初任給を引き上げるメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?近年、社会的な後押しもあり、多くの企業が初任給の引き上げに取り組んでいます。これは短期的にはコストの増加ですが、長期的には企業に多くのメリットをもたらす施策です。本記事では、初任給の引き上げについて、得られるメリットと背景、学歴別・企業規模別・業界別の最新相場など、企業が知っておきたい情報を徹底解説しています。
初任給を引き上げることで企業が得られる4つのメリット
初任給の引き上げは、企業に多くのメリットをもたらす施策です。まずは、4つの具体的なメリットについて解説します。
優秀な人材を確保しやすくなる
初任給の高さは、就職活動中の学生にとって企業選びの重要な判断材料です。特に複数の内定を持つ優秀な学生は、給与面も含めた総合的な条件で入社先を決定します。どんな水準の初任給を提示できるかによって、採用市場での競争力が左右されるのが実情です。
伊藤忠商事の岡藤正広会長は、自社の初任給の引き上げに際し「学生さんは、僕の経験から言って、やっぱり初任給で(企業を)選びがち」と語りました。この発言からも、初任給が企業の魅力を一目で伝える重要な要素として機能していることがわかります。
参考:TBS NEWS DIG|【work23】“働き方のイマ”仕事とプライベートのバランスは?「最初は仕事に100%」新年度各地で入社式 新社会人の本音は?現役世代の現実は?【news23】
早期離職を予防できる
初任給の引き上げには、早期離職を予防する効果も期待できます。
厚生労働省の調査によると、大学卒の新卒者のうち、3年以内に離職する割合は34.9%にのぼります。これは、実に3人に1人以上が早期離職をしている計算です。従業員の早期離職は、企業に「採用費や教育研修費の増加」「残された従業員の負担の増加」「人材の回転が早い職場という悪評」などの多くのデメリットをもたらします。
一方で、初任給の水準が高い企業では、低い企業に比べて従業員の企業に対する愛着や貢献意欲・帰属意識が高まるのが一般的です。
また「転職をしてもこれ以上の給与はもらえないだろう」との意識も働くことから、高水準の初任給は離職の強力な抑止力となります。結果として、貴重な若手人材の流出を防ぎ、長期的な人材育成基盤の強化につながるのです。
企業ブランド力・イメージ向上につながる
初任給の引き上げは、対外的な企業イメージにもポジティブな影響を与えます。採用サイトやプレスリリースなどを通じ、高水準の初任給を打ち出すことで、「従業員を大切にする企業」「経営が安定している会社」というブランドイメージをつくることができるからです。
また、初任給の引き上げはメディアでも取り上げられやすいトピックのため、企業名と共に報じられることで認知度向上にも貢献します。就職活動中の学生や転職希望者の目にも留まりやすく、次年度以降の採用活動にもプラスの効果をもたらします。
さらに、適切な待遇を提供する企業という評判は、取引先や顧客からの信頼度アップにも効果的です。初任給引き上げによる企業ブランド価値の向上は、ビジネス全体にプラスの波及効果をもたらすのです。
従業員のモチベーション・パフォーマンスが向上する
初任給の引き上げは、新入社員だけでなく、既存の従業員にも良い影響を与えます。
多くの企業では、初任給を引き上げる際に、若手社員全体の給与水準も見直すことが一般的です。これにより、組織全体のモチベーションや士気が高まります。
モチベーションの高い従業員は、パフォーマンスも向上します。従業員一人ひとりのパフォーマンスが向上することにより、組織としての生産性も向上し、結果として業績の向上も期待できるでしょう。
初任給の引き上げが注目される背景
初任給の引き上げは、なぜ今、多くの企業が検討すべき課題となっているのでしょうか。ここでは、初任給の引き上げが注目される背景について解説します。
賃上げ機運の高まり
企業が新卒初任給を引き上げる背景には、まず社会全体の経済環境の変化があります。特に近年は、食品・光熱費・生活用品などの価格上昇が続いており、実質的な生活コストが増大しています。このような状況下で、従来の給与水準のままでは、従業員の生活基盤が不安定になりかねません。
加えて、政府や経団連、労働組合などが春闘において継続的なベースアップ(ベア)を要請していることもあり、社会全体として「賃上げ」を求めるムードが高まっています。
帝国データバンクの調査によると、2025年度に賃上げを見込む企業は、初の6割台となる61.9%に達しました。社会全体の賃上げ傾向は、今後も続いていくものと予想されています。
参考:株式会社 帝国データバンク[TDB]|2025年度の賃金動向に関する企業の意識調査(2025年2月20日)
採用競争の激化
賃上げ機運の高まりに加え、初任給引き上げの大きな要因になっているのが、採用競争の激化です。
深刻化する少子化の影響により、優秀な人材の確保は年々難しくなっています。売り手市場といわれる求職者優位の状況において、他社との差別化を図るには、初任給の引き上げのような「自社ならではのわかりやすい魅力」が欠かせません。
