2025年度の最低賃金の目安は全国平均で1,118円となり、前年度から63円の大幅引き上げが示されました。全都道府県で最低賃金が1,000円を上回るのは今回が初めてとなります。企業は最終決定を待ちながらも、人件費負担増加への準備を進める必要があります。本記事では改定の詳細と企業が取るべき対応策、さらに人件費圧迫を和らげる福利厚生活用法まで解説します。
2025年度の最低賃金|全国平均1,118円に
2025年8月4日、厚生労働省の中央最低賃金審議会は、2025年度の地域別最低賃金の目安を示しました。まずは、その詳細から解説します。
参考:厚生労働省|令和7年度地域別最低賃金額改定の目安について
2025年最低賃金引き上げの特徴
2025年度の最低賃金は、過去最大の上げ幅となる63円の引き上げが行われ、全国加重平均※で1,118円となる見込みです。
最低賃金近くで働く人は推計約700万人に上り、10年前の3倍に増加していることから、今回の引き上げの影響は広範囲におよびます。
これにより、これまで900円台だった31県を含め、全47都道府県の最低賃金が1,000円台に到達する見通しです。最低賃金が全国的に4桁水準に統一されるのは初めてのことで、都市部と地方の格差縮小に寄与する重要な転換点となります。
なお、企業の視点で見ると、賃金の底上げによって人材の確保や労働条件の改善といったメリットが期待できる一方、大幅なコスト増が避けられません。特に、資金力に制限のある中小企業にとっては深刻な課題です。
※加重平均:企業の賃上げ額を賃上げの影響を受ける常用労働者数を計算に反映させ、1人当たりの平均値を算出する方法
参考:NHK|厚生労働省|最低賃金 過去最大63円引き上げへ 全国平均1118円 全都道府県で1000円超に
A〜Cランクの区分と引き上げ額
| ランク | 都道府県(全47件) | 引き上げ額(目安) |
|---|---|---|
| Aランク | 埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪 | +63円 |
| Bランク | 北海道、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、富山、石川、福井、山梨、長野、岐阜、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、福岡 | +63円 |
| Cランク | 青森、岩手、秋田、山形、鳥取、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄 | +64円 |
Cランクが1円高いのは、物価や賃金の上昇率が相対的に大きい点を考慮したためです。これにより、従来は水準の低さが課題だった地域で改善が期待され、全国的な格差是正の一歩といえます。
参考:厚生労働省|令和7年度地域別最低賃金額改定の目安について
10月頃から順次発効予定
最低賃金の改定は、中央最低賃金審議会が示した目安をもとに、各都道府県の審議会で議論され、最終的な金額が決定されます。
例年の流れでは、9月中に官報告示が行われ、10月1日から11月1日までの間に順次発効されます。都道府県ごとに日程は異なりますが、多くは10月中に適用されるのが通例です。
企業はこのスケジュールを前提に給与システムや就業規則を整備し、労務管理上の不備を防ぐ必要があります。特に、非正規雇用を多く抱える業種では影響が大きく、早めの準備が欠かせません。
都道府県別の最低賃金一覧
| 都道府県 | 現行(令和6年度) | 2025年度目安 | 増加額 |
|---|---|---|---|
| 北海道 | 1,010円 | 1,073円 | +63円 |
| 青森 | 953円 | 1,017円 | +64円 |
| 岩手 | 952円 | 1,016円 | +64円 |
| 宮城 | 973円 | 1,036円 | +63円 |
| 秋田 | 951円 | 1,015円 | +64円 |
| 山形 | 955円 | 1,019円 | +64円 |
| 福島 | 955円 | 1,018円 | +63円 |
| 茨城 | 1,005円 | 1,068円 | +63円 |
| 栃木 | 1,004円 | 1,067円 | +63円 |
| 群馬 | 985円 | 1,048円 | +63円 |
| 埼玉 | 1,078円 | 1,141円 | +63円 |
| 千葉 | 1,076円 | 1,139円 | +63円 |
| 東京 | 1,163円 | 1,226円 | +63円 |
| 神奈川 | 1,162円 | 1,225円 | +63円 |
| 新潟 | 985円 | 1,048円 | +63円 |
| 富山 | 998円 | 1,061円 | +63円 |
