監修者:吉川明日香(社会保険労務士・ 吉川社会保険労務士事務所)
178万の壁は「令和8年度税制改正の大綱」に盛り込まれ、2026年の給与から適用されることとなりました。ただし178万の壁は所得税がかかり始める年収の壁で、社会保険がかかり始める年収の壁は別に存在します。178万の壁の範囲内で勤務しても、社会保険は扶養から外れることもある点について、見ていきましょう。
178万の壁についてよくある質問
「令和8年度税制改正の大綱」に盛り込まれた178万の壁により、企業や企業で働く従業員にはどのような影響があるのでしょうか。よくある質問をチェックしましょう。
178万の壁はいつから適用される?
178万の壁は2026年の給与から適用されます。企業で働く従業員の約80%にあたる、年収665万円以下の人が対象です。
関連記事:【税理士監修】2026年度「税制改正大綱」を完全解説!何が変わる?押さえるべき15のポイント
178万の壁で社会保険はどうなる?
178万の壁は、所得税がかかり始める年収の壁です。社会保険への加入が必要となる年収の壁である、106万の壁・130万の壁は別にあります。178万の壁の範囲内で勤務していても、106万の壁・130万の壁を超えると、社会保険への加入が必要です。
関連記事:【税理士監修】178万の壁とは?社会保険加入との関係やメリット・デメリット
年収の壁とは
年収の壁とは、所得税の課税や社会保険への加入が必要となることから、就業調整が発生しやすい年収のことです。複数ある年収の壁は、超えるとどうなるのでしょうか。ここでは一覧で紹介します。
関連記事:【2026年1月最新】新しい年収の壁はいつから適用?今後の動向も解説
年収の壁を超えるとどうなる?
年収の壁を超えると、従業員は税金や社会保険料の負担が増えるため、額面の給与は上がっているにもかかわらず、手取り額が少なくなる可能性があります。
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年収の壁 |
発生する負担 |
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106万円の壁 |
社会保険への加入 |
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110万円の壁 |
住民税の課税 |
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130万円の壁 |
国民健康保険・国民年金保険への加入 |
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160万円の壁 |
所得税の課税(2025年分に適用) |
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178万円の壁 |
所得税の課税(2026年分から適用) |
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201万円の壁 |
配偶者特別控除がなくなる |
178万の壁とは
178万の壁は、「令和8年度税制改正の大綱の概要」に盛り込まれた新たな年収の壁です。所得税がかかり始める年収の壁について、適用される時期や、178万円の根拠について解説します。
関連記事:【税理士監修】178万の壁とは?社会保険加入との関係やメリット・デメリット
178万の壁はいつから?
所得税の課税が始まる「178万円の壁」は、2026年から始まることが「令和8年度税制改正の大綱の概要」に盛り込まれました。企業で働く従業員の80%にあたる、年収665万円以下の人が対象です。
基礎控除と給与所得控除の引き上げにより、パートやアルバイトの働き方への影響に加えて、正社員の所得税の負担軽減にもつながります。
所得税に関する年収の壁は、103万の壁として1995年に設定されました。基礎控除48万円と給与所得控除55万円を合わせた103万円まで(2019年までは基礎控除38万円と給与所得控除65万円)の収入には、所得税がかからない仕組みです。
103万の壁は、2025年に160万の壁になり、2026年には178万の壁となります。
関連記事:【税理士監修】103万円の壁撤廃はいつから?メリット・デメリットも解説
所得税の課税が178万円からとなる根拠
所得税がかかり始める年収を178万と設定したのは、1995年に決まった「103万円の壁」と最低賃金の上昇率にあります。
厚生労働省の「地域別最低賃金に関するデータ(時間額)」と「地域別最低賃金の全国一覧」によると、1995年から国民民主党が年収の壁引き上げを政策として打ち出した2024年までに、最低賃金は611円から1,055円へと約1.73倍に上昇しました。
この比率で、103万円をもとに所得税がかかり始める年収を算出すると、178万円となります(103万円×1.73≒178万円)。
参考:厚生労働省|地域別最低賃金に関するデータ(時間額)、地域別最低賃金の全国一覧
178万の壁と社会保険の関係
178万の壁は所得税がかかり始める年収の壁です。他にも社会保険へ加入し始める年収の壁もあります。ここでは社会保険に加入し始める年収の壁についてチェックしましょう。
社会保険の扶養から外れる年収
社会保険に関わる年収の壁は、106万の壁・130万の壁の2種類です。2026年1月時点では、従業員51人以上の職場であれば、後述の要件を満たしている場合、年収106万円を超えている従業員は勤務先で社会保険へ加入しなければいけません。
従業員数50人以下の職場であっても、年収130万円を超える従業員は、配偶者や親の扶養から外れて、国民年金や国民健康保険へ加入する必要があります。
178万の壁の範囲内で勤務していても、106万の壁や130万の壁を超えて働くと社会保険料の負担が発生するため、手取り額が少なくなるケースもあるでしょう。
