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保育士の賃上げはいつから?閣議決定された補正予算案や2025年の予測も

保育士の賃上げはいつから?閣議決定された補正予算案や2025年の予測も

2025.02.04

保育士の賃上げはいつからどのように行われるのでしょうか?2024年12月17日には国会で補正予算案が成立しました。この補正予算案には、保育士の賃上げに充てる予算も含まれています。保育士の賃上げについて、現状や処遇改善加算などについて知った上で見ていきましょう。

保育士の給与

令和5年賃金構造基本統計調査」で保育士の給与を確認すると、以下の通りです。

保育園の規模

保育士にきまって支給する現金給与額

保育士の年間賞与等

保育士の年収

全体平均

27万1,400円

71万2,200円

396万9,000円

1,000人以上

27万8,700円

50万2,500円

384万6,900円

100~999人

27万300円

76万2,600円

400万6,200円

10~99人

27万800円

71万8,500円

396万8,100円

※年収は「(きまって支給する現金給与額×12カ月)+年間賞与等」で計算した金額

施設の規模によらず保育士の年収は400万円前後となっており、以下の産業全体の平均と比べて、低い水準であることが分かります。

企業規模

きまって支給する現金給与額

年間賞与等

年収

全体平均

34万6,700円

90万9,000円

506万9,400円

1,000人以上

38万2,700円

118万6,000円

577万8,400円

100~999人

33万8,800円

88万9,700円

495万5,300円

10~99人

31万4,000円

60万5,400円

437万3,400円

※年収は「(きまって支給する現金給与額×12カ月)+年間賞与等」で計算した金額

参考:e-Stat|令和5年賃金構造基本統計調査|職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)

保育士の給与が園の規模によって変わらない理由

一般企業の場合、企業規模が大きいほど給与や賞与が高額になる傾向があります。一方、保育士の給与や賞与は、園の規模によらずほぼ同じです。

これは認可保育園が収入を得る仕組みと関係しています。認可保育園は、保育園へ通う子どもの保護者が支払う保育料と補助金によって運営される仕組みです。

補助金の支給額を決めるときには、子ども1人あたりの教育や保育に必要な費用である公定価格から保育料を差し引いて算出します。保育園の運営に必要な金額に満たない分を補助金として支給するため、どの保育園であっても得られる金額は公定価格と同額です。

この仕組みがあるため、保育士の給与はどこの園でも大きく変わりません。

保育士の給与は上昇傾向

賃金構造基本統計調査」によると、過去10年間の保育士の「きまって支給する現金給与額」は上がり続けています。保育士の賃上げに充てるための処遇改善加算に取り組んだ結果と考えられるでしょう。

保育士にきまって支給する現金給与額

2023年

27万1,400円

2022年

26万6,800円

2021年

25万6,500円

2020年

24万9,800円

2019年

24万4,500円

2018年

23万9,300円

2017年

22万9,900円

2016年

22万3,300円

2015年

21万9,200円

参考:e-Stat|賃金構造基本統計調査

保育士の給与水準が低いことによる影響

保育士の給与水準が低いと、どのような影響があるのでしょうか?人材確保と保育の質について解説します。

関連記事:エッセンシャルワーカーの人手不足の原因は?人材確保に向けた対策を解説

保育士の人材確保に影響している

東京都福祉局の「令和4年度東京都保育士実態調査報告書」によると、保育士の資格を持っているけれど保育士として働いていない人は38.2%です。

このうち保育士として働いた経験のある人は12.3%の割合です。保育士を辞めた理由として多いのは「職場の人間関係(31.5%)」「仕事量が多い(23.1%)」「給料が安い(22.1%)」となっており、低水準の給与が離職につながっていると分かります。

また69.0%が、復職の希望条件として給与をあげていることから、保育士の賃上げは経験者の採用につながるといえるでしょう。

また現在保育士として働いている人の中で「退職したい」と考えている人は、61.6%が給与が安いことを理由にあげています。

人材の採用にも定着にも、低水準の給与による影響が見て取れる調査結果です。

参考:東京都福祉局|令和4年度東京都保育士実態調査報告書

保育の質に影響している

低い給与により保育士の人材確保が十分にできない場合、保育の質の低下につながりかねません。保育士の目が届きにくくなることで、保育所内で思わぬ事故が起こる可能性が高まります。

安心して子どもを預けられる環境づくりのためにも、保育士の賃上げが重要です。

保育士の賃上げを行うための補正予算

こども家庭庁は、2024年人事院勧告に伴う国家公務員の給与改定に準じた保育位の処遇改善を行うため、補正予算案を提出しました。保育士の賃上げにつながる補正予算について見ていきましょう。

子ども家庭庁が10.7%の賃上げを発表

2024年の「人事院勧告」では、民間企業の従業員と公務員との差を解消する目的で、民間給与の賃上げを反映した大幅なベースアップを勧告しました。

保育士の10.7%賃上げは、この勧告に準じて行われるものです。補正予算は1,150億円となっており、他の取り組みと比べても多くの予算が充てられています。

過去10年間で最大の引き上げ率となることからも、重点的に取り組むべき課題と捉えられていることが分かるでしょう。

参考:
人事院|令和6年 人事院勧告・報告の概要
こども家庭庁成育局保育政策課|令和6年度保育関係補正予算の概要

補正予算案は2024年12月17日に可決

補正予算案は2024年12月17日に可決したことから、保育士の賃上げを目的とした公定価格の引き上げは、予定通りに行われる見込みです。

保育士の賃上げはいつから

保育士の賃上げは2024年4月までさかのぼって行われます。公定価格を引き上げて各保育園への支給額を増やし、保育士の賃上げに充てる仕組みです。2025年も賃上げされた給与の支給が続くと考えられます。

