからです。結果として、業務効率が大幅に改善し、限られたリソースで最大の成果を生み出せるようになります。また、チーム内での情報共有が円滑になることで、個々のメンバーが適切な判断を下しやすくなり、組織全体のパフォーマンス向上につながるのも大きなメリットです。
会議においても、形式的な報告だけでなく、本質的な議論が交わされるため、実効性のある施策が生まれやすくなります。さらに、メンバーが「自分の意見が尊重される」と実感することで主体性が高まり、自律的な問題解決や業務改善が促進されます。
関連記事:心理的安全性が重要な理由は?新入社員意識調査をもとに解説
離職率が低下し、人材が定着する
心理的安全性は、従業員満足度やエンゲージメント向上と強い相関関係があります。安心して意見を言える職場、困ったときに助けを求められる環境、失敗を責められない文化があれば、従業員は「この組織で働き続けたい」と感じます。一方、心理的安全性が低い組織では、ストレスや不満が蓄積し、優秀な人材ほど早期に離職を選択しがちです。
従業員が長く働き続けることにより、組織には、採用コストの削減・ノウハウや知識の蓄積・チームワークの向上といった複合的な効果がもたらされます。中でも育成に時間がかかる専門職やマネジメント人材が定着することで、組織の競争力は大きく高まります。
人材定着は、短期的なコスト削減だけでなく、持続的な成長を支える基盤です。
イノベーションが生まれやすくなる
従業員は失敗を恐れずに新しいアイデアを提案できるのも、心理的安全性が高い組織ならではのメリットです。
「こんなことを言ったら笑われるかもしれない」「否定されたらどうしよう」という不安がない環境では、既存の枠組みにとらわれない自由な発想が生まれます。
イノベーションは、常識や前例を疑うことから始まりますが、そのためには心理的な安全基盤が不可欠です。多様な視点が交わる環境では、予想外の組み合わせから画期的なソリューションが創出されます。
加えて、小さな提案も歓迎される文化があれば、業務プロセスの継続的なブラッシュアップが進み、組織全体の効率性も向上します。変化の激しい市場環境において、継続的にイノベーションを生み出せる体質は、組織としての大きな強みです。
情報共有が促進される
心理的安全性が高い組織では、悪い知らせや懸念事項も早期に共有されます。
問題が小さいうちに対処できるため、取り返しのつかないような大きなトラブルへ発展することがありません。情報の透明性が保たれることで、組織全体の状況把握が容易になり、経営判断の精度が向上します。
また、成功事例や失敗事例がオープンに共有される文化があれば、組織としての学習が促進され、同じ過ちを繰り返すリスクが低減します。情報共有の活性化は、組織の適応力と回復力を高める鍵なのです。
心理的安全性が高い組織をつくる4つの因子
心理的安全性を具体的に高めるためには、どのような要素が必要でしょうか。株式会社ZENTech代表取締役の石井遼介氏は、著書『心理的安全性のつくりかた』(日本能率協会マネジメントセンター|2020)の中で、日本企業において心理的安全性を高める4つの因子を提唱しています。
話しやすさ
「話しやすさ」とは、小さな疑問や違和感を気兼ねなく口にできる状態をいいます。
会議の場だけでなく、日常の業務中に「これ、どういう意味ですか?」「ここ、もう一度確認させてください」と言える雰囲気があるかどうかは、「話しやすさ」のひとつの指標です。
話しやすさが欠如していると、不明点が放置され、ミスや手戻りが発生しがちです。また、メンバーが沈黙を選ぶ組織では、意思決定に必要な情報が集まらず、判断の質が低下しやすくなります。
「話しやすさ」を醸成するには、管理職が「些細なことでも聞いてほしい」というメッセージを発信し続けることが必要です。さらに、質問した人を否定せず、むしろ「よく聞いてくれた」と肯定的に受け止める姿勢が、組織全体の心理的安全性を高めます。
助け合い
