2024年4月より、医師の長時間労働に対して法令での上限規制が始まります。いわゆる医療の2024年問題です。この記事では、医療の2024年問題に焦点を当て、新しいルールやルールを守るための取り組みについて詳しく解説していきます。
医療の2024年問題とは?
2024年4月1日より、医師の働き方に対する見直しである「医師の働き方改革」が実施されます。長時間労働を防止することが目的です。勤務医の時間外・休日労働時間の上限規制と勤務医の健康を守るための新しいルールにより、医師が働きやすい労働環境を実現します。ただし、実施に向けて課題が多いため、医療の2024年問題として課題視されています。
▼厚生労働省による動画「医師の働き方改革 制度解説動画」はこちら
医療の2024年問題を政府が進める理由
医師をはじめとする医療従事者の長時間労働によって、今の日本の医療体制は支えられてきました。令和4年厚生労働省の医師勤務実態調査によると、勤務医の約20%が年間960時間を超えて時間外・休日労働しています。令和1年では約40%であり、減少傾向にはあるものの長時間労働が多いことは否めません。
今後、高齢者の増加により医療需要は高まり、生活習慣病が増えれば医療ニーズも変化するでしょう。少子高齢化が進む地域では、医師不足がより深刻になります。このような状況により、医師の長時間労働を見直し、持続可能な医療提供体制を構築する改革が推進されました。
出典:厚生労働省「医師の勤務実態調査」
医師が長時間労働となる3つの原因
医師が長時間労働を強いられる原因を解説していきます。
原因1.宿直中の時間が労働時間に含まれる
原則、勤務医の宿直中の待ち時間も労働時間に含まれることが長時間労働の原因の1つです。特例として、医療機関が労働基準監督署による宿日直許可を受けている場合、その宿日直に携わる時間は規制の対象となる労働時間には含まれません。これは、労働基準法により定められており、2024年4月より加わる時間外労働の上限規制により、宿日直許可を取得する医療機関は増えると予測されます。
原因2.業務内容が多い
勤務医は、診察に加えて、診断書作成・カルテ作成などの事務作業も行います。上司指示による研鑽(学会・院内勉強会等への参加や準備など)も労働時間に含まれるため、時間外労働を生じさせる要素が多いです。
原因3.複数の医療機関で働く医師が多い
複数の医療機関で働く医師が多いことも、医師の長時間労働の原因です。地域の医療を支えるために、大学病院や市中病院は医師を派遣しています。地域の方への地域医療提供のために不可欠な労働ですが、一方で医師の労働時間を増やしています。
2024年4月開始 医師の働き方の新ルール
ここからは、2024年4月1日より開始される医師の働き方の新しいルールを解説します。
A水準|雇用されて診療する全医師に適応
全勤務医に原則適用されるのが、A水準です。
- 時間外・休日労働時間の上限:年間 960 時間
連携B水準|地域医療確保のために派遣先で長時間労働する医師に適応
地域医療確保のために労働時間の上限が確保されたのが連携B水準です。時間外・休日労働時間については、派遣先での勤務時間を通算することが求められます。
- 時間外・休日労働時間の上限:年間 1,860 時間
B水準|地域医療確保のために自院で長時間労働する医師に適応
連携B水準同様、地域医療確保のために上限が確保されています。時間外・休日労働時間については、自院内で長時間労働が必要な医師が対象となります。
- 上限:年間 1,860 時間
C-1水準|技能向上に励む医師の長時間労働に適応
臨床研修医/専攻医の研修のために長時間労働が必要な場合に適用されるのがC-1水準です。
- 時間外・休日労働時間の上限:年間 1,860 時間
C-2水準|技能向上に励む医師の長時間労働に適応
C-2水準は、専攻医を卒業した医師の技能研修のために長時間労働が必要な場合に適用されます。
- 時間外・休日労働時間の上限:年間 1,860 時間
出典・参照:生き生き働く医療機関サポートWeb「医師の働き方改革〜患者さんと医師の未来のために〜」
時間外労働の上限を遵守しない場合の罰則
