ファントムストックとは、将来的に現金に換えられる仮想株式を従業員に付与する仕組みです。福利厚生の一種であるファントムストックを導入すると、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?似た制度との違いや、手取りアップにつながる他の制度も紹介します。
ファントムストックとは金銭報酬制度の1つ
ファントムストックは、従業員が定められた業績目標を達成したというように一定の条件を満たした場合に、給与やボーナス以外で評価する金銭報酬制度の1つです。
福利厚生の一環として導入する企業もあるファントムストックについて、特徴を解説します。
仮想株式を付与する制度
ファントムストックを導入すると、企業は条件を満たした従業員に仮想株式を付与します。付与する対象は企業が自由に設定可能です。正規雇用の従業員はもちろん、パート・アルバイト・業務委託などに付与している企業もあります。
仮想株式は所有権や議決権のある実際の株式ではありませんが、株価や営業利益などに連動して価格が変動します。仮想株式を付与した従業員の権利確定時には、その時点の価格に応じて、企業が現金を支給する仕組みです。
収入アップが期待できる福利厚生の一種
仮想株式は、株価や営業利益などによって価格が変動します。付与したときよりも、企業の株価や営業利益などの指標が上がったタイミングで従業員が権利を行使すれば、当初の価格との差額を現金で受け取れる仕組みです。
企業の業績が上がれば、その分仮想株式の価格に反映されて、従業員の収入アップにつながります。
ファントムストックを提供する「エンゲージメントストック」
南青山アドバイザリーグループでは、仮想株式を従業員へ付与するファントムストックを、エンゲージメントストックとして企業に提案しています。行使条件や還元率を適切に設定することで、企業の課題解決につながるように、エンゲージメントストックを導入するのが特徴です。
併用することでエンゲージメントストックの効果を高められるストックオプション管理ツール「ストックオプションクラウド」も提供しています。
参考:エンゲージメントストック
ファントムストックとストックオプションとの違い
ファントムストックと似た仕組みに、ストックオプションがあります。定めた条件で、将来的に株式を購入する権利を、企業が従業員に付与する制度のことです。
例えば1株1,000円で5年後に株式を購入できる権利を従業員に付与したとします。5年後に株価が2,500円になっている場合、従業員が権利を行使して株式を購入すると、購入時の株価2,500円とあらかじめ定められていた購入価格である1,000円の差額1,500円が利益となります。
株価が上がるほど、従業員の利益が大きくなる仕組みです。条件を満たした従業員に仮想株式を付与するファントムストックとは、どのような点で異なるのでしょうか。両者の違いを見ていきましょう。
仮想株式か実際の株式か
ファントムストックもストックオプションも企業の業績が上がれば価格が上がり、従業員の利益につながります。異なるのは従業員に何を付与するかという点です。
ファントムストックでは仮想株式を付与しますが、ストックオプションでは実際の株式を購入する権利を付与します。
権利行使時に従業員が現金を用意しないかするか
権利を行使するときに、ファントムストックは従業員が現金を用意する必要がありません。付与した仮想株式の権利を行使することで、従業員は企業から現金の支給を受けられます。
一方、ストックオプションの権利を行使するときには、従業員は現金を用意しなければいけません。ストックオプションはあらかじめ定めた金額で株式を購入する権利のため、まずは用意した現金で株式を購入します。
この株式を売却すれば、定められた購入金額と購入時の株価の差額が利益となる仕組みです。
導入に必要な手続きが少ないか多いか
ファントムストックは、被付与者となる従業員との契約が成立すれば導入できます。一方、ストックオプションでは権利の付与に向けて以下の手続きが必要です。
- 募集事項の決定
- 募集事項の通知や告知 ※公開会社のみ
- 割当者や割当数の決定
- 新株予約権原簿の作成
- 登記
ファントムストックのメリット
ファントムストックには複数のメリットがあります。ファントムストックを導入することによる企業のメリットを見ていきましょう。
医療法人や合同会社などでも導入できる
仮想株式を従業員に付与するファントムストックであれば、株式を発行できない医療法人や合同会社などの法人でも導入できます。
形態によらず、法人の成長に合わせて従業員に還元したいと考えている場合に有効です。
従業員エンゲージメントの向上につながる
従業員エンゲージメントの向上につながる可能性があるのも、ファントムストックのメリットです。
企業が目指している方向性を従業員が十分理解し、その達成に向け自発的に貢献しようとする姿勢のことを、従業員エンゲージメントといいます。
従業員エンゲージメントが向上することで、職場環境の改善や、離職率の低下、スムーズな人材採用などが期待できます。自発的に考えて行動する従業員が増えるため、モチベーションアップにも有効です。
関連記事:従業員エンゲージメントとは?向上に役立つ施策や取り組むメリット
離職防止につながる
