賃上げを表明している企業一覧を確認することで、2024年の動向が見えてきます。2023年に続き今年も賃上げは期待できるのでしょうか?企業規模や業界ごとに異なる見通しについても見ていきましょう。
定期昇給やベースアップによる賃上げが難しい場合に役立つ、第3の賃上げについても解説します。
賃上げを表明した企業一覧
2024年1月24日に「経団連労使フォーラム」が開催されました。「構造的賃金引上げ」をテーマに開催されたこのフォーラムから、2024年の春闘が事実上スタートしています。
現時点で賃上げを表明しているのはどのような企業なのでしょうか?まずは賃上げを表明している企業をチェックしましょう。
- サントリーホールディングス
- キリンホールディングス
- ビックカメラ
- 日本生命
- 第一生命ホールディングス
- 明治安田生命
- 住友生命
- イオン
- 伊藤忠商事
- みずほフィナンシャルグループ
- すかいらーくホールディングス
加えてそれぞれの企業の意向も見ていきます。
サントリーホールディングス
サントリーホールディングスは2023年10月の時点で、2024年に月額ベースで7%の賃上げ実施を表明しています。2023年にも平均約7%の賃上げを実施しているため、2年連続の賃上げです。
同水準の賃上げを実施するのは、同社が人材を最も重要な経営基盤であると位置づけていることと関係しています。
キリンホールディングス
キリンホールディングスでは、総合職1,800人ほどを対象に、月額ベースで約6%の賃上げを実施する方針です。併せて2024年に入社する新入社員の初任給引き上げについても春闘で協議される予定となっています。
ビックカメラ
ビックカメラは2023年10月の時点で8年連続のベースアップを実施する方針を発表しています。例年より早いタイミングでの発表は、スムーズな人材確保が目的です。
賃上げの対象となるのは約4,600人の正社員で、月額2万~3万円の賃上げを予定しています。加えて新卒の初任給も引き上げる予定です。都心部では大卒が13.5%の引き上げで25万2,000円に、高卒が16%の引き上げで21万6,500円になります。
日本生命
日本生命は2023年に引き続き2024年も同水準の賃上げを実施する方針です。営業職員約5万人が約7%の賃上げの対象となります。2023年は育成期間を終えた人材に重点を置いた賃上げが実施されましたが、2024年は勤続5年以内の育成期間中の人材に重点を置く計画です。
加えて内務職員に対しても賃上げの方針を発表しています。こちらも2023年に約5.5%の賃上げを実施しており、2年連続の引き上げです。
第一生命ホールディングス
第一生命ホールディングスでは、中核子会社の第一生命保険に所属する営業職員を含む従業員約5万人を対象に、7%の賃上げを実施する方針です。
7%の賃上げには1人あたり50株の自社株の交付分も含まれています。従業員の「経営に参画している」という意識を高める狙いがある施策です。
明治安田生命
明治安田生命は人材の定着や獲得を目指し、内勤の従業員約1万人に対して、平均7%ほどの賃上げを実施する方針です。人事制度の変更に加え、業績に応じた数十万円の特別手当を支給することにより、賃上げを行います。
さらに若手職員に対しては、全体的な待遇アップを行い、平均で15%ほどの賃上げを実施する計画です。
住友生命
住友生命は営業職員3万2,000人ほどを対象に、同社の主力商品である健康増進型保険の契約件数に応じて平均7%の賃上げを実施する方針です。実現すると、営業職員に対する賃上げは2年連続で5%を超えます。
また営業職員以外の約1万人の従業員に対する賃上げは検討中です。
イオン
グループ従業員の約80%がパート従業員のイオンでは、国内の子会社約150社で働くパート従業員約40万人を対象に、時給を平均約7%揚げる賃上げを実施予定です。加えて正社員として勤務する従業員の賃上げも、定期昇給やベースアップで7%に近づける方針を発表しています。
伊藤忠商事
伊藤忠商事は全社員の給与を平均6%賃上げする方針です。これまでは業績連動型のボーナスで賃上げを実施してきましたが、2024年は給与アップで引き上げる考えを公表しています。
加えて初任給は一律で5万円の引き上げを実施することで、大学卒の総合職を30万5,000円とします。待遇改善により、人材獲得において外資系企業との競争力を備え、採用につなげる計画です。
みずほフィナンシャルグループ
みずほフィナンシャルグループは2023年を上回る7%ほどの賃上げを目指す方針を表明しています。さらに新卒の初任給は13年振りに引き上げられ、20万5,000円から26万円になるそうです。新卒と入社数年の若手従業員の給与が逆転しないよう、若手を対象とした賃上げも検討されています。
すかいらーくホールディングス
