就職氷河期世代に対する支援が強化されることとなりました。具体的にどのような支援策が行われるのでしょうか?新たな支援プログラムの方向性について見ていきましょう。
支援プログラムには、就職氷河期世代の人材を採用する事業者向けの支援も含まれています。企業が活用できる制度についてもチェックしましょう。
経済財政運営と改革の基本方針に盛り込まれた就職氷河期世代への支援
2025年6月13日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2025(骨太の方針2025)」に、就職氷河期世代の支援について以下のように記載されました。
(就職氷河期世代等への支援)
「就職氷河期世代等支援に関する関係閣僚会議」で決定した基本的な枠組み192に基づき、リ・スキリング支援の充実等の「就労・処遇改善に向けた支援」、居場所づくり等の「社会参加に向けた段階的支援」及び家計改善・資産形成の支援等の「高齢期を見据えた支援」の3本柱に沿って、従前からの取組を強化する。
今後、詳細な実態や施策ニーズに関する調査を行うとともに、「就職氷河期世代支援の推進に向けた全国プラットフォーム」での検討を経て、2025年度内を目途に、KPIを含む新たな就職氷河期世代等支援プログラムをとりまとめ、その当事者、家族、支援関係者等への広報を強化する。
「経済財政運営と改革の基本方針」とは、今取り組むべき課題と、翌年度の予算編成に向けた方向性の方針のことです。就職氷河期世代への支援について記載されたということは、予算を確保して支援に取り組む姿勢であると分かります。
関連記事:経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)とは|提出された提言や要望も
就職氷河期世代の支援プログラムの3本柱
就職氷河期世代の支援は、これまで「就労・処遇改善に向けた支援」と「社会参加に向けた段階的支援」で行われてきました。今後はここに「高齢期を見据えた支援」を追加した3本柱で支援が強化される方向性です。
3本柱に含まれる支援プログラムについて、就職氷河期世代等支援に関する関係閣僚会議で決定した「新たな就職氷河期世代等支援プログラムの基本的な枠組みについて(各論)」を元に、それぞれ見ていきましょう。
参考:内閣官房|就職氷河期世代等支援に関する関係閣僚会議|新たな就職氷河期世代等支援プログラムの基本的な枠組みについて(各論)
関連記事:氷河期世代とは?見捨てたツケとしての現状と、ハローワーク等の支援
就労・処遇改善に向けた支援
就労・処遇改善に向けた支援は、以下の7種類に分類できます。
- 就労・処遇改善に向けた支援
- 相談対応等の伴走支援
- リスキリングの支援
- 就労を受け入れる事業者の支援
- 家族介護に直面する者の介護離職防止に向けた支援
- 公務員・教員としての採用拡大
- 業種別の就労支援
- 地方における就業等の支援
例えば「リスキリングの支援」では、教育訓練を受けやすくなるよう、雇用保険の被保険者に教育訓練休暇中の賃金の一部を支給する教育訓練休暇給付金が、2025年10月に創設されます。
また「就労を受け入れる事業者の支援」では、就職氷河期の人材を受け入れる企業が利用できる「トライアル雇用助成金」や「特定求職者雇用開発助成金」の拡充が2026年度から実施予定です。
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【社労士監修】2025年4月最新|賃上げ関連の助成金・補助金まとめ
社会参加に向けた段階的支援
氷河期世代には社会と適切なつながりを持てないまま、ひきこもりとなっている人もいます。社会参加に向けた段階的支援では、以下の3種類に分類した支援プログラムを通して、社会参加への道筋を作っていく内容です。
- 社会とのつながり確保の支援
- 就労に困難を抱える者の職業的自立に向けた支援
- 柔軟な就労機会の確保の支援
「社会とのつながり確保の支援」では、社会とのつながりを回復するためにひきこもり支援に取り組む自治体を拡大していく方針です。
「就労に困難を抱える者の職業的自立に向けた支援」では、職業的な自立に向けて専門家が心理的相談を行うネットワークを構築するモデル事業が、2025年度から本格的に開始されます。
また「柔軟な就労機会の確保の支援」では、就労機会を確保するために相談支援の強化の検討が2025年度から実施されます。
高齢期を見据えた支援
就職氷河期世代の人材の賃金上昇率は、他の世代と比べると緩やかです。金融資産の保有額が少ない世帯の割合が高く、持ち家率も低下していることから、以下の4種類に分類される高齢期を見据えた支援プログラムも提供されます。
- 家計改善・資産形成の支援
- 希望に応じた就業機会の確保
- 高齢期の所得保障
- 住宅確保の支援
「希望に応じた就業機会の確保」では、2026年度から70歳までの就業確保を行う場合の、65歳超雇用推進助成金の拡充が検討されています。
また「住宅確保の支援」として、2025年10月に改正住宅セーフティネット法の施行が決定済みです。同法律により、セーフティネット登録住宅の普及や、居住サポート住宅の創設・普及が行われます。
就職氷河期世代の人材を雇用する企業が活用できる助成金
