物価高騰が続く中、日本の働き方は大きく変化しています。共働き世帯の割合は約7割に達し、もはや標準的な家庭の形となった今、企業の人事担当者には新たな課題が生まれています。
家計負担の重さから「生活が苦しい」と感じる共働き世帯が半数近くに上る中、従業員支援策はどうあるべきでしょうか。最新データとともに、企業が取り組むべき具体的な対策を解説します。
共働き世帯の割合は約7割
総務省の「労働力調査(詳細集計)」(2025年2月14日公表)によると、共働き世帯は年々増加しています。2024年時点で共働き世帯は1,300万世帯となり、前年の1,278万世帯から22万世帯増加しています。専業主婦世帯は508万世帯で共働き世帯の約2.5分の1という状況です。前年の517万世帯から9万世帯減少しました。共働き世帯は増加傾向、逆に専業主婦世帯は減少傾向です。
出典:総務省統計局|労働力調査(詳細集計) 2024年(令和6年)平均結果
共働き世帯の推移
出典:厚生労働省|令和5年厚生労働白書 図表1-1-3 共働き等世帯数の年次推移
上記は令和5年厚生労働白書の「共働き等世帯数の年次推移」のグラフで、共働きの割合の推移が明白です。以下にポイントを整理します。
- 1980年:614万世帯
- 1997年:専業主婦世帯を上回る転換点
- 2022年:1,262万世帯(約2倍に増加)
- 2024年:71.9%(夫婦世帯の約7割)
推移のグラフと数字が示すのは、日本社会における働き方の根本的な変化です。共働きは特殊なケースではなく、標準的な家庭の形となっています。
正社員同士の共働きが主流
さらに注目すべきは、共働きの質的変化です。マイナビの調査(※)によると、共働き世帯の85.8%が「正社員と正社員」の組み合わせとなっています。
※正社員20~59歳の男女を対象に実施した「共働き世帯の正社員に聞いた 仕事・私生活の意識調査2025年(2024年実績)」
出典:マイナビ|【共働き世帯の正社員に聞いた】仕事・私生活の意識調査2025年(2024年実績)
共働き世帯の年収
続いて、共働き世帯の年収について説明します。
共働き正社員世帯の平均世帯年収
マイナビの調査によると、共働き正社員世帯の経済状況について、理想とギャップがあることが明らかになっています。
共働き正社員の世帯年収の現状
- 平均世帯年収:806.4万円
- 理想の世帯年収:1,126.3万円
- 理想とのギャップ:319.9万円
共働き世帯で収入があっても、理想との差(319.9万円)があるのが実態です。
家計の厳しさを感じる共働き世帯が約半数
さらに、共働き正社員でも半数近くが収入不足感があることもわかりました。同じくマイナビの調査によると、共働き正社員世帯の46.0%が「家計が苦しい」と感じています。
家計が苦しいと回答した共働き正社員世帯の平均年収は716.7万円で、苦しいと思わない世帯(887万円)との間には170.4万円もの差があります。
家計圧迫の要因
ではなぜ716.7万円の世帯収入では、家計のやりくりが厳しいのでしょうか。理由としては、物価高騰、住宅ローンや教育費などの固定支出等が挙げられます。
- 物価高騰の継続的影響
- 住宅ローンや教育費の重い負担
- 老後資金への不安増大
- 共働きによる支出増加(保育料、外食費など)
また、奨学金の返済による負荷も家計圧迫要因の一つです。共働き正社員の10.2%、20代では28.4%が奨学金を返済しています。
このように、収入の多さだけでは解決できない構造的な課題が数多くあります。
出典:マイナビ|【共働き世帯の正社員に聞いた】仕事・私生活の意識調査2025年(2024年実績)
共働きを選択する主な理由
経済的な負担軽減など、共働きの選択に至る理由についても把握します。
1.経済的安定のため
世帯収入増加による生活水準向上は、最大の理由です。一人で働くより二人で働く方が収入は確実に増え、住宅購入や子どもの教育費、老後資金など人生の大きな出費に備えることが可能になります。
また、リスクヘッジ効果も重要です。どちらか一方が病気やケガで働けなくなっても、もう一方の収入で生活を維持できる安心感があります。
2. 社会との関わりを維持するため
家庭以外の居場所や社会的つながりを求める声が増えています。出産・育児で一時的に仕事を離れても、社会参加への意欲から職場復帰を選択する女性は後をたちません。
現在では働き方の多様化により、フルタイム、パートタイム、在宅勤務など、家庭環境に応じた柔軟な働き方が可能となり、女性の社会参加を後押ししています。
3. 専門性やキャリアを活かすため
結婚を機に退職を選択しても、結婚前に培ったスキルや経験を活かし続けたいというキャリア継続意識が高まっています。専門的な知識や技術を持つ人材が、ライフイベントを理由に職場を離れることは、労働力が不足する今、個人にとっても社会にとってもリスクです。
共働き増加の社会的背景
一方で、社会の動きと連動する形で共働きを自然に選択するケースも少なくありません。
世帯年収の減少
長引く不況による世帯年収の減少は、共働き増加の要因となっています。厚生労働省の「2024年国民生活基礎調査」によると、1世帯当たりの平均所得は1994年の664.2万円をピークに減少し、2023年時点で536.0万円となっています。

出典:厚生労働省|2024年国民生活基礎調査 Ⅱ 各種世帯の所得等の状況
約128万円の所得減少という現実が、生活維持のための共働き選択を後押ししています。賃金上昇の停滞、さらには社会保険料負担の増加、消費税導入・引き上げなどが複合的に影響し、単独収入では家計を支えきれない状況が生まれています。
