監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)
「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」は、外国人労働者の職場定着に取り組む事業主に対し、その費用を助成する制度です。本記事では、制度の概要・支給条件・申請方法など、「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」について知っておきたい情報を分かりやすく解説しています。すでに外国人労働者を雇用している企業はもちろんのこと、今後の雇用を検討する企業も必見の内容です。
「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」とは?
「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」とは、どのような助成金制度なのでしょうか。まずは、その概要や受給要件・対象となる経費・受給額など、基本となる情報から整理していきましょう。
参考:厚生労働省|人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
参考:厚生労働省|人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)ガイドブック
「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」の概要
「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」は、企業が外国人労働者を受け入れる際、適切な就労環境を整備するための支援を目的とした制度です。外国人材の定着促進と雇用の安定を図る取り組みに対し、厚生労働省が助成金を支給します。
外国人労働者は、日本の働き方のルールや職場の慣習に関する知識不足や言語の壁などから、労働条件や解雇に関するトラブルが発生しやすい傾向にあります。この助成金は、こうした特有の事情に配慮した就労環境の整備を行う事業主を支援し、その経費の一部を補助するものです。
この制度の背景には、少子高齢化による労働力不足があります。政府は、外国人労働者の活躍を通じ、多様な人材が活躍できる社会の実現を目指しています。
関連記事:【社労士監修】人材確保等支援助成金とは?コースごとの詳細まとめ
対象となる事業主
外国人労働者の就労環境整備を支援する本助成金は、適切な雇用管理を行う事業主を対象としています。助成金の受給を受けるには、以下の10個の要件をすべて満たさなければなりません。
要件 | |
---|---|
1 | 雇用保険の適用事業の事業主であること |
2 | 外国人雇用状況届出を適正に届け出ていること |
3 | 認定された就労環境整備計画に基づき、その期間内に必須の整備措置と選択的整備措置を新たに導入・実施すること |
4 | 過去に本助成金を受給している場合、最後の支給決定日から3年以上経過していること |
5 | 基準期間に、離職区分1A又は3Aにあたる特定受給資格者として受給資格の決定がなされた者の数が、計画提出日における被保険者数の6%を超えていないこと |
6 |
計画期間の初日の6か月前から計画期間末日までの期間に、事業主都合での解雇等をしていないこと |
7 |
外国人労働者離職率が10%以下であること *外国人労働者数規模により追加要件あり |
8 | 日本人労働者の評価時離職率が計画時離職率を上回っていないこと |
9 | 社会保険の適用事業所であること(該当する場合) |
10 | 賃金要件を満たす場合の支給額加算を希望する場合は、賃金要件を満たしていること |
受給要件
本助成金の受給要件には、以下の表で示すように計画の作成から実施、効果測定まで複数の要件が定められています。
要件区分 | 内容 |
---|---|
計画作成・認定 | ・計画期間:3か月以上1年以内 ・提出期限:計画開始日の6カ月前〜1カ月前まで |
必須の整備措置 | ・雇用労務責任者の選任 ・就業規則等の社内規程の多言語化 |
選択制の整備措置 (1つ以上必須) |
・苦情・相談体制の整備 ・一時帰国のための休暇制度の整備 ・社内マニュアル・標識類等の多言語化 |
離職率要件 | ・外国人労働者の離職率10%以下 *人数規模により追加要件あり ・日本人労働者の離職率が計画時より上昇していないこと |
これらの要件は、外国人労働者が安心して働ける職場環境の整備と、その効果の測定までを一貫して求めるものです。特に、コミュニケーション面での整備を重視しており、多言語対応や相談体制の充実を図ることで、働きやすい職場づくりを促進します。
受給額
本助成金は、事業主の取り組み内容に応じて支給額が変動する仕組みとなっています。特に、賃金面での処遇改善に取り組む事業主には、より手厚い支援が用意されています。
区分 | 支給率 | 上限額 | 条件 |
---|---|---|---|
基本支給額 | 支給対象経費の1/2 | 57万円 | ー |
賃金要件達成時 | 支給対象経費の2/3 | 72万円 | 整備措置実施後1年以内に賃金を5%以上増加 |
この二段階の支給体系により、外国人労働者の処遇改善を伴う環境整備を促進する設計となっています。賃金要件を達成することで、より多くの助成を受けることができるため、賃金面での処遇改善にもつながりやすい仕組みです。
受給対象となる経費
本助成金で対象となる経費は、外国人労働者の就労環境整備に直接関連する費用に限定されています。いずれも外部機関への委託や購入が前提です。
- 通訳費(外部委託のみ)
- 翻訳機器導入費(上限10万円)
- 翻訳料(外部委託のみ)
- 弁護士、社会保険労務士等への委託料
- 社内標識類の設置・改修費(外部委託の多言語標識のみ)
