監修者:舘野義和(税理士・1級ファイナンシャルプランニング技能士 舘野義和税理士事務所)
福利厚生費として経費計上するメリットは、企業は節税ができ、従業員は企業負担分が非課税となることです。しかし、条件を1つでも満たさないと「給与扱い」となり、従業員の税負担が増えてしまいます。
本記事では、福利厚生費として認められる19の制度を、経費とならない事例を交えて解説します。
福利厚生費として認められる3つの大原則
福利厚生費として経費計上するには、以下3つの条件をすべて満たす必要があります。1つでも欠けると「給与」として従業員に所得税が課税されてしまうため、必ず押さえておきましょう。
原則1:全従業員が対象である
福利厚生費として認められるには、特定の従業員だけでなく、全従業員が利用できる制度である必要があります。
NG例:
- 役員だけが使える保養所
- 営業部だけの飲み会
- 管理職限定の健康診断
- 正規雇用者のみが対象の制度
OK例:
- 全従業員が利用できる社員食堂
- 全部署対象の懇親会(一部欠席者がいてもよい)
- 希望者全員が受けられる人間ドック
- 雇用形態を問わず利用できる制度
年齢制限(40歳以上対象の人間ドックなど)や勤続年数制限(入社3年以上など)は、合理的な理由があれば認められるケースがあります。ただし、恣意的に一部の従業員を除外するような制度設計は福利厚生費として認められません。
原則2:金額が社会通念上妥当である
福利厚生費の金額は、常識的な範囲内である必要があります。主な判断基準は次の3点です。
- 一般的な常識に照らして妥当か
- 業界の平均的な水準と比べてどうか
- 目的に対して適切な金額か
例えば、1泊2日の社員旅行に1人あたり数百万円かけるのは、明らかに常識の範囲を超えています。4泊5日で1人10万円程度なら妥当な範囲内と判断される可能性が高いでしょう。
福利厚生費には明確な金額上限が定められていない項目も存在します。税務調査で「高額すぎる」と指摘されないよう、社会通念上妥当な金額に抑えておくことが大切です。
原則3:現金や換金性の高いものでない
福利厚生はサービスや現物の提供が基本です。現金や換金性の高いものを支給すると、福利厚生とは認められず給与と同じ扱いになります。
NG例:
- 現金の支給
- 商品券
- ギフトカード
- クオカード
- カタログギフト(従業員が自由に商品を選択できるもの)
OK例:
- サービスの提供(社員食堂、健康診断など)
- 特定の現物支給(企業が指定した記念品など)
- ICカードでの食事補助(「チケットレストラン」など)
例外として、食事代や社宅など、一定条件下での現物支給が認められています。それぞれに細かい条件があるため、詳細は後述で解説します。
経費計上できる福利厚生19選
実務で活用できる福利厚生を19種類紹介します。それぞれの条件と、実務で陥りがちな注意点を押さえていきましょう。
1:昼食代(社員食堂・食事補助)
従業員に食事を提供する、もしくは食事代を補助する制度です。社員食堂の運営や、食事補助関連サービスの利用が該当します。
条件:
- 従業員の負担が50%以上であること
- 会社が負担する1か月の補助金額が3,500円(税抜)以下であること
食事補助で最も注意が必要なのは、3,500円を1円でも超えたら、超えた部分だけでなく全額が給与扱いになるという点です。従業員にとっては、福利厚生のつもりが所得税等の税負担増につながってしまいます。
2:残業時の食事代
残業や宿直時に従業員へ提供する食事代です。通常の食事補助とは別枠で扱われます。
条件:
- 勤務時間外の業務中に提供
- 常識的な範囲の金額
- 全従業員が対象
- 企業が全額を負担
- アルコールは対象外
残業時の食事は昼食代とは別枠で扱われ、以下のメリットがあります。
- 月3,500円の枠とは別に経費計上可能
- 従業員負担なし
- 毎日提供可能
国税庁の見解では、「残業または宿日直を行うときに支給する食事は、無料で支給しても給与として課税しなくてもよい」とされています。