2023年春闘において、過去10年で最大の4.38%の賃上げを行ったすかいらーくホールディングスは、2024年も同水準以上の賃上げを行う意向です。経済の好循環を実現するには、賃上げと適正な価格転換が必要不可欠という考えから、賃上げを行うものと見られます。
2024年の賃上げの見通し
賃上げを表明した企業一覧では、2023年を超える賃上げを実施する企業が多数見られました。中には7%や、若手従業員に対する施策として15%の賃上げを実施予定の企業もあります。
ただし一覧であげた企業は全体のごく一部です。東証プライム上場クラス企業について、労務行政研究所が行った労使や専門家478人に対する「賃上げ等に関するアンケート調査」では、2024年の賃上げは定期昇給とベースアップを合わせて平均3.66%と予測されています。
2023年の予測である3.60%を上回る結果です。
参考:労務行政研究所|労使および専門家の計 478 人に聞く2024 年賃上げの見通し
実質賃金はマイナスの可能性
2024年も2023年と同水準の高い賃上げ率が期待されていますが、実質賃金がプラスになるのはまだ先になりそうだという予測もされてます。
みずほリサーチ&テクノロジーズの「2024年春闘賃上げ率の見通し」は、2024年春闘での賃上げ率を3.8%と予測しています。高い賃上げ率ではありますが、定期昇給分を除くベースアップ分は2.0〜2.2%程度です。一方インフレ率は2%を超えて推移すると考えられています。
賃上げを実施していてもインフレの進行に追いついておらず、実質賃金はプラスになっていないというケースも見られるでしょう。
参考:みずほリサーチ&テクノロジーズ|2024年春闘賃上げ率の見通し
中小企業を中心に賃上げが難しい企業も
全体的には高い賃上げ率が期待できる2024年ですが、必ずしも全ての企業が賃上げを実施できるわけではありません。中には賃上げができない企業もあります。ここでは東京商工リサーチが実施した「賃上げに関するアンケート」をもとに、企業規模や産業別の賃上げの見通しを見ていきます。
参考:東京商工リサーチ|来春の賃上げ「2023年超え」は 1割にとどまる 原資の確保には 「価格転嫁」「人材開発」を重視
企業規模別の賃上げ動向
賃上げへの対応は企業規模によって異なります。資本金1億円以上の大規模な企業と、資本金1億円未満の中小企業を比較すると、「賃上げできそうにない」と回答した割合は中小企業の方が高い結果です。
全体的には2023年に引き続き賃上げを実施する企業が多い傾向ですが、中小企業を中心に賃上げが難しい企業も多くあると考えられます。
2023年を超えそう |
2023年と同程度になりそう |
2023年を下回りそう |
賃上げできそうにない |
|
全体 |
11.61% |
51.58% |
19.73% |
17.07% |
資本金1億円以上 |
14.13% |
55.85% |
20.75% |
9.27% |
資本金1億円未満 |
11.34% |
51.11% |
19.62% |
17.93% |
産業別の賃上げ動向
産業によっても賃上げの動向は異なります。2023年と同程度か超える賃上げを期待できる割合が高いのは「建設業」「小売業」「卸売業」です。一方、賃上げできそうにない割合が高いのは「農・林・漁・鉱業」「情報通信業」「不動産業」です。
「情報通信業」と「不動産業」は2023年を超えそうと予測している企業の割合が高い半面、賃上げできそうにない企業の割合も高く、産業内で二極化していることが考えられます。
2023年を超えそう |
2023年と同程度になりそう |
2023年を下回りそう |
賃上げできそうにない |
|
農・林・漁・鉱業 |
8.69% |
52.17% |
13.04% |
26.08% |
建設業 |
10.69% |
56.44% |
17.29% |
15.56% |
製造業 |
9.95% |
51.30% |
23.85% |
14.89% |
卸売業 |
12.06% |
51.94% |
20.33% |
15.65% |
小売業 |
11.21% |
55.60% |
17.07% |
16.09% |
金融・保険業 |
9.09% |
48.48% |
18.18% |
24.24% |
不動産業 |
17.59% |
46.29% |
11.11% |
25.00% |
運輸業 |
11.22% |
50.80% |
22.99% |
14.97% |
情報通信業 |
15.63% |
42.18% |
17.09% |
25.09% |
サービス業他 |
13.11% |
50.86% |
15.27% |
20.74% |
全体 |
11.61% |
51.58% |
19.73% |
17.07% |
賃上げが難しい場合に役立つ取り組みは?