ファントムストックは中長期的な評価に対する金銭報酬です。数年先の企業の業績を見据えつつ、今何をするべきかを考えることで、従業員は受け取れる利益をより大きくしていけます。
また権利を行使する条件として「勤続〇年以上」というように、勤続年数を定めることも可能です。
これにより、従業員は目先の給与やボーナスの金額ではなく、将来的な企業の成長を見越して転職をすべきか判断するようになります。モチベーションを長く持続させやすくなる仕組みでもあるため、離職防止を期待できる仕組みです。
関連記事:【離職防止アイデア12選】従業員の離職率を下げるために必要なことを解説
能力のある人材を採用できる
採用活動を行うときに、ファントムストックがあることを求職者にアピールすれば、優秀な人材を採用しやすくなることが期待できます。
能力に対する正当な評価とそれに見合う収入を希望している求職者にとって、頑張りが収入に反映されるファントムストックは、魅力的な制度であるためです。
グローバル人材へのアピールにつながる
グローバル人材の採用を目指すときには、馴染みのある金銭報酬制度の導入が有効です。ただし海外居住の人材に対してストックオプションを付与すると、居住地の規制対象になる可能性があります。
このような場合には、規制の対象にならないファントムストックが役立ちます。
既存の給与のまま年収アップできる
人件費は1度上げると下げるのが難しい固定費です。物価上昇が続く中、賃上げを実施したいと考えていても、下げるのが難しい人件費の大幅な引き上げは難しいケースもあるでしょう。
ファントムストックを導入して業績に応じて収入が増える仕組みにすれば、これまで通りの給与やボーナスにプラスして、業績アップ分の収入を従業員に支給できます。
既存の給与の仕組みを変えることなく、従業員の年収アップを実現可能です。
株式の希薄化が起こらない
ストックオプションを導入した場合、新株を発行するため、市場に出回っている1株当たりの価値が減少します。これが株式の希薄化です。
仮想株式を付与するファントムストックでは、新株を発行しません。市場に出回っている株式の価値を変動させることなく、業績アップを従業員に還元できます。
従業員同士のノウハウの共有が起こりやすくなる
企業の業績に応じて収入が上がる仕組みを導入できるファントムストックがあると、従業員は自分の持つノウハウを積極的に共有し始めます。
ノウハウを共有して他の従業員の成果が上がれば、自分の成果がこれまでと変わっていなくても収入が上がるためです。
ファントムストックのデメリット
ファントムストックにはデメリットもあります。代表的なデメリットとして「将来の現金流出」と「定まっていない税務処理」について見ていきましょう。
将来の現金流出が多額になる可能性
従業員がファントムストックの権利を行使すると、企業は仮想株式の付与時と権利行使時の差額を従業員に支給しなければいけません。
仮想株式の価格が将来的にどのくらい変動するか予想するのは難しいことです。将来に備えて現金を用意していたとしても、仮想株式の価格次第では現金が不足するリスクがあります。
定まっていない税務処理
税務処理が定まっていないのもファントムストックのデメリットといえます。従業員が権利確定し企業が現金を支払うときには、ボーナスと同様の税務処理を行う企業が多いようです。
ファントムストックの導入時は丁寧な説明が必須
企業が新たにファントムストックを導入するときには、従業員が制度を理解して活用できるよう、丁寧な説明が欠かせません。
ファントムストックで従業員に付与する仮想株式とはどのようなものなのか、どのタイミングで現金にできるのか、どのような指標に合わせて価格が変動するのか、などを明確にして伝える必要があります。
ファントムストックの導入事例
国内でファントムストックを導入している企業は、そこまで多くありません。ここではファントムストックを導入した企業の事例を紹介します。
アイザック株式会社
電話発信の自動化ツール「オトコル」や、AIパートナーを作成できる「Aimy」、キャリアコーチングサービスの「キャリイチ」などを提供しているアイザック株式会社は、2024年4月にファントムストックの導入を決定しています。
アイザック株式会社は100%自己資本で経営しているのが特徴です。上場を目指すことのない企業でも、上場企業並みのメリットを従業員に提供したいという思いから導入が決まりました。
従業員は勤続年数ごとに決まっている年間買付上限の範囲内で仮想株式を購入できます。万が一買付時より仮想株式が下落しても、アイザック株式会社が買付時の時価総額で買い取ることを定めており、従業員の資産は減らない仕組みです。
参考:アイザック株式会社|「非上場志向スタートアップ」のアイザック、社員向けの持ち株制度「ファントムストック」の導入を決定
株式会社クレディセゾン
株式会社クレディセゾンでは、2022~2024年度の決算賞与のうち、3分の1をファントムストックとして支給しました。2025年3月末には、現金支給額を算出して、2025年に支給する計画です。
ファントムストックが従業員の経営参画への意識向上につながり、持続的な企業成長を可能とすることを期待して始まった取り組みです。
参考:株式会社クレディセゾン|全社員を対象とした決算賞与の導入について
株式会社LIXIL
株式会社LIXILでは、企業価値の向上に向けた適切な判断を促せるよう、執行役と取締役を対象にファントムストックを導入しています。
