日本経済新聞社がまとめた採用計画調査では、新卒採用で予定人数を確保できず、3割の企業が追加募集を実施する深刻な人手不足が発生しています。
本記事では、少子化により売り手市場となった採用環境において、人事担当者が検討したい実践的な対策を解説します。
新卒採用が難しい現状
新卒採用で人材確保が厳しいという企業が増えています。日本経済新聞の採用計画調査では、約3割の企業が当初の人数を採用できず、追加募集をしている状況です。この背景には内々定辞退率の上昇があり、同調査では約3割の企業が学生の辞退増加を報告しています。その結果、採用活動の長期化など別の課題が生じています。
出典:日本経済新聞|〈採用計画調査から〉追加募集 3割が実施 内々定辞退も追い打ち
関連記事:【26卒新卒採用市場】人手不足を解消する採用力強化と離職防止の方法
人手不足の主な原因3つ
人手が足りない現状の根本的な原因を見ていきます。
原因1.少子化
少子化により学生の絶対数が継続的に減少しており、新卒採用で必要な従業員数を確保することが年々困難になっています。この構造的な変化により企業間の人材獲得競争が激化し、政府が定める採用スケジュール(3月広報開始、6月選考開始)よりも早期から学生へのアプローチを行う企業が増加している状況です。
【政府の定める主な採用スケジュール】
- 広報活動開始 :卒業・修了年度に入る直前の3月1日以降
- 採用選考活動開始:卒業・修了年度の6月1日以降
- 正式な内定日 :卒業・修了年度の10月1日以降
出典:内閣官房|2026年(令和 8)年度卒業・修了予定者等の就職・採用活動に関する要請
原因2.2024年問題の影響
2024年4月から建設業や運輸業で残業時間の上限規制が適用開始となり、これまで長時間労働に依存していた業務運営の見直しが必要となりました。適正な労働時間内で同じ業務量を処理するため、該当する業界では大幅な人員増加を進めています。
結果として、建設業や運輸業での積極的な採用活動が労働市場全体の需給バランスに影響していると考えられます。
関連記事:物流の2024年問題をわかりやすく解説!深刻な3課題と対応策
原因3.学生の意識変化
学生には、働く環境の質や個人のライフスタイルを重視する傾向が見られます。
マイナビの2026年卒大学生就職意識調査によると、就職観として「楽しく働きたい」と回答した学生が37.4%で最多です。企業選択では「安定している」を重視する学生が51.9%に上る一方、「ノルマがきつそう」な企業を避けたい学生が38.2%、「転勤が多い」企業を避けたい学生が31.0%となっています。
楽しさや安定性を求める一方で、プレッシャーや不安定さを避ける傾向は、企業の採用戦略において重要な考慮事項となるでしょう。
出典:マイナビキャリアリサーチLab|2026年卒大学生就職意識調査
内々定辞退の増加が新卒採用に与える影響
人事担当者にとって最も頭の痛い問題の一つが、内々定辞退の増加です。せっかく時間をかけて選考し内々定を出しても、最終的に辞退されてしまうケースが増えています。
内々定辞退の背景
現在の売り手市場では、優秀な学生が複数の企業から内々定を獲得することが一般的となっています。また、追加募集などで就職活動期間が長期化しており、学生が最初に内々定をもらった企業よりも、より魅力的な企業を後から見つけるケースも増加しています。
初任給の引き上げ競争の影響も無視できません。三井住友銀行が初任給を30万円に引き上げ、大和証券が最大50万円の初任給を提示するなど、大手企業の初任給引き上げにより、学生の選択基準がより厳格になっています。
出典:日本経済新聞|三井住友銀行が初任給30万円、4.5万円上げ 他業種に対抗
出典:日本経済新聞|「新卒一律」やめ即戦力確保 大和証券、初任給50万円も
新卒採用で人手不足解消!5つの戦略
新卒人材を確保するために、企業ができるアプローチを見ていきましょう。
1.業務体験型インターンシップの実施
インターンシップは就活生が企業理解を深め、職場の雰囲気や仕事の魅力を体験できる機会です。学情の調査によると、2026年3月卒業予定の学生の45.7%が大学1・2年生からインターンシップに関心を持ち情報収集を始めており、早期からのアプローチが有効な採用戦略となっています。
特に業務体験型のインターンシップは学生の高い満足度が特徴です。実際の業務体験を通じて新たな業界への関心を高め、企業への理解を深めることで、その後の選考への参加意欲が向上し、志望度の高い候補者となることが期待されます。
2.採用サイトで他社と差別化
人手不足が深刻化する中、採用サイトの差別化は企業の生存戦略として重要性を増しています。マイナビの調査では8割以上の学生が就職情報サイトを主な情報収集源として利用しており、限られた学生を獲得するためには採用サイトでの訴求力向上が不可欠です。
出典:マイナビキャリアリサーチLab|SNS就活最前線!SNSを活用する企業について(第2章)
3.多様な採用手法の導入
従来の新卒一括採用だけでは、現在の人材不足に対応できません。以下のような多様な採用手法を組み合わせることで、採用成功率を高められます。
ジョブ型雇用
特定のスキルや専門性を持つ学生を対象とした職種別採用です。例えば、ITスキルを持つ学生を「システム開発職」として採用する、語学力のある学生を「海外営業職」として採用するなどが該当します。
