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【社労士監修】専業主婦の年金はいくらもらえる?離婚や死亡、3号廃止?縮小?での変更点も解説

【社労士監修】専業主婦の年金はいくらもらえる?離婚や死亡、3号廃止?縮小?での変更点も解説

2024.08.14

監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)

近年、専業主婦(または主夫)(以後、本記事では省略し専業主婦と記載)の年金制度に関する議論が活発化しています。「専業主婦の年金はいくらもらえるのか」「第3号被保険者制度が廃止されるのか」など、疑問や不安の声も増えているようです。本記事では、専業主婦の年金制度について詳しく解説し、将来的な変更の可能性や家計への影響について解説します。とくに第3号被保険者制度の変更は、企業にとって重要なものになるため、ぜひ参考にしてください。

専業主婦が受け取れる年金は、国民年金(基礎年金)です。専業主婦は、国民年金の第3号被保険者として位置づけられています。第3号被保険者とは、以下の条件を満たす人を指します。

  • 20歳以上60歳未満である
  • 第2号被保険者(会社員や公務員など)に扶養されている配偶者である
  • 年収が130万円未満(2024年4月時点)かつ配偶者の年収の2分の1未満である

第3号被保険者の大きな特徴は、保険料を納付する必要がないことです。以下の図に示されるとおり、第3号被保険者にかかる保険料は、第2号被保険者が全体で負担する形で、年金(基礎年金)に加入できます。

専業主婦 年金01

出典:厚生労働省|年金制度の仕組みと考え方 第2 公的年金制度の体系(被保険者、保険料)
出典:日本年金機構|第3号被保険者

専業主婦の平均年金月額は約54,000円

厚生労働省の「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、専業主婦が受け取る国民年金(基礎年金)の平均月額は、新たに受給する場合(新規裁定)は約54,000円、それ以外は約56,000円です。

20歳〜60歳まで第3号被保険者であった場合は、満額の国民年金(基礎年金)を受け取れます。令和6年度の年金額(昭和31年4月2日以後生まれた方の場合)では、国民年金(基礎年金)満額は68,000円です。

出典:厚生労働省|令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況

出典:日本年金機構|令和6年4月分からの年金額等について

専業主婦年金の手取り

国民年金など公的年金は雑所得となり、課税対象です。そのため、年金の支給額と年金の手取り額は異なります。以下が所得に応じて課税されるものです。

  • 所得税
  • 住民税

また、特別徴収という形で、保険料については年金から自動的に差し引かれます。

  • 介護保険料
  • 国民健康保険料(税)
  • 後期高齢者医療保険料

3つの保険料は年金の受給とは関係なく、必ず納める必要があるものです。特別徴収の対象者の詳細は、日本年金機構のホームページが参考になります。

専業主婦の年金手取り額は、基本的に受給額と同じです。年金収入が年間108万円(月額9万円)以下の場合、所得税は課税されません。したがって、平均的な専業主婦の年金(月額約54,000円)であれば、手取り額も同じ約54,000円となります。

主婦年金は所得税が課税されないケースに該当

年金は雑所得とみなされます。日本年金機構によると、原則として以下のケースで所得税がかかりません。

  • 65歳未満でその年の支払額が108万円に満たない方
  • 65歳以上でその年の支払額が158万円に満たない方
  • 上記の額を超える場合でも65歳未満で月額9万円、65歳以上で月額13.5万円までの方

したがって、専業主婦年金の場合は、所得税は基本的にかかりません。

出典:日本年金機構|年金Q&A 老齢年金から税金が差し引かれていません。どうしてですか。

主婦年金は住民税が課税されないケースに該当

年金における住民税は、特別徴収されます。対象者は以下を満たす方です。

  • 65歳以上の方のうち、老齢もしくは退職を支給事由とする年金を受給している方であって、年間の受給額が18万円以上の方。

ただし、公的年金等に係る雑所得の金額は、年金の収入金額から公的年金控除額を差し引いて所得計算します。たとえば、月額54,000円の場合、年額648,000円となり、65歳以上の場合の雑所得の金額は0円です。主婦年金では基本的に住民税が課税されないことがわかります。