全体的には賃上げが行われる傾向ですが、中小企業を中心に賃上げが難しい企業や、賃上げができたとしても2023年よりは下回りそうな企業もあると考えられます。
定期昇給やベースアップが難しい状況でも、インフレ対策を行い従業員の負担を軽減したいと考えている場合に役立つのが、福利厚生を通じた「第3の賃上げ」です。
ここでは「第3の賃上げ」の仕組みやメリットに加え、具体的な福利厚生として食事補助サービスの「チケットレストラン」を紹介します。
関連記事:“福利厚生”で実質手取りアップと高いエンゲージメントの実現を「#第3の賃上げアクション」プロジェクト
第3の賃上げとは
エデンレッドジャパンでは賃上げを以下のように分類し、第3の賃上げを定義しました。
- 第1の賃上げ:勤続年数や従業員の成績などの基準に基づいて行われる定期昇給
- 第2の賃上げ:基本給が上がるベースアップ
- 第3の賃上げ:実質的な手取り額を増やせる福利厚生サービスを活用した賃上げ
第3の賃上げは福利厚生とその非課税枠を活用することで、実質的な賃上げにつなげる取り組みです。どのような仕組みで賃上げできるのか、詳しく解説します。
第3の賃上げの仕組みをチェック
「第1の賃上げ」「第2の賃上げ」で給与が上がると、従業員が負担する税金や社会保険料が上がります。
仮に月1万5,000円の賃上げが行われたとしても、実際に従業員が受け取れるのは、税金や社会保険料を差し引いたあとの金額のみです。賃上げの実感を得られないと感じる従業員もいるかもしれません。
一方「第3の賃上げ」では食事補助や社宅などの福利厚生を活用します。企業が従業員に支給する現金や物品などは原則として給与となり所得税がかかる決まりです。ただし一定の要件を満たした上で支給する特定の福利厚生には税金がかかりません。
「第1の賃上げ」「第2の賃上げ」と同額の福利厚生を導入した場合、従業員の実質的な手取り額は、税金がかからない分「第3の賃上げ」の方が高くなります。
出典:“福利厚生”で実質手取りアップと高いエンゲージメントの実現を「#第3の賃上げアクション」プロジェクト
第3の賃上げのメリット
「第3の賃上げ」は企業にもメリットのある取り組みです。食事補助や社宅などを導入すれば、かかった費用を福利厚生費に計上できるため、法人税額の計算に用いる課税所得が下がり、法人税額も下がります。
少額から試せるのも魅力です。賃上げの実施は大きな予算が必要なケースが多いため、企業規模によっては難しいこともあります。少額から試せる「第3の賃上げ」は、規模によらず実施しやすい取り組みです。
また人材の確保にも役立ちます。今いる従業員の定着率アップはもちろん、採用時には他社との差別化も可能です。
第3の賃上げにおすすめ「チケットレストラン」
賃上げを検討しているけれど、定期昇給やベースアップは難しいと考えているなら、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」を導入し「第3の賃上げ」に取り組んでみてはいかがでしょうか。
全国に25万店舗以上ある加盟店で利用できる食事補助サービスです。どこで働いていても近くにある店舗や「 Uber Eats 」による配達を利用できるため、全従業員が公平に使えます。
99%以上の従業員が利用し、満足度も93%と高いサービスで、実質的な手取り額アップを実現可能です。
2024年も高水準の賃上げが行われる予測
インフレが続き、人材確保の難易度も上がる中、2024年の春闘でも賃上げは2023年と同水準かそれ以上で行われる見通しです。ただし中小企業を中心に「賃上げの実施は難しい」と考えている企業もあります。
定期昇給やベースアップが難しい企業でも取り組みやすいのは、福利厚生の活用で実質的な手取り額を増やす「第3の賃上げ」です。一定の要件を満たしつつ福利厚生を導入すると、同額の定期昇給やベースアップより手取り額を増やせます。
「第3の賃上げ」を検討しているならエデンレッドジャパンの「チケットレストラン」がおすすめです。