ベースアップの平均を知ることは、自社の賃上げを検討する際の欠かせないステップです。物価上昇や人手不足が深刻化する近年、企業にとってベースアップを含む賃上げは避けて通れない経営課題といえるでしょう。そこで本記事では、2025年の最新春闘データをもとに、ベースアップの企業規模別平均額やその背景・制度の詳細・企業の対応策までを網羅的に解説します。賃上げの代替策として人気の福利厚生も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
2025年のベースアップ平均は?最新の春闘データから見る水準
2025年の春季労使交渉(春闘)は、主要企業の回答が出揃い、大勢が明らかになりつつあります。まずは、2025年5月時点で公開されている情報をもとに、企業規模別のベースアップ平均や賃上げ率の傾向を解説します。
大手企業のベースアップ平均
連合が2025年5月に公表した春季生活闘争の第5回集計によると、組合員数300人以上の大手組合の平均賃上げ率は5.36%となり、前年(2024年)同時期の5.22%を上回りました。
平均引き上げ額は17,145円に達しており、インフレ下においても実質賃金を維持・改善しようとする企業の意欲がうかがえます。
「賃金改善分(ベースアップ相当)」の平均からは、賃上げ率3.76%・引き上げ額12,121円と、定期昇給を上回る規模で恒常的な賃金引き上げがおこなわれている現状が明らかとなりました。全体として、大手企業が率先して高水準の回答を出している傾向がうかがえます。
中小企業のベースアップ平均
同じく連合の第5回集計によると、組合員数300人未満の中小組合の平均賃上げ率は4.93%、引き上げ額は13,097円となりました。2024年同時期の水準(4.66%・11,889円)と比較しても明らかに上昇しており、過去最高水準です。
「賃金改善分(ベースアップ相当)」に限っても、賃上げ率3.61%・引き上げ額9,769円と、前年(3.22%・8,461円)を大きく上回っており、物価高騰や採用競争の激化を受けて、中小企業でも恒常的な賃金水準の引き上げが重視されていることがわかります。
大手との格差はややあるものの、その差は縮小傾向にあります。
ベースアップとは?定期昇給との違いをチェック
「ベースアップ(ベア)」は、「定期昇給(定昇)」と並ぶ賃上げの代表的な手法のひとつです。ここでは、ベースアップへの理解をより深める一助として、ベースアップと定期昇給、それぞれの基本的な仕組みと特徴・具体的な違いについてわかりやすく解説します。
ベースアップとは?
「ベースアップ」とは、企業がすべての従業員の基本給水準を一律に底上げする昇給制度です。個人の評価や勤続年数には関係なく、全従業員が等しく給与増額の対象となります。
ベアによって上昇した基本給は、その後の賞与や退職金、社会保険料の算定にも直接的に反映されるため、企業にとっては継続的な人件費負担の増加につながる制度です。
一方で、ベースアップは、物価の高騰などにともなう実質的な手取り額の減少への対応策として、従業員の生活を安定させる役割も担っています。
原則として、春季労使交渉(春闘)などを通じ、労働組合と経営側の間で実施の可否や引き上げ額が決定されますが、経営状況や社会情勢に鑑み、実施されないケースもあります。
関連記事:ベースアップと賃上げの違いとは?人件費戦略の基本をわかりやすく解説
定期昇給とは?
「定期昇給」は、年齢や勤続年数、業績評価などに応じて個別に基本給が上がる昇給制度です。企業の人事制度の一環として、多くは年1回おこなわれます。
全従業員に一律で適用されるベースアップとは異なり、あくまでも個々人のモチベーション維持やキャリア形成を目的とし、それぞれの評価に基づいておこなわれるのが特徴です。
なお、制度上は定期昇給をしていても、物価上昇など外部環境への対応としては力不足となるケースが少なくありません。そのため、近年では定昇に加えてベアの実施を求める声が高まっています。
ベースアップと定期昇給の違い
ベースアップと定期昇給は混同されがちですが、実施目的・影響範囲・実施頻度などの面で明確に異なります。それぞれの制度の違いについて、以下にわかりやすくまとめました。
項目 | ベースアップ(ベア) | 定期昇給(定昇) |
---|---|---|
対象 | 全従業員一律 | 個別(評価・勤続年数などに応じて) |
賃金の上がり方 | 基本給の水準を恒常的に底上げ | 号俸やランクに沿った段階的な昇給 |
賞与・退職金・ 社会保険への影響 |
直接影響あり (基準額が上がる) |
間接的影響あり (基本給が上がれば結果的に反映) |
実施頻度 | 春闘などを通じて不定期に実施 | 年1回など制度により定期的に実施 |
目的 | 企業全体の給与水準の底上げ・物価対応 | 従業員の処遇改善・ モチベーション維持 |
主な交渉主体 | 労働組合・経営側 (春季労使交渉) |
人事制度の運用として社内で自動進行することが多い |
※賞与や退職金、社会保険料の算定には多くの場合「基本給」が用いられるため、ベースアップは制度全体に影響する「直接的な改定」となります。一方、定期昇給は個人ごとの変動を通じて制度に「間接的に反映」される形となります。
ベースアップが求められるのはなぜ?