「助け合い」とは、困っている人を放置しない文化が根づいている状態です。
業務量が偏っているメンバーを見て「自分の仕事ではない」と見て見ぬふりをしがちな組織は少なくありません。これに対し、「何か手伝えることはありますか?」と声をかけられるチームは、心理的安全性が高い組織です。
助け合いの文化があると、個人のパフォーマンスのばらつきがチーム全体で吸収され、安定した成果が出せます。また、困ったときに助けてもらった経験は、「この組織は自分を支えてくれる」という信頼感を生み、エンゲージメント向上につながります。
助け合いを促進するには、相互支援を評価制度に組み込む、感謝を可視化する仕組みを導入するといった施策が有効です。
関連記事:心理的安全性を高める方法|人間関係のストレスがない職場づくりのメリット
挑戦
「挑戦」の因子は、失敗よりも学びが評価される文化を指します。
新しい取り組みには必ずリスクが伴いますが、失敗を過度に責める組織では、誰も挑戦しなくなります。
その点、心理的安全性が高い組織で重視されるのは、「やってみて失敗したこと」よりも「失敗から何を学んだか」「次にどう生かすか」です。
こうした挑戦を奨励する風土がある組織では、メンバーは自律的に改善提案を行い、業務のブラッシュアップが継続的に進みます。また、挑戦する姿勢が周囲に伝播し、組織全体の活性化も叶います。
管理職は、失敗を責めるのではなく、「このチャレンジから何を得たか」を問う姿勢を示すことが必要です。
新奇歓迎
「新奇歓迎」とは、異質なものや新しい視点を排除しない姿勢のことで、多様性(Diversity & Inclusion)の土台となる因子です。
同質性の高い組織では、暗黙の了解や「常識」が幅をきかせやすく、異なる意見や背景を持つ人が疎外されがちです。一方で、心理的安全性が高い組織は、「これまでと違うやり方」や「外部から持ち込まれた知見」を歓迎し、柔軟に取り入れます。
この新奇歓迎の文化があると、組織の視野が広がり、固定観念に縛られない発想が生まれるのはもちろんのこと、多様なバックグラウンドを持つ人材が活躍できる環境が整い、採用競争力も向上します。
リーダーに求められるのは、「こうあるべき」を押しつけず、多様な価値観を尊重する姿勢です。
自社の心理的安全性は?簡単チェックリスト
自社の心理的安全性を測るには、組織の日常的な行動を観察することが有効です。以下のチェックリストで現状を評価し、改善の優先順位を明らかにしましょう。
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□ 会議で若手や新しい従業員が積極的に発言している □ 失敗やミスの報告が速やかに上がってくる □ 部署を超えた協力や情報共有が活発である □ 新しい提案や改善案が現場から自発的に出てくる □ 従業員が上司に対して率直に意見を言える雰囲気がある □ 困っている従業員がいると、周囲が自然にサポートしている □ 異なる意見や価値観が尊重され、排除されない □ チャレンジした結果の失敗が責められず、学びとして共有される □ 従業員が「この組織で働き続けたい」と感じている □ 経営方針や組織の課題が従業員に透明に共有されている |
【診断結果】
チェックが9〜10個
→ 心理的安全性が非常に高い組織です。現状を維持しつつ、さらなる進化を目指しましょう。
チェックが6〜8個
→ 心理的安全性は比較的高い状態です。チェックがつかなかった項目を重点的に改善することで、組織力がさらに向上します。
チェックが3〜5個
→ 改善の余地があります。特にチェックがつかなかった項目について、管理職や経営層が具体的な施策を検討することを推奨します。
チェックが0〜2個
→ 早急な対応が必要です。心理的安全性の欠如は、離職率上昇や生産性低下に直結します。本記事で紹介した施策を参考に、組織文化の見直しを始めましょう。
心理的安全性を高める基本原則とは?
