監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)
「改正貨物自動車運送事業法(改正トラック法)」とは、物流・運送業界の2024年問題や構造的な課題による人手不足などに対応するために施行・成立しました。具体的な改正点や、人手不足対策として他にできる取り組みについて見ていきましょう。
貨物自動車運送事業法の改正と2024年問題
2024年4月より、自動車運転業務における時間外労働の上限規制が開始されました。この規制適用から生じるさまざまな影響が、いわゆる2024年問題です。
時間外労働の上限規制が導入された後においても、従来と同等の稼働時間を確保しようとすれば、それまで以上に多くのドライバーを採用しなければなりません。「物流の2024年問題対応状況調査結果」を見ると、企業の62.3%が「ドライバーが不足している」状況にあることがわかります。
ドライバーの人材不足が深刻化すれば、従来と比較して輸送可能な荷物量の減少は避けられません。この輸送量の低下により、物流全体に支障をきたす懸念も指摘されています。
一方で、帝国データバンクが実施した調査によると、2024年4~7月期の輸送量は前年同期と比べて増加しています。このことから、輸送能力の急激な悪化は現時点では確認されていません。しかしながら、人材不足の状況が継続すれば、将来的に輸送力の大幅な低下が生じる可能性も否定できないでしょう。
こうした課題への対応と物流業界の持続的発展を目指して「改正貨物自動車運送事業法」が2025年4月から施行されました。
関連記事:【2024年問題】人材不足にどう対応する?想定されるリスクと対策
参考:
厚生労働省|時間外労働の上限規制|時間外労働の上限規制わかりやすい解説
全日本トラック協会|物流の2024年問題特設ページ|物流の2024年問題対応状況調査結果
帝国データバンク|物流の2024年問題の現在地、貨物輸送量はこれまでと同水準を維持!?
改正貨物自動車運送事業法の内容
物流・運送業界における構造的な問題を改善し、適切な運賃水準での事業運営を実現するため、改正貨物自動車運送事業法においてトラック事業者への規制的措置が設けられています。
全日本トラック協会の「全日本トラック協会作成 改正貨物自動車運送事業法 解説書」を参考に、義務化された具体的な措置について見ていきましょう。
また2025年6月にも「貨物自動車運送事業法」の改正案が成立しました。新たに成立した内容も紹介します。
関連記事:物流・運送業界が直面する「2024年問題」|要点と対策を解説!
参考:全日本トラック協会|貨物自動車運送事業法|全日本トラック協会作成 改正貨物自動車運送事業法 解説書
【2025年4月施行】運送契約締結時の書面交付が義務化
「貨物自動車運送事業法」の改正により、2025年4月から運送契約締結時の書面交付が義務化されました。交付書面には、運賃総額に加えて荷役作業料金、付帯業務料金、燃料サーチャージなどの追加コストを具体的に記載し、適正な運賃設定の判断を容易にします。
真荷主と元請けトラック事業者間では双方による書面交付が、元請けと下請けトラック事業者間では元請けによる書面交付が必要です。メール本文への記載も可能ですが、1年間の保存義務がある点に注意しましょう。
【2025年4月施行】健全化措置が努力義務化
下請け事業者への適正発注を促進するため、一般貨物自動車運送事業者同士の運送利用、特定貨物自動車運送事業者による一般貨物自動車運送事業者の運送利用、第一種貨物利用運送事業者(下請け構造内)による一般貨物自動車運送事業者の運送利用において、健全化措置が努力義務化されました。
具体的には、運送費用の概算額を把握した上での利用申し込み、荷主提示運賃が概算額を下回る場合の運賃交渉の申し出、委託先による利用運送時の再々委託制限などの条件設定が求められています。
【2025年4月施行】運送利用管理規程の作成・運送利用管理者の選任が義務化
前年度の利用運送量が100トン以上の事業者については、運送利用管理規定の作成が義務付けられています。この規定では、健全化措置を実施するための事業運営方針、健全化措置の具体的内容、健全化措置の管理体制、運送利用管理者の選任について明確化する必要があります。
併せて運送利用管理者の選任も義務化されました。運送利用管理者は、健全化措置を実施するための事業運営方針の策定や管理体制の構築、実運送体制管理簿の作成事務の監督といった役割を担います。