また、勤務後の食事提供も認められますが、アルコールが含まれていると勤務中の食事として不適切で、福利厚生費として認められない可能性があります。実務では、飲食店での会食ではなく、 Uber Eats などでお弁当をデリバリーして現物提供するのがおすすめです。
3:企業に設置するお菓子・飲み物
給湯室や休憩室に置くコーヒー、お茶、お菓子などの費用は、福利厚生費として扱えます。
条件:
- 給湯室・休憩室で全従業員が利用可能
- 常識的な範囲の金額
対象となるもの:
- コーヒー・お茶
- お菓子・軽食
- 「オフィスグリコ」などの社内販売サービス
対象とならないもの:
- 特定の部署だけに置くお菓子
- 個人に配る菓子折り
従業員からの徴収は不要で、全額を福利厚生費で計上できます。最近では、従業員の小休憩やリフレッシュを目的に、このような制度を導入する企業も見られます。
4:忘年会・新年会・社内親睦会
従業員同士の親睦を深めるための飲み会やイベントの費用です。
条件:
- 全従業員に参加機会がある
- 参加率50%以上が目安
- 常識的な金額
- 社内の親睦が目的
全従業員に参加の機会があり、結果として一定数が参加していれば、欠席者がいても問題ありません。実務としては、社内の全体会議の後に懇親会を開催するなど、業務の一環として位置づけることで、全従業員が参加しやすくなります。
二次会の取り扱いには注意
二次会の取り扱いには注意が必要です。一次会のメンバー全員で二次会に行く場合、福利厚生費として経費計上できる可能性があります。しかし、一部の従業員だけで二次会に行く場合の費用は、現物給与とみなされる可能性が高いです。
また、以下のようなケースは、福利厚生費として認められない可能性があります。
- 高級店での過度な飲食
- コンパニオンを呼ぶ
- 1人あたりの金額が極端に高い
このようなケースでは「社会通念上の範囲」を超えると判断され、給与または交際費として処理しなければなりません。
取引先が参加する場合の費用は、以下の整理となります。
- 従業員だけの忘年会:福利厚生費
- 取引先を含む忘年会:交際費
同じ飲食費でも、対象者によって勘定科目が変わります。交際費には損金算入の制限があるため(資本金1億円以下の企業で年間800万円まで)、区別が必要です。
出典:国税庁|No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算
5:セミナー・研修参加費用
業務に直接関連しないスキル習得なら「福利厚生費」、業務上必要なスキルなら「研修費」「教育訓練費」として処理します。
対象となるセミナー・研修の例:
- 業務では使用しない英会話教室
- いつでも利用できるeラーニングサービスの費用
研修費の例:
- 研修に参加した内定者へ払う日当
- 業務に必要なセミナーに従業員が参加したときの受講料
- 業務に必要なオンライン研修費
- 研修に必要なテキスト代
6:保養所・別荘
従業員が利用できる保養所や別荘を所有・契約する費用です。
条件:
- 全従業員が利用できる
- 利用記録を残す
合宿や社員旅行、リフレッシュ休暇などに活用できます。福利厚生費扱いするには、従業員の利用記録が必要です。税務調査で「実態がない」と判断されると、経費計上を否認される可能性があります。
7:社宅
企業が物件を借りて従業員に提供する制度です。住宅補助の中でも節税効果が高い方法として知られています。従業員は市場価格より安く住め、企業は経費にできる、相互にメリットがある制度です。
条件:従業員が賃貸料相当額(※固定資産税の課税標準額等をもとに計算した金額)の50%以上を負担すること
※詳細な計算方法は税理士への相談をおすすめします。
参考として、住宅手当として給与に加算支給する場合は福利厚生費になりません。社宅は現物提供で「福利厚生費」扱い、住宅手当は給与扱いで所得税が課されます。
8:通勤手当
従業員の通勤にかかる交通費を支給する制度です。非課税の限度額内であれば、所得税・住民税・社会保険料がかからず、従業員の手取りが増えます。正規雇用の従業員だけでなく、パート・アルバイトも対象です。
非課税限度額:
- 公共交通機関:月15万円まで
- マイカー・自転車:距離に応じて異なる(詳細は以下表)
