入社後ギャップとは、入社前に企業に抱いていた印象と、入社後の状況が大きく異なることです。入社前後の印象の違いは従業員の早期離職につながる可能性がありますし、人材不足や採用コストの増大にも影響を与えます。
企業が入社後ギャップを解消するには、どのような取り組みができるのでしょうか?AMBIが実施したユーザーアンケートで入社後ギャップの現状をチェックした上で、予防策や対策を見ていきましょう。
AMBIユーザーアンケート「入社後ギャップ調査」
エン・ジャパンの運営しているAMBIでは、39歳以下のユーザーを対象としたアンケートによる「入社後ギャップ調査」を実施しました。まずは同調査から分かる、入社後ギャップの現状について紹介します。
参考:エン・ジャパン|20代・30代のビジネスパーソン900人に聞いた「入社後ギャップ」調査『AMBI』ユーザーアンケート
入社後ギャップを経験した人は約9割
「入社後ギャップ調査」によると、入社後にギャップを感じた経験が「ある」と回答した人は87%でした。
入社前に思っていたよりも良かったギャップ・悪かったギャップについて聞いた質問への回答は以下の通りです。どちらも「職場の雰囲気」と「仕事内容」が上位にランクインしています。
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ギャップを感じたこと |
想定より良かったと回答した割合 |
想定より悪かったと回答した割合 |
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職場の雰囲気 |
40% |
39% |
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仕事内容 |
31% |
38% |
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勤務時間・休日休暇 |
25% |
24% |
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仕事量 |
24% |
35% |
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給与 |
23% |
32% |
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仕事から得られるやりがい |
21% |
28% |
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仕事から得られる成長機会 |
21% |
24% |
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研修や入社後フォロー |
18% |
30% |
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評価制度 |
16% |
34% |
|
企業の事業方針 |
15% |
20% |
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勤務地 |
12% |
9% |
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出社頻度 |
11% |
10% |
また入社後ギャップを感じたことがある人に、入社前に想定通りだったことについての質問では「勤務地」「給与」「勤務時間・休日休暇」など、募集要項で明確に示せる項目が上位になっています。
入社後ギャップで転職を考えた人は約7割
同調査で、入社後ギャップを理由に転職を考えた経験があるか聞いた質問の回答によると、67%が転職を考えたことがあるそうです。
実際に転職したことがある人は34%で、入社後ギャップを感じた人の3人に1人は転職していることが分かります。
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転職を考えたことがあるか |
回答した人の割合 |
|
転職したことがある |
34% |
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転職はしていないが転職活動はしたことがある |
33% |
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転職したことはない |
33% |
また入社後ギャップを理由として、転職を考えた人に、転職を考えるきっかけになったギャップについて聞くと「職場の雰囲気」と「仕事内容」が上位でした。
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ギャップを感じたこと |
転職を考える原因になったと回答した人の割合 |
|
職場の雰囲気 |
34% |
|
仕事内容 |
34% |
|
給与 |
33% |
|
仕事量 |
24% |
|
評価制度 |
23% |
|
仕事から得られる成長機会 |
21% |
|
仕事から得られるやりがい |
21% |
|
企業の事業方針 |
18% |
|
勤務時間・休日休暇 |
16% |
|
研修や入社後フォロー |
11% |
|
勤務地 |
6% |
|
出社頻度 |
4% |
ギャップを事前に防ぐのは難しい
入社後ギャップを感じたことがあると回答した人に、その入社後ギャップを事前に防げたと思うか質問したところ52%が「そう思わない」と回答しています。内訳は以下の通りです。
企業説明会で社内の雰囲気や仕事内容について聞いていても、実際の状況は部署ごとに異なることもあります。入社前にはそこまで調べるのは難しいこともあり、ギャップを防ぐのは難しいと感じる人が半数を超えていました。
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入社後ギャップは事前に防げたと思うか |
回答した人の割合 |
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防げたと思う |
8% |
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どちらかというと防げたと思う |
34% |
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どちらかというと防げたと思わない |
28% |
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防げたと思わない |
24% |
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防ぐべきギャップはなかった |
5% |
入社後ギャップにより起こること
入社後ギャップが発生すると、企業にはどのような影響が出るのでしょうか?
