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2025年ベースアップは全員一律じゃない?ベアへの疑問を徹底解説!

2025年ベースアップは全員一律じゃない?ベアへの疑問を徹底解説!

2025.05.21

年が明け春闘が本格化すると「ベア一律1万円」といったニュースが増えますが、実際のところ、企業によって運用方法はさまざまです。ベースアップは全員一律でなければならない法律はなく、企業ごとに柔軟な運用が認められています。
本記事では、一律性のあるベースアップから、非一律のベースアップ、ベアの法的な位置づけを、2025年の最新動向も踏まえながら解説します。

ベースアップの概要

ベースアップの概要を理解するために、セットで給与アップに関係する「定期昇給」との違いを交えながら解説します。

ベースアップとは

ベースアップ(ベア)とは、物価上昇や労働市場の動向に対応するために、基本給の水準そのものを引き上げる制度です。略して「ベア」とも呼ばれます。原則として、一律とされる場合が多いです。

定期昇給とは

これに対して「定期昇給」は、年齢や勤続年数の増加、個人の能力向上に応じて給与を上げていく仕組みです。個々の事情や能力によるため、一律ではありません。

ベースアップと定期昇給の違い

2つの仕組みについて、主な違いをまとめた表が以下です。

項目 ベースアップ 定期昇給
主な目的 物価上昇への対応、生活水準の維持 勤続・経験・能力向上への評価
実施タイミング 春闘時が一般的 定期的(年1回等)
個人差 原則としては全従業員対象で差がつかない場合が多い 年齢・評価・等級によって個人差がある

ベースアップの本来の趣旨は、物価上昇などによる実質賃金の目減りを防ぎ、労働者の生活水準を維持することにあります。そのため、理念的には「全従業員に一律で適用される」のが基本的な考え方です。

関連記事:【社労士監修】ベア(ベースアップ)とは?定期昇給との違いや実施状況を解説

ベースアップが「一律」のパターン

ベースアップを一律で実施する方法には、「定額」と「定率」の2種類があります。違いを理解するにあたり、額が一律なのか、割合が一律なのかがポイントです。

定額方式

定額方式では、全員の基本給に同じ金額を加算します。 例えば、5,000円の一律定額とする場合は以下のとおりです。

  • 基本給20万円の場合:20万5,000円(2.5%、5,000円アップ)
  • 基本給30万円の場合:30万5,000円(約1.6%、5,000円アップ)

定額方式では、低賃金層ほど実質的な増加率が高くなり、賃金格差を縮小する効果があります。

定率方式

定率方式では、全員の基本給に同じ割合を乗じて加算します。 例えば、2%を一律ベアとする場合は、以下のようになります。

  • 基本給20万円の場合:20万4,000円(2%、4,000円アップ)
  • 基本給30万円の場合:30万6,000円(2%、6,000円アップ)

定率方式では、基本給が高い従業員ほど増加額が大きくなるため、賃金格差が広がる傾向があります。

ベースアップが一律じゃないパターン

春闘において賃上勢力の最大化という役割を担う連合では、ベースアップを「年齢や勤続年数に関係なく、全従業員の給与水準そのものを一斉に引き上げること」と示しています。

ところが近年の動向として、ベースアップは必ずしも全員一律ではありません。詳しく見ていきましょう。

出典:連合|コラム 「ベア」ってなに?

管理職と一般職による差異

正規雇用の従業員でも、職種の違いで「一律」ではないことがわかる調査を紹介します。

厚生労働省の「令和6年賃金引き上げ等の実態に関する調査」では、企業規模を問わず管理職のベアよりも一般職のベアの実施割合が高くなっています。

業界や企業規模を問わない平均で、管理職のベアを行った(行う)と回答した企業の割合は47.0%、一般職のベアを行った(行う)と回答した企業の割合は52.0%でした。

ベースアップ 一律じゃない02出典:厚生労働省|令和6年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況

雇用形態による差異

最新の春季労使交渉結果からは、正規雇用の従業員とパート従業員のように雇用形態が違うこと、ベースアップが「一律」ではないと読み取れます。

連合の第5回回答集計によると、パート従業員や契約社員等の賃上げ額は、加重平均で、「時給68.48円(約5.93%)」となり、正規雇用の従業員の賃上げ率「5.32%(ベア+定昇)」を上回りました。

