物価高や実質賃金の低下が続く中、「第3の賃上げ」として社食の導入を検討する企業が増えています。従来の昇給やベースアップではなく、福利厚生を通じて従業員の生活を支えることで、実質的な手取り増を実現する「第3の賃上げ」。本記事では、その選択肢として社食が選ばれるのはなぜなのか、その理由や社食の種類・企業のメリットなど、気になる情報をまとめて紹介します。
「第3の賃上げ×社食」が注目されるのはなぜ?
物価高や実質賃金の低下を背景に、企業が新たな賃上げ手段として注目を集めているのが「第3の賃上げ」としての社食制度の導入です。詳しく見ていきましょう。
「第3の賃上げ」とは
「第3の賃上げ」とは、定期昇給を第1、ベースアップを第2とした場合に、家計の負担軽減や、実質手取りを増やすことができる福利厚生を活用した実質的な「賃上げ」として株式会社エデンレッドジャパンが定義しました。
従来の賃上げでは、賃上げ分が課税対象となるため、従業員の実質的な手取り増加額は賃上げ額より小さくなります。
一方、福利厚生を活用した賃上げの場合、一定の条件を満たすことで所得税の非課税枠を活用できます。つまり、同額を給与と福利厚生で支給した場合、従業員の実質的な手取り額は福利厚生の方が多くなるのです。
また、福利厚生として損金算入できるため、企業側は法人税の軽減効果が期待できます。
このように、従業員・企業双方にメリットをもたらす施策として、近年急速に認知度を高めているのが「第3の賃上げ」なのです。
関連記事:「第3の賃上げ2025」とは?福利厚生で実現する新時代の賃上げ戦略
福利厚生の重要度が高まる背景
物価上昇や賃金の伸び悩みに加え、少子化による人手不足も深刻化しています。こうした背景の中で、各企業は採用力や定着率を高めるために福利厚生の見直しを進めており、その価値があらためて注目されています。
「株式会社ベネフィット・ワン」が全国の民間企業で正社員として働く20代〜60代男女1,000人を対象に行った調査によると、調査対象者の3人に2人(65.9%)が「さまざまな場で活用でき、支出を抑える“福利厚生”が勤務先選びの決め手の一つになる」と回答しました。
福利厚生を重視する傾向は若い世代ほど顕著で、「現在の勤務先選びで福利厚生を重視した」と回答した人は、全体で51.6%なのに対し、20代では67.0%にものぼります。
福利厚生の重要度が再認識されるとともに、「第3の賃上げ」の注目度も高まっているのが現状です。
第3の賃上げとして社食が選ばれている理由
社食制度が第3の賃上げ施策として支持されている背景には、物価上昇にともなうランチ代の高止まりがあります。
総務省が2025年7月に公開した同年6月の消費者物価指数は、2020年の平均を100として111.7でした。前年同月比で3.3%の上昇です。
なかでも「米類」は、価格高騰の影響を受けて前年同月比で100.2%上昇し、過去最高水準となっています。
エデンレッドジャパンの調査でも、コメの価格高騰がランチ代に与える影響を尋ねたところ、7割近く(64.7%)のビジネスパーソンが「非常にある/ややある」と回答し、食のコストが家計を直撃している実態が浮き彫りとなりました。

出典:エデンレッドジャパン|ビジネスパーソンのランチ実態調査2025~コメ高騰でランチの主食危機⁉ 7割近くが“影響あり”と回答~
こうした現状を受けて、ランチ代の高騰に対応できる社食(食事補助)が、生活支援の観点からも「第3の賃上げ」として再評価されているのです。
社食は「進化型」へ|4つの社食の種類と特徴
社食というと、かつては「提供型」の社員食堂が一般的でした。しかし近年は、働き方の多様化にともない、柔軟に活用できる進化型の社食が人気を集めています。ここでは、大きく4つに分類される社食のタイプと、それぞれのメリット・デメリットを整理します。
提供型
いわゆる社員食堂と呼ばれるタイプの社食です。企業内に食堂を設け、調理された食事を従業員に提供します。
温かく栄養バランスのとれた食事を安価で提供できるメリットがありますが、営業中に社内にいる従業員しか利用できません。また、専用のスペースや設備が必要なため、導入・運営コストや人的コストも大きくなります。
こうした特徴を受け、2008年度末に6,333施設だった給食施設がある「事業所」は、2023年度は4,930施設にまで減少しています。
直営型
提供型の社食のうち、企業が自ら運営・管理を行う方式です。自社従業員のニーズに合わせた柔軟な運営が可能で、メニュー構成やサービス内容を細かくカスタマイズできます。
従業員の声を反映しやすいため、満足度の高い社食運営が実現しやすい一方、メニュー開発や調理人材の確保、衛生管理など、企業側にかかる運営負担は大きくなります。
外部委託型
提供型の社食のうち、給食専門の外部業者に社食の運営を委託する方式です。自社での食堂運営ノウハウがなくても導入でき、調理や衛生管理、メニュー設計なども業者が担うため、企業側の業務負担は大幅に軽減されます。
