監修者:舘野義和(税理士・1級ファイナンシャルプランニング技能士 舘野義和税理士事務所)
外国人労働者を雇用する企業にとって、税金処理は避けて通れない重要課題です。本記事では、外国人労働者の税金に関する基本ルールから、所得税・住民税の計算方法、優遇制度の活用法、未納リスクまでを網羅的に解説。人事・総務担当者が押さえるべきポイントを分かりやすくお伝えします。
外国人労働者の税金にまつわるよくある質問
外国人労働者の税金について、実務でよくある質問とその回答をQ&A形式でまとめました。
Q1. 外国人労働者は日本に来た初年度から住民税を支払う必要がありますか?
A. いいえ、来日1年目は原則として住民税は課税されません
住民税は1月1日時点で日本国内に住所がある人に課税され、前年の所得に基づいて計算されます。年の途中で来日した場合、初年度の1月1日時点では日本に住所がないため、住民税は発生しません。住民税の課税が始まるのは来日2年目の6月からです。
Q2. 租税条約の届出を忘れた場合、あとからでも免税・軽減を受けられますか?
A. はい、給与支払日から5年以内なら還付請求が可能です
「租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求書」を税務署に提出することで、納めすぎた所得税の還付を受けられます。ただし手続きが煩雑になるため、できる限り事前に「租税条約に関する届出書」を提出することを推奨します。
Q3. 住民税を滞納すると外国人労働者の在留資格に影響が出ますか?
A. はい、在留期間の更新や変更審査に悪影響を与える可能性があります
住民税の未納・滞納は、納税義務を果たしていないと判断され、更新申請が不許可になるリスクが高まります。企業側は特別徴収を確実に実施し、外国人労働者が滞納とならないよう徹底した管理とサポートを行いましょう。
Q4. 非居住者の外国人労働者も年末調整が必要ですか?
A. いいえ、非居住者の場合は年末調整不要です
非居住者は一律20.42%の税率で所得税が源泉分離課税されるため、年末調整は不要です。源泉徴収のみで課税関係が完結します。ただし、年の途中で居住者から非居住者(またはその逆)に変更になった場合は注意が必要です。
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Q5. 外国人労働者が退職・帰国する際、税金の手続きで注意すべき点は?
A. 1月〜5月の退職なら住民税の一括徴収が義務です
1月〜5月に退職・帰国する場合、残りの住民税全額を最後の給与または退職金から一括徴収する必要があります。また、出国後も日本国内に所得が発生する可能性がある場合は、納税管理人を選任して税務署に届け出る必要があります。
▼それぞれの詳細を次項より解説します。
外国人労働者の税金の基本ルール
外国人労働者の税金は、所得税法上の「居住者」「非居住者」の区分によって、課税範囲と税率が大きく異なります。この判定がすべての税務処理の起点となるため、雇用開始時に正確な判定を行うことが不可欠です。
居住者・非居住者の判定が税金を決める
所得税法では、国籍に関わらず、国内に「住所」がある、または現在まで引き続いて1年以上「居所」がある個人を「居住者」と定義します。居住者か非居住者かの判定は、日本人・外国人を問わず同一の基準で行われます。
それ以外の個人は「非居住者」です。実務上、在留資格の期間が1年以上であれば通常は居住者として扱われます。住所とは生活の本拠を指し、居所とは継続的に居住する場所を意味します。判定では、在留資格の種類、滞在予定期間、家族の有無などを総合的に考慮します。
▼外国人労働者への説明ポイント
日本では給与から税金が自動的に引かれる源泉徴収制度であることを事前に説明しておくと、給与明細を見たときの混乱を防げます。
居住形態によって課税範囲と税率が変わる
居住者は国内及び国外で生じた全世界の所得が課税対象となり、5〜45%の累進課税が適用されます。
ただし、居住者のうち「非永住者」(日本国籍がなく、過去10年以内に国内に住所等があった期間が合計5年以下の者)は、国内源泉所得と、国内で支払われた・送金された国外源泉所得のみが課税対象です。
一方、非居住者は国内源泉所得のみが課税対象で、一律20.42%(復興特別所得税を含む)の税率が適用されます。
▼重要な注意点