心理的安全性を組織に根づかせるには、表面的な施策だけでなく、ベースにある原則を理解する必要があります。以下、4つの基本原則を解説します。
相互信頼
心理的安全性は、「相手を信じる」意志がなければ始まりません。相互信頼とは、「メンバーは悪意を持って行動しない」「困ったときには助けてくれる」という前提を共有している状態です。
疑念や猜疑心が強い組織では、どれほど制度を整えても心理的安全性は醸成されません。信頼は一朝一夕には築けませんが、小さな約束を守り続ける、透明性のあるコミュニケーションを心がける、といった地道な積み重ねが基盤となります。
特に、管理職が約束を破る・情報を隠蔽する、といった行動は、組織全体の信頼を一気に損ないます。相互信頼を育むには、リーダー自身が誠実さを体現し、言行一致を貫くことが不可欠です。
オープンネス
オープンネスとは、「完璧であろうとしすぎない」姿勢を指します。
管理職が弱みを見せず、常に正しい答えを持っているかのように振る舞うと、メンバーも失敗や不安を見せられません。本来オープンにすべきことも、自然と隠すようになってしまうため、組織の心理的安全性は低下しがちです。
一方、リーダーが「実は自分もこの点はよくわからない」「以前こんな失敗をした」と自己開示する組織では、組織全体に「完璧でなくてもいい」という安心感が育まれます。
この原則が根づいた組織では、メンバーは自分の弱点を隠さず、早めに助けを求められるようになるため、問題の早期解決が可能になります。
非防衛的姿勢
非防衛的姿勢とは、批判や指摘を受けたときに感情的にならず、事実と改善に焦点を当てる態度です。
防衛的な反応(言い訳・責任転嫁・攻撃など)が習慣化している組織では、建設的な議論が成立しません。一方、心理的安全性が高い組織では、フィードバックを「自分への攻撃」ではなく「成長の機会」として受け止める文化があります。
非防衛的姿勢を育むには、管理職が率先して「指摘してくれてありがとう」「確かにそこは改善の余地がある」と受け入れる姿勢を示すことが大切です。この原則が浸透すると、問題が隠蔽されず、組織の自浄作用が働きます。
多様性への敬意
心理的安全性とダイバーシティ&インクルージョンは別物ですが、根底にある姿勢は共通しています。
多様性への敬意とは、「こうあるべき」を押しつけず、異なる価値観や働き方を尊重するマインドです。年齢・性別・国籍・キャリア・ライフスタイルが異なる人々が集まる組織では、画一的な基準で評価すると、一部のメンバーが疎外感を抱きます。
心理的安全性が高い組織は、多様なバックグラウンドを強みとして生かし、それぞれの個性を尊重します。この原則を実践するには、リーダーが無意識のバイアスに気づき、公平な評価とコミュニケーションを心がけることが必要です。
心理的安全性の作り方|経営層・管理職・メンバー別にやるべきこと
心理的安全性は、特定の役職だけが担う課題ではなく、組織全体で取り組むべきテーマです。以下、組織内の階層別に具体的なアクションを示します。
経営層がすべきこと
心理的安全性は、経営層がコミットしない限り組織に定着しません。トップが本気で取り組む姿勢を示すことで、全社的な文化変革が始まります。経営層が担うべき役割は以下の通りです。
- 評価制度の見直し:成果だけでなく、挑戦のプロセスや相互支援も評価する仕組みを構築します。失敗を過度にペナルティ化せず、学びを重視する評価基準を設定することで、従業員が安心してリスクを取れる環境を整えます。
- 組織文化の言語化:「どのような組織を目指すのか」を明文化し、繰り返し発信します。ビジョンやバリューに心理的安全性を明記し、経営メッセージとして一貫して伝えることで、全社的な共通認識を形成します。
- 戦略の透明性(情報開示):経営方針や財務状況、事業課題をオープンに共有します。情報が限られた層にしか届かない組織では、従業員は不安を抱き、信頼関係が損なわれます。透明性の高いコミュニケーションは、心理的安全性の土台です。
- 福利厚生などの投資判断:従業員満足度や働きやすさの向上に努めることも大切です。福利厚生への投資判断などは、経営層だからこそできる取り組みです。
関連記事:心理的安全性の作り方は?6つの方法や企業のメリットを解説
管理職がすべきこと
心理的安全性は、管理職の日々の振る舞いで80%決まるともいわれています。現場でもっとも影響力を持つ存在として、以下の行動が求められます。
- 弱みを見せる(自己開示):完璧を装わず、自分の失敗談や不安を率直に話すことで、メンバーも本音を言いやすくなります。「自分も悩んでいる」「わからないことがある」と認める姿勢が、組織全体の心理的ハードルを下げます。
- 意見を引き出すスキル:会議で発言しないメンバーに対して、「○○さんはどう思いますか?」と問いかける、沈黙を責めずに考える時間を与える、といった配慮が必要です。一方的に話すのではなく、傾聴する姿勢を示すことで、メンバーの意見が引き出されます。
