経済財政運営と改革の基本方針とは、今取り組むべき課題と、翌年度の予算編成に向けた方向性の方針のことです。骨太の方針とも呼ばれています。2001年度に始まり、毎年6月に閣議決定している経済財政運営と改革の基本方針の概要と、2025年の閣議決定に向けて提出された提言や要望を見ていきましょう。
経済財政運営と改革の基本方針とは何か
経済財政運営と改革の基本方針は、内閣が経済運営や財政運営を行う際の指針です。毎年6月に閣議決定されると、示された方針に基づいて、各省庁は予算要求し、財務省は予算編成します。
また国が直面している、人口減少・少子高齢化・財政再建などの重要課題に対して、どのような姿勢で解決に向けて取り組むのか、といった点が盛り込まれるのも特徴です。
加えて、経済財政運営と改革の基本方針には、政府・行政・民間をつなぐ役割もあります。
経済財政運営と改革の基本方針と税制改正大綱の関係
重要課題について指針を示すのが、経済財政運営と改革の基本方針です。これに対して税制改正大綱は、経済財政運営と改革の基本方針を元に、翌年度以降の税制について具体的にまとめたものです。
税制改正大綱が閣議決定されると、その内容を元に財務省が国税の改正法案を、総務省が地方税の改正法案を作成して国会に提出します。国会で可決されると、改正法案は成立して施行されます。
関連記事:【税理士監修】令和7年度税制改正大綱をわかりやすく解説。103万円の壁や扶養控除は?
経済財政運営と改革の基本方針に基づいて改正された税制
例えば「経済財政運営と改革の基本方針 2023」では、以下のように賃上げについて言及しています。
中小企業等の賃上げの環境整備については、賃上げ税制や補助金等における賃上げ企業の優遇等の強化を行う。その際、赤字法人においても賃上げを促進するため、課題を整理した上で、税制を含めて更なる施策を検討する。
この方針に基づいて作成された「令和6年度税制改正の大綱」には、賃上げ促進税制の改正についての内容が盛り込まれました。
関連記事:【税理士監修】大企業向け賃上げ促進税制が強化!新しい賃上げ促進税制を経済産業省の資料で確認
2025年の経済財政運営と改革の基本方針に向けて提出された提言と要望
2025年の経済財政運営と改革の基本方針は、6月13日の閣議決定を目指す方針です。これに向けて、複数の団体から提言や要望が提出されています。それぞれの内容を見ていきましょう。
指定都市市長会の提言
20の政令指定都市の市長で構成されている指定都市市長会は、以下の6つの提案からなる提言を提出しました。
提案 |
内容 |
こどもまんなか社会の実現 |
こども・子育て政策の強化 |
自治体DXの推進 |
地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化 |
脱炭素社会の実現 |
脱炭素型ライフスタイルへの転換の促進 |
国民の生活及び安全・安心の確保 |
物価高への対応 |
多様な大都市制度の早期実現 |
地域の実情に応じた多様な大都市制度の早期実現 |
安定的な財政運営に必要な措置 |
地方一般財源総額の確保 |
参考:指定都市市長会|経済財政運営と改革の基本方針2025(仮称)に対する指定都市市長会提言
介護団体による介護従事者の処遇改善の要望
介護人材政策研究会は、介護従事者の処遇改善について、経済財政運営と改革の基本方針に明記するよう要望しました。
「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、医療・福祉施設で働く介護職員の給与と全産業の平均給与は月8万8,600円の差があります。訪問介護従事者や、ケアマネージャーの給与も、全産業平均と比べると以下のように低い水準にとどまっているのが現状です。
職種 |
きまって支給する現金給与額 |
全産業平均との差額 |
全産業平均 |
35万9,600円 |
ー |
介護職員(医療・福祉施設等) |
27万1,000円 |
8万8,600円 |
訪問介護従事者 |
28万5,800円 |
7万3,800円 |
介護支援専門員(ケアマネージャー) |
30万1,600円 |
5万8,000円 |
賃上げの動きが広がったことで、他の産業との賃金格差は前年よりも広がっています。介護人材確保・職場環境改善等事業による一時金の支給では、十分とはいえません。
物価高により施設の運営が難しくなっている中、他の産業の賃上げと物価高への対策を可能とする措置の明記を求める内容です。
参考:
介護人材政策研究会|参議院自民党政策審議会に出席、賃上げ・物価高対策の骨太方針への明記を要望
e-Stat|令和6年賃金構造基本統計調査|職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)
e-Stat|令和6年賃金構造基本統計調査|学歴、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額
関連記事:【2025年】介護職の賃上げ動向と今後の展望をチェック
食事補助上限枠緩和を促進する会による非課税限度額引き上げの要望
1,139の飲食店・食事補助利用企業・食事補助サービス事業者で構成されている「食事補助上限枠緩和を促進する会」(代表 株式会社エデンレッドジャパン)は、食事補助の所得税非課税上限の緩和について、要望書を提出しました。
食事補助は一定の利用条件下であれば所得税が非課税になります。ただしその上限額は1984年に定められた3,500円のまま変わっていません。
この間、物価高は進行しています。特に2022年ごろからの上昇は大きく、2020年を0とした消費者物価指数は以下の図のように右肩上がりです。
出典:総務省|2020年基準消費者物価指数|全国 2025年(令和7年)3月分及び2024年度(令和6年度)平均
また「ビジネスパーソンのランチ実態調査2024」によると、賃上げの動きが広がっているにもかかわらず、79.3%が「家計が苦しい」と感じており、3人に1人がランチ代を減らしています。
ランチを食べない選択をする人の割合も26.7%で、2023年調査の25.3%、2022年調査の23.7%より増えています。
このような状況の改善に加えて、政府の進める物価高対策・賃上げ施策・人材不足の解消・労働生産性の改善などが期待できることから、食事補助の非課税枠を現行の3,500円から6,000円以上に引き上げることを要望しました。
参考:
食事補助上限枠緩和を促進する会|物価高における企業の従業員に対する食事補助所得税非課税上限の緩和に向けた要望書
国税局|No.2594 食事を支給したとき
関連記事:
食事補助の上限枠緩和に向け、自民党小泉進次郎議員、古川康議員らに要望書を提出
歴史的賃上げでも…8割以上が「お小遣いが増えていない」!「ビジネスパーソンのランチ実態調査2024」
経済財政運営と改革の基本方針について押さえよう
経済財政運営と改革の基本方針とは、重要課題と予算編成の方針のことです。毎年6月に閣議決定される内容に基づいて、翌年度の具体的な予算案が作成されます。
2025年の経済財政運営と改革の基本方針に向けて、複数の団体が提言や要望を提出しています。
例えば「食事補助上限枠緩和を促進する会」は、食事補助の非課税上限枠を3,500円から6,000円以上に引き上げることを求めました。
実現すればエデンレッドジャパンの提供している食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」をはじめとする食事補助が、ますます使いやすくなるでしょう。
従業員の実質的な手取り額アップや、企業の人材確保にも役立つ食事補助について、この機会に検討してみてはいかがでしょうか。
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