この差異は特に人材不足が深刻な小売業で顕著です。これまでの回答として、イオンリテールは7.07%、ヤオコーは9.51%の高い賃上げを実施しています。

背景には、パート不足という労働市場の需給状況や、2020年以降導入された同一労働同一賃金制度の影響があるようです。

出典:連合|第5回回答集計~2025 春季生活闘争 第 5 回回答集計結果について~
出典:日本経済新聞|パート時給70円上げ、過去最高 25年春季労使交渉

対象者を限定

三菱UFJリサーチ&コンサルティングによると、ベースアップには対象者を限定するタイプも存在するとされています。例えば「非管理職のみ」を対象とするパターンです。また、2025年にますます注目度を高めている「初任給の引き上げ」もこのパターンの一つと言えるでしょう。

出典:三菱総研DCSの人事給与BPO|人事給与コンサルタントレポート ベースアップの類型

ベースアップが一律じゃなくなった背景

企業が従来の「全員一律」ベースアップから柔軟な運用へと移行している背景には、人事的な観点が影響しています。

  • IT人材のような特定職種へのニーズ(職種別賃金設計の広がり)
  • 非正規雇用者の処遇見直し(同一労働同一賃金の法遵守)
  • 年功序列から成果主義の変化
  • 賃上げ原資の現実的な配分

ベースアップが一律ではなくなったのは、偶然ではなく、現代の経営環境において合理的で戦略的な選択であると言えるでしょう。

ベースアップが一律じゃなくなることは違法か?

ベースアップが一律でなくなることは、法的な問題ではなく、むしろ時代や経営戦略に合わせた合理的な変化として捉えられます。理由を見ていきます。

ベースアップが非一律なのは違法ではない

ベースアップが一律でないこと自体は違法ではありません。法律上、ベースアップの実施や方法について明確な規定はなく、企業の裁量や労働組合との協議に委ねられています。

ただし法令への対応として、同一労働同一賃金の原則には十分な配慮が必要です。ベースアップをする場合、正規雇用の従業員に加えて非正規雇用の従業員への内容も盛り込まれているのが自然と考えられます。

出典:UPGRADE|「ベースアップ」を正しく理解し、意義のある賃上げを行うためには

「一律」という固定観念からの脱却も視野に

近年、「全員一律」というベースアップの常識が変わりつつあるといった報道もあります。この10年は政府手動による春闘の流れは変わりつつあり、「脱一律」の動きが加速しているというのです。

企業は人材確保と生産性向上を両立させるため、年功序列から脱却し、より戦略的な賃金設計を模索しています。同じ正規従業員間でも成果や役割に応じた格差をつける動きは、時代に即した前向きな変化と言えるでしょう。

多様な雇用形態による働き方や転職が一般的になった今、「一律ベースアップ」の概念自体を見直す時期が来ているのかもしれません。

出典:日本経済新聞|賃上げ・春闘2025 企業や業界の最新動向

ベースアップで押さえておきたい3つのポイント

ここからはベースアップ実施において、経営者や人事担当者が円滑に進めていくために配慮したいポイントを解説します。

1. 撤回はできない

ベースアップ後の撤回は困難です。労働条件の不利益変更(賃金の引き下げ)に該当します。そのため、財務状況など、中長期的な視点で実現できるかどうか、経営者との合意形成も含めて検討が必要です。ベースアップはせず、定期昇給のみを行う選択もあります。もしベースアップに踏み切る場合で、労働組合が存在するなら、事前に丁寧な協議を行うことが重要となります。

2. コストの増加

基本給が上がれば派生する人件費も増加します。時間外手当、社会保険料、賞与原資、退職金積立など関連コストまで含めると、負担増は避けられません。複数年のシミュレーションで総額を把握しておきましょう。

3.雇用形態間の公平性確保

同一労働同一賃金という考え方に基づき、ベースアップの適用範囲を正しく設定することが重要です。正規雇用の従業員だけにベースアップを行うような一律ではないケースはリスクとなる可能性があります。パートや契約社員など非正規雇用の従業員の処遇も同時に検討する必要があります。

ベースアップについてよくある疑問Q&A

多くの人が疑問に思う内容には、思考のヒントとなる要素が詰まっています。ベースアップについてよくある疑問をまとめました。

Q1:ベースアップは必ず全員一律でなければならないのですか?