またグローバルな役員報酬体系とすることで、国内外の優秀な人材を確保するねらいもあるそうです。
参考:
株式会社LIXIL|株価連動報酬制度(ファントムストック)の導入に関するお知らせ
株式会社LIXIL|2024年3月期 有価証券報告書
実質的な手取りアップにつながる福利厚生
従業員の待遇改善に向けて制度の整備を行うときには、家計をサポートできる福利厚生を導入するとよいでしょう。
エデンレッドジャパンでは、家計の負担軽減や実質的な手取りアップにつながる福利厚生を「第3の賃上げ」と定義しました。ここでは「第3の賃上げ」となる福利厚生を紹介します。
関連記事:“福利厚生”で実質手取りアップと高いエンゲージメントの実現を「#第3の賃上げアクション」プロジェクト
従業員のランチをサポートできる「チケットレストラン」
食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」は、全国にある25万店舗以上の加盟店で食事を購入できるのが特徴です。
セブン-イレブン・ファミリーマートなどの大手コンビニチェーンや、𠮷野家・松屋などの牛丼チェーン、サンマルクカフェ・ドトールなどのカフェでも利用できます。
全国に加盟店があるため、対象となる全ての従業員が公平に使えるのもポイントです。「チケットレストラン」導入事例を見ると「従業員が公平に利用できる福利厚生を探していた」という企業が複数あります。
例えば「共進運輸株式会社」では、食事補助を仕出し弁当か「チケットレストラン」のどちらかを選べるようにすることで、内勤の従業員もドライバーも公平に福利厚生を利用できるようになりました。
「関西エアポートオペレーションサービス株式会社」では、正規・非正規の雇用形態を問わず「チケットレストラン」を支給することで公平性を保ち、従業員満足度の向上にもつながっています。
「株式会社ノア」では「チケットレストラン」の導入によって、拠点ごとの従業員食堂の有無によらず、対象の従業員が公平に食事補助の福利厚生サービスを利用できるようになりました。
詳細な導入事例はこちら:
共進運輸株式会社
関西エアポートオペレーションサービス株式会社
株式会社ノア
「チケットレストラン」で実質的な手取りアップができる
食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」は、一定の利用条件下であれば所得税が非課税運用ができるため、実質的な手取りアップが可能です。食事補助の提供とともに、従業員の可処分所得を増やせます。
実質的な手取りアップや「チケットレストラン」の詳細については、こちらの「資料請求」からお問い合わせください。
日々の暮らしで使える「freee福利厚生ベネフィットサービス」
「freee福利厚生ベネフィットサービス」は、全国10万店舗以上で利用できる割引クーポンを提供している福利厚生サービスです。
例えば、コメダ珈琲・ピザハット・Uber Eats・noshなど食事に関連するクーポンの他、TOHOシネマズ・カラオケ館など休日を充実させられるクーポンや、洋服の青山・JINSなど衣類小物の販売店で使えるクーポンなどがあります。
日常的に使える割引クーポンを活用することで、従業員は家計の負担を軽減できます。これにより実質的な可処分所得を増やせる仕組みです。
初期費用0円、1ID400円~利用できるため、少ない負担で従業員の家計をサポートできる福利厚生サービスです。
家事代行で暮らしをサポートする「ベアーズ Well-Beingプラン」
「ベアーズ Well-Beingプラン」は、導入すると従業員がベアーズの生活支援サービスを優待価格で利用できるサービスです。従業員は料理代行・シッター・高齢者支援などの生活支援サービスを優待価格で利用することで、時間に余裕を持てるようになります。
自由に使える時間が増えるため、家族とゆっくり過ごしたり、スキルアップに向けた勉強をしたり、生活の質向上に役立つ福利厚生サービスです。
ファントムストックによる年収アップを検討しよう
ファントムストックとは、従業員に仮想株式を付与して、一定の条件を満たしたときに現金に換えられる金銭報酬制度です。仮想株式は企業の株価や営業利益などを指標として価格が変動するため、企業が成長するほど従業員の収入も増えていきます。
頑張りが収入に直結するため、従業員がモチベーションを高く保ちながら仕事に取り組めますし、「業績アップのためには何をすればいいだろうか?」と考えて自ら行動するようにもなるでしょう。離職防止や優秀な人材の採用にもつながる制度です。
ただし従業員がファントムストックの権利行使を行うときに、仮想株式の価格によっては想定以上の現金流出が起こるかもしれません。
このようなリスクを回避しつつ、従業員の実質的な手取りアップを行うには、食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」が役立ちます。一定の利用条件で導入すると所得税の非課税枠運用が可能になり、手取りアップにつながる仕組みです。
従業員の年収アップに向けて取り組みたいと考えているなら、ファントムストックとともに検討してみてはいかがでしょうか。
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