| 石川 | 984円 | 1,047円 | +63円 |
| 福井 | 984円 | 1,047円 | +63円 |
| 山梨 | 988円 | 1,051円 | +63円 |
| 長野 | 998円 | 1,061円 | +63円 |
| 岐阜 | 1,001円 | 1,064円 | +63円 |
| 静岡 | 1,034円 | 1,097円 | +63円 |
| 愛知 | 1,077円 | 1,140円 | +63円 |
| 三重 | 1,023円 | 1,086円 | +63円 |
| 滋賀 | 1,017円 | 1,080円 | +63円 |
| 京都 | 1,058円 | 1,121円 | +63円 |
| 大阪 | 1,114円 | 1,177円 | +63円 |
| 兵庫 | 1,052円 | 1,115円 | +63円 |
| 奈良 | 986円 | 1,049円 | +63円 |
| 和歌山 | 980円 | 1,043円 | +63円 |
| 鳥取 | 957円 | 1,021円 | +64円 |
| 島根 | 962円 | 1,025円 | +63円 |
| 岡山 | 982円 | 1,045円 | +63円 |
| 広島 | 1,020円 | 1,083円 | +63円 |
| 山口 | 979円 | 1,042円 | +63円 |
| 徳島 | 980円 | 1,043円 | +63円 |
| 香川 | 970円 | 1,033円 | +63円 |
| 愛媛 | 956円 | 1,019円 | +63円 |
| 高知 | 952円 | 1,016円 | +64円 |
| 福岡 | 992円 | 1,055円 | +63円 |
| 佐賀 | 956円 | 1,020円 | +64円 |
| 長崎 | 953円 | 1,017円 | +64円 |
| 熊本 | 952円 | 1,016円 | +64円 |
| 大分 | 954円 | 1,018円 | +64円 |
| 宮崎 | 952円 | 1,016円 | +64円 |
| 鹿児島 | 953円 | 1,017円 | +64円 |
| 沖縄 | 952円 | 1,016円 | +64円 |
2025年度改定後の最低賃金の目安は、最低が秋田の1,015円、最高が東京の1,226円です。現行で900円台だった31県(青森953円、岩手952円、秋田951円など)もすべて1,000円を超え、底上げ効果が顕著に表れています。地方の労働者の実質的な収入改善が期待される改訂となっています。
政府が目指す「最低賃金1,500円」とその背景
政府は、2020年代に最低賃金を全国平均で1,500円とする目標を掲げています。ここでは、1,500円を目指す背景について「生活保障」「物価上昇」の2つの視点から解説します。
参考:全国生協労働組合連合会(生協労連)|最低賃金1500円
生活保障の基盤として
最低賃金1,500円という目標には、生活費の観点から明確な根拠があります。
連合など労働組合の試算では、単身者が生活に必要とされる「最低生計費」を満たすには、時給1,500円前後が必要とされています。実際に、現行水準では住居費や食費、社会保険料を差し引いた手取りで生活を維持するのが難しいケースが多く報告されているのが実情です。
最低賃金は単に雇用者の賃金水準を底上げするだけでなく、生活保障の基盤として機能します。1,500円という数字は人間らしい暮らしを可能にする水準として設定されているのです。
物価上昇への対応として
最低賃金引き上げの背景として、無視できないのが物価上昇と賃上げトレンドです。
近年、エネルギー価格や食品価格の高騰による実質賃金の伸び悩みが大きな課題となっています。そのため政府は「賃金の上昇が物価高に追いつく」ことを政策の柱とし、最低賃金の引き上げを強力に推し進めています。
また、2023年から2025年にかけて、春闘では大企業を中心に大幅な賃上げが実現しました。大企業だけでなく、中小企業にも賃上げの動きが波及していることを受け、物価と賃金のバランスを取るための基準として1,500円が位置づけられているのです。
関連記事:最低賃金1,500円はいつから?企業の半分が「無理」と考える理由
最低賃金引き上げが企業に与える影響
最低賃金の大幅引き上げにより、企業は人件費負担の増加に加え、労務管理の見直しを迫られています。人事部門から現場の管理職まで、それぞれに求められる対応を整理します。
人事が直面する実務対応
人事労務担当者は、10月(例年の目安)の改訂最低賃金の発効に向けて、以下の準備を進める必要があります。
まず、最優先は給与制度の見直しです。時給や月給の設定を新しい最低賃金に合わせて調整し、既存従業員の給与バランスが崩れないよう配慮しなければなりません。同時に、求人票の時給表示や採用条件も更新が必要です。