新しいルールを遵守しない場合、労働基準法141条により、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が医療機関に科せられます。罰則が科されるほど、働き方改革の推進は必須であることを理解し、新しいルールを守ることが大切です。
2024年4月開始 医師の健康を守る新ルール
2024年4月より開始される、医師の健康を守るための新しいルールを解説していきます。
面接指導
前述した全水準(A水準・B水準・C水準)に適用されるのが面接指導です。時間外・休日労働が月100時間以上と見込まれる場合、その勤務医は面接指導を受けなければなりません。
勤務インターバル・代償休憩
B・C水準に適用されるのが、勤務インターバルについてのルールです。(A水準は、努力義務となります。)勤務医が十分な休息時間を確保するために設定されました。細切れではなく、連続した休憩時間を確保し、業務と離れる時間を設けなければなりません。
ただし、緊急の業務には対応可能です。休息中に緊急の業務が発生した場合、医師は業務を行い、代わりに翌月末までにその勤務時間分の代償休憩を取得します。
出典・参照:いきいき働く医療機関サポートWeb「医師の働き方改革〜患者さんと医師の未来のために〜」
医師の働き方を見直すための4つの取り組み
勤務医の働き方には、緊急性の高い業務に携わるなど、労働時間や健康管理における課題が多いです。ここからは、医師の働き方を見直すための取り組みについて解説していきます。
1,業務の軽減|タスク・シフト/シェア
勤務医が行う業務を、専門性の高い業務に特化する取り組みがタスク・シフト/シェアです。タスクをシフト、すなわち外来での採血は臨床検査技師に、患者さんの搬送は医師事務作業補助者に任せます。特定行為研修(※)を受講した看護師は、患者さんの状態を見極め、タイムリーな対応で医師業務のサポートが可能です。
(※)厚生労働省によると「看護師が手順書により特定行為を行う場合に特に必要とされる実践的な理解力、思考力及び判断力並びに高度かつ専門的な知識及び技能の向上を図るための研修であって、特定行為区分ごとに特定行為研修の基準に適合するものであること。」です。
参考:厚生労働省「特定行為研修とは」
2,労働時間の管理を徹底|労働時間管理システムの導入
労働時間の上限を適切に管理できる仕組みを整えましょう。医師の労働時間の管理では、複雑なシフトや勤務形態に対応できる柔軟な仕組みが必要です。リアルタイムでの自動集計や上限によるアラート通知機能が付いているシステムを有効活用してください。
3,業務効率化|ICTの活用
ICT(Information and Communication Technology)とは、人とのコミュニケーションを目的とした技術です。オンライン診療・電子カルテなどの医療ICTの導入により、医療の大幅な業務効率化が図れます。
4,職場環境の改善|食事補助サービス「チケットレストラン」
より勤務医が働きやすい職場環境に整えることも、大事な取り組みです。持続可能な医療を提供するためには、働きやすい職場環境が欠かせません。
多様な勤務時間の医師が利用でき、健康維持にも役立つサービスとして注目されているのがエデンレッドジャパンの「チケットレストラン」です。全国の大手コンビニ・カフェなどで使用可能な専用のICTカードの配布により、勤務医のランチ・飲み物・お菓子・夜食の費用を半額補助できます。公平性の高さ・使い勝手のよさ・導入負担の少なさが評価されており、利用率98%・継続率99%を誇る福利厚生です。
医師が働きやすく持続可能な医療提供体制を構築
医療の2024年問題は、持続可能な医療提供体制を作るため、医療機関や医師だけでなく、患者も含めて真摯に取り組む必要があります。新しいルールを守り、医師の長時間労働を減らしましょう。医師の勤務環境の改善には、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」が役立ちます。2024年2月よりキャンペーンが実施される今、導入を検討してはいかがでしょうか。