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【社労士監修】福利厚生規定とは?必要な理由・記載項目・制度別作成ポイントを解説

公開日: 2026.03.27

更新日: 2026.03.27

【社労士監修】福利厚生規定とは?必要な理由・記載項目・制度別作成ポイントを解説

監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)

福利厚生規定は、企業が提供する法定外福利厚生の内容・対象者・条件を明文化したルールのことです。作成の法的義務はないものの、税務調査での経費認定やトラブル防止のために整備が求められます。本記事では、記載項目と制度別の作成ポイントを解説します。

福利厚生規定とは

福利厚生規定とは、企業が従業員に提供する法定外福利厚生の内容・利用条件・対象者を文書化したルールです。慶弔見舞金・食事補助・住宅手当・スポーツクラブ補助などを導入する際に作成します。

福利厚生には、法律で義務付けられた法定福利厚生(健康保険・厚生年金・労災保険・雇用保険など)と、企業が任意で設ける法定外福利厚生の2種類があります。規定が必要になるのは法定外福利厚生です。

法定外福利厚生について、規定の作成は義務ではありません。しかし、規定がないと税務調査や労使トラブル発生時の対応が難しくなります。「任意ならば」と後回しに考えるのではなく、制度導入と同時に規定を整備しましょう。

福利厚生規定が必要な3つの理由

福利厚生規定が必要とされる主な理由は、次の3点です。

理由1. 労使トラブルを防ぐ

「自分は対象だと思っていた」「聞いていた内容と違う」といった認識のズレは、規定がないと解決の糸口がありません。法定外福利厚生の内容・支給条件・対象者・金額を明確にしておくことで、トラブルが起きた際の判断基準になります。

理由2. 税務調査での経費認定の根拠になる

福利厚生費として計上した費用が「給与」と判断されると、企業側・従業員側に追加の税負担が発生します。福利厚生が経費として認定される条件の一つが、原則として「全従業員が利用できること」です。規定によって「全従業員を対象とした制度である」と証明できます。

理由3. 従業員に制度を知ってもらえる

従業員向けの制度をどれだけ充実させても、それが従業員に周知されなければ利用されることはありません。規定は、制度の内容を正確に伝えるための公式文書として、情報共有と周知を確実にするために必要です。

就業規則と福利厚生規定の関係

就業規則は労働条件全般を定める文書で、労働基準監督署への届出が必要です。福利厚生規定は、就業規則の一部として盛り込む方法と、就業規則に「詳細は別途定める福利厚生規程(※)による」と一文入れて独立した別規程として運用する方法があります。「別の文書だから届出不要」ではなく、制度を設けた時点で就業規則への記載義務が生じるという関係です。

※個々の条文を「規定」と呼び、そのまとまりの文書名として「福利厚生規程」と表記します。

従業員10名以上の事業場は就業規則の届出が必要

従業員が常時10名以上いる事業場は、就業規則を労働基準監督署に届け出る義務があります(労働基準法第89条)。

ここで押さえておきたいのが「相対的必要記載事項」という概念です。以下のような法定外福利厚生制度を企業が設ける場合、従業員の労働条件に直接かかわることから、その内容を就業規則に記載して届け出なければなりません。

就業規則へ記載が必要な法定外福利厚生制度:

  • 退職手当
  • 慶弔見舞金
  • 通勤手当
  • 住宅手当
  • 食事補助

参考:厚生労働省|就業規則を作成しましょう

就業規則本則に全て書く必要はない

就業規則の本則に「詳細は別途定める〇〇規程による」と委任条項を一文入れ、具体的な内容は別規程にまとめるのが実務的な方法です。制度の内容が変わっても別規程を修正するだけで済み、就業規則本則を都度変更する手間が省けます。

従業員10名未満でも就業規則を整える意味はある

届出義務はありませんが、規定を整備することで助成金申請・採用時のアピール・トラブル防止に活用できます。規模にかかわらず、制度を導入したタイミングで作成することをお勧めします。

福利厚生規定に記載する基本項目

制度を問わず、規定に盛り込む共通項目は以下の5つです。

項目 内容
目的 制度を設ける趣旨
対象者 雇用形態・勤続年数等の条件
施行日 規定の発効日
制度の内容 金額・利用範囲・申請方法
改廃 変更・廃止時の手続き

詳細は制度ごとに異なります。次のセクションで制度別に解説します。

関連記事:【社労士監修】「福利厚生をなくす」場合は不利益変更に注意!そのステップを解説

制度別・規定の必要性と記載ポイント

継続的に制度として設ける場合、福利厚生規定に対象者を明示することがトラブルの予防になります。 その点を踏まえて、規定の作成要否をまとめます。

制度 規定の必要性 基本項目以外で記載すべき項目
慶弔見舞金 必須 対象事由・

金額(事象の対象となる親族の続柄・役職・勤続年数による差異も明記)・支給方法・支給時期

食事補助 必須 企業負担額・利用するサービス
住宅手当・社宅 必須 条件・負担割合
生命保険(法人保険) 必須 保険の種類・支払者・保険負担割合・被保険者・受取人・退職時の扱い・従業員が一部負担する場合は徴収方法に関する記載
スポーツクラブ・フィットネス補助 推奨 対象施設・金額上限・申請方法・申請書類
福利厚生パッケージ 推奨 目的・対象
社員旅行・単発イベント 不要