専業主婦 年金02

出典:国税庁|タックスアンサー No.1600 公的年金等の課税関係
出典:日本年金機構|年金Q&A 年金から介護保険料・国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料・住民税を特別徴収されるのはどのような人ですか。

専業主婦の年金額が変更される要因

専業主婦の年金額は、いくつかの要因によって変更される可能性があります。ここでは、妻が専業主婦というケースについて、確認していきましょう。

夫死亡のケース

配偶者(夫)が亡くなった場合、専業主婦(妻)は遺族年金を受け取れます。遺族年金は、国民年金から支給される遺族基礎年金と、厚生年金から支給される遺族厚生年金の2種類です。

遺族基礎年金は、子どものいる配偶者に支給されます。2024年度4月分の金額は、昭和31年4月2日以後生まれの方で子ども1人の場合、年額1,050,800円(月額約87,566円)です。子どもがいない場合は受給できません。

遺族厚生年金は、亡くなった配偶者の厚生年金の加入期間や報酬額によって計算されます。平成15年(2003年)4月以降の加入期間がある場合、以下の計算式で算出できます。

  • 平均標準報酬額 ×(5.481÷1000) × 平成15年4月以降の加入期間の月数

65歳以上で老齢厚生年金を受け取る権利がある方は、老齢厚生年金は全額支給となり、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額が支給停止されます。複数の遺族厚生年金の支給を受けている方については、それぞれの年金額に応じて年金額が支給停止されます。

専業主婦 年金03出典:日本年金機構|令和6年度版 遺族年金ガイド

出典:日本年金機構|遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)

離婚のケース

離婚した場合でも、「離婚時の年金分割」という制度を利用することで、婚姻期間中の厚生年金の一部を分割して受け取れますので支給額が変わります。年金分割は、「合意分割」と「3号分割」の2種類です。

  • 合意分割:離婚時に当事者間の合意や裁判手続きにより、婚姻期間中の厚生年金の分割割合を決定する方法
  • 3号分割:国民年金の第3号被保険者であった方からの請求により、平成20年4月1日以後の婚姻期間中の第3号被保険者期間における相手方の厚生年金記録を2分の1ずつ分割する方法

厚生労働省の調査によると、年金分割前の平均年金月額は改定前55,215円でしたが、改定後は87,949円と約3万円増加しています。3号分割のみの場合、改定前44,555円から改定後51,793円と約7千円の増加です。

なお、年金分割を請求する場合は、離婚した翌日から2年以内に手続きを行う必要があります。期限を過ぎる原則として請求できなくなるため、注意が必要です。

出典:日本年金機構|離婚時の年金分割
出典:厚生労働省|令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況

パートによる就労のケース

専業主婦がパートとして働き始めた場合、年収や労働時間によって年金の加入区分が変わる可能性があります。パートをしている主婦の社会保険は、以下のどちらかです。

  • パート先で社会保険に加入する
  • 配偶者の社会保険の扶養範囲内で働く

とくに注意が必要なのは、「年収の壁」と呼ばれる年収130万円(2024年4月時点)を超えるケースです。年収130万円を超えると、原則として配偶者の社会保険の扶養から外れ、自身で社会保険に加入しなければなりません。

ただし、2023年10月から「年収の壁・支援強化パッケージ」が導入され、一時的な収入増加で年収が130万円を超えた場合でも、事業主の証明により保険者の認定を受けられれば2年間は扶養に入れる暫定措置が設けられました。この措置により、第3号被保険者のままでいるか、第1号被保険者になるかを選択することになります。

専業主婦年金「第3号被保険者制度」が廃止される可能性は?これまでの検討

近年、専業主婦の年金制度である第3号被保険者制度を見直す議論が検討されています。そもそもの制度変更があれば、主婦年金のあり方が変わってしまうのが必然です。ここからは主婦年金見直しについての検討内容を確認します。

専業主婦年金「第3号被保険者制度」廃止を含め縮小化が検討される背景

廃止の可能性も含め、縮小化が検討されている背景には、社会構造の変化があります。

年収の壁による就労調整問題

「年収の壁」を意識して労働時間を調整する人が多く、人手不足の一因です。年収が一定額を超えると社会保険料の負担が発生し、手取り収入が減少する可能性があるため、多くの第3号被保険者が就労時間を抑える傾向にあります。