- 公平なフィードバック:特定の人だけを優遇したり、感情的に叱責したりすると、チーム内の信頼が崩れます。事実に基づき改善点を具体的に伝え、成長を支援する姿勢が重要です。
- 失敗を学びに変える姿勢:ミスが発生したとき、犯人探しをするのではなく、「なぜこのミスが起きたのか」「再発防止策は何か」を建設的に議論します。失敗を責める文化では、問題が隠蔽され、同じ過ちが繰り返されます。
メンバーがすべきこと
心理的安全性は、受け身で待っているだけでは生まれません。メンバー一人ひとりが主体的に関わることで、組織文化が形成されます。
- 助け合い:困っている同僚に声をかける、自分の知識やスキルを惜しみなく共有する、といった行動が、チーム全体の心理的安全性を高めます。「自分さえ良ければいい」という姿勢では、組織は強くなりません。
- 情報共有:自分が得た情報や気づきを、積極的にチームに還元します。情報の抱え込みは、組織のパフォーマンスを低下させます。
- 感謝・承認:同僚の貢献に対して「ありがとう」「助かりました」と伝えることで、ポジティブな関係性が築かれます。感謝の文化は、心理的安全性の重要な構成要素です。
- 相談・懸念の可視化:問題を抱え込まず、早めに相談することで、大きなトラブルを防げます。「こんなことで相談していいのか」と躊躇せず、小さな違和感を共有する勇気が、組織全体の利益につながります。
心理的安全性だけでは足りない?従業員満足度を高める施策
心理的安全性は従業員満足度を構成する重要な要素ですが、それだけでは不十分です。以下、総合的な従業員満足度を向上させるために効果的な3つの施策を紹介します。
柔軟な働き方を整備する
リモートワーク・フレックスタイム制・時短勤務など、多様な働き方の選択肢を提供することで、従業員のライフスタイルに合わせた就労が可能になります。
柔軟性のある制度は、育児や介護と仕事の両立を支援し、離職防止に直結する施策です。通勤時間が短くなることで従業員のウェルビーイングが向上し、生産性も高まる効果も期待できます。
また、求職者からの注目度が高くなることも、働き方の選択肢が多い組織が持つ大きなメリットのひとつです。ここで大切なのは、制度を整えるだけでなく、実際に利用しやすい風土を醸成することです。「制度はあるが使いづらい」という状態では、残念ながら意味がありません。
管理職が率先して制度を活用し、利用を推奨する姿勢を示すことで、組織全体に制度が浸透します。
評価制度の透明性と公平性を担保する
不透明な評価制度は、従業員の不信感を生み、モチベーション低下の要因となります。評価基準を明確にし、プロセスを可視化することで、納得感のある人事運用が実現します。
また、上司による一方的な評価だけでなく、360度評価やピアレビューを取り入れることも有効です。これにより、多面的な視点から公平性が担保されます。
評価面談では、過去の評価だけでなく、今後の成長支援やキャリアパスについても対話する時間を設けましょう。従業員が「自分の努力が正当に評価されている」と実感できる仕組みがあれば、エンゲージメントは大きく向上します。
透明性と公平性のある評価制度は、組織への信頼を育み、長期的な人材定着を促進します。
福利厚生の充実
福利厚生は、従業員の生活の質を向上させ、組織への帰属意識を高める重要な施策です。健康支援・学習機会の提供・多様な休暇制度・育児介護支援など、従業員のニーズに応じた多様なメニューを用意することが求められます。
特に近年は、ウェルビーイング向上や健康経営を目的とした施策への関心が高まっており、メンタルヘルスケアやフィットネス支援、食事補助といった健康関連の福利厚生が注目されています。従業員が心身ともに健康で、安心して働ける環境を整えることは、生産性向上や離職率低下を考える上でも欠かせません。
福利厚生の充実は、単なるコストではなく、人材への戦略的投資のひとつです。
3,000社以上が導入する食の福利厚生「チケットレストラン」
エデンレッドジャパンが提供する「チケットレストラン」は、企業と従業員との折半により、全国25万店舗を超える加盟店での食事を実質半額で利用できる、食事補助の福利厚生サービスです。
加盟店のジャンルは、コンビニ・ファミレス・三大牛丼チェーン店・カフェなど幅広く、利用する人の年代や嗜好を問いません。 Uber Eats を通じ、モスバーガーやスターバックスなどの人気ファストフードも利用可能です。
内勤の従業員はもちろんのこと、出張中やリモートワークの従業員も平等に利用できる柔軟性や、コスパの良さが高く評価され、すでに3,000社を超える企業に導入されている人気サービスです。
関連記事:【2025年最新】チケットレストランとは?採用・定着・健康経営を支える「食の福利厚生」
心理的安全性の作り方に関するよくある質問
ここでは、心理的安全性の作り方について多く寄せられる代表的な疑問とその回答をQ&A形式で紹介します。
Q1:心理的安全性を高めると「ぬるま湯組織」になりませんか?