10.7%賃上げの注意点

補正予算案の可決により決定した、保育士の10.7%の賃上げには注意点があります。保育園の運営主体では、保育士の待遇改善につながるよう、適切な配分の実施が重要です。

配分は各保育園に任される

保育士の賃上げを目的に、子ども1人あたりの教育や保育に必要な費用である公定価格の引き上げが実施されます。ただし引き上げられて増えた補助金を、どのように配分するか決定するのは保育園の運営主体です。

引き上げられた分を全て保育士へ配分する園もあれば、そうでない園もあるでしょう。また日々の働きぶりによって、賃上げ率に差をつける園もあるかもしれません。

保育園の運営主体には、適切な配分の実施が求められます。

世代や役職により賃上げに差が生じる

保育士の賃上げは人事院勧告に準じて行われるものです。この賃上げが勤続5年ほどの職員の給与が基準となっています。勤続年数が長い保育士や役職に就いている保育士は、給与水準が他の保育士より高い傾向にあるため、賃上げ率が10.7%に届かないかもしれません。

保育士の処遇改善等加算とは

公定価格への加算で行われる処遇改善等加算は、加算額を賃上げに用いることを条件に、要件を満たしている保育園へ支給されます。

制度の複雑さから利用しにくいため、1本化の議論が出ていますが、現状では処遇改善等加算Ⅰ~Ⅲの3種類です。それぞれの要件や加算割合を確認していきます。

参考:子ども家庭庁 子ども・子育て支援等分科会|公定価格の処遇改善等加算Ⅰ~Ⅲの一本化について

処遇改善等加算Ⅰ

保育に関わる人材が長く働ける環境を構築する目的があるのが処遇改善等加算Ⅰです。保育士の経験年数に応じた2~12%の加算が行われる基礎分と、基準年度の賃金水準から改善することで加算される賃金改善要求分の2種類があります。

賃金改善要求分は、勤続11年未満が6%、勤続11年以上が7%の加算です。ただし以下の要件を満たしていない場合には加算割合が2%低くなります。

  • 役職や職務内容等に応じた賃金体系の設定
  • 資質向上のための計画策定
  • 計画に係る研修の実施か研修機会の確保

処遇改善等加算Ⅰは勤続年数が関係しますが、ここでいう勤続年数とは保育園や幼稚園など指定の施設での経験年数を合算した年数のことです。今勤務している施設での勤続年数とは異なるため注意しましょう。

処遇改善等加算Ⅱ

保育士のキャリアパスの仕組みを構築するのが処遇改善等加算Ⅱの目的です。副主任保育士・専門リーダー、職務分野別リーダー・若手リーダーなどのポジションを設けることで、公定価格が加算される仕組みです。

処遇改善は月4万円と5,000円があり、対象者は以下のように定められています。

加算額

処遇改善の対象者

月4万円

・副主任保育士等の職位の発令・職務命令
・経験年数が概ね7年以上
・4分野以上の研修を修了している

月5,000円

・職務分野別リーダー等の発令・職務命令
・経験年数が概ね3年以上
・担当分野の研修を修了している

加算額を配分するときには、副主任保育士等で月4万円の賃上げを実施する保育士を1人以上設けた上で、その他のリーダーへ月5,000~4万円未満の賃上げを実施するよう定められています。

処遇改善等加算Ⅲ

コロナ克服・新時代開拓のための経済対策を目的としているのが処遇改善等加算Ⅲです。以下の要件を満たすことで3%程度(月9,000)の加算を受けられます。

  • 加算額以上の賃上げを実施すること
  • 賃上げのうち3分の2以上は基本給や毎月支払われる手当で実施すること
  • 賃金改善計画書と賃金改善実績報告書を提出すること

2025年4月から始まる保育園経営の見える化

2025年4月から、保育園は「人員配置」「職員給与」「収支状況」の報告を行わなければいけません。この見える化は、保育士の賃上げにつながる、公定価格の改善を目指すのが目的です。

職員給与やその他の情報の公表に向けて、賃金体系の見直しに取り組んでいる保育園もあるかもしれません。保育士の賃上げにプラスに働くことが考えられる制度といえます。

参考:新たな継続的な見える化の制度における報告・公表の在り方について

関連記事:人的資本とは何かをわかりやすく解説。今注目されている理由も

保育士の待遇改善に福利厚生も活用しよう

人事院勧告に準じた保育士の賃上げが行われます。過去10年間で最大の10.7%の賃上げです。ただし全ての保育士の給与が10.7%上がるとは限りません。保育園によって配分の仕方が異なりますし、若手職員の給与を基準に計算した数値のためです。

保育士の待遇改善に取り組むときには、賃上げに加えて、待遇改善に役立つ福利厚生の充実度アップも行うとよいでしょう。例えばエデンレッドジャパンの提供している食事補助の福利厚生サービス「チケットレストラン」を導入すれば、保育士の食事をサポートできます。

食事に加えてドリンクやスイーツの購入もできるため、日常的な気分転換にも利用可能です。保育士の待遇改善に向けて、導入を検討してみませんか。


参考記事:「#第3の賃上げアクション2025」始動、ベアーズが新たに参画~中小企業にこそ“福利厚生”による賃上げを! “福利厚生”で、より働きやすく、暮らしやすい社会へ~

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