A:いいえ、法的には一律である必要はありません。2025年春陽では、「ベースアップ分3%以上」「定期昇給分を含めて5%以上」「中小企業は6%以上」などの目標が掲げられ、理念上は一律が基本とされました。実際には職種・職階別、雇用形態別など、さまざまな「非一律」運用が広がっています。

一例として、2025年度のトヨタのように、職種・階級別にベースアップ率を複数設ける企業も増えています。

出典:連合|2025 春季生活闘争方針について
出典:日刊自動車新聞電子版|〈2025春闘〉トヨタ、5年連続で満額回答 一時金は昨年同水準の7.6カ月で過去最高

Q2:一律でないベースアップを実施する際の注意点は?

A:まず同一労働同一賃金の原則に抵触しないよう注意が必要です。また、差をつける合理的理由を明確にし、透明性のある基準を設けましょう。従業員への丁寧な説明と納得感を得るコミュニケーションも重要です。就業規則に賃金決定方法の記載がある場合は、変更が必要になるケースもあります。

Q3:ベースアップと定期昇給の違いは何ですか?

A:ベースアップは賃金テーブル自体を引き上げる施策であり、定期昇給は個人の能力や勤続年数に応じた昇給です。近年は両者の両方含めて、業績・成果連動型のハイブリッド方式を採用するケースも増えています。

Q4:一律でないベースアップの実施例を教えてください。

A:例えば、管理職と一般職で異なる率を適用する、営業職・技術職・事務職など職種別に異なる率を設定する、正規従業員とパート従業員や契約社員で異なる対応をする、部門の業績達成状況に応じて率を変える、などがあります。

Q5:従業員に一律でないベースアップをどう説明すべきですか?

A:なぜ一律でないアプローチを選んだのか、どのような基準で差をつけたのか、企業や・従業員双方にとってのメリットは何か、を明確に伝えましょう。質疑応答の機会を設けるなど、質問に答える場を用意することもできます。

Q6:ベースアップが一律でない場合のメリット・デメリットは?

A:メリットは、限られた原資を戦略的に配分できること、人材市場の需給に応じた柔軟な対応ができること、成果や貢献度に応じた処遇が可能になることです。デメリットとしては、従業員間で不公平感が生じる可能性があること、説明や運用が複雑化する可能性があること、などが挙げられます。

Q7:同一労働同一賃金の観点から、非正規雇用者のベースアップはどうすべき?

A:正規雇用の従業員と同じ仕事をしている非正規雇用の従業員には、同等のベースアップを検討することをおすすめします。2025年春闘ではパート・契約社員の賃上げ率が正規雇用の従業員を上回りました。労働市場の需給や法令遵守の観点からも、雇用形態によらない公平な処遇への是正が必要です。

Q8: ベースアップしても手取りが増えないのはなぜ?

A:給料の増加にともなって所得税率が上がる累進課税制度や社会保険料の負担増などの影響があるためです。人事担当者は従業員に手取りを減らす要素があることを説明し、手取り額のシミュレーションを示すと理解を得やすくなります。

関連記事:【税理士監修】昇給で手取りが減る?収入が増えた実感ナシの理由も解説

ベースアップの一律性を正しく理解

人材獲得競争の激化と多様な働き方の普及により、より柔軟な賃金設計が求められる時代です。「全員一律」「全社一律」といったベースアップの常識が変わりつつあります。

この流れの中で、直接的な賃金アップと並行して検討したいのが、効果的な福利厚生の活用です。福利厚生は給与とは異なる形で従業員の処遇を改善する手段として注目されています。

一例として、食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」などでは、月額最大3,500円(税抜)の実質的な処遇改善が可能です。コンビニを含む全国25万店舗以上の加盟店で利用できることから従業員満足度も高く、また一定の利用条件を満たすと所得税を非課税運用できるため税制上のメリットもあります。

人材確保が重要課題となる今日、現実として「一律」という枠にとらわれない柔軟な仕組みが求められています。食事補助のような福利厚生も、従業員の処遇改善策の一つとして検討してみませんか。

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