職務内容と求められるスキルが明確なため、適切な報酬設定が可能であり、業務内容や報酬によるミスマッチが起きにくいです。
参考記事:ジョブ型人事制度とは?メリット・デメリット 40代への影響も解説
通年採用
春の一括採用だけでなく、年間を通じて採用活動を行う方法です。留学から帰国した学生や、就職活動の時期がずれた学生を獲得できるチャンスとなります。また、採用時期を分散することで、採用担当者の負担集中を避けられます。
リファラル採用
既存の従業員に知人や後輩を紹介してもらう採用方法です。履歴書では見えない人柄などの情報を把握できる手法で、企業と学生のミスマッチを防ぎ、定着率の向上が期待できます。
ダイレクトリクルーティング
企業が求める人材に直接アプローチする積極的な手法です。SNSや人材会社のデータベースを活用して潜在的な候補者を発掘します。受動的な求人では接触できない優秀な人材にもリーチできます。
4.採用プロセスの効率化
現代の採用活動では、担当者側のマンパワーが不足しており、デジタル技術の活用により採用活動の質向上と効率化が推奨されます。人手不足環境において、限られたリソースで最大の効果を得るための戦略的なアプローチとして以下の手法が有効です。
オンライン面接の活用
地方の学生や忙しい学生にとって、オンライン面接は非常に便利です。交通費や時間の負担を軽減できるため、より多くの学生に応募してもらえる可能性があります。一方で、最終面接など必要な局面では直接の対話も取り入れるなど、バランスが大切です。
AIの導入
選考にAIを導入すると、大量の応募者を効率的にスクリーニングでき、採用担当者の負担を軽減できます。現在、エントリーシート審査や初期面談にAIを活用する企業が増加しています。
AIを導入する際は補助的なツールとして活用し、AIの結果の確認および最終的な判断は必ず人間が行いましょう。
出典:人事の課題をAIで解決!メリット・事例・注意点【2025年最新版】
5.第二新卒採用・中途採用も検討
新卒採用だけでは人材が足りない場合、第二新卒や中途採用も有効な手段です。日本経済新聞社の採用計画調査によると、2025年度の中途採用比率は過去最高の46.8%に達しており、新卒だけでは人材確保が難しくなっている現状を表しています。
第二新卒・中途採用の最大のメリットは、すぐに働ける人材を確保できることです。基本的なビジネスマナーを身につけているため、研修時間を短縮でき、新卒採用で足りない人数をスピーディーに補えます。
出典:日本経済新聞|中途採用比率、最高の46.8% 計画15万人
魅力的な企業として選ばれるために:第3の賃上げで人材確保力を強化
企業の魅力を左右する要素の一つが福利厚生です。新卒採用では給与以外の付加価値も企業選びの重要な判断材料となります。
なかでも、Z世代の学生が重視する「福利厚生の充実ぶり」や「働きやすさの選択肢」に応える手法として、実質的な手取り増加効果をもたらす「第3の賃上げ(※)」が注目されています。
※「第3の賃上げ」とは、実質的に従業員の手取りを増やす効果があり、企業の税負担も抑えられる福利厚生サービスを活用した賃上げのことで、エデンレッドジャパンが提唱する福利厚生の活用法のひとつです。
第3の賃上げで注目「チケットレストラン」
株式会社エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、専用のICカード1枚で全国25万店舗で利用できる食の福利厚生サービスです。「第3の賃上げ」を代表する福利厚生サービスでもあり、従業員の手取り増加と企業の税負担軽減を同時に実現する還元策です。
導入企業数は2024年に2021年比で約7.3倍に伸長しており、人材確保と定着を目的として活用する企業が後を絶ちません。場所や時間を問わない柔軟な利用により、自分らしく働きたい学生のニーズに合致し、高い評価を獲得しています。
“福利厚生”で実質手取りアップと高いエンゲージメントの実現を「#第3の賃上げアクション」プロジェクト
関連記事:「チケットレストラン」の仕組みを分かりやすく解説!選ばれる理由も
学生に選ばれる企業になるために
新卒採用では、限られた学生を対象とした激しい獲得競争の現状を理解し、従来の手法にとらわれない柔軟な発想が成功につながります。
企業が学生に評価されるかどうかは、学生の視点で自社の魅力を客観的に見直し、その価値を効果的にアピールできるかにかかっているのです。
学生に働きたい企業として認識し、選択してもらうためには、入社後に「就職してよかった」と実感できる具体的なイメージがあると効果的です。実質的な待遇向上や日々の生活クオリティアップが目に見える福利厚生は重要な差別化要素となります。
食の福利厚生サービス「チケットレストラン」は、少額からの導入が可能でありながら、従業員と企業双方にメリットをもたらします。既存従業員にも平等に恩恵を提供できるため、組織全体のモチベーション向上と新規採用での魅力向上を同時に実現します。
当サイトにおけるニュース、データ及びその他の情報などのコンテンツは一般的な情報提供を目的にしており、特定のお客様のニーズへの対応もしくは特定のサービスの優遇的な措置を保証するものではありません。当コンテンツは信頼できると思われる情報に基づいて作成されておりますが、当社はその正確性、適時性、適切性または完全性を表明または保証するものではなく、お客様による当サイトのコンテンツの利用等に関して生じうるいかなる損害についても責任を負いません。