106万の壁は撤廃予定
2026年1月時点において、年収106万円を超えて以下の条件を満たしていると、勤務先の社会保険へ加入しなければいけません。
- 従業員51人以上の企業に勤務している
- 年収106万円(月8万8,000円)を超えている
- 週20時間以上勤務している
- 2カ月を超える雇用の見込みがある
- 学生ではない
「年収106万円(月8万8,000円)を超えている」という賃金要件は、最低賃金の上昇により週20時間働くと賃金が月額8万8,000円を超える地域が増えたことから、2026年10月の廃止が決まっています。
また、企業規模に関する要件は、以下のように段階的に廃止されていく計画です。
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企業規模要件の変更タイミング |
変更後の企業規模要件 |
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2024年10月 |
従業員51人以上 |
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2027年10月 |
従業員36人以上 |
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2029年10月 |
従業員21人以上 |
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2032年10月 |
従業員11人以上 |
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2035年10月 |
従業員10人以下 |
「週20時間以上勤務している」ことが新たな年収の壁として働く恐れはあるものの、106万の壁はなくなっていきます。
関連記事:【税理士監修】106万円の壁撤廃はいつから?撤廃でどうなるか影響を解説
参考:厚生労働省|社会保険適用拡大特設サイト|事業主のみなさま
178万の壁に対して企業が取るべき対応
2026年の給与から、所得税がかかり始める年収は178万円となり、新たに178万の壁ができます。この動きに対して、企業ではどのような対応が必要なのでしょうか?
社内制度をチェックする
まずは現状の社内制度を確認しましょう。現在の制度やルールに変更が必要な可能性があります。例えば、就業規則にパートやアルバイトが長時間働きにくくなるような内容があれば、見直しを検討するとよいでしょう。
また178万の壁になったことで、パートやアルバイトの働き方が変わるかもしれません。従業員の雇用状況や社会保険の加入状況について現状を把握した上で、希望の働き方についてヒアリングしましょう。
制度について従業員へ説明する
所得税に関する年収の壁が178万円に引き上げられることで、実際にどのような変化があるのかを従業員に説明することも必要です。「もっと働きたい」と考えているけれど、制度の仕組みを把握できておらず現状維持を選んでいる従業員もいるかもしれません。
どこまでなら所得税がかからないまま働けるのか、社会保険への加入はどこから必要になるのか、自社の状況に合わせて説明する資料やマニュアルを用意しておくとスムーズです。
「年収の壁・支援強化パッケージ」の活用を検討する
178万の壁となり、社会保険に加入するパートやアルバイトが増える企業もあるでしょう。従業員が年収の壁を意識することなく働きやすい環境を整備するには、国が用意している「年収の壁・支援強化パッケージ」の活用が有効です。
106万の壁対策には、「キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)」が役立ちます。年収106万円を超えても、すぐには手取り額が減らないようにするための助成金です。
企業が対象となる従業員に社会保険適用促進手当を支給すると、社会保険料相当額を上限に、従業員1人につき最大50万円の支援を受けられます。また労働時間の延長によって社会保険を適用させる場合には、従業員1人につき最大30万円の助成額です。
130万の壁への対応には、被扶養者認定を検討するとよいでしょう。繁忙期や人手不足によって、やむを得ず年収が130万円を超えた場合には、企業が証明することで、期限付きで被扶養者認定を受けられる可能性があります。
関連記事:【社労士監修】年収の壁対策はキャリアアップ助成金を活用!待遇改善に役立つ福利厚生も
参考:厚生労働省|キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)
178万の壁に対応しよう
2026年から、年収665万円以下であれば、所得税がかかり始めるのは年収178万円からとなりました。ただし、社会保険に加入し始める106万の壁・130万の壁は存在しています。パートやアルバイトの中には、社会保険を意識して就業調整を行う従業員もいるでしょう。
この変化に対応するには、社内制度のチェックと、従業員への分かりやすい説明が欠かせません。あわせて社会保険に関係する年収の壁を意識することなく働きやすいよう、「年収の壁・支援強化パッケージ」の活用も検討するとよいでしょう。
また、所得税の非課税枠を活用できる福利厚生の導入も有効です。例えば、食事補助は一定の要件を満たして導入すると、従業員の納める所得税額を増やすことなく支給できるため、実質的な手取りアップにつながります。
この仕組みの利用には、ソフトやアプリのセットアップといった手間をかけることなく導入可能な、エデンレッドジャパンの提供する食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」を検討してみてはいかがでしょうか。
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社会保険労務士 吉川明日香