労働のしやすさに関わる制度の拡充
政府による制度整備も共働き促進に貢献しています。主要な制度を見てみましょう。
- 男女雇用機会均等法の改正
- 育児・介護休業法の充実
- 女性活躍推進法(2015年)の制定
- 働き方改革関連法の施行
これらの法制度を背景に、女性がキャリアを継続しやすい環境が段階的に整備されてきました。同時に、家事や育児における性別役割分担の見直しも進んでいます。
共働き世帯が直面する課題
いざ共働きをすると、さまざまな困難に向き合うことになります。ここでも、マイナビの調査結果から共働き世帯の課題を取り上げます。
時間的制約
共働き世帯の課題の一つに時間管理が挙げられます。男性は残業時間が長く、女性は家事時間が長い傾向があります。
勤務・家事時間の違い
- 平均残業時間:男性18.8時間/月、女性9.5時間/月
- 平均家事時間:男性1.4時間/日、女性2.5時間/日
残業時間の男女差は9.3時間/月、家事時間の男女差は1.1時間/日です。依然として女性に家事負担が偏っている実態を示しています。
家計管理の複雑化
二つの収入源を持つことで、家計管理が複雑化することがあります。共働き正社員の28.8%がお小遣い制度を導入しており、特に50代では31.2%と高い割合です。
お小遣い制度が悪いわけではありませんが、収入配分や支出管理の役割分担を明確にしないと、夫婦間でのストレスやトラブルが生まれやすくなります。
キャリア形成の格差
出世意欲や昇進状況には明らかな男女差が残っています。
- 出世意欲あり:男性33.6%、女性24.2%
- 現在役職なし:男性47.8%、女性71.0%
家庭内役割分担や無意識の偏見が影響している可能性があります。家事時間や残業時間の男女差が表れたとの解釈も可能です。
出典:マイナビ|【共働き世帯の正社員に聞いた】仕事・私生活の意識調査2025年(2024年実績)
企業に求められる共働きへの対応
企業は今、増え続ける共働きという働き方へどのように向き合うのでしょうか。紹介した調査結果も踏まえて対応方法を紹介します。
1.柔軟な働き方制度の充実
時間と場所の制約を緩和する制度整備が必要です。
- テレワーク・在宅勤務制度
- 時短勤務制度
- フレックスタイム制度
- 育児・介護休業制度
これらの制度は、柔軟な働き方に欠かせません。導入から拡充へ、利用しやすい制度にアップデートすることにより、従業員が仕事と家庭を両立しやすい環境を提供できます。
2.キャリア継続支援
長期的なキャリア形成を支援する仕組みづくりも欠かせません。特に出産・育児で一時的に職場を離れる従業員に対して、継続的なサポートが求められています。また、介護を含め、休業や時短勤務等の制度取得においても、性差の考えを払拭して取り組むことが大切です。
- 復職支援プログラムの実施
- キャリア形成研修の充実
- メンター制度の導入
- 性差のない管理職登用の実現
3.福利厚生の充実
共働き世帯の実情に即した福利厚生の提供についても検討しましょう。福利厚生は「企業が従業員を大切にしていること」を表すメッセージです。家庭と仕事とのワークライフバランスを取りやすくする福利厚生により、仕事への満足度が高まります。共働き世帯に喜ばれる福利厚生には以下があります。
- 食事補助
- 育児・介護支援
- 家事代行
- 学習・資格取得支援
- 人間ドック補助
これらの福利厚生は、ライフステージに応じて組み合わせることでより働きやすさを高めます。収入をサポートし、定着率を高め、従業員満足度やエンゲージメントを高めます。
食事補助が共働きに喜ばれる理由
明治安田総合研究所の調査によると、共働き世帯では外食や調理食品の消費支出が専業主婦世帯より約1割多く、食事の負担が家計を圧迫する傾向が見られました。
こうした背景から、数ある福利厚生の中でも「チケットレストラン」のような柔軟性の高い食事補助制度を導入する企業が増えています。
出典:明治安田総合研究所|調査REPORT 共働き世帯の増加が消費を押し上げ
チケットレストランとは?
「チケットレストラン」は全国25万店舗以上で利用でき、コンビニでのお弁当から加盟店での食事まで幅広く利用できる食事補助の福利厚生サービスです。出勤時におにぎりやお茶を購入したり、ファミレスでのランチに利用をしたりと、さまざまな勤務形態に応じて使えるサービスです。
一定の利用条件下であれば、食事補助の非課税枠運用が可能になります。企業にとっては福利厚生費として損金算入が可能で、従業員にとっては所得税が非課税となるため実質的な手取り増加につながります。
「チケットレストラン」は、金額以上に使いすぎたり、請求関係の処理を要したりせず、簡単に管理・運用ができるのもメリットです。
関連記事:「チケットレストラン」の仕組みを分かりやすく解説!選ばれる理由も
共働き社会に適応する企業戦略
共働き世帯が約7割を占める現代において、企業の人事戦略は共働きを標準と捉えるときが来ました。
共働き社会において、どのような悩みを従業員が抱えているのかを理解し、一人ひとりが能力を最大限発揮できる環境整備に取り組むことが、企業の持続的成長につながります。
共働き世帯を含め、従業員の家計負担を軽減するには、実質手取りアップにつながり食事内容の充実にも有効な「チケットレストラン」がおすすめです。
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