A:なりません。心理的安全性と説明責任は両立します。
心理的安全性が高い組織では、率直なフィードバックや建設的な批判が活発に交わされます。問題を指摘しやすい環境があるからこそ、高い基準でパフォーマンスが求められます。重要なのは、心理的安全性と説明責任(アカウンタビリティ)を両立させることです。「安心して意見を言える」ことと「成果に対して責任を持つ」ことは矛盾しません。仲良しクラブではなく、信頼関係のもとで本質的な議論ができる組織を目指しましょう。
Q2:心理的安全性を高めるには、どのくらいの期間が必要ですか?
A:一概に言えませんが、数カ月から1年以上が目安です。
組織の規模や現状によって異なりますが、心理的安全性は日々の小さな行動の積み重ねによって醸成されます。経営層が方針を示し、管理職が率先して行動を変え、メンバーがその変化を信頼できるようになるまでには時間が必要です。大切なのは、短期的な成果を求めすぎず、継続的に取り組む姿勢です。定期的なサーベイで進捗を測定しながら、PDCAサイクルを回し続けることが成功の鍵となります。
Q3:リモートワーク環境でも心理的安全性は高められますか?
A:可能ですが、対面とは異なる工夫が必要です。
オンライン会議では、チャット機能の活用・少人数のブレイクアウトルーム設置など、発言しやすい雰囲気づくりが重要です。非公式なコミュニケーションの機会が減少するため、雑談の時間を意図的に設ける、1on1ミーティングを定期的に実施するといった施策も有効です。リモート環境だからこそ、意識的にコミュニケーションの質と量を確保する必要があります。
※ブレイクアウトルーム:Zoomなどのオンライン会議ツールで、参加者を小グループに分けて別々の部屋で話し合いができる機能
Q4:心理的安全性が高まると、具体的にどのような変化が現れますか?
A:発言量の増加・報告の迅速化・協力の活性化などが現れます。
まず見られるのが、会議での発言量が増え、多様な意見が出るようになるという変化です。次に、問題やミスの報告が早くなり、隠蔽が減少します。続いて、部署を超えた協力や情報共有が活発化し、新しい提案が現場から自発的に上がってきます。中長期的には、離職率の低下、従業員エンゲージメントの向上、生産性の改善といった定量的な成果として現れますが、これらの変化は一朝一夕には起こりません。継続的な取り組みが不可欠です。
組織が持続的に心理的安全性を維持するために必要なこと
心理的安全性は、一度構築すれば終わりではありません。定期的なエンゲージメント調査や心理的安全性の測定を実施し、継続的に改善サイクルを回すことが重要です。
また、「心理的安全性が高い=ぬるま湯組織」という誤解をあらかじめ解消し、説明責任と両立させる姿勢も必要です。
評価制度・組織文化・情報開示といった制度面の整備に加え、「チケットレストラン」のような従業員満足度の向上に効果的な福利厚生の充実まで、総合的に従業員体験を向上させることで、組織は真の競争力を獲得します。
組織の持続的な成長を支える経営基盤のひとつとして、心理的安全性づくりに取り組んでみてはいかがでしょうか。
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エデンレッドジャパンブログ編集部
福利厚生に関する情報を日々、ウォッチしながらお役に立ちそうなトピックで記事を制作しています。各メンバーの持ち寄ったトピックに対する思い入れが強く、編集会議が紛糾することも・・・今日も明日も書き続けます!