賃上げの中でも制度全体の底上げにあたるベースアップは、単なる報酬改善にとどまらず、企業経営における人材戦略や社会的責任とも深く関係しています。ここでは、企業がベースアップを検討・実施せざるを得ない背景を3つの観点から整理します。
人手不足と採用難が深刻化しているため
少子高齢化にともなう人手不足により、人材の確保は年々難しくなっています。帝国データバンクの調査を見ても、2025年4月時点で半数を超える51.4%の企業が正社員の人手不足を感じています。
こうした状況下にあって、ベースアップは、採用競争における強力な武器のひとつです。求職者にとって、給与をはじめとする待遇は、企業を選ぶ上で重要な要素です。ベースアップは、企業経営の安定性の指標でもあることから、実施しない選択は採用市場において大きなハードルとなりかねません。
ベースアップの実施は、企業が「選ばれる存在」であり続けるために不可欠な手段といっても大げさではないのです。
参考:株式会社 帝国データバンク[TDB]|人手不足に対する企業の動向調査(2025年4月)|(2025年5月19日)
物価上昇により実質賃金が目減りしているため
近年、急速な物価上昇により、賃金の増加がそのまま生活水準の向上につながらない状況が続いています。
ましてや、賃金が変わらないまま物価だけが上昇した場合、従業員の実質賃金は減少します。従業員の生活は苦しくなり、未来への不安から離職を検討する可能性が否定できません。
こうしたリスクを避けるためにも、企業は物価の上昇に見合ったベースアップを通じ、従業員のモチベーション維持を図る必要があります。
関連記事:【2025年最新】賃上げ疲れとは?データで読み解く実態と対策
政府・世論からの賃上げ要請が高まっているため
政府も近年、企業に対して積極的な賃上げを求める姿勢を強めています。岸田政権は「物価上昇を上回る賃上げ」を掲げ、賃上げを実現した企業への税制優遇などさまざまな施策を発表し、財界への働きかけを強化しました。
こうした政策的要請は、企業の姿勢や社会的責任にも影響を与え、特に大企業を中心にベースアップを通じて社会に応える動きが加速しています。社会的な評価や持続可能性を重視する企業にとって、賃上げは避けて通れない課題となりつつあります。
ベースアップが平均に届かない企業はどう対応すべき?
2025年の春闘では、ベースアップを実施した企業が過去最多を記録しましたが、すべての企業が同水準の賃上げを実現できているわけではありません。特に中小企業では、原資の制約から平均に届かない水準での対応を強いられているのが実情です。ベースアップが平均に届かない企業が取り得る現実的な対策とは、いったいどのようなものなのでしょうか。
業界平均を下回ることで生じる深刻なリスク
賃金水準が業界平均より低い状態が続くと、人材確保・定着の両面で不利に働く可能性が高まります。
まず、競合他社に待遇面で見劣りをする可能性が高いことから、優秀な人材の獲得が難しくなります。また、既存従業員のモチベーション低下や、離職の引き金にもなりかねません。
仮に、同業他社が積極的にベースアップをおこなっている場合、こうした事態はより深刻さを増します。平均未満であることを放置せず、何らかの対応を講じることが求められます。
ベースアップの効果的な代替策「福利厚生」
原資の制限などが原因でベースアップが難しい場合、手取りを実質的に増やす施策として、注目を集めているのが福利厚生の活用です。
一定の条件を満たす福利厚生は、所得税の非課税枠を活用できるため、同額をベースアップや定期昇給として賃上げするよりも実質的な手取り額の増加につながります。
また、福利厚生は福利厚生費として経費計上できるため、企業側は法人税の削減が可能です。特に、食事補助や住宅補助のような暮らしに密着した福利厚生は、企業にとってコストを抑えながら従業員の生活を直接的にサポートできる魅力的な施策です。
原資に制限のある中小企業でも実践しやすい福利厚生を活用した実質的な賃上げは、ベースアップや定期昇給に続く「第3の賃上げ(エデンレッドジャパンが定義)」としても広く注目を集めています。
関連記事:「第3の賃上げ2025」とは?福利厚生で実現する新時代の賃上げ戦略
従業員の生活を支える食事補助の福利厚生「チケットレストラン」
第3の賃上げの実施を検討する企業から、特に広く支持を集めているサービスに、エデンレッドジャパンの「チケットレストラン」があります。
「チケットレストラン」は、従業員のランチ代を企業が補助する食の福利厚生サービスで、導入企業の従業員は、全国25万店以上の加盟店での食事を実質半額で利用できます。
加盟店のジャンルは幅広く、勤務時間中にとる食事の購入であれば、利用時間や場所の制限もありません。業種や勤務体系を問わず柔軟に利用できる福利厚生として、すでに3,000社を超える企業に導入されているほか、メディアからの注目度も高いサービスです。
サービスの詳細は「こちら」からお問い合わせください。
関連記事:チケットレストランの魅力を徹底解説!ランチ費用の負担軽減◎賃上げ支援も
平均ベースアップ水準を把握し、賃上げ戦略を最適化しよう
2025年の春闘では、ベースアップの平均額・賃上げ率ともに大手・中小企業で高水準となり、企業の賃上げに対する意識の高さがうかがえます。人手不足や物価上昇への対応、そして政府の賃上げ要請など、ベースアップを求める要因は今後も続くと見込まれます。
一方で、中小企業を中心に平均に届かない企業も多く、各社は自社の状況に応じた賃金戦略を模索しなければなりません。制度の正確な理解と「チケットレストラン」をはじめとする福利厚生など、実効性ある代替策の活用により、従業員の満足度と採用力を高める施策を実現していきましょう。
参考記事:「#第3の賃上げアクション2025」始動、ベアーズが新たに参画~中小企業にこそ“福利厚生”による賃上げを! “福利厚生”で、より働きやすく、暮らしやすい社会へ~
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