近年、外資系企業やメガベンチャーのように、採用時点から高年収を提示する企業も増加傾向です。給与水準の見直しは、あらゆる企業にとって急務となっているのです。
他社はいくら払ってる?【学歴別・企業規模別・産業別】
初任給の引き上げを検討するにあたり、まず知っておきたいのが、世間の初任給の水準です。ここでは、「令和6年賃金構造基本統計調査」をもとに、学歴別・企業規模別・産業別の初任給の平均を紹介します。
学歴別初任給の相場
高校 | 高専・短大 | 大学 | 大学院 | |
男性 | 200,500円 | 231,000円 | 251,300円 | 290,200円 |
女性 | 191,700円 | 221,100円 | 244,900円 | 278,100円 |
男女計 | 197,500円 | 223,900円 | 248,300円 | 287,400円 |
学歴による初任給の差は、依然として明確に存在しています。高校卒と大学院卒では約9万円の差があり、学歴が上がるにつれて初任給も上昇する傾向にあります。
また、すべての学歴区分において男女間の差が見られ、男性の方が多く支給される傾向にあることも特徴的です。
企業規模別初任給の相場
企業規模 | 初任給(大卒) |
10〜99人 | 236,000円 |
100〜999人 | 241,800円 |
1,000人以上 | 258,100円 |
企業規模計(10人以上) | 248,300円 |
初任給の水準は、企業規模によっても異なります。1,000人以上の大企業と、10〜99人の中小企業では、約2.2万円の差があることがわかります。企業規模が大きくなるほど初任給も高くなるのが一般的です。
この結果からは、中小企業が大企業と同水準の初任給を提示することの難しさがわかります。
産業別初任給の相場
産業 | 初任給 | |
鉱業,採石業,砂利採取業 | 322,900円 | |
建設業 | 244,100円 | |
製造業 | 245,700円 | |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 240,700円 | |
情報通信業 | 246,400円 | |
運輸業,郵便業 | 234,000円 | |
卸売業,小売業 | 247,700円 | |
金融業,保険業 | 246,600円 | |
不動産業,物品賃貸業 | 261,100円 | |
学術研究,専門・技術サービス業 | 259,200円 | |
宿泊業,飲食サービス業 | 237,400円 | |
生活関連サービス業,娯楽業 | 238,000円 | |
教育,学習支援業 | 237,200円 | |
医療,福祉 | 261,700円 | |
複合サービス事業 | 219,400円 | |
サービス業(他に分類されないもの) | 228,800円 | |
産業計 | 248,300円 |
初任給は、産業によっても大きく異なります。令和6年賃金構造基本統計調査によると、もっとも初任給が高いのは「鉱業,採石業,砂利採取業」で32万円を超え、もっとも低い「複合サービス事業」との差は約10万円にもなります。
自社の初任給を検討する際は、同じ産業内での相場を特に意識することが重要です。業界内で競争力のある初任給を設定することで、優秀な人材確保のチャンスが高まります。
福利厚生という選択肢も
初任給の引き上げが理想的であっても、企業の財務状況や事業環境によっては、直ちに実施することが難しい場合もあるでしょう。そのような企業にとって、福利厚生の充実は初任給引き上げの代替策として有効な選択肢となります。
従業員にとっての「実質的な待遇」は、基本給だけでなく、さまざまな福利厚生も含めた総合的なものです。中でも食事補助や住宅手当・家事代行サービス利用補助のような日常に密着した福利厚生は、従業員へのアピール度も高く、エンゲージメントの向上に大きく貢献します。
たとえば、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」は、全国25万店舗以上の加盟店での食事を実質半額で利用できる、食の福利厚生サービスです。加盟店の種類は、有名ファミレスやカフェ・コンビニなど多種多様で、勤務時間内にとる飲食物の購入であれば、時間や場所の制限もありません。
企業規模や業種を問わず導入しやすい福利厚生として、すでに3,000社を超える企業に導入される人気サービスとなっています。
関連記事:チケットレストランにデメリットはある?導入前の不安を徹底解消
初任給の引き上げで魅力ある企業へ
初任給の引き上げは、長期的な視点で見ると企業の成長への投資です。優秀な人材の確保・早期離職率の低下・ブランド力の向上というメリットは、深刻化する人手不足の中で企業の競争力を高める重要な要素となります。
中には、企業の資金力などの問題で初任給の引き上げが難しいケースもありますが「チケットレストラン」のような福利厚生サービスを通じ、従業員を支える施策に取り組むことで、実質的な待遇向上を目指せます。
自社に合った方法を検討し、多くの魅力的な人材に選ばれる企業を目指してはいかがでしょうか。
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