「永住権(在留資格)」と「税法上の永住者」は定義が異なります。税法上の永住者は「過去10年以内に国内に住所等があった期間が5年を超える人」を指し、在留資格の種類とは無関係です。永住ビザを持っていても来日5年以内であれば税法上は「非永住者」として扱われます。
外国人労働者が支払う税金は2種類
外国人労働者が日本で支払う税金は、所得税(国税)と住民税(地方税)の2種類です。
所得税は国に納める税金で、毎月の給与から源泉徴収され、年末調整で過不足が精算されます。住民税は都道府県・市区町村に納める税金で、前年(1月1日〜12月31日)の所得に基づいて計算され、翌年6月から1年間にわたり特別徴収(給与天引き)されます。
両者の最大の違いは課税のタイミングで、所得税は当年課税、住民税は翌年課税です。
外国人労働者の所得税の計算と源泉徴収
所得税の計算方法と源泉徴収の実務は、居住者と非居住者で大きく異なります。企業は雇用形態に応じた正確な源泉徴収を行う必要があります。
居住者の所得税は日本人と同じ累進課税
居住者の所得税は、給与所得の源泉徴収税額表に基づいて毎月の給与から源泉徴収されます。
年末には年末調整を行い、1年間の所得税額を精算します。税率は課税所得に応じて5〜45%の7段階の累進課税が適用され、所得が高いほど税率も上がります。
居住者が年末調整を受けるには「給与所得者の扶養控除等申告書」を雇用主に提出しなければなりません。この申告書により、扶養控除や配偶者控除などの所得控除が適用され、正しい所得税額が計算されます。
参考:国税庁|令和7年分 源泉徴収税額表
参考:国税庁|令和8年分 源泉徴収税額表
非居住者の所得税は一律20.42%で源泉分離課税
非居住者の所得税は、一律20.42%(所得税20%+復興特別所得税0.42%)の税率で源泉徴収されます。源泉分離課税方式のため、源泉徴収のみで課税関係が完結し、年末調整は不要です。
ただし、非居住者には給与所得控除が適用されず、また扶養控除等申告書を提出することもできません。このため、居住者と比較して税負担が重くなるケースが多くあります。
企業は非居住者の給与支払時に必ず20.42%を源泉徴収し、翌月10日までに税務署へ納付する義務があります。
参考:国税庁|No.2884 非居住者等に対する源泉徴収・源泉徴収の税率
短期滞在者免税制度(183日ルール)
租税条約に基づく短期滞在者免税制度では、一定の要件を満たす場合に所得税が免除されます。免税の3要件は以下のとおりです。
①滞在期間が183日以内
②給与が日本の居住者でない雇用者から支払われる
③報酬が日本国内の恒久的施設(支店・営業所等)で負担されない
海外本社から派遣された社員が日本支店で短期間働く場合などがこれに該当します。適用を受けるには「租税条約に関する届出書」を事前に税務署へ提出する必要があります。滞在日数は入国日と出国日の両方を含めて計算し、一時的な出国期間も滞在日数に含まれます。
参考:国税庁|短期滞在者免税の要件である滞在日数の計算
参考:国税庁|No.2888 租税条約に関する届出書の提出(源泉徴収関係)
外国人労働者の住民税で注意すべきポイント
住民税は、課税タイミングの特殊性から、外国人労働者との間でトラブルが発生しやすい税金です。ここでは、特に注意したいポイントを解説します。
住民税は来日2年目から課税される
住民税は、国籍に関わらず毎年1月1日時点で日本国内に住所がある人に対して、前年(1月1日〜12月31日)の所得に基づいて課税されます。
年の途中で来日した外国人労働者は、初年度の1月1日時点では日本に住所がないため、住民税は発生しません。これは日本人が海外から帰国した場合も同様で、来日もしくは帰国から2年目の6月から特別徴収(給与天引き)が開始されます。
税額は市区町村が計算し、企業に「特別徴収税額決定通知書」が送付されるため、企業側が税額を計算する必要はありません。通知書に記載された金額を毎月の給与から天引きし、翌月10日までに市区町村へ納付します。
▼外国人への説明ポイント
住民税は「後払い方式」であることを強調しましょう。2年目の6月から急に給与が減ったように感じる外国人が多いため、入社時に「来年の6月から前年分の税金が引かれる」ことを説明しておくとトラブルを防げます。
関連記事:令和6年外国人雇用実態調査で現状を把握。外国人材の雇用は増える?
