企業の福利厚生として食事補助を導入する際「チケットレストラン」を活用すると、月額3,500円(税別)まで所得税が非課税になる税制上のメリットを享受できます。これは国税庁の「所得税基本通達36-38の2」に基づく制度です。適切に運用されれば企業と従業員双方に利点があります。
ただし、この食事補助非課税枠を適用するには厳格な条件を満たす必要があり、一つでも条件を欠くと会社負担分の全額が課税対象です。本記事では、「企業負担月額3,500円×従業員50%以上負担ルール」に焦点を当て、チケットレストランの制度設計から実務上の運用まで解説します。
チケットレストラン概要
「チケットレストラン」の最大の特徴は、食事補助の非課税枠を最大限活用できることです。従業員は専用のICカードにチャージされた金額で実質半額の食事を購入できます。企業にとってはインフレ手当や賃上げの代替手段として有効な福利厚生となります。
利便性の面では、全国25万店舗以上の加盟店があり、勤務地を問わずどこでも利用可能です。3大コンビニから飲食チェーン店まで幅広い選択肢から、従業員のライフスタイルに合わせて柔軟に利用できます。
導入実績も豊富で、3,000社以上の企業が採用。利用率98%、継続率99%、従業員満足度93%という高い評価を獲得しています。福利厚生の拡充により従業員の健康増進や満足度向上が図れ、離職防止や採用での差別化にも大きく貢献します。
食事補助の非課税枠とは
「チケットレストラン」と密接な、国税庁の食事補助非課税枠のルールを説明します。国税庁サイトにあるタックスアンサー(よくある税の質問で、通達等をかみ砕いて説明したもの)を引用します。
No.2594 食事を支給したとき
役員や使用人に支給する食事は、次の2つの要件をどちらも満たしていれば、給与として課税されません。
(1)役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担していること。
(2)次の金額が1か月当たり3,500円(消費税および地方消費税の額を除きます。)以下であること。
(食事の価額)-(役員や使用人が負担している金額)この要件を満たしていなければ、食事の価額から役員や使用人の負担している金額を控除した残額が給与として課税されます。
会社負担の絶対上限は月額3,500円(税別)
国税庁のタックスアンサーのとおり、会社が負担できる食事補助は月額3,500円(税別)が絶対上限です。1円でも超過すると会社負担分は全額課税対象となります。
従業員の50%以上負担が絶対条件
非課税適用のもう一つの絶対条件は、従業員が食事代の50%以上を負担することです。これにより企業が負担する金額に対し「経済的利益なし」と判定されます。50%以上負担の条件を満たさない場合は、会社負担分は全額課税対象となります。
適正運用の例
・月額食事総額:7,000円
・会社負担:3,500円
・従業員負担:3,500円(50%ずつ)
結果:非課税
課税対象となる例1(従業員負担50%未満)
・月額食事総額:5,000円
・会社負担:3,000円
・従業員負担:2,000円(40%)
結果:会社負担3,000円が給与として課税
課税対象となる例2(会社負担上限超過)
・月額食事総額:8,000円
・会社負担:4,000円(3,500円を超過)
・従業員負担:4,000円
結果:会社負担4,000円が給与として課税
※上記事例の金額はすべて税別です。
法的根拠は「所得税基本通達36-38の2」
制度の根拠は国税庁通達「所得税基本通達36-38の2」に明記されています。通達では、従業員負担50%以上かつ会社負担3,500円以下の両条件を同時に満たす場合に「経済的利益なし」と判定します。さらに、いずれか一つでも満たさなければ会社負担分全額が課税対象となることが定められています。
所得税基本通達36-38の2
使用者が役員又は使用人に対し支給した食事につき当該役員又は使用人から実際に徴収している対価の額が、36-38(※)により評価した当該食事の価額の50%相当額以上である場合には、当該役員又は使用人が食事の支給により受ける経済的利益はないものとする。ただし、当該食事の価額からその実際に徴収している対価の額を控除した残額が月額3,500円を超えるときは、この限りでない。
※36-38は、食事の評価に関する通達
チケットレストランは会社負担3,500円を推奨
「チケットレストラン」は食事補助の非課税枠「会社負担月額3,500円×従業員50%負担」の要件を最大限活用できる仕組みが特長です。
制度を最大限有効活用するために、一人あたりの会社負担分を3,500円(税別)に最大化することを前提としています。もちろん、非課税枠を満たす範囲で会社負担分を3,500円以下に引き下げた運用も可能です。