慶弔見舞金規定

結婚祝金・出産祝金・弔慰金などについて、だれの・どの慶弔事に・いくら支給するかを定めます。支給金額が社会通念上の範囲を超えると給与課税扱いとなる可能性があるため、金額設定と規定の整合性を確認しておく必要があります。

食事補助

食事補助には、社員食堂をはじめとして、据え置き型の社食や自販機タイプ、食事補助チケットなど多様な形態があります。企業が費用を一部負担する場合、福利厚生規定への記載が必要です。

なお、食事補助を福利厚生費として計上するためには以下の要件を満たす必要があります。

※令和8年度税制改正の大綱では7,500円への引き上げ方針が記載されています(施行時期は別途確認が必要です。)

規定には対象者の範囲・企業負担額・従業員負担額・利用できるサービスや店舗の範囲を記載します。なお、現金で支給する食事手当は、原則として給与課税の対象です。

食事補助の記載例(外部の食事補助サービスを利用した場合)を参考に示します。

項目 具体的な内容
目的 従業員の食事代を補助し、福利厚生の充実を図る
対象者 直接雇用の正社員・契約社員(試用期間中を含む)
施行日 施行される日付
制度の内容 指定サービスを通じた現物支給等
企業負担額 月額◯円(税別)以内
従業員負担額 食事代の50%以上を給与天引きにて負担
改廃 必要に応じて制度の変更や廃止をすることがある

関連記事:【2026年版】食事補助とは?福利厚生に導入するメリットと支給の流れ

住宅手当・社宅

住宅手当は支給対象者・支給額・支給条件(通勤距離・住居形態など)を福利厚生規定に明記します。社宅の場合は入居条件・使用料の負担割合等を規定に含めます。

関連記事:【税理士監修】住宅手当は課税・非課税どちら?それぞれのケースや課税額を解説

生命保険(法人保険)

企業が契約者となる法人保険を福利厚生として活用する場合、規定の整備が特に重要です。

規定に記載すべき内容は以下のとおりです。

  • 目的(従業員の万が一に備えた保障であることを明示)
  • 被保険者の範囲(役員のみか、全従業員か。パート・アルバイトを含むかなど)
  • 保険料の負担割合と徴収方法(企業全額負担か、従業員一部負担かを明記) 
  • 加入方法(全員一律加入か任意加入か)※任意加入は給与課税扱いになる可能性あり
  •  保険金の受取人 
  •  退職時の扱い(解約返戻金の取り扱い) 

特に退職金との関係は明確化しておきましょう。養老保険などで満期保険金が発生する場合、「満期保険金を退職金として扱う」旨を退職金規定とあわせて明記しておかないと、保険金と退職金を二重で支払うリスクが生じます。

また、死亡保険金の受取人が遺族になっている場合、企業が「退職金として支払った」と考えていても遺族が「保険金を受け取った」と認識するケースがあります。規定で受取人・金額・性質を明確にしておくことがトラブル防止に有効です。                    保険の機能は企業ごとに多種多様です。内容の詳細については、従業員が自由に閲覧できる場所(紙資料やイントラネット上)にパンフレットを設置するとよいでしょう。

スポーツクラブ・フィットネス補助

健康経営の観点から導入する企業が増えている制度です。法的な記載義務はありませんが、福利厚生費として経費処理するには規定が根拠になります。

記載項目は以下のとおりです。

  • 補助の対象者
  • 対象施設の範囲(特定施設のみか、任意の施設か)
  • 補助額または補助率・上限額
  • 申請方法
  • 提出書類

対象施設を特定のジムチェーンに限定する場合と、任意の施設の領収書で申請する場合では規定の書き方が変わります。

関連記事:福利厚生で始めるヘルスケアサポート|人材定着と健康経営を両立する実践ガイド

福利厚生パッケージ・カフェテリアプラン

外部の福利厚生サービスを導入する場合、福利厚生規定に書く内容は最小限に絞り、詳細はサービス提供企業の会員規約に委ねる方法が合理的です。

規定に記載する内容は以下の5点が基本です。

  • 目的
  • 利用対象者(パート・アルバイトを含む等)
  • 家族の利用範囲(会員規約に合わせる)
  • 利用できなくなるケース(企業による解約・本人による不適切な利用等)
  • その他の利用方法(「詳細は会員規約に従う」等と明記)

家族の利用範囲については、業者によって対象範囲が異なります。事実婚や同性パートナーを含めるかどうかも業者の会員規約や各サービスの判断によるため、導入前に確認が必要です。