退職・帰国時は住民税の一括徴収が必要
外国人労働者が退職・帰国する際、住民税の一括徴収が必要になる場合があるため注意が必要です。
例えば、1月〜5月に退職・出国する場合、企業は残りの住民税全額を一括徴収しなければなりません(本人の申し出は不要)。一方、6月〜12月に退職・出国する場合は、本人から申し出があった場合に一括徴収を行います。
一括徴収は最後の給与または退職金から控除しますが、一括徴収しない場合、本人が直接納税する普通徴収に切り替わります。帰国後の未納リスクに備え、可能な限り一括徴収を推奨しましょう。
一括徴収後は、徴収した税額を市区町村へ納付し、「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を提出します。
▼外国人への説明ポイント
帰国前に必ず住民税を精算する必要があることを、退職手続き開始時に明確に伝えましょう。
参考:江戸川区ホームページ|給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書
納税管理人の選任が必要なケース
出国後も日本国内に所得が発生する可能性がある場合、納税管理人を選任する必要があります。納税管理人とは、納税者に代わって確定申告や納税などの税務手続きを行う人のことです。
具体例としては、帰国後も日本国内の不動産収入がある、退職金が後日支払われる、未精算の給与があるなどのケースが該当します。
納税管理人は日本国内に住所または居所を有する個人または法人であれば誰でもよく、親族、知人、税理士などが一般的です。この場合、出国前に「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を所轄税務署に提出します。
納税管理人を選任しなかった場合、納税義務を果たせず、無申告加算税や延滞税が課されたり、将来再び日本で働こうとした際の在留資格審査に悪影響を及ぼしたりといったリスクがあります。
参考:国税庁|No.1923 海外勤務と納税管理人の選任又は解任
税金を軽減できる優遇制度の活用法
租税条約や扶養控除を適切に活用することで、外国人労働者の税負担を大きく軽減できます。詳しく見ていきましょう。
租税条約による免税・軽減措置
租税条約とは、二国間で締結される二重課税を防止するための条約です。日本は2025年12月1日時点で157か国・地域と租税条約を締結しており、条約の内容は国によって異なります。
免税や軽減措置を受けるには、「租税条約に関する届出書」を給与支払日の前日までに所轄税務署へ提出することが必須です。届出を忘れた場合でも、給与の支払いを受けた日から5年以内であれば「租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求書」を提出することで、納めすぎた所得税の還付を受けられます。
租税条約の適用により、教育機関や研究機関で働く教授・研究者、政府派遣職員、特定の職業訓練中の者などが免税または軽減税率の適用を受けられます。
参考:財務省|租税条約に関する資料
参考:国税庁|A3-11 租税条約に関する届出(教授等・留学生・事業等の修習者・交付金等の受領者の報酬・交付金等に対する所得税及び復興特別所得税の免除)
主要国の租税条約の具体例
日本が各国と締結している租税条約の内容は国によって異なります。外国人労働者の母国別の具体例は以下の通りです。
免税・軽減が受けられる国の例:
- インドネシア:技術研修生・実習生、年間60万円以下で免税
- フィリピン:職業訓練3年以内、年間1,500米ドル以下で免税
- 中国・ベトナム・タイ:各国で異なる免税・軽減要件あり
租税条約を締結していない国: ミャンマー・カンボジア・モンゴル・ラオスなど →免税措置は適用されず、原則通り源泉徴収が必要
【実務対応】
雇用する外国人の母国を確認し、財務省の租税条約リストで条約の有無と内容を必ず確認してください。