一方、業者により提供できるメニューやサービスの幅に差があるため、導入前の業者選定が重要です。
設置型
冷蔵庫や冷凍庫、自動販売機などを社内に設置し、弁当や総菜、軽食などを従業員が自由に購入できる仕組みの社食です。
利用時間に制限がなく、好きなタイミングで手軽に食事がとれる点が特徴で、オフィスに専用スペースさえ確保できれば比較的容易に導入が可能です。
提供される食品は、サラダ・フルーツ・おにぎり・お弁当など業者によってさまざまですが、メニューの幅には限りがあり、長期的な利用で飽きが生じやすい面もあります。また、外勤や出張中など、社外勤務の従業員が利用しづらいデメリットもあります。
宅配型
従業員が注文した食事が、職場にまとめて配達される仕組みの社食です。
あらかじめ定めた時間帯に合わせてお弁当やおかずが届くため、外出や行列の手間がなく、業務効率の向上にもつながります。栄養バランスのとれたメニューやアレルギー対応食を選べるサービスもあり、健康意識の高い職場にも適しています。
ただし、注文締切や受け取り時間が決まっている場合が多く、柔軟性に欠ける点や、メニューのバリエーションが限られる点、提供型・設置型と同様に、社外勤務者は利用できない点に注意が必要です。
代行型
食事チケットや電子決済等を通じ、提携する外部の飲食店を自由に利用できる仕組みの社食です。エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」もこの代行型に該当します。
好みに応じて好きな店舗・メニューを選べるため、飽きがこず、満足度が高まりやすいのが特徴です。また、社外勤務者やリモートワーカー、夜勤者も活用しやすく、勤務形態を問わない柔軟な福利厚生として機能します。
対応店舗が地域に少ない場合、利用しづらくなるケースもありますが、企業側にとっても設備不要で運用コストを抑えられるメリットがあります。
柔軟性の高さから、近年特に注目度を高めている社食制度です。
関連記事:「チケットレストラン」の仕組みを分かりやすく解説!選ばれる理由も
社食を提供することで企業が得られるメリット
社食制度は、従業員だけでなく、企業側にも多くのメリットをもたらします。ここでは、社食を導入することで得られる4つの主な効果について解説します。
従業員満足度が向上する
食事補助は、法律で提供が義務化されていない「法定外福利厚生」のひとつです。企業独自の判断で提供するものであるだけに、あえて提供することによって「従業員を大切にする企業」としてのスタンスを強力にアピールできます。
従業員が「会社から大切にされている」との実感を得ている企業では、従業員満足度が向上し、従業員の企業に対する貢献意欲が高まる傾向にあります。結果として、従業員一人ひとりのモチベーションやパフォーマンスの向上、ひいては企業全体の業績向上も期待できるのです。
優秀な人材の獲得・定着に寄与する
福利厚生の充実度は、求職者が企業を選ぶ際の重要な判断基準のひとつです。なかでも社食制度は、金銭的な支援に直結するため、採用活動において明確なアピールポイントとなります。
たとえば「ランチ代が実質半額」「好きな店を福利厚生で利用できる」などの具体的な制度は、他社との差別化に効果的です。また、すでに働いている従業員にとっても、生活支援が感じられる制度は定着率の向上に寄与します。
特に若年層や子育て世帯など、日常のコストを気にする層にとって大きな魅力となります。
従業員の生活支援ができる
社食制度は、給与としての支給ではなく、生活コストを直接軽減する「実質的な支援策」です。
物価高が続く近年、食費は家計を圧迫する大きな要因のひとつです。企業が食事補助という形で経済的な支援をすることは、従業員の生活を支援する大きな一手となります。
また、従来の賃上げが難しい企業でも、福利厚生を活用した「第3の賃上げ」であれば導入は比較的容易です。最小限のコストで従業員の生活支援を実現したい企業にとって、社食は魅力的な制度となっています。
健康経営を推進できる
健康経営を推進する企業にとっても、社食制度は、大きなメリットがある制度です。
健康経営を推し進めるための取り組みのひとつとして設けられた「健康経営銘柄」と「健康経営優良法人認定制度」では、従業員の心と身体の健康づくりに向けた具体的対策の評価項目として、「食生活の改善に向けた取り組み」が問われています。
社食はこの評価項目を満たす取り組みであることから、社外的な評価にも直結するのはもちろんのこと、医療費の抑制や休職率の低下といった効果も期待されます。
関連記事:食事から始める健康経営!取り組むメリットや具体的な施策を紹介
社食を第3の賃上げとして活用するには
社食制度を「第3の賃上げ」として有効に活用するには、税制面の要件を理解し、正しく運用する必要があります。ここで、詳細を確認していきましょう。
非課税で運用する条件