就職氷河期世代の支援には就労支援も含まれており、企業が対象となる世代の人材を雇用すると、助成金を受け取れる可能性があります。人手不足の解消にも役立つ取り組みです。
ここでは就職氷河期世代の人材を雇用したり、正規雇用従業員へ転換したりすることで、利用できる助成金を見ていきましょう。
関連記事:【社労士監修】中小企業の人材育成に役立つ助成金や補助金は?助成金活用の注意点も
中見出し:人材開発支援助成金
人材開発支援助成金の人材育成支援コース内に設けられている有期実習型訓練は、非正規雇用の従業員を正規雇用の従業員へ転換したときに利用できる助成金です。就職氷河期世代の人材を正規雇用の従業員へ転換するときにも利用できます。
この経費助成率が、2025年度から75%に引き上げられました。加えて賃金や資格などの要件を満たすと、さらに25%上乗せされます。ひとり1訓練あたりの経費助成限度額は以下の通りです。
10時間以上100時間未満 |
100時間以上200時間未満 |
200時間以上 |
|
中小企業 |
15万円 |
30万円 |
50万円 |
大企業 |
10万円 |
20万円 |
30万円 |
また賃金助成額はひとり1時間あたり800円(中小企業以外は400円)、賃金や資格などの要件を満たしていると200円(中小企業以外は100円)が上乗せされます。
加えてOJT実施助成額は、ひとり1コースにつき10万円(中小企業以外は9万円)です。賃金や資格などの要件を満たしていると3万円が上乗せされます。
助成限度額は1事業所につき1年度に1,000万円です。
※助成金支給対象に該当するか否かのご相談については事業所がある自治体窓口までお問い合わせください
トライアル雇用助成金
トライアル雇用とは、職業経験が少なく就職がスムーズに進まない人材を、一定期間試行雇用したあと、無期雇用にする制度のことです。就職氷河期で安定した仕事に就けなかった人材を雇用する場合にも利用できます。
トライアル雇用助成金の一般トライアルコースで助成金を受け取れるのは、対象となる人材をハローワークの紹介で雇い入れ、原則として3カ月間のトライアル雇用を行う場合です。なお1週間の所定労働時間は通常の労働者と同じでなければいけません。
要件を満たしていると、雇い入れの日から最長で3カ月間にわたり、対象者ひとりにつき月4万円(母子家庭の母などか父子家庭の父は5万円)が支給されます。
トライアル雇用助成金は2026年度からの拡充が検討中です。
※助成金支給対象に該当するか否かのご相談については事業所がある自治体窓口までお問い合わせください
参考:厚生労働省|トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
特定求職者雇用開発助成金
特定求職者雇用開発助成金には就職氷河期世代安定雇用実現コースがあります。以下の要件を満たす人材を、ハローワークなどを通して正規雇用の従業員として新たに雇い入れる企業は、60万円(大企業は50万円)の助成金を受け取れる制度です。
- 1986年4月2日~1988年4月1日生まれ
- 雇い入れの前日から過去5年間に正社員として雇用された期間が通算で1年以下
- 雇い入れの前日から過去1年間に正社員として雇用されていない
- ハローワークなどの紹介の時点で、失業しているか、非正規雇用従業員などで安定した職業に就いていない
- 正規雇用従業員としての雇用を希望している
特定求職者雇用開発助成金は2026年度からの拡充が検討されています。
※助成金支給対象に該当するか否かのご相談については事業所がある自治体窓口までお問い合わせください
参考:厚生労働省|特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース)
65歳超雇用推進助成金
厚生労働省では就職氷河期世代を1993~2004年ごろに就職活動を行っていた世代と定義しています。この定義によると、就職氷河期世代には50代もおり、高齢期を迎え始める時期です。
65歳超雇用推進助成金では「65歳超継続雇用促進コース」「高年齢者評価制度等雇用管理改善コース」「高年齢者無期雇用転換コース」で、高年齢者の雇用をサポートしています。
また2026年度からは、希望に応じた70歳までの就業確保を行う場合の、助成金の拡充が検討されています。
※助成金支給対象に該当するか否かのご相談については事業所がある自治体窓口までお問い合わせください
就職氷河期世代の人材の雇用には助成金を活用可能
就職氷河期の支援は「経済財政運営と改革の基本方針2025」にも盛り込まれました。「就労・処遇改善に向けた支援」「社会参加に向けた段階的支援」「高齢期を見据えた支援」の3本柱で行われる支援です。
企業が就職氷河期世代の人材を新たに雇用したり、正規雇用の従業員にしたりすると、受け取れる助成金が複数用意されています。助成金を活用しつつ就職氷河期世代の人材を雇い入れることで、企業は人手不足を解消できるかもしれません。
人手不足の解消には、従業員の待遇改善も役立ちます。対象となる従業員に公平に支給できる食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」の導入も検討してみませんか。
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