また、家族の利用は従業員本人の利用とみなされるため、その旨を周知しましょう。

会員規約は随時改定されます。福利厚生規程側に詳細を書きすぎると、改定のたびに規程も修正が必要になるため、委任条項を活用した簡易な規程が実務的です。

関連記事:福利厚生パッケージプランとは?5社比較・メリット・活用法【2026年版】

社員旅行・単発イベント

一過性のイベントは継続的な制度ではないため、規定の作成は必須ではありません。ただし毎年恒例の行事として継続する場合は、制度として整備するかどうかを検討しましょう。

関連記事:福利厚生の社員旅行は経費になる?3つの条件と必要な準備を解説

福利厚生規定の作成手順

実際に福利厚生規定を作成する際のステップを説明します。

ステップ1:導入目的を決める

従業員のサポート・採用力強化・定着率向上・健康経営推進など、何のために導入するかを明確にします。

ステップ2:福利厚生制度を選定する

目的に合った制度を選びます。このタイミングで、就業規則の本則に入れるか別規程にするかの形式も決めておきます。

ステップ3:福利厚生規定を作成する

選定の結果をもとに、福利厚生規定を作成します。福利厚生パッケージの場合は、会員規約への委任条項を活用した簡易な規程で対応できます。

ステップ4:全従業員に周知する

就業規則も変更する場合に必要なステップ

福利厚生規定と併せて就業規則も変更する場合は、以下も行います。

ステップ5:(従業員10名以上の場合)従業員代表の意見を聴取する

就業規則を作成・変更する際は、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見聴取が必要です(労働基準法第90条)。意見書を作成し、就業規則と併せて保管します。

出典:e-Gov 法令検索|労働基準法

ステップ6:(従業員10名以上の場合)労働基準監督署に届け出る

従業員10名以上の事業場は、改定後の就業規則および附属規定とともに 就業規則(変更)届と意見書を労働基準監督署に提出します。

福利厚生規定の作成後に必要な対応

福利厚生規定の作成後に必要な対応を4つ説明します。

賃金控除の労使協定を結ぶ

従業員負担が発生する福利厚生(食事補助の自己負担分の給与天引き、スポーツクラブの一部負担など)は、労働基準法第24条に基づき、賃金控除の労使協定を締結しなければ給与から差し引くことができません。協定なしで控除すると、監査時に是正勧告を受ける可能性があります。

賃金控除が発生するかどうかは、制度の内容によって異なります。導入前に確認しておきましょう。

出典:厚生労働省|労働基準法第24条(賃金の支払)について

関連記事:【社労士監修】労使協定とは?基礎知識と福利厚生導入の事例をわかりやすく解説

運用マニュアルを整備する

規定は「何ができるか」を定めるもので、「どう申請するか」までは記載されません。申請フロー・担当部署・処理手順を別途マニュアル化しておくと、担当者が変わっても運用が安定します。

定期的に福利厚生規定を見直す

法改正や社会情勢の変化に合わせて規定を改訂します。令和8年の税制改正では、40年以上ぶりに食事補助の非課税枠が見直されたように、税制改正が規定の内容に影響することもあります。年1回程度の確認が目安です。

出典:【税理士監修】食事補助の非課税上限が7500円へ!給与にしないための非課税の条件を解説

食事補助の福利厚生を始めるなら「チケットレストラン」

世界44カ国で使われている食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」。日本では食事補助の非課税枠引き上げが話題となっており、ますます注目度を高めています。

チケットレストラン」の加盟店は、全国25万店舗以上。大手コンビニなどの加盟店なら、24時間利用できます。直接雇用であれば、雇用形態を問わず食事補助の非課税枠の恩恵を受けられます。

いつでもどこでも公平に使える食事補助を契約締結から最短2週間で設計できます。現在導入企業4000社以上・従業員利用率98%、継続率99%という高い実績はサービスが支持を得ている証です。

なお導入にあたり、労使協定の締結が必要となります。

関連記事:チケットレストランの会社負担は原則月額3,500円!従業員50%以上負担ルールも徹底遵守

福利厚生に規定を設けて正しい運用を

福利厚生規定に法的な作成義務はありません。ただし、税務上のリスク回避・労使トラブルの防止・制度の周知のために整備が求められます。

従業員10名以上の事業場が慶弔見舞金・食事補助・住宅手当など一定の制度を設けた場合、就業規則への記載と労働基準監督署への届出が必要です。制度によって規定の必要性や内容は異なり、食事補助のように非課税要件の最新情報の確認が欠かせないものもあります。また、従業員負担が発生する場合は、賃金控除に関する労使協定の締結も必要です。

食事補助を考えるなら、食事補助の非課税ルールに基づいた仕組みを持つ「チケットレストラン」も選択肢の一つです。

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社会保険労務士 吉川明日香

社労士と民間企業の人事部で働くハイブリッド型社労士。労働者、経営者、人事担当者それぞれの視点から、バランスのとれたサポートを心がけています。子育て世代の生活環境や就業環境の課題を探るために保育士の資格を取得し、特定の専門分野を作らず、給与計算、手続き業務、労務相談、助成金等、幅広く実践的なアドバイスを行っています。
吉川社会保険労務士事務所
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