これらの経費は、社会通念上適正な金額である必要があり、計画提出時には見積書の提出が求められます。また、支給申請時には領収書等での支払い証明も必要です。
このように、本助成金は、外国人労働者の就労環境整備に必要な実務的な経費を幅広くカバーしながらも、適正な執行を行うための仕組みが整えられています。
申請手順と必要書類をわかりやすく解説
この助成金の申請には、計画の作成から支給決定まで複数のステップがあります。スムーズな申請のために、各段階での必要な準備と注意点を解説していきましょう。
参考:厚生労働省|人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)ガイドブック
申請フローの全体像
「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」の申請から支給までは、以下の流れで進みます。
ステップ | 時期 | 実施内容 |
---|---|---|
1. 計画書作成・提出 | 計画開始6カ月前〜1カ前 | 就労環境整備計画を作成し、管轄の労働局等へ提出 ※電子申請システムでの手続きも可能 |
2. 整備措置の導入 | 計画期間内 | 認定を受けた計画に基づき就労環境整備措置を新たに導入 |
3. 整備措置の実施 | 計画期間内 | 導入した就労環境整備措置を計画通りに実施 |
4. 支給申請 | 算定期間終了後2カ月以内 | ・計画期間終了後12カ月間の算定期間終了後、2カ月以内に申請 ・本社の所在地を管轄する労働局等へ申請 ※電子申請システムでの手続きも可能 |
なお、申請書類は管轄の労働局のほか、ハローワークでも提出できる場合があります。
「就労環境整備計画」作成のポイント
就労環境整備計画は3カ月以上1年以内の期間で作成し、以下の書類を添えて提出します。
■必要な添付書類
- 就労環境整備計画書(様式第a-1号)
- 導入する就労環境整備措置に応じた概要票
- 事業所における外国人労働者名簿(様式第a-1号 別紙3)
- 「見積額」算定書(様式第a-1号 別紙4)
- 外部機関や専門家作成の見積書(1社で可)
- 事業所確認票(様式第a-2号)
- 多言語化する予定のすべての就業規則等の社内規程
- 就労環境整備措置を導入するにあたり変更する予定の労働協約又は就業規則の案
- 多言語化する予定の社内マニュアル・標識類等
- 事業所における計画時離職率算定期間の雇用保険一般被保険者である日本人労働者の離職理由等が分かる書類
- 社会保険の適用事業所であることが分かる書類(該当する場合)
- 就業規則等の社内規程の多言語化が不要となる外国人労働者に係る申立書(該当する場合)
- その他管轄労働局長が必要と認める書類
■提出時の注意点
- 計画期間:3カ月以上1年以内
- 提出期限:計画開始日の6カ月前〜1カ月前まで
- 提出先:本社所在地の労働局またはハローワーク
計画認定後は、実施状況を証明する書類の保管が重要です。支給申請時の証拠書類として必要となります。
外国人材の定着を促進する福利厚生
外国人労働者の定着には、職場環境の整備に加え、充実した福利厚生も有効です。ここでは、その理由とともに、近年特に注目度を高めている福利厚生サービスについて紹介します。
外国人労働者の定着に福利厚生が有効な理由
外国人労働者にとって、日本での生活はさまざまな面で課題があります。業務内容そのものに問題はなくとも、環境に適応できず離職する外国人労働者は決して少なくありません。
そんな外国人労働者にとって、食事や住居などの生活基盤に関する支援は、安定した就労継続の重要な要素です。
助成金に関連した就労環境整備と効果的な福利厚生を組み合わせることで、より手厚い支援体制を整えることができます。こうした包括的な支援は、外国人材の定着率向上に大きく貢献します。
食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」
数ある福利厚生の中でも、近年特に人気を集めているサービスに、エデンレッドジャパンが提供する食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」があります。
「チケットレストラン」は、一定の条件下で利用することにより、全国25万店以上の加盟店での食事が半額になる食事補助の福利厚生サービスです。
コンビニやファミレス・カフェなど選択肢が幅広く、どんな食文化を持つ従業員も公平に利用できます。多様な文化的背景を持つ外国人労働者を雇用する企業にとって、非常に魅力的なサービスです。
導入事例:外国人スタッフにもチケットレストランを支給している企業のご紹介:日免オートシステム株式会社
参考記事:チケットレストランの加盟店は全国25万店舗以上!使えるお店を確認
参考記事:人手不足対策に外国人労働者を!受け入れメリット・デメリット 成功事例も紹介
人材不足時代の戦略的な外国人材活用へ
「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」は、外国人材の安定的な雇用と職場定着を支援する重要な制度です。この助成金を活用することで、政府からの助成を受けながら、多言語対応や相談体制の整備など、外国人労働者特有の課題に対応した職場環境の整備が可能となります。
さらに、食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」のような福利厚生と組み合わせることで、就労環境と生活面の両面からの支援体制を構築できます。企業の経済的負担を軽減しながら、外国人材の定着促進を実現する効果的な支援策「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」の活用を検討されてはいかがでしょうか。
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