関連記事:【社労士監修】【2026年度版】外国人雇用に関する助成金・補助金一覧!自治体の支援も
扶養控除の要件
令和5年分(2023年分)から、国外居住親族に係る扶養控除の要件が厳格化されました。国外に居住する親族(外国人労働者の場合は母国の家族が該当します)のうち、30歳以上70歳未満の国外居住親族を扶養控除の対象とするには、以下のいずれかに該当する必要があります。
- 留学中
- 障害者
- 38万円以上の送金を受けている
必要書類:
- 親族関係書類(戸籍の附票の写し、パスポートの写しなど)
- 送金関係書類(送金明細、クレジットカード利用明細など)
※16歳以上30歳未満および70歳以上の親族は、従来通り書類提出のみで適用されます。
企業は外国人労働者に改正内容を説明し、必要書類の準備を促す必要があります。
税金未納のリスクと企業の対応策
税金の未納や処理ミスは、企業と外国人労働者の双方に深刻なリスクをもたらします。
企業のリスク: 企業は特別徴収義務者として、給与から所得税と住民税を源泉徴収し納付する義務があります。納付を怠ると延滞税・不納付加算税が課され、悪質な場合は刑事罰の対象となります。社会的信用の低下にもつながるため、源泉徴収の正確性を定期的に確認し、納付期限を厳守する体制が必要です。
外国人労働者のリスク: 住民税の未納・滞納は、在留期間の更新や永住許可の審査に悪影響を与えます。出入国在留管理庁は納税証明書の提出を求め、未納があると更新申請が不許可になるリスクが高まります。企業が特別徴収を確実に実施し、退職・帰国時の一括徴収を徹底することが、外国人労働者の定着につながります。
▼社会保険料は掛け捨てではない
帰国時には「脱退一時金」として年金保険料の一部が返還されます。入社時にこの点を説明しておくと、手取り額への不満を軽減でき、離職防止に効果的です。
参考:国税庁|No.2502 源泉徴収義務者とは
参考:日本年金機構|脱退一時金の制度
参考:出入国在留管理庁|在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン
参考:出入国在留管理庁|永住許可に関するガイドライン(令和7年10月30日改訂)
外国人労働者の税金処理を適切に行い、安心して働ける環境を
外国人労働者の税金処理では、居住者・非居住者の判定、住民税の課税タイミング、租税条約の活用、退職・帰国時の一括徴収など、日本人とは異なる注意点があります。税金の未納は在留資格の更新や変更に悪影響を与えるため、企業による適切なサポートが不可欠です。制度を正しく理解し、必要な手続きを確実に行うことが、外国人労働者の定着と安心につながります。
なお、外国人・日本人問わず従業員の定着促進には、従業員の生活を支える福利厚生の導入が有効です。例えば、エデンレッドジャパンが提供する食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」は、全国25万店舗以上の加盟店で実質半額で食事を買える便利さから、国籍はもちろん、幅広い年代・性別のユーザーから高評価を得ています。
かねてより外国人技能実習生や特定技能外国人を受け入れている日免オートシステム株式会社では、2023年より「チケットレストラン」を導入していますが、「外国人従業員からも評判が良い」との声が寄せられています。
▼日免オートシステム株式会社の詳細な導入事例は「こちら」
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税理士 / 1級ファイナンシャルプランニング技能士 舘野義和
宅配便配送員、自販機ベンディング作業、駅構内配送など)、コンサルティング会社・通販会社にて勤務を経て、税理士を目指し、今に至る。
1級FP や日商簿記1級、宅建資格も持ち、幅広い視野と知見でサポートしています。