【2025年4月施行】実運送体制管理簿の作成と下請け情報の通知が義務化
物流・運送業界の多重下請け構造を可視化するために、元請け事業者には実運送体制管理簿の作成が義務付けられました。管理簿には「実運送の商号または名称」「実運送を行う貨物の内容や区間」「一次請け・二次請けなどの請負階層」を記載することとなっています。
また下請け事業者には、元請け事業者が実運送事業者情報を把握できるよう、情報の通知が義務付けられました。
【2025年4月施行】義務化された業務記録の対象拡大
荷待ち時間や荷役作業に関する記録義務については、従来は車両総重量8トン以上または最大積載量5トン以上の車両のみが対象でした。法改正により、全車両を対象とした業務記録の義務化が実施されています。
この改正は、トラックドライバーの長時間労働問題の解決に向けて、業務の実態を正確に把握するための取り組みです。
【2025年4月施行】改正貨物自動車運送事業法の軽トラック運送事業者への規制的措置
運送業の車両1万台あたりの死亡・重傷事故件数は減少傾向です。ただし軽トラック運送業では増加しています。
このような状況の改善に向けて、改正法では軽トラック事業者に以下を義務付けました。
- 貨物軽自動車安全管理者の選任・届出
- 貨物軽自動車安全管理者の講習の受講
- 初任運転者等への特別な指導及び適性診断の受診
- 業務の記録
- 事故の記録
- 国土交通大臣への事故報告
参考:
全日本トラック協会|貨物自動車運送事業法|全日本トラック協会作成 改正貨物自動車運送事業法 解説書
国土交通省|貨物軽自動車運送事業における安全規制について~令和6年に改正された新たな安全規制~
【2025年6月成立】改正貨物自動車運送事業法の内容
貨物自動車運送事業法については、2025年6月にも改正案が成立しています。この改正により、物流業界における荷主と運送事業者の双方に、新たな義務と責任が課せられることとなりました。
荷主側においては、発注先や再委託の状況を適切に把握し、契約内容や料金を書面で明示する義務が発生します。また、無許可の貨物自動車運送事業者(いわゆる白トラ)の使用に対する罰則リスクが高まるため、法令遵守に対する責任が一層強化されています。
運送事業者には、下請け構造の簡素化、契約の書面化、管理簿の整備が求められる内容です。さらに5年ごとの更新制とすることで、次回の更新を見据えた安全管理体制および法令遵守体制の強化が期待できます。
この改正により、ドライバーの適正賃金や処遇改善が制度的に裏付けられるのも特徴です。業界全体の待遇改善やイメージ向上にもつながるでしょう。
人手不足解消には福利厚生による待遇改善も
物流・運送業界の人手不足を解消するには、企業ごとの待遇改善も有効です。待遇改善には従業員満足度93%のエデンレッドジャパンの提供している食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」を活用するとよいでしょう。
全国にある25万店舗以上の加盟店で食事を購入できる「チケットレストラン」は、休憩時間のタイミングや勤務場所によらず利用できる自由度の高さが特徴です。
大手コンビニチェーンや牛丼チェーンなどで利用できるため、トラックドライバーにとって使い勝手のよい制度を導入できます。
物流・運送業界の企業である共進運輸株式会社や東海海運株式会社では、福利厚生の拡充の一環として「チケットレストラン」を導入したことで、ドライバーの満足度向上につながっているそうです。
「チケットレストラン」の詳細については、こちらの「資料請求」からお問い合わせください。
改正貨物自動車運送事業法の内容を把握して正しく実施を
「貨物自動車運送事業法」は、2025年4月から改正された内容が施行され、2025年6月には新たに改正案が成立しています。物流・運送業界の企業が、人手不足をはじめとする構造的な課題を解決していくには、この内容を把握して実施していかなければなりません。
加えて各企業では、ドライバーの待遇改善に取り組むとよいでしょう。例えばエデンレッドジャパンの提供している食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」は、休憩時間や勤務場所が勤務日によって異なることもあるドライバーにも利用しやすい制度です。
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