マイカー・自転車通勤者の通勤手当に関する非課税限度額:
| 片道通勤距離 | 1か月あたりの非課税限度額 |
| 2km未満 | 非課税限度額なし(全額課税) |
| 2km以上10km未満 | 4,200円 |
| 10km以上15km未満 | 7,100円 |
| 15km以上25km未満 | 12,900円 |
| 25km以上35km未満 | 18,700円 |
| 35km以上45km未満 | 24,400円 |
| 45km以上55km未満 | 28,000円 |
| 55km以上 | 31,600円 |
出典:国税庁|No.2582 電車・バス通勤者の通勤手当
出典:国税庁|No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当
限度額を超えた分は、給与として課税されます。例えば、月20万円の定期代を支給した場合、5万円(20万円-15万円)は給与扱いです。
9:出張手当(日当)
従業員が出張する際に支給する手当です。宿泊費や交通費とは別に、日当として一定額を支給できます。
条件:
- 出張旅費規程を作成する
- 社会通念上妥当な金額
例:旅費規程で「宿泊手当1泊2万円」と定めた場合
- 実際の宿泊費は1万5,000円
- 差額5,000円:従業員の小遣いになる
→この差額に税金はかかりません
適切に旅費規程を整備すれば、従業員に実質的な手当を非課税で支給できます。ただし、旅費規程がない状態で出張手当を支給すると、税務調査で「根拠がない」として否認される可能性があります。
そのため、以下の内容を盛り込んだ旅費規程を作成し、日当であることを明確にしましょう。
旅費規定に記載する内容:
- 支給対象となる出張の定義(距離や日数の基準など)
- 対象者(役職や雇用形態)
- 支給額(役職・距離・宿泊の有無別)
- 支給方法
取り扱いに悩むのが、新幹線や飛行機のチケットを、従業員が安いチケットショップで購入するケースです。この場合、旅費規程に基づいていれば非課税で、実費との差額が従業員のポケットに入ります。
10:社員旅行
従業員の慰安や親睦を目的とした旅行です。税務上のルールが細かく、国税庁の基準は以下のように定められています。
- 旅行期間:4泊5日以内(海外旅行の場合は現地滞在が4泊5日以内)
- 参加人数:全従業員の50%以上
- 金額:1人10万円程度が目安
これらの条件をすべて満たす必要があります。
家族が参加するケースは本人分のみが対象
社員旅行で注意が必要なのは、従業員の家族を連れて行った場合、家族分は福利厚生費として認められないという点です。
例:従業員30名+家族20名で旅行した場合
- 従業員分:福利厚生費として計上可能
- 家族分:現物給与として課税
税務調査では必ず参加者名簿をチェックされます。従業員数より参加者が多い場合、家族が含まれていると判断され、家族分は給与扱いになります。
不参加者への手当支給は全員が給与扱いに
「旅行に行けない従業員がかわいそうだから」と手当を支給すると、参加者・不参加者全員分が給与扱いになります。参加できない従業員には残念ですが、手当は支給せず、あくまで「全員に参加機会がある」状態を維持することが大切です。
11:資格取得支援
業務に必要な資格の取得費用を企業が負担する場合、福利厚生費扱いできます。
対象となる資格:
- 運転免許(車を使う業務)
- 英語研修(業務で英語が必要)
- 宅地建物取引士(不動産業)
- 一級・二級・木造建築士(建築業)
- その他業務に直結する資格
ただし、独立開業できる資格(税理士、弁護士など)は、個人の財産形成とみなされ対象外になる可能性があります。
また、資格を取得したら「10万円支給」のような資格取得奨励金は、現金支給のため給与として課税されます。
12:健康診断・人間ドック
年1回の定期健康診断は企業の義務であり、全額を福利厚生費で計上できます。一方、
人間ドックの費用は、希望者全員が対象(年齢制限は可能)で、著しく高額なものでなければ対象です。
13:スポーツクラブ
スポーツクラブの契約は、福利厚生費扱いできます。全従業員が使える法人会員契約であることが条件です。
14:レクリエーション費用