労働契約書や就業規則の改定も欠かせません。給与システムの設定変更や、人件費増加による予算への影響をシミュレーションすることも必要です。これらの準備が遅れると、法令違反や労使トラブルにつながる恐れがあるため注意が必要です。
国の制度を活用して負担を軽減
最低賃金引き上げによる人件費負担は、以下に挙げるような国の支援制度を活用することで軽減できます。
主要な支援制度一覧
- 業務改善助成金
最低賃金引き上げと生産性向上のための設備投資を同時に行う企業への助成制度 - 小規模事業者持続化補助金(賃金引上げ特例)
小規模事業者が賃上げを実施する場合に補助上限額を大幅に引き上げ - IT導入補助金(最低賃金近傍事業者優遇)
最低賃金近傍の従業員を多く雇用する企業に対する補助率の優遇措置 - 賃上げ促進税制
給与支給額を増加させた企業への法人税額控除制度 - キャリアアップ助成金
非正規雇用労働者の正社員化や賃金改定を支援する助成制度
これらの制度は併用可能な場合も多く、申請タイミングや要件を調整することで複数の支援を受けられる可能性があります。ただし予算枠に限りがあるため、検討企業は管轄の労働局や商工会議所に早めの相談が重要です。
関連記事:【社労士監修】2025年8月最新!中小企業向け補助金・助成金|わかりやすい完全ガイド
福利厚生でかなえる「第3の賃上げ」
最低賃金の引き上げや春闘による賃上げなど、賃上げ機運が高まる中、独自に賃上げを検討する企業が増えています。ここでは、コストを最小限に抑えながら実質的な賃上げが可能な「第3の賃上げ」について、その概要と魅力を解説します。
「第3の賃上げ」とは
「第3の賃上げ」とは、株式会社エデンレッドジャパンが定義した賃上げ手法のことで、定期昇給を第1、ベースアップを第2とした場合に、実質的な手取りアップや、生活支援の実現が可能な福利厚生を活用した実質的な賃上げ策です。
従来の賃上げでは、賃上げ分が課税対象となるため、従業員の実質的な手取り増加額は賃上げ額より小さくなります。一方、福利厚生を活用した賃上げの場合、一定の条件を満たすことで所得税の非課税枠を活用できるのが特徴です。
つまり、同額を給与と福利厚生で支給した場合、従業員の実質的な手取り額は福利厚生の方が多くなります。また、福利厚生として損金算入できるため、企業側は法人税の軽減効果が期待できます。
このように、従業員・企業双方にメリットをもたらす施策として、近年急速に認知度を高めているのが「第3の賃上げ」なのです。
関連記事:「第3の賃上げ2025」とは?福利厚生で実現する新時代の賃上げ戦略
3,000社以上が導入「チケットレストラン」
エデンレッドジャパンが運営する「チケットレストラン」は、従業員のランチ代を補助する食事補助の福利厚生サービスです。導入した企業の従業員は、全国25万店舗を超える加盟店での食事を実質半額で利用できます。
加盟店のジャンルは幅広く、コンビニ・ファミレス・三大牛丼チェーン店・カフェなど、利用する人の年代や嗜好を問いません。また、勤務時間中にとる食事の購入であれば、利用する場所や時間に制限がないのも魅力です。
さらに、一定の条件を満たすことによって所得税の非課税枠を活用できるため、従業員の実質的な手取りアップにも貢献します。
従業員のエンゲージメントやモチベーションアップによる生産性の向上も期待できるとして、すでに3,000社を超える企業に選ばれている人気の福利厚生制度です。
「チケットレストラン」の詳細は「こちら」からお問い合わせください。
関連記事:「チケットレストラン」の仕組みを分かりやすく解説!選ばれる理由も
最低賃金引き上げ時代に求められる対応と福利厚生の活用
2025年度の最低賃金は過去最大の引き上げ幅となり、すべての都道府県で1,000円を超える水準に達する見込みです。これは労働市場にとって前向きな動きである一方、企業にとっては人件費増という大きな課題を突きつけるものです。
とりわけ中小企業やサービス業では、採用・定着を維持しながら負担をどう軽減するかが経営上の焦点になります。こうした環境下では、直接的な賃金引き上げだけでなく、「チケットレストラン」をはじめとする福利厚生の強化による「第3の賃上げ」が現実的な対応策となります。最低賃金引き上げの波を好機と捉え、柔軟な制度設計を進めましょう。
参考記事:「#第3の賃上げアクション2025」始動、ベアーズが新たに参画~中小企業にこそ“福利厚生”による賃上げを! “福利厚生”で、より働きやすく、暮らしやすい社会へ~
:「賃上げ実態調査2025」を公開~歴史的賃上げだった2024年も“家計負担が軽減していない”は7割以上!
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エデンレッドジャパンブログ編集部
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