関連記事:【税理士監修】チケットレストランで食事補助を非課税に!控除方法とメリット完全ガイド
「チケットレストラン」導入プロセス
「チケットレストラン」導入の実務プロセスを説明します。
契約手続きとICカード発注
「チケットレストラン」は飲食店やコンビニなどで支払い時に専用のICカードを使い、食事補助を提供します。まず、打ち合わせで合意し、後に契約へ進みます。契約にあたって、後に解説する労使協定への対応が必要です。
契約後は専用ICカードの発注をします。専用ICカードが手元に届くまでは約2週間です。通常、約1か月程度で利用開始となります。
ICカード配布後は毎月チャージ実行
運用は毎月の1回、一括チャージのみです。人事や総務担当者など、バックオフィスの負担を最小限に抑えた設計です。
導入前に必要な準備(労使協定)
企業側では、導入準備として労使協定の契約や変更が必要となります。これは、従業員負担分として給与から賃金一部(1円〜3,500円)を控除するための手続きです。労働基準監督署への届出は不要で、企業内での締結のみとなることから、手続きの負担は比較的かかりません。
労使協定の整備により、従業員負担分の給与天引きが適法に実施できるようになります。既存の労使協定がある企業では、食事補助に関する項目を追加することで対応可能です。
関連記事:【社労士監修】労使協定とは?基礎知識と福利厚生導入の事例をわかりやすく解説
初期費用とランニングコスト
契約時にかかる費用と、運営にかかる費用は以下の通りです。
- 初期導入費:カード代金×人数分、カード配送料
- ランニングコスト:月額システム利用料、企業チャージ分(1円〜3,500円)×人数分
チケットレストランの導入メリット
「チケットレストラン」の導入効果を説明します。
企業側が得られる効果
税務上のメリットは、福利厚生費として会社負担分(上限3,500円×人数分)を経費計上できることです。法人税の課税対象額の軽減効果が得られます。
経営上のメリットは、採用競争力の向上です。食事補助は求職者の関心が高く、「チケットレストラン」の場合、従業員満足度向上や実質的な手取り増加の施策にも有効です。
運用上のメリットは、設置スペースや運営負担がほぼ発生しないことです。外部の飲食店やコンビニで利用する性質上、企業内に特別な設備は不要です。チャージ担当者のPCと従業員ごとの専用ICカードで完結します。利用可能店舗は、専用アプリをスマートフォン等に入れて確認できます。
従業員側が感じる価値
経済的メリットでは、年間42,000円の非課税所得(月3,500円×12か月)を享受できます。所得税の負担軽減のもと、福利厚生として食事代の補助を受けられます。
利便性のメリットは、全国25万店舗以上の加盟店(ファミレス・コンビニ等)で利用でき、勤務地を問わずサービスを提供できることです。24時間営業のコンビニエンスストアが加盟店に含まれており、早朝出勤や深夜勤務の従業員に対する食事補助も実現します。
導入時に知っておきたいよくある質問
サービス導入にあたり、よくある質問とその回答を紹介します。
Q1:チケットレストランの利用範囲は?
A:「チケットレストラン」で購入できるものは、就業時間内の飲食料に限定されており、プライベートでの使用や家族との利用はできません。飲み物もアルコール類は対象外で、たばこ類も購入できません。休憩中のお菓子やコーヒー、夜勤での軽食などには使用できます。
Q2:チケットレストラン、1日の利用金額は?
A:1日の利用上限金額は、従業員一人あたり2,500円です。出社時にコーヒーを購入し、昼はランチで利用するなど、上限金額以下であれば問題ありません。決済時に上限を超えるとエラーになり、その場合は自己負担で支払うことができます。
Q3:チケットレストランの手数料はかかる?
A:従業員は「チケットレストラン」利用にあたり手数料はかかりません。企業はチケットレストラン利用にあたりシステム手数料を毎月負担します。一概には言えませんが、経費計上でき、実質手取りアップになり、採用力強化にもなる利点からは、システム手数料以上の価値を生み出すでしょう。
チケットレストランで食事補助の非課税枠を最大限活用
「チケットレストラン」は「会社負担月額3,500円×従業員50%以上負担」要件の厳守が、制度の仕組みに沿って導入するだけで自ずと実現できるのが魅力です。企業は年間「最大4万2,000円(一人あたり)×使用する従業員数分」を非課税の福利厚生として提供できます。採用競争力向上や従業員満足度アップに直結する重要な要素となります。
近年、物価高騰への対応や人材確保・定着という観点から、「チケットレストラン」の魅力度はより一層高まっています。ぜひ導入を検討されてはいかがでしょうか。
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