食事補助を非課税で提供するためには、国税庁が定める以下の要件を満たす必要があります。
(1)役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担していること。
(2)次の金額が1か月当たり3,500円(消費税および地方消費税の額を除きます。)以下であること。
(食事の価額)-(役員や使用人が負担している金額)
仮に、企業側の負担額が3,500円超えた場合、上限額との差額だけでなく、企業が提供した食事補助額のすべてが課税対象となります。
現物支給の定義と原則
食事補助を福利厚生として非課税で運用するためには、「現物支給」であることが求められます。
以下、よくあるパターンと、現物支給としての可否を見てみましょう。
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例1:食事補助にあたる金額を給与に上乗せして支給した場合 例2:従業員がいったん飲食店へ代金を支払い、後日企業に請求する、いわゆる「立て替え払い」をした場合 例3:従業員が企業から支給された食事チケット(電子決済を含む)を利用し、飲食店での支払いをした場合 |
これらのケースで「現物支給」と認められるのは例3のみです。例1と例2は、食事代に限定されない報酬にあたることから「現物支給」とは認められません。給与として扱われ、課税対象となります。
一方、食事チケットは食事以外の用途で使用できないことから、「現物支給」と判断されます。
参考:国税庁|使用者が使用人等に対し食事代として金銭を支給した場合
深夜勤務者への特例
食事補助は現物支給が原則です。給与をはじめ、現金での支給は原則福利厚生費として認められません。
ただし、深夜勤務者に対しては、別途特例が設けられています。
通常、深夜勤務者に食事の現物支給を行うのは困難です。そのため、1食あたり300円を上限とし、非課税での現金支給が認められています。
また、残業や宿日直時における食事の現物支給も全額課税対象外となり、福利厚生費として計上可能です。
関連記事:【税理士監修】食事補助は課税される?給与にしないための非課税限度額
実績多数の社食サービス「チケットレストラン」
エデンレッドジャパンが運営する「チケットレストラン」は、従業員のランチ代を補助する福利厚生サービスです。導入した企業の従業員は、全国25万店舗を超える加盟店での食事を実質半額で利用できます。
加盟店のジャンルは幅広く、コンビニ・ファミレス・三大牛丼チェーン店・カフェなど、利用する人の年代や嗜好を問いません。また、勤務時間中にとる食事の購入であれば、利用する場所や時間に制限がないのも魅力です。
さらに、一定の条件を満たすことによって所得税の非課税枠を活用できるため、「第3の賃上げ」として従業員の実質的な手取りアップにも貢献します。
従業員のエンゲージメントやモチベーションアップによる生産性の向上も期待できるとして、すでに3,000社を超える企業に選ばれている福利厚生制度です。
▼「名古屋商工会議所」では、近年の物価高の中、賃上げの一環として「チケットレストラン」の導入を決めました。
導入後「健康を意識してサラダや健康ドリンクなどを購入するようになった」「以前はランチを欠食していたが食事をとるようになった」などの変化が見られ、健康経営にも貢献しているそうです。
従業員の方からは「チケットレストランは、誰もがいつでもどこでも利用できる公平な食事補助の福利厚生であることが大きな魅力です。この公平性を市場にアピールすることで、従業員だけではなく、採用活動など対外的な面で企業の姿勢を示す一つの有益な手段とも言えると思います」とのうれしい声も聞かれました。
→「名古屋商工会議所」の詳細な導入事例はこちら
関連記事:チケットレストランの魅力を徹底解説!ランチ費用の負担軽減◎賃上げ支援も
企業価値向上にも|社食でかなえる「第3の賃上げ」
物価高や賃上げ要請への対応が求められる中で、「第3の賃上げ」は、企業と従業員の双方にとって実効性の高い手段として注目されています。
なかでも社食制度は、一定の条件を満たすことで家計の支出を直接的に軽減できるうえ、企業側の負担も抑えられます。また、提供型や設置型・宅配型点代行型など多様な運用方式から、自社の規模や働き方に応じた柔軟な設計が可能である点も魅力です。
従業員の満足度と定着率を高め、企業価値の向上にもつながる「攻めの福利厚生」として、社食制度の導入を改めて検討してみてはいかがでしょうか。
参考記事:「#第3の賃上げアクション2025」始動、ベアーズが新たに参画~中小企業にこそ“福利厚生”による賃上げを! “福利厚生”で、より働きやすく、暮らしやすい社会へ~
:「賃上げ実態調査2025」を公開~歴史的賃上げだった2024年も“家計負担が軽減していない”は7割以上!
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