代表的な影響として、新卒者・転職者の早期離職や、人材不足で疲弊する従業員のモチベーション低下、不足する人材を補うための採用コスト増加、すぐに従業員が辞めてしまうことによる企業イメージの低下について見ていきましょう。
早期離職と若い世代の定着率低下
マイナビキャリアリサーチLabの「早期離職に繋がる入社後のギャップとは?-年代別の理由と企業の対策を紹介」によると、職場の雰囲気や仕事内容に関する入社後ギャップは、早期離職の理由として特に高い割合となっています。
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早期離職の理由 |
最も当てはまる理由として回答した割合 |
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職場の雰囲気が良くなかった |
24.1% |
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上司・同僚などとの職場の人間関係が合わなかった |
11.8% |
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上司・先輩から理不尽な指摘や指導があった |
9.0% |
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やりがいを感じられなかった |
8.5% |
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想定していた仕事内容ではなかった |
8.3% |
新卒者や転職者が早期離職すると、若い世代の定着率が低下します。次世代の育成が思うようにできず、世代交代が進みにくくなることも考えられる影響のひとつです。
関連記事:内定者の意識調査でわかる若手の本音|内定辞退・早期離職を防ぐ取り組みとは
参考:マイナビキャリアリサーチLab|早期離職に繋がる入社後のギャップとは?-年代別の理由と企業の対策を紹介
人材不足によるモチベーションの低下
入社後ギャップにより早期離職が発生すると人材不足に陥り、今いる従業員のモチベーション低下にもつながります。
次の人材が入社するまで、人材不足を今いる従業員で補わなければならないためです。業務の負担が大きくなることで、今いる従業員も転職を検討し始めるかもしれません。
また仕事を教えてもすぐに人材が辞めてしまう状況では、教育に多くの手間がかかるため、教育係を担当する従業員の負担が大きくなります。「自分の教え方が悪かったのではないか」と自責の念からストレスに感じる従業員もいるかもしれません。
関連記事:【2025年最新】企業を蝕む人材不足!データで見る現状と解消に向けた対策
人材確保を目的とした採用コストの増大
採用した人材が早期離職した場合、不足する人材を補うために追加で採用活動を行う必要があります。
就職みらい研究所の「就職白書2020」によると、新卒1人当たりの採用コストは約93万6,000円です。新卒者が早期離職すれば、100万円近いコストをかけて新たに人材を採用しなければいけません。
採用コストが増加すれば、経営面に影響を与えることも考えられます。
関連記事:中小企業の採用戦略|人手不足時代を乗り越える実践的アプローチ
企業イメージへの悪影響
入社後ギャップにより早期離職した元従業員が、SNSや口コミサイトなどへ投稿するケースもあります。職場の雰囲気や仕事内容などに入社後ギャップを感じて退職したという投稿を、就活生や求職者が見ると、企業イメージの悪化につながりかねません。
1度ついた悪いイメージを拭い去るのは難しいものです。今後の採用活動全体に悪影響を及ぼす恐れもあります。
企業ができる入社後ギャップを防ぐ方法
入社後ギャップの発生による影響を避けるには、新卒者や転職者が入社後の雰囲気を正確に把握しやすくなるよう必要な情報を開示したり、自社に合う人材かどうかを入社前に確認したりすることがポイントです。
それぞれの予防の仕方について紹介します。
関連記事:離職理由の調査で見えてきた「職場の課題」|企業が取るべき定着戦略とは
仕事内容に関する情報の開示
「入社後ギャップ調査」によると、仕事内容は入社後ギャップを感じる人の多いポイントです。「思っていた仕事と違った」という理由による離職を防止するには、現実的な仕事情報の事前開示(RJP)に取り組みましょう。
マイナビキャリアリサーチLabによると、RJPを意識的に行うことで、33.1%の企業が入社後の定着率アップにつながっていると回答しています。
他にも応募数が増えた企業は31.8%、面接数が増えた企業も30.9%で、およそ3社に1社で採用にもプラスに働いています。
RJPは、自社の仕事内容の良い面だけでなく悪い面も含めて伝えるのが特徴です。仕事に関する全ての情報を開示することで、就活生や求職者が自分に合う企業かどうかを正しく判断しやすくなります。
就活生や求職者が実際の職場の雰囲気を体感できるよう、選考のどこかのタイミングで、勤務時間内に職場見学を実施してもよいでしょう。
参考:マイナビキャリアリサーチLab|早期離職に繋がる入社後のギャップとは?-年代別の理由と企業の対策を紹介
求職者に関する情報の確認
求職者の情報を事前に確認することも、入社後ギャップを防ぐために役立ちます。求職者について客観的な情報を得るには、前職での勤務状況を関係者にヒアリングするリファレンスチェックを行うとよいでしょう。
業務への取り組みや人柄などを第三者の視点から知ることで、マッチングの精度を高められます。
マイナビキャリアリサーチLabで実際にリファレンスチェックを実施している企業に、何に効果があったかを質問したところ「ミスマッチによる早期離職防止」が23.9%と最多でした。
関連記事:【社労士監修】退職代行を防ぐには?業者を利用させない8つの対策
参考:マイナビキャリアリサーチLab|早期離職に繋がる入社後のギャップとは?-年代別の理由と企業の対策を紹介
企業ができる入社後ギャップへの対策
現実的な仕事情報の事前開示(RJP)やリファレンスチェックを実施しても、入社後ギャップは発生することがあります。入社後ギャップが発生したとしても、適切な対策の実施により早期離職を防止可能です。
ここでは入社後ギャップへの対策2種類をチェックしましょう。
仕事内容とキャリアの関連性について説明する
新卒者や転職者が仕事内容に入社後ギャップを感じているときには、仕事内容とキャリアについて説明するのが有効です。
入社前にイメージしていた仕事内容と違っていたとしても、目の前にある仕事がどのようにキャリアにつながっていくかがイメージできれば、成長ややりがいにつなげられます。
関連記事:新卒採用|インターンシップ・キャリア形成支援成功事例!最新状況や新定義も解説
職場への早期順応を促すオンボーディングを実施する
職場の雰囲気に入社後ギャップを感じている新卒者や転職者には、オンボーディングを実施して早期順応を促しましょう。HR総研の「若手社員の離職防止とオンボーディング」に関するアンケートでも、オンボーディングは若手社員の離職防止に役立つことが示されています。
例えばメンター制度を導入したり、段階的に業務を割り当てていったり、定期的なフィードバック面談を行ったり、研修を実施したりするとよいでしょう。
オンボーディングは社内全体で人材を育成する取り組みです。部署を超えて連携しフォロー体制を構築することで、コミュニケーションの活発化も期待できます。
関連記事:【2025年版】若手社員の離職防止に効く5つの即効施策|自社のリスクもチェック!