多様なライフスタイルへの変化

第3号被保険者制度は、夫が働き妻が専業主婦という従来の家族モデルを前提としています。しかし、近年は女性の社会進出が進み、共働き世帯が増加するなど、ライフスタイルが多様化しています。

厚生労働省によると、第3号被保険者数は年々減少傾向にあり、令和4年(2022年)度末時点で約721万人(前年比5.4%減)です。この変化に合わせて、年金制度も見直しが必要だという意見が強まっています。

出典:厚生労働省|令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況

第1号被保険者の配偶者との公平性

現行制度では、会社員や公務員の配偶者(第3号被保険者)は保険料を負担せずに年金を受け取れますが、自営業者などの第1号被保険者の配偶者は、基本的に自分で保険料を負担しなければなりません。このことについて、「ずるい」などの不公平感を抱く声も上がっているようです。

専業主婦年金「第3号被保険者制度」の今後

第3号被保険者制度のありかたについては、これまでいくつかの案が検討されてきました。

  • 社会保険適用拡大による第3号被保険者の縮小
  • 第3号被保険者も保険料を負担
  • 第3号被保険者がもらえる年金を減額

上記の案は、保険料の負担をするか、負担しないならばそれに見合う給付額に見直すといった内容で、いずれも第3号被保険者がこのままの保険料である状態は望ましく無いという意見を如実に反映しています。現在、政府は社会保険適用拡大に向けて、順次法律改正を進めており、まずは第3号被保険者を縮小させる方向性のようです。

一方で、第3号被保険者については、個々の事情により就労が難しいケースがあるなど、廃止が望ましくないケースがありますので、慎重な議論が必要です。

専業主婦 年金04出典:厚生労働省|社会保険適用拡大ガイドブック

専業主婦年金が仮に廃止された場合の家計への影響

第3号被保険者制度が廃止された場合、専業主婦世帯の家計にどのような影響があるでしょうか。ここでは、パート労働者のケースと無収入のケースに分けて、具体的に見ていきましょう。

パート労働者のケース

例として、年収90万円(月額75,000円)の45歳のパート労働者(東京都在住)の場合を考えましょう。制度が廃止された場合、勤務先の社会保険に加入するため、以下のような負担が発生すると考えられます。

  • 厚生年金保険料:年間約96,624円(月額8,052円)
  • 健康保険料(介護保険料含):年間約54,192円(月額4,516円)
  • 雇用保険料:年間5,400円(月額450円)


合計すると、年間で約156,216円の新たな負担が生じます。

参考:日本年金機構|令和6年度版 厚生年金保険料額表
参考:全国健康保険協会|令和6年3月分からの健康保険料額表
参考:厚生労働省|令和6年度雇用保険料率について

無収入のケース

収入がない45歳の専業主婦(東京都在住)の場合、制度廃止後は国民年金と国民健康保険に加入することになり、以下のような負担が発生すると考えられます。

  • 国民年金保険料:年間203,760円(2024年度月額16,980円)
  • 国民健康保険料:年間約84,000円(月額約7,000円、地域により異なる)

合計すると、年間で約287,760円の新たな負担が生じます。これらの数字からわかるように、第3号被保険者制度が廃止された場合、専業主婦世帯の経済的負担は大きく増加する可能性が高いでしょう。ただし、将来の年金受給額が増える可能性もあるため、長期的な視点での検討が必要です。

出典:日本年金機構|国民年金保険料

企業は時代に応じて制度の見直しに柔軟に対応

専業主婦の年金制度は、社会構造の変化に伴い見直しが検討されています。第3号被保険者制度の背景には、年収の壁による就労調整問題や、ライフスタイルの多様化、制度の公平性の問題があり、仮に廃止された場合、専業主婦世帯の経済的負担が増加する可能性が高いでしょう。

制度は時代に応じて適切に見直すことが大切です。パート従業員が多く活躍する企業は、第3号被保険者制度の見直しや社会保険適用拡大を前向きに捉える必要がありそうです。そして、企業エンゲージメント向上への取り組みは、制度変革の今、より長く活躍したい企業として選ばれるための重要な施策となります。

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