運動会、バーベキュー、社内イベント、釣り大会などにかかる費用も福利厚生として経費計上できます。
条件:
- 全従業員が参加できる
- 常識的な範囲の金額
15:永年勤続表彰
勤続10年、20年など節目に記念品を贈呈する制度です。
条件:
- 5年以上の間隔を空ける
- 社会通念上妥当な金額
- 現物支給(商品を指定)
国税庁への照会では、5年ごとの間隔をおいて実施する「永年勤続記念旅行券の支給」について非課税として取り扱って問題ないとの回答が示されました。毎年の表彰は認められない可能性があります。
また、旅行券など、特定の商品が対象となることもポイントです。具体的な商品を企業が指定して贈呈する必要があります。
出典:国税庁|永年勤続記念旅行券の支給に伴う課税上の取扱いについて
16:慶弔見舞金
従業員のために支出する、結婚祝い、出産祝い、香典、災害見舞金、傷病見舞金なども福利厚生費として非課税扱いとなります。
条件:
- 社内規定に基づく
- 妥当な金額
実務上では、領収書はないことが多いでしょう。結婚式なら、招待状に「5万円」とメモして保管すれば証拠になります。
17:社内販売(社販)
自社商品を従業員に割引価格で販売する制度です。条件は、おおむね3割引までであることです。3割を超える割引は現物給与として課税されます。
18:制服の支給
業務用の制服を企業が支給すると、福利厚生費として処理できます。対象となるのは、職場のみで着用する制服や作業服などその業種に欠かせないものに限られます。
制服や作業服のクリーニング代も福利厚生費としての扱いが可能です。ただし、一部の従業員のみが負担している場合は「給与」扱いとなる可能性があります。
19:企業型確定拠出年金・iDeCo+
従業員の退職金を積み立てる制度も福利厚生費として経費処理できます。
例えば、「iDeCo+」は中小企業の事業主が従業員のiDeCo掛金に上乗せして拠出できる制度で、福利厚生の一環として活用できます。
事業主が拠出した掛金は福利厚生費として全額経費計上(損金算入)できるため、税の負担軽減となり、従業員の将来への備えも強化できます。
出典:iDeCo公式サイト
福利厚生費として経費計上できる「チケットレストラン」
ICカード型食事補助として、食事補助非課税の条件を自動でクリアできるのがエデンレッドジャパンの「チケットレストラン」です。
主な特徴:
- 食事補助の非課税枠を最大に活用した仕組み
- 企業負担と従業員負担は、原則それぞれ月額3,500円(税別)
- 全国25万店舗以上のコンビニやチェーン店が社員食堂代わりに
- 導入・運用が簡単(月1回のチャージのみ)
食事補助の非課税枠を活用することで、企業は経費計上でき、従業員は手取りが増える仕組みです。
利用実績の高さは、注目に値します。導入企業での利用率は98%、継続率は99%、従業員満足度も93%です。「制度を作っても使われない」福利厚生がある中、「チケットレストラン」はほぼ全員が日常的に活用している点が最大の特徴です。
出典:「チケットレストラン」の仕組みを分かりやすく解説!選ばれる理由も
福利厚生費は慎重、かつ積極的に活用しよう
福利厚生費として経費計上することで、従業員満足度を高めながら節税できます。ただし、条件を誤ると従業員の税負担増になるため注意が必要です。
「全従業員を対象にする」「金額は社会通念上妥当な範囲」「現金・換金性の高いものは避ける」という原則を守り、社内規定を整備し、記録を残して適切に運用しましょう。
福利厚生の中でも食事補助は、従業員のニーズが高く、毎日利用できるため満足度の高い福利厚生です。「チケットレストラン」のようなサービスを活用すれば、複雑な条件を満たしながら簡単に導入できます。
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税理士 / 1級ファイナンシャルプランニング技能士 舘野義和
宅配便配送員、自販機ベンディング作業、駅構内配送など)、コンサルティング会社・通販会社にて勤務を経て、税理士を目指し、今に至る。
1級FP や日商簿記1級、宅建資格も持ち、幅広い視野と知見でサポートしています。