参考:ProFuture株式会社/HR総研|「若手社員の離職防止とオンボーディング」に関するアンケート
離職防止には職場環境改善も重要
従業員の離職防止に取り組むには、職場環境改善も欠かせません。給与アップや福利厚生の拡充、人事制度の整備などに取り組みましょう。それぞれの内容について解説します。
関連記事:働きやすさの指標と企業の改善施策|厚生労働省のデータをもとに徹底解説
給与アップ
離職防止に向けた施策に取り組むなら、給与アップを行いましょう。日本生産性本部の「生産性年次報告2023」の調査結果によると、若者の55.4%が「収入が多い」仕事を理想的な仕事だと回答しています。
また「2026年卒大学生就職意識調査」によると、企業選びのポイントとして「給料の良い会社」と回答している就活生の割合は25.2%と、前年の調査を上回りました。
他社と比べても十分な給与となるよう賃上げを行えば、早期離職を防いで離職率の低下につながりやすくなるでしょう。
関連記事:ベースアップと賃上げの違いとは?人件費戦略の基本をわかりやすく解説
参考:
日本生産性本部|生産性年次報告2023
マイナビキャリアリサーチLab|2026年卒大学生就職意識調査
福利厚生による待遇改善
福利厚生を活用した待遇改善も離職防止に役立ちます。従業員が求める福利厚生を拡充して、働きやすい環境整備に取り組みましょう。
エデンレッドジャパンが「第1の賃上げ」である定期昇給や「第2の賃上げ」であるベースアップに対して、実質的な手取りアップや家計の負担の軽減につながる福利厚生を活用した賃上げと定義した「第3の賃上げ」は、従業員の暮らしのサポートにつながります。
「第3の賃上げ」で従業員の実質的な手取りアップに取り組むときには、エデンレッドジャパンの提供している食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」がおすすめです。
全国にある25万店舗以上の加盟店で使えるため、勤務場所や休憩時間を取るタイミングに左右されることなく、対象の従業員が公平に利用できます。
例えば他の施策とあわせて「チケットレストラン」を導入したM’sファーマ株式会社では、薬剤師の離職率低下に「チケットレストラン」が大きく影響したと考えているそうです。
詳細な導入事例はこちら:M’sファーマ株式会社
関連記事:“福利厚生”で実質手取りアップと高いエンゲージメントの実現を「#第3の賃上げアクション」プロジェクト
公平公正な人事制度の整備
従業員の行った仕事を公平公正に評価する人事制度の整備も離職防止のポイントです。
例えば上司の機嫌取りをしている人ばかりが昇進していくような職場では「働き続けたい」と思う従業員は増えないでしょう。
成果を適切に評価するのはもちろん、成果に至るまでのプロセスも企業理念やビジョンに沿って評価する仕組みを取り入れることが重要です。
従業員が納得できる人事評価制度になるよう、制度の内容を整えることで、従業員の積極的な仕事への取り組みが期待できます。
人事評価制度を整備したら従業員にも周知しましょう。何がどのように評価されるのかを知ることで、従業員は企業が求める働きが何かを理解しやすくなるため、より評価されやすくなります。
仕事に対してやりがいを感じやすくなることで「働き続けたい」と考えるようになることも期待できるでしょう。
関連記事:【社労士監修】人事評価改善等助成コースとは?人手不足解消に向けて企業ができること
入社後ギャップには適切な予防と対策を
入社後ギャップは、職場の雰囲気や仕事内容に対して発生しやすいことがアンケート結果から分かりました。入社後ギャップによる早期離職を防ぐには、入社前の現実的な仕事情報の事前開示(RJP)やリファレンスチェックが重要です。
それでも入社後ギャップが生じたときには、仕事内容とキャリアについて説明することや、オンボーディングによる早期順応で対策していきましょう。
加えて職場環境の改善も従業員の離職防止につながります。給与アップや福利厚生の拡充、人事制度の整備が有効です。
福利厚生を活用して従業員の待遇改善に取り組むなら、エデンレッドジャパンの提供している食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」がおすすめです。従業員が日常的に利用可能な、食費をサポートする福利厚生の導入を検討してみませんか。
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エデンレッドジャパンブログ編集部
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